人妻美穂と大学生




本編はフィクションです。



第1話〜第5話 第6話〜第11話



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第1話


私は27歳の人妻美穂。結婚して4年経つがまだ子供はいない。
夫には特にこれといって不満はない。
仕事は真面目だし、ギャンブルもしない、それに浮気だっておそらくしたことがないと思う。
むしろとても良く出来た夫だと思ってる。
でも私は夫を裏切ってしまった。
それはあの思いがけない出来事から始まった。

それはちょうど1年前にさかのぼる。
私は今、眺望の良い部屋を、ということからマンション最上階の14階に住んでいる。
その日私は洗濯機を掛けたまま、近くのスーパーへ買い物に出かけた。
洗濯機は全自動なのですすぎ終わると勝手に止まってくれる。
天気も良いので、帰ってからベランダに洗濯物を干すつもりだった。

買い物を済ませた後、スーパー近くのカフェに寄り、カフェオーレを飲んでひとときを過ごした。
マンションを出てから帰宅まで、3時間ぐらい経過しただろうか。

マンションに戻ってみると、玄関前に人影があって何か騒々しい。
3人の男性が私の部屋のチャイムを押したり、ドアをノックしたりしている。

(どうしたのかな?何の用だろう・・・)

よく見ると1人はマンションの管理人だが、他の2人は初めて見る顔だ。
1人は40歳前後で青い作業服を着ており、もう1人はまだ若く長身でカジュアルなシャツにジーンズ姿であった。
私は怪訝に思いながら、近くまで行き管理人に尋ねてみた。

「どうしたのですか?」

管理人は私が声を掛けるのとほぼ同時に、あわただしく語りかけてきた。

「あぁ、山川さん!」
「何かあったんですか?」
「大変なことになったんですよ!実は山川さんの部屋から階下に水漏れしてまして、階下に被害が出てるんですよ!」
「え?水漏れ?私の・・・部屋からですか?」
「はい、先ず間違いありません。こちらにおられる階下の小野原さんからの通報で駆けつけたんですが、小野原さんの天井から水がじゃじゃ漏れになっていまして、とにかく、直ぐにおうちを調べさせて欲しいんですよ!」

管理人はまくし立てた。

(もしかしたら・・・!?)

私はとっさに洗濯機をかけたまま出かけたことを思い出した。

「たぶん洗濯機だと思います!」

私はそういいながら、あわててシリンダーに鍵を差し込んだ。

「どうぞ、入ってください!」

私は無造作に買物袋を玄関先に置き、部屋の中へと入って行った。
管理人たちも私の後に続いた。

「きゃっ!」

かなりの水量が洗面所から廊下へと流れ出ている。
洗濯機置場を覗くと、洗濯パンの排水ホースが排水口から外れているのが分かった。
水は自動的に止まっていたが、既に溢れ出た水が階下に漏れてしまったのだろう。
ここは素直に謝るしかないと思った。

「すみません!」
「原因はやはり洗濯機でしたか!とにかく出来るだけ沢山のタオルを当てて水を吸い取ってください!」
「は、はい!」

私はありったけのタオルとバスタオルを収納ボックスから取り出し、即座に雑巾掛けをした。
管理人も横で手伝ってくれた。
水道業者と小野原は原因を見届けると、直ぐに立ち去ろうとした。

「奥さん!そっちが終わったら、下へ来てください!被害を確認してもらわないといけないので!すみませんが管理人さんも立会いを頼みます!」

水道業者は私にそう告げると、小野原とともに駆け足で出て行った。



第2話


水道業者の残した『被害』という言葉は、ずっしりと重く私にのしかかってきた。
下の家にどれだけの被害を与えてしまったのだろうか。
洗濯をしたまま出掛けてしまったことを、私は深く後悔した。

(でも私の責任だわ。どれだけ費用が掛かるか分からないけど、弁償はしなければならない・・・)

洗濯機のホースからこぼれた水はだいたい拭えた。

「管理人さん、手伝ってくださってありがとうございました。もう大丈夫じゃないかと思うので、私、今から下のお家に行ってきます。」
「大変なことになりましたね。私もいっしょにいきますから。」
「すみませんね。ご苦労をお掛けしますが、よろしく頼みます。」

水道管に亀裂が行く等の設備上の欠陥であれば、マンション管理者の責任も大きいが、洗濯機のこぼし水は上下階の住民同士の問題であり、本来管理人の出る幕ではない。
しかし人の良い管理人は、話の行きがかり上無視も出来ず、また水道業者の半ば強引な申し出もあって、下階の被害状況の確認にいっしょに立ち会ってくれることになった。

管理人と私は階下の小野原という男性の部屋を訪れた。

「失礼します。」
「どうぞ、入ってください。」

顔は見えないが、奥の方から若い男性の声がした。
靴を脱いで玄関を上がると、洗濯機置場の天井から水がポタポタと滴り落ちていた。

「ここですね・・・」

私は申し訳なく思い、遠慮がちに小野原に尋ねた。
さきほどは慌てていたせいもあって顔はよく見なかったが、よく見ると端正な顔立ちのかなりの美男子であることが分かった。

「ええ、さきほどまでは天井から滝のように水がこぼれていたんだけど、今はだいぶましになりました。」
「そうですか・・・」

そこへ水道業者が口を挟んできた。

「奥さん、今は濡れているから分からないけど、乾けばおそらく天井のクロスはめくれてくると思います。修理代は覚悟してくださいよ。」
「は、はい・・・分かりました・・・」

水道業者はかなり威圧的な言葉遣いをする男だった。

その時、小野原が曇った表情でつぶやいた。
顔にはかなり深刻な色が滲んでいる。

「天井の修理もだけど、それよりちょっとこっちに来てくれますか?」
「あ、はい・・・」

私は小野原に案内されて、洋間に向かった。
水道業者と管理人も後から着いてきた。

小野原はクローゼットの扉を開けて、クリーム色の布に包んである四角いものを取り出した。
クローゼットの中にも相当な水が漏ったようで、布はびっしょりと濡れていた。
小野原は丁重にクリーム色の布を解いた。
中から出てきたものは1枚の絵であった。
絵にまで水が沁みてしまっているようだ。

「実はこの絵、わざわざシンガポールに行って描いたものなんですよ。でも濡れてしまってもうだめみたい・・・」

良く見ると、そこには世界遺産としても有名なアンコールワットが描かれている。

私は愕然とした。
ある程度は高価なものもあるかも知れないと思い覚悟はして来たが、まさか油絵が濡れたとは思いも寄らなかった。

管理人が尋ねた。

「小野原さん、確か美大生でしたね。」
「はい、○○美大の4回生なんです。以前からアンコールワットが描きたくて、昨年秋にやっと実現したんです。その時、向こうで描いた絵なんですよ。でもこれだけ濡れてしまってはもう取り返しがつかない・・・」

私はただ謝るより方法はなかった。
ひたすら頭を下げ詫びた。

「小野原さん、本当にごめんなさい!海外で描かれた大事な絵をこんなにしてしまって・・・」



第3話


「謝ってくれても、絵はもう元には戻らないんですよ!」
「謝って済む問題じゃないことは分っていますけど、とにかくお詫びします・・・本当にごめんなさい・・・」

管理人はその場にいづらくなったようで、「後は両者でお話ください。」と告げて部屋を出て行った。
水道業者も配管関係に異常がないことが確認できたため、自分の任務は終えたとばかりに管理人より少し前に帰ってしまったようだ。
原因者は自分で被害者は下階の大学生なのだから、損害賠償の交渉は、弁護士は例外として、通常は第三者が介入するわけにはいかないのだから、管理人や業者が帰ってしまったのもやむを得なかった。

私は小野原に責められ頭を上げられなくなっていた。
絵はかなりの水を浴びたようで、絵の具が滲み始めている。
乾いてもおそらく跡形が残り元には戻らないだろう。
衣類であれば、クリーニングという方法があるし、家財道具であれば、値段の高い安いはあるだろうが、最終的には同一のものを弁償すれば話はつけれる。
しかし、小野原が海外で描いたという絵は一体どうすれば良いのだろうか。

ふと弁償という方法が浮かんだ私は小野原に提案してみた。

「小野原さん、お金で済む問題じゃないことは分かっていますが、その絵を弁償させていただけないでしょうか。」

「弁償?冗談言わないでください!そりゃ俺は貧乏な学生ですが、金でかたがつく問題じゃないですよ!」

金銭補償の提案をしたことがかえって小野原の気分を害したようだ。 私は後から「しまった」と思ったがすでに後のまつりであった。

私は途方に暮れてしまった。

「ではどうすれば良いのでしょうか・・・」
「絵はもうあきらめます。」
「えっ?よろしいのですか?」

小野原の思いがけない潔い言葉に、私はほっと胸を撫で下ろしたが、それもつかの間、小野原の後に続いた言葉に私は愕然とした。

「その代わりに・・・」
「ええ・・・」
「その代わり、奥さんのヌードを描かせてください。」

突然の小野原の申し出に私は思わず言葉を失ってしまった。

「えっ?なんですって!?私のヌード・・・を?」
「嫌なのですか?」
「・・・」
「どうなんですか?」

小野原はかなり威圧的な態度で私に迫った。

「確かに絵を濡らしてしまったのは全て私の責任です。それは認めますし謝ります。だからといってヌードにならなければならないなんて・・・私、困ります・・・。」
「そんな都合の良い話はないんじゃないですか?奥さん、絵を濡らしたことを本心からすまないと思っておられるなら、態度で示してくれてもいいんじゃないですか?僕は奥さんにエッチなことをするつもりなど毛頭ありません。ダメになってしまった絵の代わりに1枚描きたいだけなんですよ。きれいな奥さんをモデルにして・・・。」

『きれい』と言われて、気分を害する女性はいない。
私は小野原の一言に少し心を動かされてしまった。

「そこまでおっしゃるなら・・・」
「えっ?いいのですか!?」
「はい、仕方ありません。絵を濡らしたのは私ですし、その償いはしなければなりませんから・・・」

結局、その日は水漏れの後始末に終始し、明日の午前10時に再度小野原の部屋を訪問することになった。

翌日、出勤の夫を見送り、洗濯を済ませた私は、定刻に上階へと向かった。
近所の目も考えて衣服は普段着のカットソーとデニムスカートを着用することにした。
小野原の部屋は1階上ということもあって、私はエレベーターを使わず階段を利用することにした。
階段を登る脚が緊張のせいか心なしか震えている。



第4話


まさかこぼし水から美大生の描いた絵に被害を及ぼし、その代償としてヌードモデルを引き受けなければならなくなるとは・・・。
でも仕方がない。自分が撒いた種は、自分で摘み取る以外に方法はないのだから。
自分にそう言い聞かせてはみるのだが、まもなく、いまだかつて経験のないヌードモデルにならないといけないと思うと、胸の動悸が激しく高まった。

(コンコン・・・)

「下の山川です・・・。」
「ドア開いてるから、どうぞ入って。」

昨日とは全く違う、なれなれしい口調が返って来た。
私はいささか不快に感じたが、感情は抑えて訪問客らしく装った。

「失礼します。」
「奥へいるから入ってきて。」
脱いだサンダルを揃えて玄関を上がった。
廊下を少し進むと昨日来たリビングが視野に入ったが、そこには小野原の姿はなかった。
リビングを覗く込んだ私の背中に少し掠れた声が突き刺さってきた。

「こっちだよ。」

振向くと小野原は向かい側の部屋にいてこっちを見ていた。
至って無表情である。
部屋にはあらゆるものが散乱しお世辞にも美しいとはいえなかったが、部屋全体をよくあるアイボリーではなく純白で統一しているところが、さすがに美大生らしさをうかがわせた。

「よく来たね。」
「はい・・・」

(だってあなたが半強制的に来るように言ったんだもの。)と心の中ではつぶやいたが口には出さなかった。

「じゃあ、早速服を脱いでくれるかなあ。」
「・・・・・・」

戸惑いを隠しきれない私がもじもじしていると、

「どうしたの?『絵の償いをしたい』と言ったのは奥さんの方じゃなかったの?」
「確かにそうですけど・・・」
「なんだよ。今になって怖気づいたのか?」
「そうじゃないですけど・・・。絶対に変なことしないって約束してくれますか?」
「何だよ。俺を信用できないってわけか?」

小野原は不機嫌な表情に変わり、少し語気を荒げた。

「いいえ。そんなことはないです。信用しています。」
「じゃあ、早く脱いでモデルになってくれよ。」

一度は覚悟を決めて家を出てきたはずなのに、小野原を前にして急にためらいが生じてしまったようだ。
いくら自分が原因者だとは言っても、どうして裸にならなければならないのかと・・・。
でもここまで着て、もう後戻りが困難であることを十分に理解していた。

私はカットソーに手をかけた。
小野原はじっとこちらを見ている。

「すみませんが、しばらく目を逸らしてくれませんか。」
「えっ?ヌードモデルになるというのに、どうして?」
「脱ぐところを見られるのってすごく恥ずかしいんです・・・」
「そういうものなの?うん、分かった・・・」

小野原は意外にも素直に私の願い出を聞き入れ、顔を逆方向に向けてくれた。

静かな部屋に衣擦れ(きぬずれ)の音だけを残し、衣類はゆっくりと身体から離れていった。
ブラジャーが床に落ちたあと少し動きが止まったが、覚悟を決めた私は白いショーツに指をかけた。



第5話


小さな布切れは腰から膝へとすべり落ちて、やがて足首に絡みついた。
ショーツをそっと足首から取り除く。
結婚後初めて夫以外の男性の前で全裸になった私は、顔が火照り膝ががくがくと震えた。

「これでいいですか・・・?」

消え入りそうな小さな声で尋ねてみた。
小野原はこちらを向いた。
私を見た瞬間、驚いたような表情を見せたが、直ぐに平静をつくろったように感じられた。

「それでいいですよ。じゃあ、そこに置いてある白い椅子に座ってくれますか?少し身体を斜めにして。」

彼の中ではすでに構図が出来上がっているのであろう。
直ぐにポーズの指示が飛んできた。
小野原の指図どおりポーズをとろうとしたが、モデル経験などない私は、緊張も手伝ってかなり身体が強張っていた。
もじもじとさせながら、やっとのことで小野原の注文のポーズをとった。

小野原はデッサンを描き始めた。

「奥さん、そんなに硬くならなくていいですよ。もっとリラックスして。」
「はい・・・。」

そういわれても、簡単に緊張は解けるものではない。
私は少し気を逸らそうと思い、姿勢はそのままにして、目だけで部屋中を見回した。
さすがに美大生らしく、部屋内はアトリエっぽくしつらえている。
壁の色にしても普通ならアイボリーに仕上げるところが、純白のペンキを使っている点などはその典型である。
小物などの装飾品も高価なものではなさそうだが、ひとつひとつにこだわりが感じられた。

私の視線が他に逸れていることを知った小野原は、にっこりと笑って語りかけてきた。

「俺の部屋、そんなに珍しいですか?」
「は・・・はい・・・さすがに画家さんらしいなあと思って・・・」
「まだ画家じゃないですよ。その卵かも知れないけど。」
「あ、そうですよね。まだ学生さんですものね。」
「奥さん、歳はいくつ?」
「・・・27です・・・」
「俺より6つ上か。でももっと若く見えるね。」
「そうですか。ありがとうございます・・・」
「結婚して何年目なの?」
「2年目です。」
「まだ2年目なんだ。新婚みたいなものだね。」
「いえ、もうそんなことは・・・」

小野原はテンポよく次々に質問してきた。

「旦那さんとは毎晩なの?」
「ええっ・・・!?」

突然の思いも寄らない質問に、私はどう返事をすればよいか戸惑ってしまった。
実のところはその頃、主人は残業続きで帰宅が遅く、週末の夜に一度あれば良いほうだった。
しかし、そんな私的なことを素直に答える気にもなれなかったので、適当にはぐらかした。

「そんなことないです・・・」

曖昧な答えが余計に相手を刺激したのか、小野原はしつこく尋ねてきた。

「うっそ〜!結婚して2年目だったら、毎晩甘えてるんじゃないの?」
「そんなこと決して・・・」
「ほんと〜?俺が奥さんの旦那だったら、絶対に放っておかないけどなあ。」
「・・・・・・」



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