大人の童話/ありさ 天狗の赤ふん




フィクション
(『天狗の隠れみの』がモチーフになっています)




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第一話


 昔々、鞍馬山のふもとの猫耳村に、ありさと言う、とても美しい娘がおりました。
 小さな頃から頭のよい娘でしたが、たいそうおてんばで、いつもいたずらをしては村人たちを驚かせていました。
 ありさは、村人たちがもっとびっくりするようないたずらはないものかと考えました。

「にゃあ〜ん☆★☆何かうまい知恵はないかな〜?☆★☆」

 考えているうちに、ふと天狗の赤ふんのことを思い出しました。
 天狗は村はずれの丘に時々やってくるといいます。
 ありさはふとあることを思いつきました。

 ありさはごはんを焚くときに使う火吹き竹を持って丘を登りました。
 丘のてっぺんに着くと、大きな声でしゃべりはじめました。

「にゃあ〜☆★☆これはいい眺めだわ〜☆★☆京や浪花が手にとるように見えるよ〜☆★☆」

 そういいながら、火吹き竹をまるで望遠鏡のようにして覗いていると、杉の木のそばから声がしました。

「ねこみみ〜、ねこみみ〜」
「にゃ?☆★☆」
「ねこみみ〜、ねこみみ〜」
「プンプン!私、猫耳という名前じゃないもの☆★☆ありさなのおおおおお〜〜〜☆★☆」
「おお、ありさじゃったか。すまぬすまぬ。」
「にゃん☆★☆」
「ところで、ありさ。覗いているのは、かまどの火を吹き起こす時に使う火吹き竹じゃろうが。」

 声はしますが姿は見えません。
 ありさのそばまで天狗は来ているはずなのに・・・。

「これは火吹き竹に似た『干里鏡』なの〜☆★☆きゃっ!京の都の美しい姫が舞っているにゃあ〜ん!☆★☆きれいな着物を着ているにゃ〜ん!☆★☆あんな着物一度着てみたいものだにゃあ〜ん!☆★☆」
「京の都の姫だと?ありさ、ちょっとでよいから、わしにも覗かせてくれんか。」

 天狗の声がもっと近くで聞こえてきました。
 ありさのそばまで来ているようです。
「にゃう〜ん、でもだめなの〜☆★☆この千里鏡はおうちの宝物なの〜☆★☆持って逃げられたらお父ちゃんに叱られるものおおお〜☆★☆」

 その瞬間、目の前に大きな天狗が姿を現しました。

「わしを信用しろ。逃げたりはせん。だけどそんなに心配なら、その間、わしの赤ふんを預けておこう。」
「にゃぁ〜☆★☆それじゃ、ちょっとだけ貸してあげるぅ〜☆★☆」

 ありさはすばやく着物を脱いで赤ふんを締めると、さっさと丘を駆け下りて行きました。
 天狗は火吹き竹を目にあててみましたが、中はまっ暗で何もうつりません。

「しまった!だまされた!」

 天狗が気がついた時には、ありさの姿は影も形もありませんでした。


第二話


 ありさは家に帰ると、すぐに赤ふんを洗濯しはじめました。天狗とはいっても他人の下穿きをそのままつけるのは、ちょっと抵抗があったようです。

「うきうき〜☆★☆この赤ふんをしめると姿が見えなくなるんだもんねえ〜☆★☆どこへ行こうかにゃ〜☆★☆」

 ありさはきれいに洗って天干した赤ふんを、さっそく締めてみることにしました。でもふんどしを締めるのは初めてなので、なかなかうまく締めれません。何度か試みるうちにようやくちゃんと締めることができました。

「な〜んか窮屈な感じぃ〜☆★☆それにちょっと歩いただけでも割れ目に食込んでくるぅ〜☆★☆」

 元々ふんどしは男が締めるもの。女性が締めるといやがおうでも大事な場所に食込んでくるのでした。
 それでも、鏡の前に立ったありさは、自分の姿が見えなくなったことにすっかり気をよくして、いそいそと出掛けていきました。

 ありさが最初に訪れたのは、幼なじみの英吉の庭でした。英吉はにわとりに餌を与えている最中でした。ありさはざるをとりあげ餌を撒きました。
 突然、ざるが宙に浮き、餌がひとりでに撒かれたので、英吉はびっくり。慌てふためき、家の中へ駆け込んで行きました。

「おっとう〜、おっとう〜、大変だ!ざるが浮いて餌が勝手に!」

 父親が出てきて、大笑いしました。

「英吉、昼間から寝ぼけてるんじゃないよ。いくらにわとりの世話をさぼって遊びに行きたいからといって、そんな下手な嘘はつくもんじゃないよ。」
「嘘じゃないって〜!」

 父親が縁側に出てきたとき、ありさはざるを地面に置いて、木陰に隠れていました。

「ほ〜ら、ざるはちゃんとあるじゃないか。」
「でも、でも、さっきは浮いてたんだよ〜!」
「さあさあ、さぼってないで、仕事、仕事〜」

 ありさは懸命に笑いをこらえながら、英吉の家から立ち去りました。


 ありさが次に訪れたのは、庄屋さんの屋敷でした。庄屋さんとは顔見知りでしたが、屋敷に入るのは初めてのことでした。

「うわぁ〜立派なおうちだにゃぁ〜☆★☆ありさのおうちより十倍以上広いにゃぁ〜☆★☆」

 すると離れの方から、女性の泣くような声が聞こえてくるではありませんか。

「あんあん・・・」

「にゃっ??☆★☆」

 ありさは声のする方へ近づき、戸の隙間からこっそりと中を覗いてみました。

「にゃ〜〜〜っ!!!!!☆★☆」

 なんと驚いたことに、庄屋さんと若い女性が素っ裸で乳繰り合っているではありませんか。

「ぎょぇ〜〜〜!!☆★☆どえっ〜〜〜!!☆★☆」

 ありさは初めて見る男女のまぐわいに、いっしゅん、卒倒しそうになりました。
 よく見ると女性はまだありさと同じ年頃の娘で、どうも庄屋さんところの使用人のようです。

「だんなさまぁ・・・それだけは、それだけは・・・どうかお許しください・・・あああっ・・・あああっ・・・いやぁ〜・・・」

 すごいところに出くわしてしまったありさは大あわて。ただただ驚くばかりでした。
すでに十六になったとはいっても、まだ男性とむつごとを交わしたことがありません。もっとそばで見たくなったありさは、しずかに戸を開けて二、三歩進んでみました。幸い庄屋さんたちは気がつかないようです。

 そばまで近寄ったありさはさらに驚きました。庄屋さんのおなかの下に、なにやら元気のよいキノコのようなものが生えているではありませんか


第三話


(きゃぁ〜!☆★☆庄屋さんに大きなキノコが生えているぅ〜!☆★☆)

 そればかりではありません。庄屋さんは女性の足を開かせ、元気のよいキノコを挿し込み出し入れしているではありませんか。女性はつらそうにうめき声をあげながら、庄屋さんに許しを乞うている様子でした。

(にゃぁ〜・・・☆★☆かわいそうに・・・あの子、いじめられているぅ・・・☆★☆)

 ありさはキョロキョロと辺りを見回しました。

(何か手頃な棒はないかなにゃあ〜☆★☆)

 ありさは部屋の隅に転がっている一本の棒切れを見つけました。

(うん、これでいいにゃあ☆★☆)

 棒切れを持って庄屋さんに近づきました。庄屋さんは腰を一生懸命動かしています。ありさは棒切れを振り上げ、庄屋さんの尻を思い切り叩きました。

「ぎゃっ!!」

 庄屋さんは叫び声をあげて後にひっくり返ってしまいました。

「いててて・・・おい!今わしの尻を足で蹴ったろうが!?」

 庄屋さんは女性が逃れたくて蹴ったものと思い込み、女性をとがめました。

「いいえ、私は蹴ってません。」
「しかしこの部屋にいるのはわしとおまえだけだ。嘘をつくとためにならんぞ!」

 庄屋さんはなおも女性を叱りつけ乱暴しようとしました。その時もう一度、ありさが棒切れを振り下ろしました。

「ぎゃっ!!」

 今度はその女性が自分と離れて向かい側に座っているのを見ていた庄屋さんは、びっくり仰天しました。すぐに後を振り返ってみましたが誰もいません。ただ、棒切れが宙に浮いているのを見て腰を抜かしてしまいました。

「うわ〜〜〜っ!おばけ〜〜〜っ!!」

 ありさはしてやったりと、くすくす笑いながら庄屋さんの屋敷を出て行きました。


 家への帰り道、ありさは身体の妙な変化にふと気づきました。
「ん・・・?☆★☆」

しっかりと締めこんだ赤ふんの内側がじっとりと濡れていました。 「いつ漏らしたんだろうにゃ・・・べとべとして気持ち悪いよぉ〜☆★☆」

 ありさはすっかりお漏らしをしたものと思い込み、顔を赤らめました。しかし濡れているのはお漏らしのせいではありませんでした。さきほど庄屋さんたちのすごいところを見た時から、濡れはじめていたのでした。だけど、まだうぶなありさはそんなことはまだ何も知りませんでした。

「それにしても、この赤ふん、濡れてしまって気持ちは悪いけど、すごく便利だにゃ〜ん☆★☆」
 赤ふんさえあれば、いつでもどこでも姿を隠せるのでいたずらができます。


 次の朝のことでした。
 今日もどこかへいたずらをしに行こうととび起きたありさは、物干しざおに吊っておいた赤ふんがどこにもないことに気がつきました。

「おっ、お母ちゃぁぁぁぁん!☆★☆さおに干しておいた赤ふんを知らないかあ?☆★☆」
「ああ、あの赤ふんなら、今朝がた、かまどで燃やしたわ。」
「な、なんでぇ〜〜〜!☆★☆」
「だって、うちのお父ちゃんのものでもないし、おまえは女だからふんどし締めないし、どこかの悪がきのいたずらだと思ったんだもの。あの赤ふん、なんでおまえがいるんだい?」

 のぞきこんでみると、赤ふんはすっかり燃えつきていました。


第四話(最終回)


 ありさは「あれはふんどしのように見えるが、実はふんどしの形をしたお守りだった。」などと適当な嘘を並べながら、灰をかき集めました。
 すると、驚いたことに、灰のついた手の指が、見えなくなりました。

「にゃっ☆★☆どうやら、赤ふんの効果は、灰になってもあるみたい〜☆★☆わ〜い!☆★☆」

 ありさはさっそく、着物を脱いで身体に塗ってみました。

「ちょっと恥ずかしいけど、見えなくなるからいいもんにゃぁ〜☆★☆」

 塗ったところから、しだいに透明になっていきます。身体中塗り終えると、ありさはすっかり見えなくなっていました。

「よし、これで大丈夫だにゃぁ〜☆★☆さっそくとなりの町へ遊びに行こう☆★☆」

 町はさすがににぎやかで、たくさんのお店が並んでいます。村で育ったありさにとってはどれも珍しいお店ばかりです。ふと、団子を売っているお店がありさの目にとまりました。

「にゃっ、おいしそうだなぁ〜☆★☆おなかがすいて来たし☆★☆」

 ありさは店の軒先に並べてある団子を一串つまんで食べました。団子が宙に浮いて消えていくのを見ていた店のあるじは、驚きのあまり腰を抜かしてしまいました。

「次はどこに行こうかなあ〜☆★☆」

 しばらく歩くと、昼間から酒を飲ませている店がありました。

「ふにゅ?お酒飲んでるぅ〜☆★☆お父ちゃんもお酒好きだし、おとなはどうしてお酒を飲むんだろうにゃぁ〜?☆★☆そんなにおいしいものなのかにゃぁ〜?☆★☆」

 ありさはさっそく、お客の横に座ると、徳利の酒を横取りしました。
 それを見たお客は「わっ」と悲鳴をあげました。

「ひぃ〜!みっ、見ろ!めっ、目玉が、わしの酒を飲んでるぞ!」

 赤ふんの灰は、目玉にだけは塗ってなかったのです。

「ば、化け物め、これでもくらえ!」

 お客は、そばにあった水をありさにかけました。
 するとどうでしょう。
 身体に塗った灰がみるみる落ちて、すっ裸のありさが姿を現しました。

「な、なんとっ!裸の小娘が現れやがったぞ〜!」
「きゃぁ〜〜〜!!☆★☆恥ずかしぃぃぃ〜〜〜!!☆★☆」
「おまえ、もしかしてキツネつきの化け物か〜!?それとも猫化けか〜〜〜!?こらしめてやるからじっとしてろ〜〜〜!」
「私はキツネつきでも猫化けでもないよ〜!☆★☆」
「身体を隅から隅まで調べれば分かることだ!それっ!」
「きゃぁ〜〜〜〜〜〜!!☆★☆ごめんなさい〜〜〜〜〜ゆるして〜〜〜〜〜〜☆★☆」

 捕まる前に、危うくありさはお店から逃げ出しました。
 町の中をかき分けるように裸で走って行くありさの顔は、恥ずかしさのあまり真っ赤になり、それを見ていた人々は「まえるで天狗のようだ。」と口々に言いました。

 家に帰ったあとも、ありさの赤ら顔はずっと取れず、生涯赤い顔のままで過ごしたと言うことです。


おしまい





ありさ




連載小説(自作)

土間

玄関