ファンタジー官能長編/ アリサ 蒼い伝説



フィクション







第1話


 それは遠い昔の物語。
 半猫族と人間とが共存していた時代のことであった。
 半猫族の人々が暮らすド・シャー村は、一見平和そうに見えたが、大きな悩みを抱えていた。
 2年続きで飢饉が続き、人々は飢えに苦しんでいた。
 豊作を願う人々は、山の神に祈り続けた。
 わずかな穀物は飢えを凌ぐため食用にしたいところではあったが、神への捧げ物を優先した。

 村長をはじめとする長老たちは、山の神の前にひれ伏しひたすら祈った。

「どうか私どもに豊かな作物を授けてくださいませ。このままでは村の者たちは皆、飢え死にしてしまいます。なにとぞ、なにとぞ、願いをお聞きくださいませ」

 すると、祈りが通じたのであろうか、どこからともなく響くような声が聞こえて来た。
 山の陰から聞こえて来るが姿は見えない。
 明らかに半猫族や人間の声ではない。
 声の主は村人たちに告げた。

「民よ。私は山の神だ。天の神は雨も降らさず、そなたたちに冷たい仕打ちをしておるようだな。さぞや辛かろう。山の神の私が何とかしてやろう。だが、ひとつだけ条件がある」
「はは〜あ、山の神様、何なりとお申しつけくださいませ。飢えに苦しむ私どもに作物を授けてくださるならばおっしゃることは何でもお聞きします。どうぞ我らの願いをお聞きくださいませ」
「よし、判った。何でも聞くと言うのだな。では、申す。村で最も美しい娘を私に捧げよ。豚や鳥等の家畜どもはそなた達の生きる糧であろう。だからそれらはいらぬ。娘1人ならば困らぬだろう」

 村長をはじめとした村人たちの顔が見る見るうちに真っ青に変わっていった。

「や、山の神様、いくら何でもそれは無茶と言うもの。それだけは、それだけはお許しください。なにとぞ、なにとぞ・・・」

 村長たちは地面に頭をつけて山の神に懇願した。

「村長。そなたは先ほど、何でも言うことを聞くと言ったな?あれは嘘か?ならば作物は諦めよ。飢えて死ぬるが良い。私はもう帰る」
「あっ、あっ、お待ちくださいまし。山の神様〜!どうぞお待ちください!さ、捧げます、捧げます。村一番の美しい娘を山の神様に捧げますので、どうぞ我らの願いをお聞きくださいませ。なにとぞ・・・」
「よし判った。ならば、来月の月の満ちる夜に娘を捧げよ。よいな」

 山の神はそう告げると、いずこともなく消えてしまった。

 村長の返答に周囲の人々が血相を変えて抗議した。



第2話


「村長、あんな約束をして。それはいくら何でも酷すぎます。村の娘を捧げると言うことはどういう意味かご存知なのですか」
「そう言うてくれるな。私も辛いのじゃ。1人の娘を捧げることで村の民が救われるのじゃ・・・許してくれい・・・」

 村長は苦渋に満ちた表情で、廻りの男たちに陳謝した。
 他に策もなく、男たちは村長の言葉に従わざるを得ない状況であった。

 その後、生け贄に捧げる娘は、協議を重ねたすえ、アリサという今年19才になる娘に決まった。
 誰もがその並外れた器量を認めざるを得ないほどとても美しい娘であった。
 大きな黒い瞳を持ち、すらりとスタイルがよく、笑えば笑顔が愛くるしく、気立てのやさしいとてもよくできた娘であった。
 村長たちはアリサの両親に頭を下げ、許しを願った。
 両親は何故自分たちの娘に白羽の矢が当たったのかと悲嘆に暮れ、母親に至っては悲しみのあまり病床に伏す始末であった。
 だが、悩みぬいた挙句、村のためならやむを得ないと、断腸の思いで泣く泣く村長の頼みに同意したのであった。
 アリサにも事情が説明された。
 アリサは当然、嘆き悲しみ外出もしないで3日3晩泣き通した。
 まだ19才という若さで生贄にならなければならない己の運命を呪わしく思った。
 しかし自分が拒否すれば、代わりに他の娘が生贄にならなければならない。
 心やさしいアリサはそれが堪らなく辛かった。
 アリサは両親にいった。

「お父さん、お母さん、今まで育ててくれてありがとう。もっと生きていたかったけど、村のため、皆のためだから私いいよ。生け贄になるよ」

 かくして、山の神への生け贄はアリサに決定した。

 数日後、そんな薄幸のアリサに追い討ちを掛けるような惨い出来事が起こった。
 折りからの凶作続きで生活に困り果てたアリサの両親は、行商に出て僅かな稼ぎを生計にあてていた。
 その日も同じように出掛け、家にはアリサ1人がいた。
 ありさも一時は両親と同様に行商を手伝っていたが、生け贄と決まってからというもの、放心状態の彼女を気遣い、ずっと休ませていたのであった。
 アリサはその日も鬱とした表情で椅子に腰掛けうつむいていた。

 ちょうどその頃、2人の男が勝手口の鍵をこじ開けていた。
 男の名はピピノフとイリノフと言った。
 彼らは忍び込んだ家の金品を奪うだけでなく、ついでに居合わせた女性を犯すと言う性質の悪い男たちであった。







第3話


 彼らは人間の住む村ばかりではなく、半猫族の村にも忍び込み悪行を働いていた。
 兄のピピノフは赤鼻で醜い顔の男であったため、いまだかつて女性を正攻法で口説き成功した試しが無かった。
 噂によると66回振られ続けた、という不名誉な記録まであるようだ。
 そのためいつしか心は卑屈になり、非合法な手段で女性を犯すことに生き甲斐を感じるようになってしまった。
 弟のイリノフは顔は兄よりもまだマシではあったが、生まれつきの怠け者であったことから仕事も3日と続かず、気がつけば兄の泥棒業を手助けするに至っていた。  また彼らの手口は極めて巧妙で、アリサの両親が何時ごろ出掛けるか、あらかじめ調べていた。
 両親が働きに出掛けたのを確認し、勝手口から忍び込んだピピノフたちは音を立てないように忍び足で歩を進めた。
 食卓には終始沈んだ表情のアリサが1人座っていた。
 外部からの侵入には全く気づいていない。

 ピピノフたちはアリサの背後をゆっくりと進み、一気に襲い掛かった。

「きゃあ〜!」

 不意を食らったアリサは気が動転し大声を張り上げようとしたが、そこは彼らも手抜かりがなく、手慣れた手つきでタオルを廻しアリサの口を封じてしまった。
 両手をばたつかせ、逃れようとするアリサを男たちは床に押さえつけた。
 アリサも手を振回し懸命に防戦する。
 その時、爪が偶然にもピピノフの顔を捉えた。

「あ、痛!くそ〜、このネコ娘、ゆ、許さんぞ!」

 ピピノフは、ナイフをアリサの首に突きつけ威嚇した。

「おい、ネコ娘。お前は山の神様の生け贄になるらしいな〜。こんな可愛い顔をしてもったいない話だぜ。冥土の土産に良い思いをさせてやるぜ。へっへっへ」
「い、嫌よ!あなた達なんかに変なことされるくらいなら死んだ方がマシだわ!」
「ふん、よく言うよ。お前が今死んだら別のムスメが生け贄にならないといけないんだぜ。ふっ、いいのかな〜」

 さすがのアリサもその言葉には思わず怯んでしまった。
 自分がもし今ここで殺されたら、生け贄には別の娘を立てなければならない。
 今、ここで殺される訳にはいかない。
 責任感の強いアリサはそれだけは避けたいと思った。

「ひ、卑怯な・・・」
「ふんっ、早くやっちまおうぜ、兄貴!」

 イリノフは急っついた。
 再び襲い掛かり洋服を剥ぎ取ろうとするイリノフに、アリサはまたしても手を振り回し抵抗した。
 尖った爪が今度はイリノフの顔面を捉えた。

(ピシッ!)



第4話


「いてっ!引っ掻きやがった!くそ〜、このネコ娘っ、もう許さねえぞ〜!」

 イリノフはアリサに馬乗りになり、手荒に衣服を引裂き始めた。

「にゃぁ〜!にゃぁ〜!やめてぇ〜!」

 ビリビリに引き裂かれた衣服から小さな黒いパンティが露出した。
 イリノフの手がパンティに伸びる。

「にゃぁ〜!やめてっ!」

 アリサはパンティを手で押さえ脱がされまいと爪で防戦したが、女性を脱がすことに慣れたイリノフにはとても敵わなかった。
 ついには、黒いパンティは引き裂かれてしまい、最も恥かしい箇所がピピノフたちの目に晒されてしまった。

「デヘヘ、へっ、ニャンコちゃん、もう逃げられねえんだぜ、観念しなよ。大人しくしてたら痛い目には遭わねえからよ。さあ、しっかりと脚を広げな」
「にゃぁ〜〜〜っ!」

 イリノフがアリサの後ろ側に回り込み、胸の膨らみをむぎゅっと掴んだ。
 乳房を強く絞るように揉み始めたイリノフ。

「にゃあ!いたいっ!や、やめてぇ〜!」
「おい、兄貴。俺が後ろから押さえておいてやるから、一気にやっちまいな!」

 イリノフはそういって、幼児におしっこをさせるように、アリサを開脚させてしまった。

「にゃあ〜〜!いやあ〜〜!」

 ピピノフが舌なめずりをしながら、アリサに言った。

「デヘヘ、可愛い割れ目ちゃんが丸見えだぜ。へ〜、指が入るかどうか分からないぐらい狭そうだな〜。耳があるし、尻尾もあるし、体毛も生えているけど、ここは人間の女とまったく変わんねえな〜。さあ、ほんじゃ行くぜ、覚悟しな〜」

 ピピノフは、指1本触れることもなく、一気に狭い亀裂に己のいきり立った肉棒を突き立てた。
 身を裂かれるような痛みがアリサを襲う。

「にゃ〜ご〜〜〜!ぎゃ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!」

 アリサは狂ったように唯一の武器である『爪』で抵抗しようとするが、後ろからイリノフががっちりとガードして動けなかった。

「ふ〜う、何と狭いんだ!この女っ!」

 ピピノフは挿入しにくいことに、口では不満を漏らしてはいるが、顔は満更でもなさそうだ。
 ピピノフが「うん、うん」とうめき声を上げるたびに、わずかずつではあるが、肉棒が亀裂を割り裂いていった。

「フンギャア!ギャア〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!」

 アリサは涙ながらに、悪鬼たちの卑劣な暴行に歯を食いしばって耐えた。
 哀れアリサ、狭い亀裂からは真っ赤な潮を滲ませていた。
 それでも容赦なく、肉棒を送り続けるピピノフ。
 意気込んでいた割には早く果て、すぐさまイリノフと交代した。







第5話


 およそ1時間に及んだ惨劇の幕は閉じられた。
 彼らはアリサへの陵辱を終えたあと、本業に目覚めたかのように家の中を物色し始めた。
 ところがめぼしい金品も見つからず、不満の言葉を吐き捨てた。

「ケッ!しけた家だぜ。何もねえや!さあ、イリノフ、誰か来ねえうちに早くずらかろうぜ!」

 二人の男はアリサに眼もくれずそそくさと退散していった。
 床に伏せたままアリサは動かない。
 瞳には深い悲しみが満ち溢れ、止めどもなく涙が零れ落ちた。


 日が暮れて両親が帰宅したが、アリサは今日の不幸な出来事には一切触れなかった。

(これ以上お父さんやお母さんを悲しませたくない。伏せておこう)

 夜が更けて、アリサは村の外れにある丘に登った。
 夜空を見上げ、さんざめく星たちに呟いた。

(どうして?どうして、こんなに悲しいことばかり起こるの?逝く前に少しだけでいいから幸せをください・・・)

 アリサは泣いた。
 堪えても堪えても、涙は後から後から溢れ出た。

(いくらくよくよしたって運命って変わらないんだ。私は20日後、生け贄として捧げられるんだ。残された僅かな日々をせめて明るく過ごそう)

 そう思い返し、家に戻ろうとしたとき、どこからともなく美しい音色が聞こえてきた。

(誰だろう。あの美しい旋律を奏でているのは)

 ありさは音のする方向に歩いて行った。
 するとひとりの旅人風の男がリュートを弾いていた。  アリサは聴き入った。

(にゃ〜お〜、どうしてだろう。胸の痛みが消えて行くような感じがする・・・)

 アリサの存在に気づいたリュートの男は弾くのをやめて声を掛けてきた。

「こんばんわ。僕は吟遊詩人のシャイローって言うんだ。僕の奏でる曲を聴いてくれてありがとう。音楽が好きなんだね」
「こんばんにゃあ。ええ、胸の痞えがす〜っと消えていくような気がしたの」
「そうなんだ。それじゃもっと弾いてあげようか。でもどうしたの?何か悲しいことがあったんだね?」
「う、うん・・・」
「もし良ければ僕に話して」

 アリサはシャイローの言葉が胸に沁みた。
 今、出会ったばかりなのに、親にも話せないようなことも話せるような気がした。



第6話


 アリサは最近起こった悲しい出来事をシャイローに語った。
 20日後に生け贄に捧げられること。今日暴漢に襲われたこと。
 彼女の話に耳を傾けていたシャイローは、聞き終わったあと深いため息をついた。

「そうなんだ・・・かわいそうに・・・」

 シャイローはポツリとつぶやき、我が事のように悲しそうな表情になった。
 アリサは語り終えるとしくしくと泣き出した。
 胸に詰まっいたものが、堰を切って溢れ出たような気がした。

 シャイローは再びリュートを手に取り、歌い始めた。
 その歌声と音色に、アリサは胸の深い傷が癒されていくような気がした。

♪青きオーブ

それは奇跡の勾玉

ド・シャーの洞窟

奥深くに眠らん

汚れなき心を持ちし者

その願い叶わん♪

 アリサはシャイローの歌を、瞳を閉じ、心の扉を開いて聴き入った。
 歌が終わったあと、アリサが尋ねた。

「にゃお〜、ありがとう、私のために歌ってくれて。でも、その歌は何?ド・シャーの洞窟ってこの近くなんだけど」
「やはりそうなんだね。この歌は古くから歌い継がれてきた歌。僕はこの歌を旅先で聞き、それ以来、ド・シャーの洞窟をずっと捜していたんだ」
「でも青いオーブってなんだろう?あなたはそれを探しているのね?」
「うん、そうなんだ。あのぅ・・・もし良かったら、明日の朝、その洞窟に案内してくれないかな?」
「うん、いいよ」
「ありがとう。助かるよ。ところで君は何ていう名前なの?僕はシャイローって言うんだ」
「私はアリサ」
「アリサか、いい名前だね」
「にゃんにゃん、嬉しいな〜。名前を誉めてもらったの初めてなの〜」


 翌朝、ふたりは洞窟に向かった。
 洞窟は村の外れにあるが、昔から祟りがあると言い伝えられ、近づく者は1人としていなかった。
 アリサは両親に告げずに家を出た。
 話すと止められるのが分かっている。
 今までのアリサなら洞窟へは恐ろしくてとても近づかなかっただろう。
 だが今は違う。
 生け贄に捧げられると決まってからと言うもの、恐いものなど何もない。
 それに少しでもシャイローの役に立ちたい。
 それが深い悲しみを癒してくれた人へのわずかな恩返し。
 アリサは突然現れた吟遊詩人シャイローに惹かれる何かを感じていたが、それがほのかな恋心であることをまだ気づいていなかった。

 二人はクネクネと曲がった林道をひたすら歩き、やがて洞窟へと辿り着いた。
 アリサは持参した水筒を傾けながらシャイローにつぶやいた。

「ここがド・シャーの洞窟だよ」



つづく













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