ありさ USJに行こう♪


フィクション




ありさ






「Shyさあ〜ん!☆★☆来月、大阪にいくよ〜〜〜☆★☆ともだちとUSJにいくのでいっしょにご飯しようよう〜〜〜★☆★」

 ついにネットフレンドの野々宮ありさ(21才)が大阪にやって来る。
 メールを始めて2年余り。ありさと1度も会わなかったのは不思議なくらいだ。
 この2年間、何度も何度も会いたいと伝えて来たありさ。
 エッチに関する相談から始まったメールも、次第にエスカレートして、ついに実践したいとまで言ってきた。
 だがそんな彼女だから余計に会わないほうが良いと思っていた。
 頑なまでに会うことを拒んできたのは、ありさと会えば食事だけでは済まず、男と女の関係に発展してしまうだろうという予感があったからだ。
 雑誌のモデルをするだけあって美貌は文句ないし、性格もよく人間的にも魅力的で、それに素直で人懐っこいと来ているから、もしも積極的に来られたら、おそらく断り切れないだろうと思っていた。
 恋人シズカとありさとの「泥沼の三角関係」なんて、ちょっと考えただけでも背筋が寒くなる。
 友達として会うならいいじゃないか、という想いもあるにはあったが、結局安全のために今日まで頑なに断ってきた。

 ところが事情は一変した。
 ありさは友達と今年の春オープンした大阪のUSJに来るという。
 友達といっしょに来るのだから、彼女の行動も制約されるだろうし、無茶なことは言ってこないだろう・・・
 という思いもあり、結局ありさの熱意に負け会うことを約束してしまった。


 東京を早朝発ったありさは昼前に新大阪駅に着くという。
 その後、大阪駅を経由して西九条駅からゆめ咲線でUSJに行くという行程と聞いていたので、待合わせは大阪駅近辺が良いと考えた。
 大阪に詳しくないありさとの待合わせは、できるだけ判りやすい場所がいい。
 駅前のヒ○トンホテル2階のティーラウンジで待合わせをすることにした。

 午前11時に僕は約束の場所に行った。
 ありさの姿はまだ見えない。
 ホットコーヒーを注文し、煙草を1本くゆらした。
 ありさはどんな子だろうか?写真どおりなんだろうか。
 頻繁に送られてくる写真でおおよその姿は分かっている。
 だけど、いくら写真の彼女を見て、ケータイで声を聞いていると言っても、実物はまだ知らない。

 午前11時5分。ついにありさが現れた。
 画像で何度も見た姿が現実となってこちらに向かってきた。






 ひえ〜!やっぱり予想にたがわず派手な服装だ。
 僕は窓辺の席に座っていた。
 ありさが僕の所に来る途中、やはり目立つせいか、通路脇に座っていた初老のカップルがありさを凝視していた。
 見栄えのする外見に加え、派手ないでたちに余計に目を引くのだろう。
 夫と思われる男性がいつまでもありさを見つめていたため、同伴の婦人が男性の袖を引っ張っているのが分かった。 おそらく「あまり見つめちゃ失礼よ」と叱っていたのだろう。
 ありさは肩紐なしの真っ白なチューブトップを着て、下はマイクロミニの黒いショートパンツを穿いていた。
 ぴったりフィットしたショートパンツからはみ出した脚は、その初老の男性ならずとも男性なら誰しも目が行ってしまうだろう。
 ありさは右手で大きな旅行鞄を重たそうにかかえ、左手にはサマンサタバサらしきハンドバッグを下げていた。

 ところで、ありさの友達はどうしたんだろう?
 確か友達と2人で来ると言っていたはずなのに。
 ありさが僕とランチをする間、気を利かせてどこかに消えたのかも知れない。

「にゃんにゃん〜☆Shyさあ〜〜〜ん、こんちわ〜!ちょっと遅れちゃってごめんなさい〜」

「ありさちゃん、よく来たね。はじめまして。というのも変かな?」
「ず〜っとメールしたり電話で声は聞いていたけど、会うのは初めてにゃんにゃ〜ん♪でも何か不思議な気分だにゃ〜☆☆」
「本当だね。何か奇妙な感じ。ところで何にする?」
「にゃあ〜☆アイスオーレがいいな〜☆♪」

 ネットと同様に明るくて屈託のない女の子のようだ。

「写真ではずっと知っていたから、初めて会ったという感じじゃないね。以前からずっと知っていたような感じがする」
「今、目の前にいる人がShyさんなんだあ〜♪会いたかったよう〜☆★☆」

 ありさは目を爛々と輝かせて僕を見つめてる。

「僕もだよ。本当によく来てくれたね。疲れただろう?」
「ううん?だいじょうぶだよ〜☆★☆」
「ところで友達といっしょじゃなかったの?」
「う〜ん、それがねぇ、友達、お母さんが急病で入院しちゃったらしくって来れなくなったの〜。でもありさ、どうしても来たかったから1人で来ちゃったあ〜。Shyさんに会いたかったから〜〜☆★☆」
「おお〜!そりゃ光栄だね〜!それはそうと友達気の毒だね」






「うん、急だったからね・・・だから切符のキャンセルとかバタバタしたあ〜。あ、でもね、ホテルはツインを取ってたんだけど、シングルに変更できなかったの〜。Shyさん、代わりに泊まってくれる?☆★☆」
「とっとっと〜!いやいや、それは遠慮しておくよ」
「う〜ん、やっぱりダメかあ。くすん、それは残念だにゃん。でも時間があったらUSJに付合って欲しいにゃあ〜♪」
「うん、それはいいよ。今日は特に仕事もないし」
「やった〜〜〜!嬉しいにゃん!☆★☆」


『ジュラシックパーク』を廻って『ウォーターワールド』を見終わった頃、辺りはすでに薄暗くなっていた。
 ありさは充分に満喫したのか、満足そうな表情を浮かべてる。
 土産物屋で買ってやったウッドペッカーの人形をバッグに入れず、大事そうに小脇に抱えている姿がどことなく少女っぽい。

「どう?楽しかった?全部廻りきれなくて残念だったけど、もうこんな時間だしぼちぼち帰ろうか?」
「にゃんにゃんにゃん〜!すっごく楽しかったあああ〜♪恐竜すごい迫力だった〜。ウォーターワールドもよかったにゃん☆★☆」
「はっはっは〜!ご機嫌だね?ありさちゃん。明日また楽しみだね〜」
「Shyさん・・・明日も連れてってくれるのかにゃ?☆★☆」

 突然友達が来れなくなって1人ぼっちになってしまったありさに、「明日は1人で廻ったら?」とはとても言えなかった。
 それに明日の日曜日は特に用事はない。
 月曜日に帰ってしまうありさにとっては残り1日だけだし、ここは付合ってやるべきだろう。
 僕は快くうなずいた。

「明日、いいよ」
「わ〜い!やったにゃん〜〜〜☆★☆」

 ありさは満面の笑みを浮かべた。

「おなか空いたね?ユニバーサルシティウォークで何か食べに行こうか?」
「うん、おなか空いたにゃ〜♪」
「どんなものを食べたい?」
「え〜とねえ〜、え〜と…Shyさ〜ん☆★☆」
「バカ、そんなもの食べられないよ〜。あ、そうそう、シナモンロール専門店の『シナボ○』もあるんだよ〜。でもあれはオヤツかな?」
「『シナボ○』大好き〜♪東京にもあるよ〜☆★☆。え〜と、吉祥寺、自由ヶ丘、新宿、それからお台場〜☆★☆」
「よく知っているね。相当なシナボ○マニアだね?」






「ふにゃ♪あそこのシナモンロールってさぁ、ふっくらしててシナモンのどろ〜って感じとチーズのこってり感、甘甘感激だにゃ〜♪私はキャラメル味の“ピーカンボン”が一番好きだにゃん〜☆★☆」
「じゃあ行こうか?それともフレンチかパスタ、それとも和食にする?」
「う〜ん、せっかく大阪に来たんだからやっぱりたこ焼きが食べたいにゃ〜★☆★」
「なるほど!よし、それじゃ、美味しいたこ焼き屋さんに連れてってあげるよ〜」
「やったあ〜☆★☆!」


 一路、ウメダ方面にある某たこ焼き店に向かった。

「ここのたこ焼きは自分で焼くことができるんだよ」
「へ〜、面白そう〜☆★☆でも、ありさ、うまく焼けるかにゃ?」
「うん、ヤキモチ嫉くのがうまそうだから、きっとたこ焼きも上手く焼けるよ〜」
「ナニそれ!そんなの全然褒めてないも〜ん★」
「ああ、ごめん、ごめん、そんなに膨れないでよ〜」

 注文したのはノーマルたこ焼きと、カレー入りのたこ焼き、海老入りたこ焼きの海賊焼き、それから一銭洋食を頼んだ。
 たこ焼き器に店員がメリケン粉を流し込む。

「ネギは入れていいですか?生姜、テンカスはご自由に入れてください」

 店員が一通りの説明をして、ふたりから離れていった。
 手順が判らずと惑うありさ。
 僕はありさに手順を示しながら、3枚のうち1枚の鉄板をありさに任せることにした。
 ありさは慣れない手付きでたこ焼きを返している。

「まだちょっと早いよ。もう少し固まってきた頃、ピックをこのようにするんだよ。」
「Shyさん、慣れているね☆ここへはよく来るの?」
「うん、時々ね」
「ねえねえ、関西の家庭って、一家に一台はたこ焼き器があるって聞いたけど、それってホント?☆」
「うん、だいたいあるんじゃないかな〜」
「やっぱり〜☆」

「ありさちゃん、こちらのたこ焼きはぼちぼちと焼けたよ。さあ、食べようよ〜」
「うわ〜い!いっただきま〜す☆★☆♪」


「すごく美味しかったよ〜☆★☆!Shyさん、ご馳走さま〜♪自分で焼くっていうのも楽しいにゃあ〜。残念だけどあんなお店って東京にはなさそう」
「うん、たぶんないだろうね。たこ焼き屋そのものが少ないしね」
「うう〜!それにしてもちょっと食べ過ぎだにゃ〜★★★」
「どれどれ?」






「にゃんにゃんっ!Shyさんのエッチ〜♪上手いこと言っておなかを触ってるぅ〜★」
「おなかだからいいじゃん」
「もっと下は?☆☆」
「ば〜か!ありさちゃん、梅サワー1杯でもう酔っているね?」
「ふふ、そうかもにゃん☆介抱してくれる?」
「何を言ってるんだよ。それより、もう1軒飲みに行こうか?」
「うん、行こ!☆☆☆」


 たこ焼き屋を出て、堂山町の方へ向かった。
 阪急東中通りと新御堂筋の間辺りに時々行く店がある。
 7月とは言っても陽が沈めば、夜風が吹いて少し凌ぎやすい感じがする。

「ありさちゃん、肩の出た服だからちょっと涼しいのでは?」
「ありがとう。大丈夫だよ〜☆★☆」

 ありさは、いつのまにか僕の腕に縋りつくようにして歩いていた。

「ねえ、Shyさん?☆」
「なに?」
「ありさ、とっても嬉しいわ♪☆Shyさんにやっと会えて・・・☆☆」
「僕もだよ」
「ほんと?☆」
「もちろんだとも」
「でも、Shyさん、他に好きな人いるんでしょ?★」
「・・・・・・」
「ああ、ちょっと拙いこと聞いたかにゃ?Shyさんってそういう話題には触れられたくないんだよね?ネット上でも、現実でも・・・☆」
「ありさちゃんのこと好きだよ。とても可愛いと思っているよ〜」
「え?ホント?嬉しいにゃああああ〜☆★☆!」

 僕たちはまるで旧来の恋人同士のように寄り添いながら、いつしか繁華街の闇の中に溶け込んで行った。


 いくつかの飲食店が共存するビルの地下に目的のバーがある。
 建物はコンクリートの打ちっ放しで、その無機的な設えが僕の好みだ。
 靴音を響かせて螺旋階段を降りていくと、透明ガラスの大きな窓と扉があった。
 中が見えてる。
 もうすでに何組かの飲み客で賑わっているようだ。

「いらっしゃいませ」

 カウンター10名分ととテーブルが5卓ほどの比較的小さな店だ。
 バーテンは2、30代の男性ばかりで女性のバーテンダーはいない。
 その分、客のほとんどがカップルか女性同士と、当然の様相を呈している。
 カウンターの両サイドにはすでにカップルが陣取っていたため、僕たちは中ほどに腰を掛けた。



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