床のパンティ ボーイに見られ
床のパンティ ボーイに見られ






窓際からは岸壁が見える。
荒々しい冬の波が浜に打ち寄せている。
ここは海辺のホテル。
弱い陽射しだがカーテンの隙間から漏れる光は眩しい。
目を覚ました後も、寝不足のせいもあって頭が少しズキズキする。
しかし横で眠っている奈々子の寝顔を見て、頭の痛みがどこかに吹き飛んでしまった。
奈々子にキスをしたくなった。
そっとくちづけをすると、奈々子はムニャムニャといい始めき目を開けた。
突然激しく抱擁を求めてきた。
置き様、またその気になってきた。
パジャマの中はもう元気になってしまっている。
組んずほぐれつ、絡み合うふたり。
昨夜あれほど燃えたのにまだ足りないのか?
昨夜のリターンマッチに移ろうとしたふたりに、突然、チャイムの音が聞こえた。

(ピンポン〜!)

「まだ8時だと言うのに何だよ、朝から・・・」

僕は不服そうにつぶやいた。
奈々子は言った。

「あっ!ルームサービスよ!昨夜ドアの表に、注文の用紙を入れたじゃないの!あああ〜、朝食よ〜」

「ひえ〜!そうだった!すっかり忘れてた!」
やむを得ずふたりは、『戦闘』を休むことにした。
いや、休戦せざるを得なかった。

ホテル1階でバイキングを楽しむのもいいが、たまには室内の窓際で食事を楽しみたい。
そう奈々子が提案して申し込んだことをすっかり忘れてしまっていたのだった。

ドアの外ではボーイが料理を準備して待っている。

「ちょっと待っててね」

僕は慌ててガウンを羽織って、ベッドの乱れを直すことに専念した。
今ドアを開けると散らかった様から情景が察知されるからあまりにも恥ずかしい。
そればかりか、奈々子のあられもない姿まで見られてしまう。

裸同然の奈々子もかなり狼狽している。
素肌にガウンをまとった後、急いで鏡の前に行き髪を梳いている。
急支度を整えて、僕がドアへ向かった。
奈々子はあえて無表情を繕おうとしている。

ドアを開けると表で若いボーイが待っていた。

「おはようございます。朝食をお持ちしました」

品の良い顔立ちの青年が丁寧に挨拶をした。

「待たせてごめんね。それじゃ・・・」

と僕は平静を装いボーイに言った。
ボーイはワゴンを窓際まで押して行き、朝食をテーブルに並べた。
ポットからコーヒーを注いで、僕達にお辞儀をして部屋を出ようとした時のことだった。
ちゃんと片付けたはずなのに、あろうことか、奈々子の昨夜穿いていたパンティが床に落ちていた。

(あっ!しまった!)

奈々子と僕は絶句してしまって言葉が出ない。

ボーイは何も見なかったような振りをして、部屋をさりげなく出て行った。

僕と奈々子は顔を見合わせた。

「ああ、もう・・・。慌ててたからパンティ穿くの忘れちゃったじゃない・・・」
「ほんと、焦ったぁ〜。パンティが床に落ちているのを見つけた時、ボーイさんどんな気分だったろうね。何か悪いことしたなあ〜」
「でも仕方ないじゃん」
「まあね」

眠気などはどこかにすっかり消えてしまって、ふたりは打ち寄せる波を眺めながら、スクランブルエッグをフォークに乗せた。
煎りたてのコーヒーの香ばしい香りが、とても甘く感じられた。


(終)







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