この感想文にはネタばれが含まれるので、まだ舞台を観ていない人の中で、 今後、DVD等で観ることを検討している人は、読まない方がいいかもしれません。
それから、やや批判的な内容になっているので、 そういう文章を読むことを好まない人も、読まない方がいいかもしれません。
私が観たのは、2004.8.28(土) 午後1時と5時、 そして、千秋楽8.29(日)の午後5時からの公演の計3回。
最初は2回観るつもりだったのが、結局3回に…。
なぜか?
それは、愛、……のため。(←ばか)
…などと、とりあえずボケてみたものの(←ボケなのかよ)、 舞台には、全般的に少々辛辣な感想を抱いた。特に一回目観劇の時に。
そこで、少々唐突だが、まず、ここで、同じことで期待されること、 違うことで期待されること、の二つの点に注目して、 自分の思ったことをまとめてみることにした。
今まで何度も書いていることだが、 舞台「ハンター×ハンター」の、他の作品にはない特徴は、 まずは、ここにあると言っていいと思う。
例えば、サクラ大戦の歌劇ショウのように、声優が観客の目の前で、 アニメのキャラを演じるという例がないわけではないが、 まだまだ非常に少ない。それと、 実際にサクラ大戦の歌劇ショウを観たわけではないが、そこで行われる寸劇は、 ハンター×ハンターの舞台ほど、しっかり作り込まれた物語にはなっていないだろう。
もしかして、もっとも近いのは、ハウジングセンターや遊園地などで行われる 着ぐるみキャラクターショウかもしれない。例えば、おジャ魔女どれみとか、 今なら、ふたりはプリキュアとかの…。
ハンター×ハンターの舞台に強い影響を持つMMVが、 おジャ魔女どれみに途中から参加し、今は、プリキュアをサポートしているのは、 偶々なのだろうか。もしかして、MMVはとてつもない野望を抱いているのではなかろうか(←妄想もほどほどにしろ)。
ま、そんな妄想は置いといて、今回の舞台は、過去のミュージカル版に比べると、 その特徴を十分生かせなかった感がある。 今回は旅団がメインとなる話だったが、それなら、幻影旅団の声優から、 一人だけでも起用すると良かったかもしれない。例えば、マチ役の並木のり子は、 舞台経験も豊富なだけに、十分可能だったのではなかろうか…。
今回、旅団側にはアニメ版で声優を担当した人の参加はなかったが、 役者の選択は非常にうまくいっていると感じた。 パンフレットの、各キャラクターのページには、 アニメ版の画像が一緒に載せてあるが、それを見ても、 やはり雰囲気が近い役者を選んでいると思う。
中でも、マチとシズクが、特にいい感じだと思った。 数行上では、マチ役は並木のり子にしたほうがよかったのでは…と書いたのだが、 久遠さやかの力強いマチと、那須めぐみの華奢なシズク、 この二人が、舞台でよい対照をなしていると感じた。
そして、この舞台の主役である、パクノダとクロロも、 雰囲気にあった役者(池田有希子、小西大樹)が選ばれていると感じた。
ただ、そのキャラクター描写には、いくつかの違和感があった。 最も雰囲気が違うのはシャルナークだったと思うが、 そもそも、クロロを除けば、旅団全体が、 落ち着きのない人達という感じで描かれてしまった感があり、 原作版、アニメ版に慣れているファンには、 この舞台版幻影旅団の雰囲気に慣れることがまず要求されたのではないだろうか。 また、「旅団はこうあるべき」という拘りが強いファンは、 この落ち着きのない幻影旅団に、強い違和感を感じたのではなかろうか。
原作やアニメの同一シーンが、舞台ではどう再アレンジされるか、 それもハンター×ハンターの舞台の楽しみの一つであると思う。 この点はまずまずうまくいっていたと感じる。いくつか楽しめるシーンがあったが、 中でも、ゴンとキルアが捕らえられるシーンを、 スローモーションの演出で描いた冒頭部分が面白かった。
今回の舞台の前に上演されたミュージカル「the nightmare of ZAOLDYECK」の場合、 途中までは基本的に原作版の流れで進み、後半に、 突然オリジナルの展開が用意されるという意外性があった。 あれには驚いた。
それに比べると、今回の舞台の結末は、基本的に原作やアニメのものと同じだった。 そのため、その結末のシーンを観た瞬間は、ああやっぱりそうなったか、 という気持ちが先に出てしまった。 それが、ストーリー全体をやや物足りないものにしてしまった気がする。
ただ、その後、プレイバックという形で、再度飛行船内の、 ゴン達との会話シーンが挿入されたところや、 飛行船からクロロが飛び降りるシーンなど、 原作等にはないオリジナルのシーンは新鮮で良かった。 クロロの服が風になびく臨場感のある演出が面白かった。
舞台版の醍醐味の一つがこれである。原作やアニメではもう少し欲しかった描写、 例えば、幻影旅団については、その過去がどうであったのかの丁寧な描写、 この辺りが、舞台に期待されたものの一つであったと思うし、今回の舞台は その幻影旅団結成の部分に重点を置いたものとなった。 それ自体は、期待に応える方向性と言えると思う。
しかし、幻影旅団は、原作やアニメ版とはかなり雰囲気の違う集団だった。 雰囲気の違う旅団、それが結成されるいきさつは、 やはり原作のものとは違ったのではないか。
幻影旅団に関して、原作やアニメで描写が不足していたものを補うという点で、 今回の舞台に期待していたファンは、あの不法投棄物からのゴミ漁りシーンや、 フィンクスがしくじるシーンを、その補われたものと感じただろうか。
私はあれはなんとなく違う気がした。
虐げられたものたちが、生々しく不器用に這い上がっていく中で、 一つ組織が作られていく…。それは確かに盗賊団が成立する流れの一つかもしれない。 しかし、幻影旅団はそれとはちょっと違うのではないか。 単純なハングリー精神とは違う、 どこかしらもっと狂気をも含むような成立背景があるのではないか。 そして、彼らは元から圧倒的だったのではないか。 もっとスマートだったのではないか。
そもそも、冨樫氏の作品からにじみ出る残酷、 それは、松村氏が今回描いた残酷とは少し違うのではないか。 私はふとそんなことを考えてながら舞台を見ていた。
実は私は必ずしもオリジナルの持つ残酷性の描写の再現に期待していたわけではない。 大袈裟な言い方になるが、むしろ恐れていたと言った方が正しいかもしれない。 コアな作品ファンが「こうあるべき」という方向性 (それは、純粋な作品ファンとは言えない私が、勝手に想像しているものであって、 本当にそうなのかは解らないのだが)、 それは、私にとっては少々痛々しいものなのだ。 それが、今回の舞台ではいよいよ描かれるかもしれないと少々恐かったのだ。 しかし、あまりそうはならなかった。 率直に言えば、身構えていたけど肩すかしを食らった、そんな感じだったのだ。
それと、もう一つの大きな違和感。それはやはり、 巻き込まれた男への幻影旅団へのいじめにも近い集団暴力のシーンだ。
このシーンは、幻影旅団の能力を舞台でいかにビジュアル化するかという面では 面白く感じたが、「あの幻影旅団は違う」と感じたシーンであり、 あれは、その問題を抜きにしても物語構成的には、 あまり面白いシーンではなかった。 そもそも、原作の場合、悪いことをしたこともない弱いものへの、 強いものの圧倒的な攻撃を、何の問題意識もなく描くことはほとんどなかった気がする。 松村氏が描きたかった残酷がそれであったとしたなら、 それは原作の残酷とは違うと思う。
それと、この巻き込まれた男に対してのゴンの対応にも疑問を感じた。 助けを求める巻き込まれた男を、ゴンも、都合よく自分たちの道具として使った。 そして、時々、彼を都合良く忘れ去った。ゴンはそういうキャラクターなのだろうか。 この点も、私が感じた違和感であった。
二回目、三回目、舞台を見ていくうちに、 私は舞台版の旅団のキャラクターにだんだん慣れていき、 以上で述べた中のいくつかの違和感は一つ一つ薄れていった。
そこで、ここからは、原作やアニメとの対比はやめてみることにする。 それを気にしていると見えてこなくなるものもあると思えるからだ。 純粋に、この舞台の作品としてのバランス感を考えてみた。
クラピカの苦悩や、ゴンやキルアが捕らえられるまでのいきさつ、 その細かい事情は、とりあえず、原作やアニメのもので補完する。そして、 今回の旅団は原作やアニメ版とは別のものであるということを受け入れる。 そうした上で、今回の舞台を眺めてみたらどうなのかということを考えてみた。
すると、まず一番に違和感を感じたのは、 やっぱり、巻き込まれた男に対する幻影旅団の攻撃のシーンだった。 幻影旅団の各メンバーの能力を説明することにはなっているが、 彼らの強さを描いていない。これは中途半端だ。 むしろ、奪い去った敵との戦いで彼らの能力を発揮する描写の方が、 収まりが良かったと思う。または、ゴン達との戦いの描写でも良かったかもしれない。
そしてもう一つはパクノダの扱い方。 自分の命を犠牲にしてまで、 メンバーに自分の記憶を伝えようというシーンに繋がるまでの、 丁寧な事情描写がやや不足していたように思う。 まず、それぞれの記憶のシーンは、もう少し、 パクノダの視点を強調したものであった方が良かったのではないか。 それに、もっとパクノダという人物の魅力を、 セリフだけではなく、具体的な目に見える行動として描くべきだったのではないか。 過去に魅力のある行動をしたパクノダだからこそ、 今回命を棄ててまで記憶を伝えた。そこで観客はなるほどと思う。 そういう明確な構成にした方が良かったのではないか。 私はそう思った。
三橋加奈子ファンとして私が最も注目したキャラクターであるキルアは、 今回は自然な感じで舞台に存在していたという感じだった。
昔、発明BOYカニパンのミュージカルを見たとき、三橋加奈子の演じるミルクは、 物語の根幹にはあまり深くは絡まないものの、 アニメ版のいつものミルクがそのまま舞台にいたという感じだった。 今回のキルアはその感覚と似ていた。 前作の舞台では物語の中心にいたが、こういう脇役的な形も、 それほど悪くはない。
そうは言っても、やはり物足りないと感じた。 例えばキルアの俊敏な身体能力を生かすような動きのある活躍がもう少しあったら、 少々小生意気なセリフとかもう少しあったら…など、ファンとして、 残念に思う気持ちは否定できない。
ま、その中で、巻き込まれた男に対しての ちょっと突き放し気味の物言いとかはキルアらしいなと楽しめたし、 縛られた両手を前後に回転させながら、 巻き込まれた男にあっちへ行けと指し示すシーン、 あのコミカルなシーンはとてもよかった。
一方のゴンは、キルアに比べると、例えば、 「パクノダさんの気持ちが解らないの?」など、 インパクトのあるセリフは多めだった。 しかし、正直言うと、それらの言葉はあまり強く響いてこなかった感じがした。 率直に言うと、それらはなんだかどれも原作から借りてきたセリフっぽいのだ。
なぜ私はそう思ったのか。それは、今回の舞台では、 ゴン、キルア、クラピカの強い友情が明確にわかるようなシーンや、 苦悩するクラピカへの気持ちの描写が、著しく足りないからだと思う。 ゴン達の友情の形というものを、もっと明解に描いていれば、 冷酷な旅団の掟との対比がもっとはっきりして、舞台が引き締まったのではなかろうか。
一方で、今回の舞台のゴンは、ラジオ番組「HxH R」の時によくみられるような、 少々お茶目でかわいらしいところを生かしたコミカルな描写が多く楽しかった。 例えば、シャルナークの頭を撫でたりするシーンとか、 飛行船の窓にもみじを作るシーンとか。 ミュージカル版の時には、シリアスな展開で活躍する一方、 あまりコミカルな演技をする余裕はなかったのだが、 今回は、物語での立場を生かし、肩の凝らないコミカルな活躍をしていたと思う。 その点では良かった。
私は、今回の舞台で木村亜希子が一番難しかったと思う。 以下、少々残酷な言い方になるが、要するに彼女は演じようがなかったのではないだろうか。
そう感じたのは、かなり明確に言葉で説明できる (その説明が正しいかには自信がないが)。
要するに、今回の舞台では、クラピカの故郷、クルタ族の人々が旅団に殺された事情は、 ほとんど描かれなかったのだ。早い話、観客がそれらをアニメや原作等から補うことを 制作側は期待している。
ところが、それは、アニメ版では、非常に人気の高い甲斐田ゆきの作った世界なのだ。 彼女は過去にミュージカルでも出演したし、今回の舞台が、 甲斐田版クラピカでないことを残念がるファンも多いだろう。
自分の周りの全ての人々を殺された悲しみを背負うクラピカ、 彼は旅団の手がかりをついに突き止め、自分を鍛え、 そして、ついに、今、まさに、自分の射程距離に旅団が入ってきた。
今回の舞台のクラピカは、すべての準備が整い、あとは、 その話の流れに乗っていく、つまり、極端に言えば、 慣性で走るだけの部分なのだ。
そこで、木村は、その段階のクラピカを、舞台で、 一体どう演じればいいというのだろう。 甲斐田なら、アニメで多数のファンを獲得したその自分のオーラを、 とりあえず、観客の目の前のステージで再び描くだけでもよい。 目の前であの「ジャッチメントチェーン!」という言葉を叫べば、 それは観客にすごく響くだろう。 しかし、木村はどうしたらいいというのだ。 むしろ、私はそれを教えて欲しいくらいなのだ。
演技に何も不満は感じなかった。 とにかくビジュアル的にはクラピカのイメージにぴったりの凛々しさだったし、 苦悩しつつ、旅団と取引をするシーンなど、 一つ一つしっかりした演技をしていたと思う。
今回の舞台、ほとんどコミカルな描写がなかったのはクロロとクラピカだけだった。
自分たちから全てを奪い去ったものたちから取り返すのだ(正確なセリフは失念)といいながら、 恐らく関係のないクルタの人々は皆殺しにしたのは何故か。 その辺りに全く言及しなかったのは少々気になった。 しかし、クロロに関しては、頭の中で考えていることはよく分からないけどなんか凄い。 もしかしたら、とりあえず今は、それだけでも十分なのかもしれない。
ただ、原作やアニメ版では、明るく優しげに話すクロロもあった。 そんなクロロが舞台の中にもあっても良かったかもしれない。 小西大樹はせっかくのオトコマエ(死語)なので、楽しげな演技も見たかった気もする。 或いは舞台映えのするアクションシーンがもっとあると良かったかもしれない。
それにしてもかわいさもあるオトコマエな小西は、 クロロの雰囲気に良く合っていたと思う。 だからこそ、(私にとっては)ちょっとわけのわからないことを、 自信げに叫ぶクロロもそれはそれでいいが、 もっと多彩なクロロを観たかった気もする。
飛行船から飛び降りるシーンがいい雰囲気で良かった。
ちょっと老けたノブナガなのだが、和服と刀が似合うどっしりとした演技。
ただ、クロロを捕らえられた時、激しく狼狽していた一方で、 パクノダの行動には、迷わず従うおちついた判断。 演技と刀のアクションに重みがあっただけに、 この舞台、ノブナガには一体どんな位置を演じさせたかったのか。 そこがちょっとはっきり見えてこなかった気も。
今回の舞台のその見事な刀さばきを生かす最大の好敵手が、 身内のフィンクスだったのも、少々残念な気も。
今回、一番お気に入りキャラはマチかもしれない。
舞台の力強いマチにすっかりメロメロ(笑)。可愛すぎる。 実は、久遠さやかは、仮面ライダー龍騎の時にも観ていたけど、 今回の舞台ほど心動かなかった。 実は、名前も覚えてなくて、パンフ観るまで、 その人だと気が付かなかったくらいだし。舞台の力は偉大かもしれない。
原作やアニメに比べると、今回のマチは、 少々落ち着きのないキャラとして描かれていたが、 むしろ、シズクとの対比がはっきりして良かった。
団長を奪われたくないという気持ちを、 もっとはっきり示すようなシーンがあると良かったかも。 少々乱暴だが、それを恋心っぽく描いても面白かったかもしれない。
必殺仕事人のような吊り上げのシーンはなかなかインパクトがあったが、 念糸で体をつないで直す能力もあるのだから、八つ裂きにされた巻き込まれた男を、 再び糸でつなぐというシーンがあると面白かったかもしれない (←めちゃくちゃなことを言うなよ)。
実は、今回の舞台の第二の目的は、リアル那須めぐみを観に行くことだったり。 たこやきマントマンの時からいいなと思ってたが、アニメ、レジェンズのメグ役で、 すっかり那須めぐみにはまってしまった事は、 三橋加奈子や、ファンページのみんなには絶対内緒だ(←おいおい)。
眼鏡で強化された那須めぐみは私にとってはある意味最強。これまた可愛すぎ。 リアルのシズクってこんな感じだろうな…と思うほど、私にとっては、 イメージ通りって感じ。
松村氏の描きたい残酷は、シズクの描写にはよく出ていたと思う。 ただ、恐さとしてはもう少しだったかな。
シズクって、どちらかというと寡黙なキャラなので、 舞台ではなかなか難しいかも。ボソボソ話すと観客に聴き取りにくいわけだし。
「ああ、よく喋った」とずいぶん滑舌よく喋られると、 それはちょっと違うかも…と感じた。
巻き込まれた男を投げ飛ばすシーンは面白かった。
パンフレットではなかなか雰囲気が合ってるなと思ったフィンクスだが、 舞台上ではあまりに落ち着きがなさすぎな気もした。 構成的には、クロロが囚われた旅団内では、フィンクスが、 旅団をとりまとめる立場にあったように思うが、落ち着きのないキャラのせいで、 どうもそんな感じがしなかった。 少々感情的になることもあるが、肝心のところでは落ち着いているという 微妙なバランスが欲しかった気がする。
任務をしくじってボロボロになって現れるシーン。 あれは、原作やアニメとは違う旅団だとは思うけど、 舞台構成的には悪くないシーンだと思う。 あの時、自分が切り捨てられてもいいと考え行動したフィンクス。 それが、とにかく鎖野郎を殺すことが最優先という行動にも繋がっていく。
はっきりいって、舞台版シャルナークは、 原作やアニメ版とは全く違う別の何かである。
でも、定石的にいえば、非常に限られた時間内で描かれる舞台での盗賊団には、 多分こういう役どころは必要なんだと思う。 旅団内の登場人物の濃淡がはっきりしてくる。 シャルナークのファンには少々可愛そうだが、これは仕方ないかと私は思う。
たとえば、ゴンやキルアがあっさり縄を切るシーンがあった。 それは、二人の優れた身体能力を示した数少ないシーンだったのだが、 今回のシャルナークが頼りなく描かれたからこそ、 面白いシーンになったのだと思う。
携帯電話を使って操るというシーンは、舞台でどうやるか確かに難しい感じで、 他のメンバーのものに比べるとあっさりした感じになった。そもそもその場面は、 シャルナークがメインなんだというインパクトも薄かった (実は私の視線がマチに向かっていたのは内緒だ←おいおい)。
実はこの物語の準主役かもしれない。ゴンやキルアより活躍してるし。
クラピカからの連絡係として、オリジナルのキャラクターを投入した事自体は、 いいアイディアだし、それに関係した部分はいずれも良かった。 クラピカからのメッセージや、パクノダの死の事実を、 ゴンとキルアに伝えるシーンもいい感じ。
ただ、既に書いたが、旅団にボコボコにされるシーンはあまりにもくどい。 マチに吊り上げられるシーンとかはインパクトがあっていいけど、 例えば、変にマニアックな格好をさせられるシーンとかは、 観客層を考えてもちょっと寒いかと。
もう少し、この男に何か非があれば(たとえばふたまたかけてるとか、詐欺師とか。笑)、 結構バランスが取れたかも知れない。いずれにしても、あのシーンにあれだけ 費やすなら、別の描写に時間を費やした方がよかったのではないかとは思う。
シズクに投げられるシーンはうまかったなぁ。フィンクスの投げた携帯、 キャッチした場合と失敗した場合でリアクションが違ったのも面白かった。
とにかくおみ足の美しさにメロメロ。 動きが俊敏でかっこよく、それでいて時にはコミカルなところも見せたり、 バランスのいい演技をしていたと感じた。
ただ、記憶を読みとる能力を描写したシーンがあるともっと良かったかもしれない。 単なる喜怒哀楽の豊かな普通の女性として描きすぎた感がある。
飛行船のシーンでの、照明の使った雲が広がるような表現が一番印象的だった。 スクリーンを使ったパクノダの記憶の表現も悪くない。 但し、ジャッジメントチェーンの表現は少々陳腐な感じがした。
冒頭のキャラ紹介は、席によっては文字が見えない場合もあるので、 少々不親切だったかも。
他には、マチが巻き込まれた男を念糸で操るシーンが印象的だが、 あれは、普通の男ではなく、もっと強い相手だったらもっと良かったかも。
アニメ版ハンター×ハンターのサウンドトラックの曲を使った オーソドックスな仕上がり。 それだけでも、ファンにとってはかなり嬉しいかもしれない。 多種多彩な曲があるので、選曲は楽だったろうなと思う。
今回はミュージカルではないけど、一曲ぐらいオリジナルな歌などを入れるのも、 面白かったかもしれない。
もしかして、私は、ハンター×ハンターという作品よりも、 むしろ、それを取り巻いてきたものに興味を持ってしまっているのかもしれない。
その中でも、最も関心を持ったのは、 作品ファンの「こうあるべき」という気持ちである。 アニメが出た時、○○の声優は合ってない。アニメのこの描写は原作のイメージと違っている…。 コアなファンの中にはそんな気持ちを抱く人も結構いるようだ。
多くのファンの頭の中で「ハンター×ハンターはこうあるべき」 という理想が築かれていく一方で、 アニメ、ミュージカルなどの舞台、小説、 ドラマCDなどが次々に作られていく。 それぞれの作品を観る/聴く行為は、本来楽しいものであるはずだ。 しかし、中には、自分の思う「こうあるべき」との違いに、 苦悩する人もいるのではないだろうか。
今回の舞台はどうだったのだろう。
ハンター×ハンターの世界と今回の舞台世界をうまく心の中で関連づけて、 精一杯楽しんだ人、 何かひっかかりを感じながらも、舞台を楽しんだ人、 あるいは、舞台のハンターは原作とは全く別物…と完全に割り切った上で、 舞台を時には冷淡に観ていた人。そんな様々な観客像が浮かんでくる。
私にとって、舞台が描く物語よりも、 作品を取り巻くそんなファン達の心をあれこれ想像する事の方が、 むしろ興味深かったかもしれない。 そういうところを描いたものを、何か創作として形にできないものだろうか。 私はそんなことすら考えるようになっている。
また、そうやって、客観的な立場に立ってみた瞬間、 心を縛っていた鎖がするりと解けることもあるのかもしれない。 そんな考えは傲慢なのかもしれないが。
文責: 加藤雅敏(新明解) shinmk@na.rim.or.jp