去年の12月頃病気を治すいい処があるというので、「もしかしたら脳出血の後遺症が治るかもしれない」と思い弟に車で連れて行ってもらった。それは山の上の過疎地帯だった。障子の破れた空き家と数件の人家が見え、その地域のお宮がすぐ隣に見える。それは別世界に近く、幼い記憶が甦ってきそうな昔懐かしい風景だった。
玄関の戸を「ガラガラ」とあけると奥から50歳くらいの奥さんらしき人が顔を出し、「お待ちしておりました。さ、どうぞどうぞ」と云いながら座敷に案内してくた。暫くすると、やはり50歳をちょっと過ぎたばかりのそこのご主人が顔を出した。作務衣を着た姿が何ともこの山村の住人、かつ、病気を少しでも和らげてくれる人に見えた。病気の経過を話し、障害の程度を話す。相槌を打ちながら聞いていたご主人は、「絶対治るんだと云うことを信じなさい、疑っちゃあいけない」と云った。何をどうやるかというと「ヒーリング」と言って、ただ力を抜いて横になっていればいいと言うことだった。「ヒール」とは、癒し(いやし)の事で、癒すことで病気を治すらしい。
「気功」と同じと思うが、どこか違うのであろう。30分ほど畳の上に横になっている間に、患部に手をかざし、頭、手、足へとヒーリングを行う。私は眠くなってしまうのだったが、最後に「手と足を動かしてごらん」というので云われるままに動かす。「来た時よりだいぶ動きが軽くなった。その調子で諦めずにやればきっと良くなる。」 1週間して又おじゃまをする。「絶対治ると云うことを信じてやれば治るから」 又1週間・・又1週間・・何回あの家に行ったろうか。10回は行っただろう。
ある日母が言った。削除。その点は資本主義が物の本質を見抜いてはいる。
私の思い描いていた故郷への郷愁を誘うような過疎の村は確かに存在したが、それを打ち消すような人の心にはウンザリした。
病気で倒れるずっと以前に読んだ本で、「宇宙無限力の活用」という本がある。塩谷信夫という東大医学部出身の開業医の書いた本である。ちなみに東大医学部と聞いただけで全てを信じてしまうような権威に弱いような処が、何とも善良な市民の私だが。
何でも病気を患っている患部に手を当てるだけ、そして想念をするだけで治るという生命線療法という治し方を実践するらしい。それが原因で若くして東大を追われてしまったが、その後の人生は決して隠遁生活をしていたのではなく、科学者、開業医として成功したらしい。
そういえば「週間ゴルフダイジェスト」にも連載ものを書いていた。又ゴルフでもエージシュートを94歳でやった有名人で、知る人ぞ知る。今は100歳くらいだろう。 入院中にこの本を持って見舞いに来た人がいた。さっと目を通しただけでそのままになっていたが、退院してから読み直してみた。やっぱり変わった人で、しかも科学者らしからぬ、つまり超能力者のイメージがする。その本だったと思うが(もしかしたらば別の本で著者も違う人かもしれないが)本当に「ヒーリング」みたいなやり方を使って病気を治せる人は、たぶん日本に一人いるか居ないかだと言っていた。それを聞いて「そうもありなん」とつくづくと思うのであった。
手っ取り早く治す方法があれば苦労なんかしないよ、まったく。
「そうもありなん」