リーダーのためのコーチング


答えを与えず、答えを引き出す

 
 さきのスタッフを育てるリーダーシップで、指示、助言、支持、非関与という、4つの接し方を紹介しました。これら4つの接し方のうち、多くのリーダーが苦手とするのは、三つ目の支持でしょう。なぜならば、これまでのリーダーはもっぱら、フォロワー(スタッフなど)に指示や助言を与えてきたのであり、フォロワーの考えを引き出し、その考えを支持するという接し方には慣れていないのです。
 フォロワーの考えを引き出すうえで、役立つのがコーチングです。コーチングとは、答えを与えるのではなく、答えを引き出すことによって、相手の成長をサポートするかかわり方です。もとは、テニス・プレーヤーの新しい養成法として、1970年代に生まれたものですが、やがてコーチングはスポーツ界全体へと広がり、さらにビジネス・マネジメントの領域でも、取り入れられるようになりました。
 リーダーが指示・命令をしてフォロワーを育てても、判断をするのは結局はリーダーであり、そのためにフォロワーの成長に限界があります。自ら判断して実行する過程をサポートした方が、はるかにフォロワーは成長し、自立するのです。
 

考えてもらう質問


 コーチングでは、相手に考えてもらう質問(開かれた質問)を、いくつも投げかけます。具体的には、例えば次のように進行します。

@はじめから本題に入らず、まずは「こんにちは」「お元気ですか」などと、簡単な世間話から始めて、お互いの緊張を解きほぐします。
A「ところで」という言葉で話題を切り替えて、問題を明確にするために、「最近、お困りのことは何ですか」と尋ねます。
B困りごとを充分に聴いたうえで、「どうしてそうなったと思われますか」と尋ねて、問題の背景を考えてもらいます。
C問題の背景を充分に検討したうえで、「どうすればよいとお考えですか」と尋ねて、最善の解決策を考えてもらいます。
D解決策が出てきたところで、「じゃあ、そうしましょう」と言って、相手の自己決定を支持するのです。

 また、困りごとが選択(A or B)や決心(A or not A)の問題であれば、次のように進めます。

B´「もしもAにした場合には、どうなりますか」と尋ねて、Aを選んだ場合のことを充分にシミュレーションしてもらいます。
C´さらに「もしもB(not A)にした場合には、どうなりますか」と尋ねて、B(not A)を選んだ場合のことも充分にシミュレーションしてもらいます。
D´どちらの場合のことも充分に検討したうえで、「結局、どうされますか」と尋ねて、相手の選択や決心を引き出します。
E´最善の選択や決心を引き出したところで、「じゃあ、そうしましょう」と言って、相手の自己決定を支持するのです。

 困りごとではなく、目標(課題)を尋ねることもあり、その場合には、例えば次のように進行します。

A"「ところで」と話題を切り替えて、「あなたの目標(課題)は何ですか」と尋ねます。
B"次に「これまでどのように努力し、どれぐらい目標に近づいた(課題を解決した)と思われますか」と尋ねて、現状を確認します。
C"さらに「目標を達成(課題を解決)するうえで、何が障害になっていますか」と尋ねます。
D"そして「それにもかかわらず、目標を達成(課題を解決)するために、どうすればよいと思われますか」と尋ねます。
E"最善の方法が出てきたところで、「じゃあ、そうしましょう」と言って、相手の自己決定を支持するのです。

 これらの過程では、相手が少しでも話しやすくなるように、うなずき、相づち、繰り返し、要約など、コミュニケーションにもテクニックのところで紹介した技法を、適宜に使うことが大切です。
 
トレーニング・プログラム


 リーダーシップ・トレーニングではコーチングの学習だけでなく、指示や助言についても、同時に学ぶのがよいでしょう。なぜならば、フォロワーの中には、支持が必要な半自立状態の人ばかりではなく、助言が必要な半依存状態の人や指示が必要な依存状態の人もいるからです。
 支配・統制するリーダーではなく、スタッフを育てるリーダーの養成を目指して、幾つかのトレーニング方法を開発しています。職場などで展開しているトレーニング・プログラムの一例を、ここに紹介しましょう。

名 称:中堅スタッフ・管理職のためのリーダーシッ
     プ・トレーニング
ねらい:スタッフを育てるリーダーを養成する。
方 法:ワークショップ(演習)
対 象:中堅スタッフ及び管理職40名
日 時:○年○月○日 9:30〜16:00
場 所:○○会議室
進 行:
09:30 集合
10:00 導入講義
      スタッフを育てるリーダーシップ
11:00 効果的な指示について学ぶ
      ブラインド・ウォーク
12:00 昼食
13:00 効果的な助言について学ぶ
      助言トレーニング
14:00 支持の方法を身につける
      コーチング・トレーニング(1)
15:00 支持の方法を身につける
      コーチング・トレーニング(2)
16:00 終了



※詳しくは次の本やビデオで

・諏訪茂樹『対人援助のためのコーチング -利用者の自己決定とやる気をサポート』中央法規出版
・諏訪茂樹『看護にいかすリーダーシップ -状況対応とコーチングの体験学習-』医学書院

・諏訪茂樹『コミュニケーション・スキルを磨こう -医療・福祉サービス利用者とのよりよい関係を目指して-』ビデオ中央法規出版
 ビデオ見本はこちら(WMV:5MB)


















ガルウエイ 1977

ウィットモア 1993


指示や助言によって答えを与えることを、ティーチングと言います。もはや「ティーチングからコーチングへ」ではなく、両者の使い分けを議論する時代だと言えます。



「開かれた質問」についてはこちら


コーチングはスポーツ界で生まれて、ビジネス界で大きく発展しました。スポーツとビジネスの世界で共通して大切なのは結果であり、しかも、それは数字で表されるのです。結果重視の傾向は、コーチングにもみられます。










































日常会話でのコーチングの具体例はこちら(Flash:1.44MB)

コーチングのスキルを磨くプロセス・レコードのワークシートはこちら(Word file


自分一人でできるコーチングの体験ページ「セルフコーチングをはじめよう」はこちら

「セルフコーチングをはじめよう」のワークシートはこちら(PDF file

自分一人でできるダイエットコーチングの体験ページ「セルフコーチングでダイエット」はこちら

「セルフコーチングでダイエット」のワークシートはこちら(PDF file

さらに詳しく学習できる「COMMUNICARE blog:コーチング」はこちら

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