S61_6 血まみれの少年たち  闇を貫くピーッ、ピーッという鋭い笛の音。何かの号令に違いない。その 笛に誘われたように、幾すじもの光線が舞台を走る。龕燈ふうの(と私の記 憶が勝手に変形させたのかもしれないけれど)強烈な光源のライトを手にし てずらりと並んでいるのは、学生帽をかぶり詰め衿の制服を着た中学生の一 団だ。  息を呑むような『ライチ・光クラブ』(東京グラン・ギニョル公演、於東 京・都立家政スーパー・ロフト・キンドー、3月27日―4月2日)の幕開きで ある。  子供時代には、少年であれ少女であれ、大人どもを完全に締め出した自分 たちだけの世界を創り出しそこに住み続けることを夢見る。たったひとり、 自分の部屋を「城」として閉じこもることもあれば、二、三人の親友と共に 秘密の場所を見つけ出して、そこを冒険の基地にすることもある。  ライチ・光クラブの少年たちは、毎夜十二時になると、文明の廃棄物に埋 まった廃墟めいたこの場に集まり、リーダーのゼラの指示に従って或る機械 を完成させようとしている。 (少年たちがパシッと手を叩くと、七基の潜望鏡が一斉に降りてくる場面や、 舞台下手に設置されたベルトコンベアの作動によって、ここが地下であるこ とが分る。外界との対比があざやかに示される工夫である。)  彼らが作り上げたのは巨大なロボット。ゼラはそれに「ライチ」と名づけ る。動力源が電気でもガソリンでもなく、ライチの実だからだ。さまざまな 動きを電卓によってインプットされてゆくライチに、少年たちが命じる任務 は美少女を捕獲することだ。連れてこられた少女は、だが、少年たちに反抗 する。そして少女マリン―自分の名前を、彼女はライチだけには明かす―と ライチとの間に不思議な愛情が生まれる。無機質の、金属の部品で組立てら れた機械が、植物をエネルギー源としていわば有機化し、遂には独自の思考 や感情までも身につけてゆく―映画の『ブレードランナー』や、楳図かずお の壮大なスケールをそなえた劇画『わたしはSHINGO』の発想にもつな がるプロセスだろう。  少年たちの内輪もめがもとで、ライチの実の供給が断たれ、ライチとマリ ンは滅びねばならない。その前に少年たちはライチによって全て殺されるの だが、幕切れに至り、死と眠りを迎えたライチとマリンの背後で、血まみれ の少年たちがすっくと立ち上がる。少年たちの純粋犯罪願望の不死鳥のよう なよみがえりとも見えるこのタブローは、戦慄的だ。  音、光、残酷で美しいイメージ群が交錯するこの舞台の美術と演出を手が けるのは、一時期状況劇場に所属していた飴屋法水で、彼は鉄のペニスを考 案する少年ジャイボ役も演じた。彼をはじめ、役者たちが面白い。  芝居というジャンルの「音域」が、この集団の登場によって大きく広がっ たのは確かだ。