ビデオキャスティングのはじめかた

2006年に入って、にわかに、ビデオキャスティング、ボッドキャスティングといった、個人が始める動画配信がにぎやかになってきた気がします。
音声番組をRSSを使って配信する、というのは、Podcastという形で登場して、企業がPRに使ったり、様々な番組が存在しますが、その動画版の登場と言うことですね。
Podcastingがラジオだとすると、Videocastingはテレビ、という事になるんでしょう。
こういう、ネット上のトレンドというのは、あれこれ観察したり、考えていてもさっぱりわからない、自分でやってみるしかないんですよね、というわけでやってみました。
今回は、その報告&感想文です。
で、現在ムービー配信中のサイトがこちら。

RE:猫のユビキタス化につきまして

変なタイトルですが...このブログは、猫好きの母親(岩手の田舎におります)のために始めた「うちの猫の様子」ブログでして、基本、毎日1猫写真を更新(まあ、僕の安否報告、という意味もあるんですが)。うちで飼っている3匹の猫を中心に、毎日猫の写真をせっせとアップロードしているわけです。で、せっかくやるんなら、いろいろ実験もしてみよう、というわけで、ここからビデオキャスティングも配信してみた、というわけです。
とりあえず、このブログの左サイドバーにある「猫ユビムービー」のどれかをクリックしていただくと、プレイヤーが立ち上がり、ムービーが再生されるはず。
母の環境でも問題なく観られるように、コーデックは、汎用性の高いMPEG1を使用しています(なので、ビデオ対応iPODには入れられません)。


ビデオキャスティングの始め方
僕は、「パソコン通信」の時代からのニフティ会員ですので、とりあえず、ニフティの無料ブログ「ココログフリー」を使って始めてみました。

ココログフリー

これを申し込みまして、ブログを作る。
ココログフリーの場合、ディスク容量は2GまでOKです。2Gタダ、いつのまにか太っ腹な世の中になったなぁ、と感心しながら各種入力を進めてブログを立ち上げます。

次に、ココログフリーの自分のディスクスペースに番組を作ってアップロードします。
これは、ココログフリーの管理ページにブラウザでアクセスして行います。

こうしておいて、記事を投稿するときに記事中に、このアップロードした番組へのリンクを挿入します。

基本的には、これで記事からの映像配信は完了です。
要は、ブログを作って、そこにムービーをアップロードすればいいわけでした。



RSS2.0を使う
RSSフィードという技術を使った、Podcastingの仕組みを使えば、リスナーにiTUNESなどに番組を登録してもらい、iTUNESを立ち上げる度に自動的に更新を探して番組を更新してもらうようにすることができます。
RSSにはいくつか種類やバージョンがあるらしいのですが、音声や動画の配信を扱えるのはRSS2.0というもの。
これを行うには、ココログフリーだけの機能ではムリで、もうひとつサービスを申し込む必要があります。
それが、やはりニフティの「Pod Feed」というサービスで、これを使うことで、RSS2.0を使ったPodcastingが可能になります。料金は無料。

POD FEED

このサービスは、何かというと、あるページのコンテンツの更新情報をリアルタイムに反映しているファイル(RSS)を、ネット上に公開してくれるサービス、という事になるんでしょうか。
一度このサービスにURLを登録すると、そのページが更新されるたびに、RSSファイルが自動的に更新される仕組み。
リスナーがこのRSSファイルの場所をRSSリーダー(というかプレイヤーといった方がいいんですかね、iTUNESなどの場合)に登録すると、そのソフトが起動されるたびに、該当RSSの更新情報を自動的に見に行き、更新されていれば、新しい番組をダウンロードしてくれる、という寸法です。

さっそく、コレを申し込んで、ビデオキャスティングらしくしよう、と。
ちょっと、ごちゃごちゃあるんですが、要は、自分のブログのURLを登録すると同時に、自分のRSSファイルのアドレスを教えてもらう、そのURLを、自分のブログのサイドバーに貼り付けると、そこに、バナーが表示されるようになる、で、これを視聴者のみなさんに自分のiTUNESなどに登録してもらう、という案配。

このRSSフィードのURL(ブログのサイドバーに張るリンクの事)は、どこにでもおけるんです。ためしに、このページにも置いてみると、こんな感じ。



ちょっとソースを書き換えて、このフィードを登録している視聴者数が表示されるようにしてみました。

ブログサービスによって、配信できるムービーの種類は違いますが、ココログの場合、WMV、MPEG1、MPEG4、H264(MOV)といった代表的なものは押さえてあります。
僕の場合、ムービーは、ブログにアップロードした写真を使った、写真日記のダイジェスト版的なものですので、適当なコーデック(最初、QTのアニメーションを使っていたんですが、レスポンスが悪いので、現在はApple Pixlet Videoを使っています)でFCPで写真を編集したら、SoundTrackを使って音をつけ、CompresserでMPEG1(320*240)で書き出しています。あまりファイルが大きくなっても困るので、フレームレートは24/秒、ビットレートは800kbps。1分の番組で数メガです。
MPEG1を使うメリットは、なんといっても、Win環境でもMac環境でもデフォルトのプレイヤーでそのまま見られる、というところです。互換性重視の場合は、こういう古株の、枯れたコーデックを使う方がいいように思います。
ビデオ対応のiPODを視野にいれると、Mpeg4か、H264という事になりますが、WinユーザーはiTunesか、QTプレイヤーを入れていないとみられません。WMVにすると、Winユーザーには高画質ですが、MACユーザーは捨ててしまうことになる(ほぼ)。というわけで、iPODを捨てて、iTUNESでも、QTプレイヤーでも、WMプレイヤーでも見られる形式、ということで、MPEG1を選びました。このコーデックは、よく、オフライン編集をダウンロードでみてもらう時にも使います。見る側はなんの環境設定いらないので、手軽なので。



で、これは何なのか?
実際にやってみて思うのは、インターネットでの情報発信(配信)がいよいよ、自由になってきたんだな、という事です。
今まで、テキストとせいぜい写真でしか伝えられなかったメッセージが、声や映像で伝える事ができる。世の中には、文章を書くよりも、話をするほうが得意な人もいるわけで、そういう人たちにもインターネットでの情報発信の機会が与えられた事になります。
もともとインターネットとは、無料で情報を持ち寄る世界ですから、その持ち寄り情報の質や種類が飛躍的に拡大することになります。ものすごくリッチ、ゴージャスな持ち寄りパーティ。
すごい時代ですね。かつて世の中がナローバンドな時代、「そのうちにネットがスピードアップして、個人放送局なんかもできるようになるかもよ」といっていた与太話の世界が現実になってしまいました。
しかも、基本的なブロードバンドのインフラさえ持っていれば、ほとんどタダ同然で始めることができます。携帯電話のムービー機能で番組をつくる、というようなケースでは、かかるお金はIPSの料金のみ。あとは、無料サービスと、フリーソフトでまかなえます。

ネットで動画配信、というと、たとえば、USENのやっている「GyaO」なんかが思い浮かびます。これは、パソコンテレビというぐらいで、ネット上に、テレビ放送とほぼ同じものを構築しようとしているわけですよね。それを一つのメディア(チャンネル)として構築してそこに広告ととったり、販促をしかけたりしてお金を稼ぐ。

でも、ビデオキャスティングやボッドキャスティング、ビデオブログ、といった個人ベースの動画配信で広がっていく世界はそういうものとはまったく別のモノという気がします。あたらしいメディアができたというよりは、まったく新しい映像文化が始まった、という感覚があります。
今までだったら誰も、ひょっとして撮影した本人も見ることはなかったかもしれない映像が「番組」として配信される可能性がある。それは、ホームビデオの一部だったり、デジカメや携帯でちょこっと撮影したムービーだったり、今までは、身内で1回ぐらい見て捨てられていた映像が「番組」になるかもしれない。
映像を自分で配信する、という手段を手にしたからこそ、今までとは違った価値が映像に与えられてくる、という気がします。同じ映像でも、ネットで配信したとたんに、「なんか見る価値がある気がする」というような事もおこるのでは。単なるありふれた日常の断片でも、それが毎日更新されていたとすると、なんか、見たくなるようなものになったり...なんてこともあるかも。

考えてみれば、映像を作って、しかも「見せる」事が今ほどやすくなった時代ってないですよね。
長い間、動く映像はプロが難しい機材を使って撮るものだったし、編集も何人もの専門家が関わってやっと可能になる、しかも、配信するとなったらテレビの電波にのせたり、フィルムにして映画館で上映したり、DVDにして販売しなければならなかった。それが、すべて「無料」でできるようになったというのは、すごい事ですよ。
「映像を作って見せたい」=「コストどうする?」という事だったのが「映像を作ってみせたい」=「じゃ、やれば?」という事に。

やや仕事に近いところで考えると、実用的な「ハウトウ情報」みたいなものを効率よく、簡単に、安く伝える事ができるようになったと言うことが言えると思います。文字や静止画に比較して圧倒的に動画にアドバンテージがあるのは「何かのやりかた」を伝える事です。時間軸があり、動く映像で、しかも話し言葉が使える。今までは、動画を何かパッケージに入れて伝えていたものを、ネットで配信できるようになる。これは、送り手にとっても、受け手にとっても、便利で手軽です。おそらくそういう番組は情報の金銭的価値もつけやすく、スポンサードや課金といったものにもよくなじむのではないでしょうか。前述のRSSを使って配信すれば、シリーズものや続き物の配信も容易になるし。



ローエンドムービーの可能性
映像制作の世界を「ハイエンド」と「ローエンド」に分けてみるとします。
ハイエンドとは、640*480以上の解像度で、テレビ放送や映画上映や市販DVDなどをターゲットにした、主に商業的な映像作り。僕らプロの映像制作者のなりわいになっている部分です。
ローエンドは、(主に)640*480以下の解像度で、携帯電話のムービー機能や、デジカメのムービー機能、家庭用の低価格なデジタルビデオカメラによって撮影された映像で、今までは、主に、撮影した本人や家族でのみ消費されてきた映像とします。
ネットを使った個人映像配信、という事が普及してくると、このローエンドの映像の世界にとてもおもしろい事が起ってきそうな気がします。
今までは「出しどころの無かった映像」がネットで出せるようになってしまうわけで、どんな映像にも「不特定多数の視聴者」を想定できるようになってしまうわけです。
プロとか、アマチュアとかも関係なく、個人発の映像がネットに(しかも勝手に)増殖することになります。そうなったとき、どんな事が起るのか、とても楽しみです。

個人的には、ラジオからテレビになった、数十年前の変化よりも、さらに大きな変化が訪れているんじゃないか、と思ったりします。というのは、この変化はメディアの質(音だけだったのが映像がついた)の変化ではなく、メディアを担う構造(コストも含めて)の変化だから。
専門家が大きなコストと時間をかけ、満を持してお送りする映像ではなく、普通の人が日常的に送る事ができる映像の時代。まぁ、早めに言ってしまえば、現象としてはブログ文化の映像版なんですが。でもこれは、今まで起ったことのなかった事態だと思います。それにともなって、新しい映像の価値感、みたいなものが出てくるのはないでしょうか。企画や構成とのみならず、撮影や編集に関しても、今までとは少し違った、新しい文法や方法論が出てくるでしょう。



とりあえず今回は、猫ムービーのRSS配信を始めてみての、ちょっとした感想文でした。
今年の行動計画の中には、実は、もう少し本格的なネットTVの実験計画が含まれていまして、取材ベースの番組を配信するサイトを、ある人物と計画中。そのサイトを使って、まったく個人が始める「放送のようなもの」の可能性を身をもって体験してみたいと思っています。

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