『今物語』(いまものがたり)
全訳注 三木紀人 講談社学術文庫
鎌倉中期の説話集だそうです。
ほんの短いおはなしが、全部で53コ。
読んでみようと思ったのは、「降れや雨」という小話に心を惹かれたからでした。
「大納言なりける人」が、日頃から愛していた女房(かみさん、じゃないですよ。女官のこと)の
ところへ行って、こまごまとお話するんですが、
夜も明けそうだというのに、ちっとも「思うよう」にならない。
ので、今夜はもうやめて帰ろう、と思って一計を案じて立ち上がったところ、
それを察した女房が、さらりと歌を詠む・・・
その歌のすばらしさに感じ入った大納言、その晩はやっぱり泊まることにして、
この二人は、その後も長く続いた・・・という、お話です。
この『今物語』には、ほかにも、とっさにさらりと歌を詠む・・・エピソードが、
いくつか出てきます。
「降れや雨」みたいな、男女の機微ばかりではなく、
たとえば「聖の家」というお話では、
女性関係の多いのを通りすがりにからかわれた聖人が、小法師を走らせて歌で言い返した、とか。
「いやまったくその素早さは、大変なものでした」なんて、感動しています。
*
当意即妙。
この言葉が、アタマに浮かびます。
インターネットの世界も、そのあまりの回転の速さに、じつはときどき・・・
ついていけない、と感じて、疲れてしまうことがあるんですが。
もしかしたら、必要なのはこの「当意即妙」かな、なんて・・・
でも、じっくり考えて。
寝かせて、寝かせて、熟成させた作品というのも、
また、よいですよね。
要は、使い分けかな、と・・・・・・。
*
ところで、この『今物語』。
雅なおはなしが続くのですが、ナゼか?
最後のほうになって、ものすご〜く、品が落ちます。
解説者も、そこのところどう言ったものかと、悩んでいる様子でした。
びっくりするような内容ですが・・・それも、古文で読むとなんだかオカシクて、
大笑いしてしまった、私です。
(2002年3月)