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『鎌鼬の夜』

―かまいたち―(日本妖怪シリーズ)


 さて、この連載も、ついに50回目です。ネタに詰まることも、忙しくて更新しないこともありましたが、なんだかんだ続いています。まだまだ当分続くかな、こりゃ。

 カマイタチ...上手いネーミングです。現代っ子の僕らには、イタチってそれほど馴染みのある動物じゃありませんが、農業生産が主だった時代なら、親しみのある動物でしょう。害獣でもありますから、僕らの見るネズミみたいな立場でしょうか。
「カマイタチ」と言えば、よく知られた日本の妖怪ですが、普通の妖怪(へんな日本語)とは、ちょっと違う点があります。
 雪女、座敷童、河童、ぬらりひょん...どれも、幸運や不運、災害を象徴する存在ですが、それが表わす現象は、「家が栄える」とか「寒さで凍る」など、はっきりした形ではありません。即ちこれらは、曖昧な現象に対する曖昧な感情(畏怖や不安)を、妖怪に例えたものです。
「カマイタチ」がこれらと違うところは、曖昧としたものではなく、確かに起こる不可解な現象であるという所です。
 刃物などに触れてもいないのに、突然スパッと皮膚が切り裂かれる...科学万能主義があたりまえの今だって、説明がなければ妖怪の仕業と思い込むでしょう。その不安も、これが風で生じた真空による自然現象であると合理的に説明がなされれば、解消されます。危険であることには変わりはないのに、そこには、もう、不安はありません。
 昔から、妖怪を退治するパターンは、常套手段が決まっています。それは、古今東西同じです。
 その手段とは、怪かしの「本当の名」を言い当てることです。名前を呼ぶという事は、即ち正体をばらすという事です。正体不明に対する不安、それこそが妖怪の本質です。
 自然現象が妖怪化する時代は、過去の物になりましたね...今は、社会現象が妖怪でしょうか?

(著作権:海洋堂)

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