リスク・マネジメント No.2

都立広尾病院 消毒剤誤注射事例

1999年2月、58才女性が左手中指関節リウマチで手術をうけた。翌日、病室で抗生物質の点滴施行。終了後、ルートロックのためヘパリン生食を注入する予定であったが、誤って消毒液ヒビテングリコネートを注射してしまった。

約1ml注射した時点で異変に気づき、直ちにスタッフによるリカバリー処置がなされた。電解質輸液ソルデム3Aが延長チューブを利用して投与されたが、その際延長チューブ内に残っていた約9mlのヒビテングリコネートも体内に注入されてしまい、結果的に心停止を早め急性肺塞栓症で死亡となった。

概要

      

司法判断

刑事責任

業務上過失致死にて有罪
看護婦A:禁固1年(執行猶予3年)
看護婦B:禁固8か月(執行猶予3年)

主治医:異常死体届出義務違反略式命令、罰金2万円
元院長:懲役1年(執行猶予3年)、罰金2万円→控訴

      

行政処分

主治医:医業停止3月(2001年5月)
看護婦A:看護業務停止2月(2001年12月)
看護婦B:看護業務停止1月(2001年12月)

行政判断

   

総評

都立病院で起こったこの事件、横浜市立大の患者取り違え事件の直後ということもあり、非常に注目を浴びました。

組織がしっかりしていると考えられていた公的病院で、こういったシンプルなエラーが起こってしまったという驚きと落胆。そういった空気をつくり出した事例でもある。

この2つに事例をきっかけにマスコミもにわかに医療事故に注目し、また政府も積極的にに取り組むこととなります。ある意味、医療事故問題におけるエポックメイキング的な事例と言ってもいいでしょう。

    

対策

東京都はその後いくつかの組織だった改革案に着手し、点滴に関するマニュアルなどを策定しました。消毒剤と通常の薬剤を取り違えないように、用途により注射器の色を変えたり、確認を複数で行ったり、などがその格子だったように思います。

注射内容が何か。どこに接続すべきか。その一連の作業を、その意味を考えながらしなくてはいけない。当然のこと。

ただ、ボクらが知っておくべきことも、さらに。

    

教訓その1

(1)ヘパリン生食は治療に必須ではない。

医療関係者以外のヒトのために説明しますと、点滴が終っても針だけ腕に残しておくことがあるんです。もちろん、やわらかなプラスティック製の針をね。このおかげで患者さんは毎日朝晩注射針を刺されるという苦痛から解放される。その針が詰まったりしないように使われるのが、ヘパリン生食です。

患者さんの治療に必要なのは抗生物質の点滴であり、ヘパリン生食は快適性を求めるゆえの一種のアメニティ。そこに油断はなかったか、ということ。そういったアメニティにも危険は潜むという揺るぎない事実。

    

教訓その2

(2)点滴ルートを信じるな。

概要にもあるように、実は消毒液が体内に入ったのは最初はごくわずかだった。ところが容態が悪化したため点滴ボトルを追加したんだけど、その際、チューブ内に残った消毒薬が体内に入ってしまった。

つまりですね、異物誤注射の危険がある時は、そのルート自体も疑ってかかれ、ということだ。これは覚えておいて損はない。

   

さらにさらに

もひとつ気になるのは行政処分の公表のされ方。昨年12月の報道では看護婦の実名と年齢が公表されてるけど、それって以前はしなかったような…。そこまで衆目にさらすようにしたんだなー、と。

もう政府に看護婦さんとかを守る気はあんましないってことかもね。なにしろ病院のベット数を減らす計画(今の半分くらい)も立案中だしさ。もう医療職はそんなにいらないよ〜って意識があったりして。それってよみすぎ?

   

まとめ

というわけで。我々の世界はますますきびしいよ−。それだけは言える、かな。

流れ作業的に業務をこなす危険。これに尽きるのではないかなあ、と。

2-17-2002 

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