medical rainbow (七色虹医療) no.61-64

64.「クリニカルパスと野球の監督」

先日は熊本まで行ってきました。日本クリニカルパス学会。クリニカルパスとはなんぞやってことですが、まあ入院何日目にこれこれをしようっていう、スケジュール表みたいなもんです。

最近はこれを用いて医療を標準化しようとする動きが盛んです。スケジュール表を細かく作りこむほどボクらの仕事は窮屈になりますが、効率化に一役買っているのは間違いないところ。

あーこれって、野球の監督みたいだなーって、唐突に思いました。あるじゃないですか、野球のセオリーって。ノーアウト1塁でバント、みたいな。よく似てるんですよね。高齢者肺炎ならまずペニシリン系抗生物質を、などと規定してある。

でも、野球も、あんまりがんじがらめじゃうまくいかないでしょ?ピッチャーは100球超えたら交替、とか。ノースリーならひとまず待て、とか。日本とアメリカでも違うしさー。最終的に「勝つ」ためには、もちろんルールに精通しなくてはいけないけど、柔軟に判断しなくてはいけない部分だってある。

たぶん医療もね。一緒ですよ。クリニカルパスが規定するのは医療の7割だと言われています。あとの3割は自由。この原則を間違えると、勝利がするりと逃げていくかも。

ちょうどいいバランスってものがある。なにごともね。お役人さんたちにはどうもそのへんがわかってないんじゃないか。キチキチに決めればいいわけじゃないんだよ。総ベッド数半分にしても日本はいい国にならないよー。わかっとるんかーこらー。

    12-05-06  

      

63.「禁煙外来のナゾ」

えーっと。禁煙指導が平成18年4月より保険適応となりました。つまり、これまで2万円していたニコチンパッチも3割負担でオッケーですよ−、その代わりに指導料を病院でいただきますよ−来てねー来てねーという制度なんですが。で、うちもさっそく禁煙外来というものをはじめています。セイフや循環器学会も大乗り気で、今やってないとヒトデナシ、くらいの勢いですねー。

んで。なんか引っかかってるのは自分だけ?

なんかさーなんかさー。片方で医療費抑制でリハビリ継続さえできなくして「リハビリ難民」みたいなことばもこしらえてさー。で、国がアナタの禁煙の面倒見ちゃる、っていうのは、なんか矛盾してないか?ってことですよ。

煙草を吸う人も被害者だ、ニコチン中毒という立派な病気であり、みんな健康になりたいんだけども中毒のせいで続けているんだ、というニュアンスで語られる喫煙習慣。ほんまかいな。それゆうんなら多くのギャンブルも脳内麻薬中毒なんですけどね。パチンコ外来とか競艇外来とか出来ちゃうんでしょうか?ぶつぶつ。。

これからは予防医学にお金をかけるのダ!というなら、煙草の税率大幅アップが筋ってもんでしょ?違う?やることやってからそれゆってよ。

夏休みの宿題やってなくて、さー明日が始業式ってときに、担任のセンセイとこにいってさ。宿題の7割を補填してもらう感じ?えーそれって不公平じゃン、ってクラス委員がぶーたれたら、校長センセイがいうんだ、「夏休みはしっかり外で遊ぶのが子供の本分です。宿題をしないというのは個人の責任ではなく、宿題を出し過ぎた学校の問題でもあります!」って。

いや、確かに正論ですよ、ある意味。でもどこかがずれている。

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もちろん代案はあります。すべての喫煙者が手軽にアクセスできるように、ニコチンパッチは安価にして薬局で売るべきです。そしてその指導は調剤薬局で行ってもいいんじゃないか。どうしてもドクターの出番、っていうなら、開業医のセンセイにおまかせでしょうよ。

すくなくとも、総合病院がカバーする領域ではないと思うなあ。それらのマンパワーは急性期医療に注がれるべきじゃないかな?これって当たり前だと思うんですけど。。

    10-15-06  

     

62.「ハート・リセット」

機会があって、医療事故被害者の会の方の講演を聞いた。参加者は、一般の方ではなく、みんな医療従事者。そんな中で講演するのは、すごくしんどいだろうな、そんなことを思いながら。

その内容は、ちょうど薬害エイズの時と同じで、功利主義にどっぷりつかった医師によって犯された犯罪。ことばもないよ。自分も同じ立場になったら、同じように立ち上がり戦うだろう。だから、そこになんら疑問はないんだ。

ただ。これはよく読んで欲しいんだけど。

彼が見てきた医療者はたぶん、どの人もこの人も、保身のために右往左往し、極限状態となった人間の成れの果てだ。それを「すべての医師、すべての医療者」に当てはめなければ収束できないような、そんなやるせなさもそこにある。

講演のあとのシンポジウムで、他のシンポジストさんにこんな質問があった。(患者さんの中には、意図的に事実をねじ曲げ、あるいは不可抗力をとりあげて慰謝料を要求する方もいらっしゃいます、その場合はどうしたらいいのですか?)って。企業でいう「クレーマー」。医療機関がねらい撃ちされても不思議はない。

で、医療被害者の会の方は、コメントを求められてこうおっしゃった。「中には、事実を誤解して訴えられる方もいるかもしれませんが、誠意を持って説明すればわかってもらえるはずです」って。

こころは。すべてリセットされる。もう同じではあり得ない。自分だってそうだろう。そう言うに決まってる。

だけどなんて。さみしいんだろう。

    1-31-05  

       

61.「煙草の煙よりうさん臭いね」

えーお正月からトホホな記事の話など。某朝日新聞さんですけど。こんな感じ。

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「男性医師の喫煙率21% 英米の3〜5%に比べ依然高率」

男性医師の04年の喫煙率は21.5%で、4年前より5.6ポイント下がったものの、英米などの3〜5%と比べ依然として高率であることが、日本医師会の調査でわかった。女性医師の喫煙率は5.4%でほぼ横ばい。2月には喫煙による健康被害の防止を目指す世界保健機関(WHO)の「たばこ規制枠組み条約」が発効する見通しで、日医は医師を含めた全国的な禁煙推進活動を進めることにしている。

調査は00年に続いて2回目。日医の会員約15万9000人の中から無作為に抽出した4500人を対象に調べた。回収率は85.9%。

日本たばこ産業(JT)の調査では、成人男性全体の04年の喫煙率は46.9%、女性は13.2%。医師の喫煙率は全体より低いが、他国の男性医師は米国が3〜5%、英国が4〜5%、ニュージーランドが5%などで、日本は4倍程度の高率日医は未回答の中に多くの喫煙者がいる可能性があり、「実際の喫煙率はもっと高い」と推測している

日本人医師の喫煙率を年代別にみると、30歳代が男女とも最も高く、男性28%、女性6.9%。担当診療科別では、男性では呼吸器科と循環器科、小児科などで20%を割り込んだ。肺がんや虚血性心疾患など喫煙との関連が深いとされる疾患を担当する医師は喫煙率が低い。女性では小児科が1.7%で際立って低かった。

喫煙に対する考え方を聞いた質問では、「医師は立場上、喫煙すべきではない」「患者は喫煙すべきではない」との回答が男女とも4年前を上回った。

平成16年1月3日 朝日新聞朝刊より

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見出しにあるように、日本の医師はなんて無自覚でケシカラン!、というニュアンスがプンプンする記事なんですが、データの扱いがあまりにずさんだなー。たとえばね、日本は4倍程度の高率とありますが、たとえば米国成人の喫煙率は22.5%と日本の半分以下。となると米国医師の喫煙率も低くて当然です。この場合は、国民の喫煙率を加味して2倍程度高い、とすべきです。むしろ国民男性の半分が喫煙者という方が衝撃だけどなー。

また、日医は未回答の中に多くの喫煙者がいる可能性があり、「実際の喫煙率はもっと高い」と推測している、という文章はまったくナンセンス。すべてのアンケート調査が同じ可能性を秘めていますから、米国も英国も医師喫煙率はもっと高いかもしれず、日本国民だってもっと高いかもしれない。だってアンケートでしょ?違うの?日本の医者はケシカラン!、という先入観に流されて、そこだけ決めつけちゃった。警察の見込み捜査を批判できませんねーこれじゃ。

ちなみに同じデータから共同通信が別の記事を出しています。そこでは、「医師の喫煙率は欧米に較べて高いが、呼吸器科や循環器科のDrは低い。専門科は煙草の害を実感し、すでに喫煙から手をひいている」、といった内容になっています。読者の健康意識を高める意図が感じられますね。

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「男性医師の喫煙率は22% 呼吸器、循環器科で低く」

 日本医師会が7日発表した全国の会員医師を対象にした喫煙意識調査で、4年前に比べ男性医師の喫煙率が27・1%から21・5%に低下し、特に喫煙と関係の深い疾患を担当する医師などの禁煙傾向が目立つことが分かった。米国や英国に比べると高いが、一般国民の半分以下の水準だという。

診療科別の喫煙率は、呼吸器科が14・9%、循環器科が15・5%と特に低く、耳鼻咽喉(いんこう)科は4年前の33・3%から18・5%と大きく低下。肺がんや虚血性心疾患、咽頭(いんとう)がん、舌がんなどの診察で、医師自身が喫煙による健康被害の怖さを感じている実態を反映した形だ。喫煙率が高かったのは産婦人科(26・3%)、泌尿器科(26・2%)など。

女性医師は全体で6・8%から5・4%に低下した。

平成15年12月7日 共同通信より

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国民の健康を啓蒙する記事と、特定の職種をおとしめたい記事と。ま、報道する側の心理がばればれだねー。やれやれ。

    1-4-05