料理の味付けの基本は「さしすせそ」、すなわち、さ=砂糖、し=塩、す=酢、せ=醤油(せうゆ、と書いたりするようです)、そ=味噌を指す、とはよく聞く話。さて、これにはどんな科学が隠れているのでしょうか。
砂糖は分子量が大きく、なかなか食材の内部まで浸透しません。そのため砂糖を入れるのは早い方がいいです。特に、塩や醤油を先に入れると、食材に甘味が付きにくくなります。
本来、細胞膜は砂糖(体内では分解されてブドウ糖になっています)を通しにくいようになっています。このため、熱を加えて細胞間の結び目をほどいたり、時間をかけて調理をする必要があります。
塩は食材への浸透力が高いのであとから加えます。また、浸透圧を高めるので、これを利用した調理法もしばしばあります。青菜に塩、というように、野菜に直接振りかけるとしんなりしてしまいますが、これは野菜の水分を奪ってしまうから。漬け物がよい例です。
また、塩には細胞蛋白の安定化作用があるので、ステーキを焼く時には、焼く直前に少量をつかいます。早過ぎると、肉汁の旨味が外に出てしまいます。
ホウレン草を茹でる時、塩をひとつまみ入れますが、これも細胞の安定化作用。葉緑素の変性を押さえ、色あざやかに茹で上がります。また、茹で水に少量の塩を加えることで、茹で水の浸透圧が少しだけアップし、ホウレン草が水っぽくなるのを防ぎます。細胞外に水を引き出す原理なのですが、塩が多過ぎると逆効果です。
酢のすっぱさは主に酢酸によるものです。揮発性ですので、過熱する場合はなるべく後で加えます。また、葉緑素は酸性の条件で退色するため、野菜に酢を入れて長く煮ると色合いが悪くなってしまいます。一方、酢は多彩なアミノ酸を含むため、旨味目的で使用することも。その際は過熱の早い段階から加えることになります。
醤油も味噌も蛋白やアミノ酸の風味を楽しむものなので、仕上がりに入れる事が望ましいです。ただ、醤油の場合は、その味をしみ込ませる目的で最初から煮汁に加えることもあります。
こんなふうに、何気ない習慣やことわざの中に、いろいろな理由が隠れていることもよくあります。もしかして近代化学も、まだまだおばあちゃんの知恵袋にはかなわないのかもしれませんね。
5-11-08 kuu