B級陶芸員の登り窯体験記(窯焚きまで)



登り窯をご存じですか?

北国で子供達が雪で作る「かまくら」に似た形をしています。ドーム型です。高さは私の身長くらいでしょうか。山の斜面を利用してそれが連なっています。四つ連なれば四連窯です。耐火レンガを積み上げて、隙間を土で塞いであります。その中で焼きます。
登り窯を横から見た図

坂の一番下にあるドームを一房、次が二房・・・と言うのだそうです。一房には焚き口があります。かまくらの入り口みたいなものです。そこで薪を焚きます。それぞれの房はつながっているため暖かい空気はどんどん上に昇るしくみです。各房の横にも出入り口らしきものがあります。どうやらそこからも薪を投げ込むようです。

さてそこまでは良いのです。ガスや灯油ならいざ知らず、本当に薪だけで1260度なんて言う温度になるのでしょうか。一体どのようにして火をつけ、薪をくべるのでしょうか。どうみたってきつい仕事に間違いはありません。陶芸教室のきれいに管理されたガス窯を数回見ただけの私にこの「四連窯」を体験する機会が訪れました。しかも初窯焚きだそうです。この機会を逃すわけには行きません。で、どうやるのか。我々B級陶芸員の仲間達は考えました。

「あらかじめ各房に薪を積み上げておいて、何らかの方法でそれに火をつけるのではないか」

「いや、薪だけでは無理だろう。最初はバーナーか何かを使うに違いない。」

「登り窯は昔からの焼き方だ。そんな昔にバーナーなどはなかったのではないか。」

「こんな小さな薪を1本づつ投げ込んだところで入れた瞬間に燃えて無くなってしまうのではないか。温度など上がらないだろう。」

「薪を投げ込むのは無理だ。作品に当たったら割れてしまう。」

「投げ込んでも作品には当たらないようにドームの中は二重構造か何かになっているに違いない。」

もう、ケンケンガクガク。ご存じの方がいらっしゃれば大笑い間違いなしです。知らないってことは結構楽しいものです。論じているのは大の大人。しかもちゃんと各分野で仕事をしている人たちです。実際、化学兵器?は何も使わず、燃料は薪だけでした。しかも二重構造にも何にもなっておらず、「何とか作品に当たらないように気を付けて」薪を投げ込むという何とも原始的な?方法でした。

薪は木なら何でも良いと言うものではないそうです。松です。それも赤松。松ヤニ、つまり油分が温度を上げてくれるのだそうです。そうですよね。その辺の廃材じゃそんなに温度が上がるはずないですよね。下世話な話、この松の薪は直径数センチ、長さ40センチくらいの1本が20〜30円もするのだそうです。それを惜しげもなく投げ込むとは私みたいな貧乏人には到底考えられません。

さて、まずは大量に素焼きされた作品に釉薬(ユウヤクまたはウワグスリと読む)をかけなければなりません。植木鉢のような状態の作品が箱にぎっしり、それが何箱も積み上げられています。これをひとつひとつ取り出し、ゴミ出しでよく見かける水色の大型ポリバケツに入った数種類の釉薬をかけわけます。ドロドロした冷たい液体を手や機械で攪拌します。我B級陶芸員たちは楽しいので絵付けなどもしてしまいます。ひょっとしたら絵を付けたことで価値が下がってしまうかもしれません。かえってそれが見どころになったりすると嬉しいのですが・・・。

釉薬をかけた作品


釉薬がけだけで5人がかり、8時間ほどかかりました。釉薬をかけたら重ねられないので庭中に広げた板の上に並べます。見事な眺めですがこれを全部窯の中に詰める作業が待っているかと思うと少々うんざりもします。

窯に詰め終わったのは夜の9時。今度は7人で3時間かかりました。詰める作業は狭い房にひとりが入り、レンガの間から定食屋のトレー位の大きさの板に載せられた作品を渡され、並べ、一面に(この場合トレー8枚)並べたところでそれぞれ三点に足を置き、積み重ねます。中腰のきつい体勢です。トレー1枚に小さなコップなどでしたら6〜7個、大きいものだとひとつ乗せるのがやっとです。耐火温度の低い土を使った作品は温度の低い下の方に並べるなどの配慮も必要です。

一房から順に窯に詰めます


今回の場合は5段、全部で100枚ほどのトレーを使いました。実はこのトレーもただの板ではなく、結構重い。高温に耐え、変形もしない特殊な素材でできています。しかもこの板には万一溶けた釉薬が付着するのを防ぐため、アルミナという液体を1枚1枚塗ってあります。窯に詰め終わると各房の出入り口のレンガを元へ戻し、薪をくべるレンガ1個を除いて土で固め、ふさぎます。

作品を詰め終わったら土でふさぎます


慌てて風呂に入り、ご飯をかき込み、ついに点火したのは午後11時のことでした。
ホームへ戻る・お便りくださいね。 初めての陶芸へ戻る    登り窯体験記(窯焚き)→