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全国学童保育連絡協議会 指導員学校西日本会場 特別分科会 01/06/03
学童保育労働の専門性探究のための方法と組織化
―教師教育研究と学童保育実践研究の新しい動向から学ぶ―
石原 剛志(長野大学)
1)はじめに
●「指導員の仕事」=子どものいのちを輝かせ、親の権利を保障する仕事
僕は、九年前ここに入りました。ちょうどここにいらっしゃるWさんが、父母会長の時で面接を受けました。学童のことは、全く知らずに、サラリーマンをしていたので、背広を着て面接に着いたんですよ。そしたら、遊んでくれればいいからと言われ、遊んでいればいいのかと思っていたところ、三ヶ月後位に子どもの前歯を折るほどの怪我をさせてしまったんです。それは、ショックで遊んでいるだけでいい仕事ではないと思いました。それから、いろいろ学習会へ参加したり、勉強してきて、この仕事の重要性がわかってきました。子どもの人権を守る職場と思えるようになりました。(座談会での指導員の発言。『弥富・中根学童クラブ二〇周年記念誌』2000年12月より)。
2)教職の専門性研究の動向から学ぶこと
2/1)米国教師教育研究における教師独自の「専門職」モデルの構築
● 伝統的な「専門職」モデルに対する、教師独自の「専門職」モデル=「反省的実践家」モデルの構築(佐藤学『教育方法学』岩波書店)
- 客観的な科学や合理的技術の習得にとどまらず、それを活用し展開する実践的な「知」にもとづき、状況にそくして問題解決をする能力。
- カリキュラムは、「事例研究」重視。
- 記録は、教師の一人称の文体でストーリーとして記述。子どもの個人名も登場。⇔近年の学童保育実践記録に共通。
2/2)教師独自の専門性と、教師教育のあり方の問いなおし
● 教師の「専門性」追及の新しい研究動向……「技術的実践」から「反省的実践」へ
-
「技術的実践」モデル=教材研究や発問、指示の技術など「見える実践」に専門性を追及。
-
「反省的実践」モデル=その場その時の「出来事」の意味を読み取り即興的に対応していく教師の省察や選択や判断(実践的思考様式)という「見えない実践」で専門性を追及。
- なお、指導員の専門性(の特質)を、「コミュニケーションの技能」に中に求める二宮氏の議論は注目される(二宮厚美「21世紀に生きる学童保育指導員」、二宮/大阪学童保育連絡協議会編『子ども時代を拓く学童保育』自治体研究社、2000年)。これらの研究動向に、共通した側面やそれぞれの議論の独自性を検討する必要があると思う
● 実践研究の対象
- 「教師の専門性の内実が『見える実践』ではなく、実践過程における反省的思考という『見えない実践』にあるとすれば、授業の研究は、発問や技術という見える対象の分析から省察や選択や判断という見えない対象の解明へと中心を移さなければならないだろう。」(稲垣忠彦/佐藤学『授業研究入門』岩波書店)
● 実践研究の素材としての記録
- 「授業研究の記録資料として、教室の出来事を映像を含めて提示する『ビデオの記録』と実践者の葛藤と思考を記した『物語の記録』が活用されなければならないだろう。」(前掲、p.114)。
● 専門性を高めあう日常的な指導員コミュニティやネットワークの形成を
- 「教師としての成長は、決して一人で達成されるものではない。実践を創造し合う専門家の共同体への参加を通して、『実践的思考様式』も形成され伝承されていく。授業の具体的な事例の検討を中軸にすえ、その語り合いを通して専門家として育ち合う関係が、教職生活を根本において支えるのであり、この学び合い育ち合う関係づくりとネットワークづくりが、学校でもサークルでも追及されなければならないだろう。」(同前)
- 学童保育指導員の技能は、基本的には個人の能力として発揮されるコミュニケーション技能といえるが、その指導員が形成している指導員コミュニティによって、その技能に与える影響は相当違う。子どもとのささいな場面から、その意味を読みとる力は、こうしたコミュニティのなかで鍛えられる。
3)学童保育労働の専門性探究のために
3/1)学童保育実践研究の新しい動向
- 研究者と実践家の共同作業による実践記録の刊行……大阪保育研究所/白畠美智子著『仲間のなかでひかるとき』労働旬報社、1995年。森崎照子/近藤郁夫『心の共鳴』法政出版、1996年、同『学童っ子の四季』法政出版、1997年。同『心を抱く』ひとなる書房、1999年など。
- 全国学童保育連絡協議会『指導員の仕事』、『学童保育の実践記録集』など。
- 全日本建設交通一般労働組合全国学童保育指導員部会『学童保育所保育指針』(2001年)
- 学童保育指導員専門性研究会(会長二宮厚美神戸大教授)結成(2000年7月)、機関誌『学童保育研究』創刊(2001年4月)。
3/2)上記の動向から学んだ学童保育労働の専門性(高度な技術に基づく、高度な技能)
- 否定的にみえる現象からも子どもの「命の輝き(発達要求)」を捉え励ます力
- 子どもが「依存しながら自立しうる」ような、子どもと関係を取り結ぶ力
- 子どもたちが「喜怒哀楽」を分かちあえる生活集団づくりをささえる力
- 子どもの遊びと生活を豊かにする(生活の中から教育的価値を実現する)力
- 個々の親の子育てと、その共同化をささえ、共に子どもたちを育てる力
-
4)学童保育労働の専門性探究のために
4/1)基本要件とそのサイクル
- 実践の記録化
- 記録を書くことは指導員にとっては子どもの姿だけでなく、自分の行為のありようをみつめなおす対象化・意識化の意味をもつ。「反省的実践」にとっても重要な意味をもつことになる。
- その場その時にいなかった人と分かちあう素材の形成の意義。
- 記録の集団的検討、分析
- その場その時にいなかった人と分かちあう
- 個別事例のなかに普遍性を探り、見通す
- 概念の吟味と体系化、実践の理論化(近接分野の理論の検討を含む)
- 理論を媒介とした実践へ(理論を実践に活かす)→実践の記録化へ
4/2)その必要性(註1、2参照)
- 言葉の力、概念のもつ機能ゆえ
- 指導員コミュニティの形成と互いの切磋琢磨のために
- 研究者との共同のとりくみのために
註1)「人間は、言語を使うことによってはじめて自らの行為について、その価値や意味について思考し、その場その時にいなかった人と共有し、さらに今後の自らの行為を見とおすことが可能になる存在です。…自らの「仕事」の専門性を高めていこうとするとき、実践を記録することや実践における概念を吟味し体系化していくことを避けるわけにはいかない根本的理由はここにあります」(石原剛志「指導・受容・共感の概念と学童保育実践」『学童保育研究』創刊号、2001年4月)。
註2)「概念で理解しないで、ただ具体的経験だけが理解されてしまうと、類似的経験が繰り返されるということになってしまう。経験と理論的総括が発展しなかったり、理論を媒介にした多様な経験が広がっていかない。そうするとどうしても学童保育指導員の専門性などもきちっと分かってもらうとか、理論的に深めるという作業も不十分に終わる」(「座談会 いま、学童保育指導員の専門性を問う」における二宮発言、前掲書)。
4/3)以上を支える主体を形成するために
- 日頃から実践研究の主体としての、学童保育指導員コミュニティの形成
- 研究運動の組織化(おそらく戦後の学童保育運動の最も弱い分野)
- 労働運動の組織化(労働者としての賃金・労働条件を確立することと、専門的な力量を身につけることは、車の両輪のようなもの。どちらかだけで実現しない)。
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