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授業を終え、廊下へ出た途端、Sさんに云われた。
 「今日の話は難しすぎて、まるで判りませんでした。
 無責任な受け取り方だが、こちらにはそうだろう頷けるものがある。
 申し訳ないという気持もないわけではない。
 寒いなか足を運んで、決して安いとは云えない月謝を払って、
 それで理解できない話を聞かされたのでは、
 確かにやりきれないだろうと思う。
 だけど、私は指導方針を変える気はない。

 私のひそかな分類によれば、
 現在の塾生には五段階ほどのランクがある。
 それぞれに発想力、構成力、表現力など得手不得手はあるにしても、
 総合的に見てかなりの開きがあるのだ。
 その一番上のレベルに合わせて、
 私は作劇のテクニックを伝授しているつもりだ。
 従って、入塾して日も浅い初心の人たちには、
 従いて来て欲しいとお願いせざるを得ない。
 反ってその方がいいという思いもある。
 私自身、若い頃には師匠から繰り返して云われた。
 「判ろうとしてはいけない。自分の中で答を出そうとしてもいけない。
 ただ、云われたことをそのまま心の中へとどめておけばいい。
 そうして自然に蕾がほころぶのを待つのだ」と。

 あと一年、前述したように、私は私なりの語りかけを続けるつもりだ。

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