その他の番組(NHK系)

 

 ここではその他のNHK系の教養番組を特集したい。海外ドキュメンタリーやNHKスペシャルなどが中心になると思われる。

 

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12/9 NHKスペシャル「激動中国 訴えられたカリスマ経営者−追跡・ブランド騒動−

 中国の現状を伝えるこのシリーズだが、今回は中国での合弁企業の紛争。そもそもは中国国内の飲料メーカーのワハハとフランスのダノンの両社が合弁企業を作ったのだが、ワハハが合弁会社に無断でワハハのブランドを使って商品展開を始めたと言うことで訴えたらしい。

 ダノンにとっては中国進出の足がかりを、ワハハとしては資本と技術を導入したいと言うことで、ワハハのブランドを合弁会社に委譲するということになっていたという。しかしワハハの言い分としてはその合弁会社の持ち株比率が知らない間にダノンに51%を押さえられており、事実上乗っ取りにあってしまい、ワハハの利益が吸い上げられることになったという。

 中国では現在、国内ブランドの保護に力を入れており、国内品に対するコピーに対する取り締まりを強化しているとのこと・・・しかしそれなら、日本製品に対するコピーも取り締まってくれよな・・・。

 ワハハの側はダノンに反撃を仕掛ける。中国の商標局が、ワハハが商標を合弁会社に対して譲渡したいと申請したのに対し、商標局の規定によりそれに同意しないと通達してきた文書を提出。つまり合弁会社はそもそも商標に対する権利を持っていないと主張したのである。それに対して今度はダノンも反撃、北京の裁判所に商標局を訴えた。その結果、「ワハハは商標譲渡に当たって一度も適正な申請を行っていない」という言質を政府から引き出したのだとか。後は訴訟合戦の泥仕合になっている模様。正直なところ、ここまで泥仕合になると、そもそもどちらに理があるのか分からない。しかしこのまま行くと、どちらにも利はなくなる可能性がある。

 中国が自国ブランドの保護のために乗り出し始めたというのは分かった。予想通りであるが、中国も自国に競争力のあるブランドが存在しないうちは知的財産権を無視しようとするが、自国でブランドが発達し始めると、知的財産権のことを言い始めた。これはかつての日本と全く同じ経緯。中国とていつまでもコピー商品ばかりでは、国全体の信用に関わって国益を損ねるので、そろそろ動きが出るだろう。ただまだ国内向けと海外向けにはダブルスタンダードがありそうである。

 なおワハハとダノンのどちらが正しいのか(それとも両社とも間違っているのか)は分からないが、ワハハ側の戦略がやたらにナショナリズムを煽る上に、メディアまで動員しているのは危険性を感じる流れ。合弁の紛争が起こるたびにこういう方向に話が進むのなら、日本企業も要注意だろう(特に日中は過去のいきさつもあることだし)。こういうところは番組ではあからさまには語っていないが、いわゆるチャイナリスというものも感じさせられる。まあ中国人は歴史的に見て海千山千ですから、日本人ごとき島国人が対等に渡り合おうなんてのは並大抵なことではないのが当然だが。中国人はメンタリティーとしては、日本人よりも欧米人に近いと考えていると間違いありません。合理主義でなんでもあり。顔立ちが似ていることは、必ずしも中身が似ているということを意味しないということであります。

 この紛争に関しては、どこかの段階で政府が介入して、両社痛み分けって形で決着しそうな気がするな・・・。中国政府にしても、海外資本が一斉に逃避するとやばいから、一方的にワハハを擁護するってわけには行かないと思うし、海千山千という点ではフランス人もなかなかですから。

 

9/29 解体新ショー「乗り物の揺れ&しゃっくり」

 まず最初のテーマは、なぜ乗り物の中で眠たくなるか。これについてはやはり揺れが関係しているという。ただ揺れについては眠くなる揺れと逆に寝られない揺れがあるとのこと。東京工業大学の木村仁助教の調査によると、路線によって眠っている人の比率は大きく変わり、それは揺れのパターンと相関があったという。ポイントは2ヘルツ(毎秒2回)の揺れで、これが多い路線ほど寝ている人が多かったとか。これより高い揺れ成分だと、内蔵が共振したり(5ヘルツ)など、体の各部分が共振によって強烈に揺れてしまうので不快感が大きくなって眠れないとか・・・は良いのだが、なぜ2ヘルツで眠くなるのかについては母体内にいる時の環境に相関があるのではとのことだが、これが今ひとつ不明確。やはりそれが災いしたか解体率は71%とそう高くない。

 次はしゃっくりだが、しゃっくりについて調べたところ、しゃっくりの状態とは横隔膜が下がって空気を吸おうとしているにもかかわらず、声帯が閉じて空気の流入を塞いでいるという。そのためにあの音が出るのだとか。なおこんな矛盾したことが起こる理由については、進化が絡んでいるという論文があるとか。それによると、水中で肺が生成した時(成長過程のおたまじゃくしなど)、水が入り込むのを防ぐために中で気道が塞がれるようになっており、それが太古の反射して残っているのだという。人間の場合も母体内で肺に羊水が入り込むと溺れてしまうので、やはり気道が閉じるようになっているのだという。この反射は脳によって押さえられるようになるのだが、子供の場合はまだ脳が不完全なので子供の方がしゃっくりが多いとか。これについてはかなり綺麗に説明がついた印象、と言うわけで解体率94%とかなり高い結果。

 以上。しかしやはり最初のお題については説明不十分な印象はぬぐえない。これだと「2ヘルツ以外では寝られない」理由はよく分かるが、2ヘルツで眠くなる理由としては曖昧。その辺りの説明不足を感じたのは私だけでないということは明らか。その辺りはリターンマッチがあっても良いかも。

 

9/22 解体新ショー「いびき&歯ぎしり」

 いびきは軟口蓋が揺れることで起こるのだが、動物はいびきをかくかどうかを夜の動物園でチェック。しかし動物はいびきをかいていない。最後にライオンの檻をのぞきに行ったが、やはりいびきはかかない。しかししばらく待っていると、おもむろにゴロンと仰向けに。途端にいびきをかき始める。いびきをかくのは仰向けになるのがポイントである。

 また鼻呼吸するといびきをかきにくくなると言う。逆に鼻を塞いで口呼吸にしたら、普段はいびきをかかないという女性達がいびきをかき始める。

 次は歯ぎしり。最初は「歯ぎしりはしたことがない」という人の歯に薄いフィルムで出来た「歯ぎしりチェッカー」をつけてもらって調査。すると全員が歯ぎしりをしていた。歯ぎしりには実は音が出るものと出ないものがあるのだという。音がするのは相当な力がかかっている状態。寝ている時にかみしめる力を測定すると、起きている時に測定するよりも力が上がっている。寝ることによってリミッターがはずれて、その結果音が出る歯ぎしりになるのだとか。

 ここで実験。歯科大学の研究生がモルモットになって、普通に寝てもらった時と、夕食に大嫌いなグリーンピースをたっぷり食べてもらった上に、寝る前には嫌いなホラー映画を、さらに布団は寝心地の悪いものというストレスのかかった状態で比較。すると歯ぎしりの力が3倍にもなったという。人間はストレスがかかると強い歯ぎしりをするのだという。これはいわばストレス解消なのだとか。

 と言うわけで、最後はいびきのプレゼンを行った麒麟と、歯ぎしりのプレゼンを行った劇団ひとりでの会場での投票。結果は劇団ひとりの圧勝。やはり「歯ぎしりはストレス解消」というのが目からウロコだったか。

 今回から投票の形式が解体率ではなく対戦形式になった。まあどちらかというとこの方が明確だろう。ただこの場合の問題点は、2つのネタをやはりある程度の関連性のあるネタで持ってくる必要があるという制約。例えば片方が「酔っぱらい」で、もう片方が「お腹の出っ張り」だったら、これを対決と言っても異種格闘技になってしまう(笑)。

 ただ個人的に言うと、これに出てくる情報で驚かされることってあまりないんだな。大抵は私が既に知っている範囲内の話ばかりなので・・・。

 

9/15 解体新ショー「つむじ&耳のひだ」

 今回は出演者自らが「地味」というネタ2つ。

 まずつむじであるが、これはなぜあるかと言うよりも、自然にできたものだという。人間の頭に毛が生える場合、毛根は周辺部から出来てくる。その時に新しい毛は周りの毛となるべく方向を合わせようとするので、最後に残るのがつむじになるのだとか。なお動物の毛の方向は上から下へとなっているが、それは雨がかかった時に速やかに流れるようにだという。ただ人間の場合、手の先と足の根本は逆向きの方向に毛が生えており、このことから太古の人間は、雨が降った時にかかんで頭を抱えるような姿勢で雨を凌いでいたのではと言うのだが、これは実際は半信半疑。出てきた先生も「そう言う考え方も出来るが、誰も見た人はいないわけで・・・」と煮え切らない発言。結果として解体率59%という史上最低の結果に。

 次は耳のひだ。では実際にこのひだがなかったらどうなるかと言うことを音大生に実験台になってもらって調べている。彼女たちの耳のひだを粘土で塞いで実験したところ、左右の音は分かるが前後上下の音の位置は分からないという結果に。人間は耳のひだで複雑に反射した音のパターンにより、前後上下を判断しているというのである。なおこれは人によって微妙にパターンが違うはずで、個々人が自分自身のパターンを持っているはずとのこと。思わず「なるほど」と私も納得したが、やはり解体率も97%と高率。

 以上「地味なネタ」2題。それにしても相変わらず、どうでも良いようなネタが多い番組である(笑)。

 

9/9 NHKスペシャル「激動中国 民が官を訴える−土地をめぐる攻防−」

 中国では現在、土地の権利をめぐっての騒動が各地で起こっているという。そもそも社会主義の中国では土地は国家の所有と言うことになっているが、改革開放以来、住民に土地の使用権を売却している。しかしその土地使用権を再開発などを理由に一方的に停止して、強引に立ち退きを迫る例が増えているのだという。

 その背景には地方政府と開発業者の癒着があるようである。地方政府は開発業者に土地の使用権を売却し、それを元に開発業者が住民の立ち退きを迫る。その手口たるや、いきなり解体業者が乗り込んで建物を破壊するなどと、ほとんどやくざの手口である。

 補償も全くないまま追い出される住民はたまったものではない。しかし最近は住民の側も地方政府を相手取って裁判を起こす例が増加しており、そのような訴訟を手がけている弁護士も活躍している。

 番組ではある地方において立ち退きを迫られた住民たちを追っていたが、その内容がすさまじい。県側は露骨に住民に圧力をかけ、裁判中だというのに力づくで住居の解体をおこなう始末。しかもそれに抗議して住民が開発業者の事務所に押しかけると、暴力行為を口実に住民側に一方的に落ち度があると決めつけて、住民側のリーダーを拘束しようとする。

 地方で行われる一審は住民側も予想通り、県政府の圧力で住民が敗訴。しかし住民リーダー達は検挙から逃れるために潜伏しながら、弁護士と連携して上級審への控訴を行う。県外で行われた上級審では、一審の判決を破棄して差し戻しの判決が出る。

 まさにすさまじいという状況。日本でも権力側を相手に裁判を起こすとまず勝ち目がないというのに、社会主義の中国においてそれがどれだけ困難なことか。それにも関わらず立ち上がる住民が増えていると言うことは、中国人の権利意識が高まってきているのと、それだけ状況がひどすぎると言うことの反映であろう。

 なおこれだけトラブルが頻発するのは、明らかに県の役人と開発業者の癒着があるだろう。調べてみると当然のように賄賂の授受などはあるのではないか。まあこの辺りは、中国に限らず日本でも未だにあることだが。果たして中国が本当の先進国になれるかどうかは、この辺りの体質の改善にもかかっている。

 

9/8 解体新ショー「金縛り&早口言葉&酔っぱらい」

 今回はスペシャルという名の総集編。以前に紹介したネタから3つを抜粋である。なおガッテンとは違って、何も足さない何も引かないのまさしく再放送。

 1つ目の金縛りは下の方で登場しているので省略。2つめの早口言葉については「早口言葉はなぜ喋りにくいか」というもの。結論は「舌などが規則的に動けないような言葉を選んでいるからだ」というもの。実際に「竹藪に竹立てかけた」の「たけたてかけた」を発音する時の舌をMRIで見ると、舌が前に言ったり後ろにいったり複雑である。これを「たけたけたけた」と規則的にすると突然に発音しやすくなる。つまりは舌の運動能力らしい。

 3つ目は「なぜ酔っぱらいは同じ話を繰り返すか」。実際に酔っぱらいを観察して、同じ話題が何度も登場しているのをカウントしているのは笑える。これについてはアルコールの働きで短期記憶を司る前頭葉の上部の働きが弱るからというもの。これに比べると長期記憶を司る前頭葉の下の部分は影響されにくいらしい。だから酔っぱらいは、昨晩のことは覚えていないのに、家には帰ってくるのだとか。つまりは短期記憶は長期記憶ほど強固ではないということらしい。

 というわけで、過去の3本のネタが1本にまとまってしまった。これはやっぱり番組の中身が少々薄いような。まあ肩の凝らないのがこの番組の特徴の一つではあるものの。

 

9/1 解体新ショー「老化」

 今回のテーマは老化。老化は防げるのか防げないのかで激論という趣向。

 まずは老化は防止できるという観点からのプレゼン。ここで登場するのはポリフェノール。かつて楊貴妃は老化防止のためにライチをわざわざ取り寄せていたとのことだが、それはポリフェノールの効果だという。ポリフェノールは細胞を傷つける活性酸素を処理するので老化を防げるという話。

 これに対して、老化は防止できないという観点からの反論。活性酸素は年齢に関係なく運動などをすると激しく発生し、それによる細胞の損傷は修理しきれないというもの。また最近に評判になった、ほ乳類の一生での心拍数はほぼ同じという学説も登場。それによると人類の寿命は大体50年で、その後の30年は医療の進歩などによるオマケの人生だとのこと。というわけで、ここで東京工業大学の本川達夫教授が「おまけの人生音頭」を披露・・・なんじゃこりゃ(笑)。

 これにまた再反論が。マウスとほぼ同じ体の大きさのシマリスは、マウスが3年程度の寿命なのに対し、11年も生きることが知られており、それの理由が冬眠中に作られるHPと呼ばれるタンパク質の働きであることが分かってきたとのこと。で、これを人間に応用すれば寿命が3倍ぐらいになるのではというもの。またベニクラゲという生物は、自ら若返ることが出来るということが発見され、これも人間に応用できたら・・・というもの。そこでここで京都大学の久保田信准教授は「僕の名前はベニクラゲ」という曲を披露。なんやねん、これ。

 最終投票では「老化は防げない」の方の辛勝であったが、まあそれは当たり前かな。実際に老化は防ぎようがないんだから。大体不老不死なんて実現したら、地球が人間であふれてしまう。

 どうも構成にメリハリのなかったこの番組だが、対決形式に持ってきたのは一つの実験か。完全に成功したとは言い難いが、この形式の方が盛り上げやすくはある。それにしても、番組中で一番盛り上がったのが、両研究者の怪しい歌とは・・・いろいろな先生がいるんですね。本川先生の歌は昭和歌謡調で(藤山一郎とかみたいだ)、久保田先生のはそれよりも若干新しい(一応戦後調かな)というのは正直笑えたが。ちなみに私が歌を作ったら、多分巨大ロボットもの主題歌調になりそう(「限りあるこの命、燃やし尽くせ平和のために」とか・・・笑)。

 

8/25 解体新ショー「おなかの出っ張り&薄毛」

 今回のお題は特に男性にとっては気になる内容。

 まず最初におなかの出っ張りであるが、これは脂肪が腹に蓄積するため。ただ脂肪がなぜ腹にわざわざ蓄積するのかは不明。動物によっては背中に溜まったり(ラクダ)、尻に溜まったり(ヒヒ)なと様々。番組では脂肪が腹に溜まることに有利さがあるかを調べるため、脂肪に見立てた5キロのおもりを、背中や首回りや尻や腹につけて、反復横跳び、階段登り、短距離走などをやって、短距離走では腹が勝ったとしたのだが・・・・こんなもの個人差もあるし、こんな実験で言えるのか?・・・と思ってたら番組自体もそのことをあっさり認めてしまっている(笑)。いったい何のために実験したのやら(カラフルなつなぎを来た連中が、ゴレンジャーの主題歌をBGMに登場したのだけは笑えたが。

 で、おなかにつく理由は今ひとつだが、おなかにつくメカニズムについては、腸間膜と大網と呼ばれる部分にある脂肪細胞がふくれて脂肪を蓄積するのだとか。ちなみに脂肪細胞は一杯にふくれると分裂して増えるそうな。恐ろしい。

 2つ目のネタは薄毛。これは昔からいろいろと話題にはなってきたことのようである。男性ホルモンが影響しているのではと言われ出したのは、1942年のエール大学のジェームズ・ハミルトン博士の研究によっているという。それは去勢手術をしている男性には薄毛が少なかったことに基づいているとか(彼らに男性ホルモンを注射したら毛が薄くなったとか・・・番組出演者も言っていたがひどい実験だ(笑)。

 なお最近の研究では、他に多くの物質が作用することになっているらしい。5アルファリダクターゼ2という酵素が男性ホルモンの働きを強化し、それが遺伝子に働きかけTGF−ベータ1と言うのが出来れば薄くなり、ひげなどの場合は逆にIGF−1というものの作用で濃くなる・・・とのことなんだが、今ひとつよく分からん。ただ今までの経験として「胸毛の濃い男性ほど頭が薄い」という経験則を感じている。

 何か今ひとつパッとしないという印象の内容。やっぱり「なるほど」というすっきり感がないんだな・・・。

 

8/11 解体新ショー「腹筋の割れ&銀紙を噛んだ時の痛み&かき氷頭痛」

 今回も先週に続いて小ネタ集。

 1つめはなぜ腹筋が割れるか。これについては左右の腹筋に対して横に腱が通っているので、腹筋が発達するとその腱に押されれて腹筋が割れるとか。またこの腱には個人差があるので、腹筋の割れ方は様々になる模様。それにしてもBGMに「キン肉マン」とはまたコテコテな。

 2つめは銀紙を噛んだ時に感じる痛みについて。これは歯に治療用の金属などを詰めてあれば、その金属との溶けやすさの違いで、アルミが溶けて電気が流れるのだとか(専門用語ではイオン化傾向が違うというのだが、そう言う用語はこの番組では一切使用しない)。なおそれではということで、番組では数人を直列につないで、アルミを噛んだ時の発電で電子オルゴールを鳴らすという馬鹿げたこともしていた。馬鹿げているが、確かに電気が流れているという証明ではある。

 最後はかき氷を食べた時の頭痛について。これについては、のどに対する刺激が脳に届く時に、神経が交差する三叉神経核で他の神経と混信して、他の神経に刺激が漏れてしまうことが原因とのこと。ちなみに番組では実際にかき氷頭痛が発生している時のMRIをとっていたが、脳の血管等には異常は現れていなかった。

 日常生活の細かい目からウロコなテーマを取り上げていたという印象。銀紙での馬鹿げた実験などは、何やら初期の頃のガッテンのノリに近いようなものがあった。そう言えばあの番組も、知らない間にだんだんと保守化していたな。基本的にはこういうくだらないノリは結構好きだったりするんだが。まあネタ自体は、2と3については今更聞くまでもなく知ってはいたが。

 

8/5 NHKスペシャル「核クライシス1 都市を襲う核攻撃〜地表爆発と高度爆発〜」

 核の拡散などで都市が核攻撃を受ける危険が問われているが、その際に注目すべき攻撃のタイプとして2つがある。1つはテロリストなどが持ち込んだ核兵器が地面の上で爆発する地表爆発、もう一つはミサイルなどで打ち上げられた核ミサイルが高度数百キロで爆発する高度爆発である。

 去年10月、広島では地表爆発を想定した場合の被害の見積もりを開始した。この分析の結果は驚愕すべきものだった。委員会では、かつて広島に投下された原爆と同規模の核兵器が、爆心地の地表で爆発したとして被害の想定を行った。

 まず核爆発では最初の3秒間に強烈な熱線にさらされるが、この熱線はビルのガラスなどを破壊し、これも凶器となる。さらにビルなどが林立する都市では、爆風の衝撃波はビルなどで反射して何度にも渡って複雑な経路で伝播することが分かった。爆発後の熱線で爆心地の半径1100メートル以内では大火災が起こり、衝撃波で半径600メートル以内の建物は破壊され91%の人が死亡すると見積もられた。爆心地から400メートルの距離にあるビルでは、震度7に耐えられる設計になっているが、その限度の6倍もの衝撃が加わり、建物の構造が破壊される可能性もあり、ビルの中のほとんどの人が死に絶えると考えられる。現在の広島の場合、爆発直後だけで5万5千人が死亡するという。

 さらに恐ろしいのが放射性降下物、いわゆる死の灰の影響である。62年前の原爆は上空600メートルで爆発したことから、放射性降下物のかなりの部分が広く拡散したが、地表爆発の場合はほとんどの放射性物質が爆心地周辺に降下し、投下1時間後には致死量の20倍もの放射線が、6ヶ月後になっても人間が近寄ることが出来ないレベルの放射能が残存すると考えられるとのこと。つまり投下直後の熱線と衝撃波から何らかの方法で逃れられたとしても、避難する人々を致死量の放射能が襲うことになる。様々な被害により20万人以上が死亡すると推定された。委員会の結論は「核廃絶以外に防衛の方法はない」というものであった。

 またアメリカなどで警戒されているのが、上空数百キロメートルの高さで爆発する高度爆発である。この場合は熱線や放射線は地表に到達しないが、爆発の影響で電磁パルスが広範囲に降り注ぎ、電子機器などを破壊する。アメリカによる試算では、一発の核爆弾でアメリカの半分近くの地域の電子機器を破壊することも可能だという。都市のインフラは停止し、運航中の飛行機の制御システムがダウンして墜落、インフラの麻痺による食料不足や疫病の発生などで多くの犠牲者が出ることが考えられ、場合によると直接攻撃よりも被害は大きいという。

 このような事態を受けてアメリカが打ち出した方策が「核兵器による先制攻撃」。つまり核を使う可能性のある相手に対しては、積極的に核で先制攻撃を加えるというものである。しかしこれはより核攻撃の危険を高めるものとして、アメリカ内部でも良識ある人々は強く非難している。

 戦慄するような事態であるが、実際にはここで想定されていないような要素も加わることで、実際の被害はさらに拡大するだろう。たとえば電磁パルスによる電子機器の停止であるが、原発の制御系はどうなっているのか? 多分、電子制御系が使用不能になると手動ででも停止させると関係者は言うだろうが、制御系だけでなく電気系統までがすべて破壊されると、原子炉の停止自体が不可能になってしまう(今回の柏崎原発のトラブルでは、その可能性もあったわけだが)。

 また情報が途絶することによって人々がパニックになったら、そのことによる被害も予想できない。関東大震災ではデマの流布によって朝鮮人などに多くの犠牲者が出たが、それと同様のことが起こる可能性もある。このような被害などは当然ながら「想定外」である。

 結局は核の廃絶しか方法はないと思うのだが、今のアメリカのように、自身は核兵器で他国を恫喝しながら、他国にだけ核の廃絶を迫るという姿勢で通用するのか。当然であるがこんな独善は通るわけもない。より具体的な核廃絶の道を探る必要が人類の生存のためには不可欠なわけである。当然であるが日本はそのリーダーシップをとるべきなのだが、今のポチ政権ではそれはおぼつかない。

 

8/4 解体新ショー「目を開けて寝る人&足のしびれ&エスカレーターでつまずく」

 今回は夏のスペシャルとして「視聴者の疑問にお答えします」・・・って、この番組はガッテンか?

 まずは目を開けて寝ている人がいるがなぜかという疑問。競輪選手学校に潜入しての調査によると、149人中17人が目を開けていたとか。目を開けて寝る人を調べてみると、目が開いた時が一番筋肉の緊張がなくなっているという。実はこれは赤ん坊も同じで、本来は人間は目を開けて寝るようになっているとか。赤ん坊は眼瞼挙筋というまぶたを引き上げる筋肉があるのだが、実はこの筋肉の付け根が脆いため、大人になると多くがここが切れてしまうので目が閉じるようになるとか。また夢を見ている時は人間の目は白目になるとのことで、白目をむいて寝ている人は、眼瞼挙筋が切れていなくて夢を見ているという状態らしい。なお眼瞼挙筋が切れているとまぶたを開ける力が弱くなるので、まぶたに2グラム程度のおもりをつけるとまぶたが開かなくなるとのこと。ちなみに眼瞼挙筋をつなげる手術というのもあるとか。

 次は足のしびれ。これは圧迫によって血流が止まることで神経が麻痺することが原因。そしてジンジン来るのは、血流が回復した時。血流の回復によって神経が急に復帰する時に大量の電流が飛び交うのだとか。なお常に正座をしているお坊さんが実践していたしびれを防ぐテクニックは、足を組み替えたり浮かしたりなど、血流が止まらないように細かく動かしているとのこと(また慣れてくると、神経がしびれに対しての耐性も持つようになるとか)。

 最後は止まったエスカレーターはなぜ登りにくいか。実際に観察をしてみると、二段目でつんのめっているのが分かる。これについては「壊れたエスカレーター現象」として、2002年にイギリスの研究者によって検証されたとか。これによると、脳の高度な部分はエスカレーターが停止していることを認識するが、運動を司る脳の原始的な部分がこれに反応せず、エスカレーターが動いている時と同じ対応をしてしまうからだとか。そして前のめりの姿勢になってしまう結果、つまづくとか。これは慣れた動作などは自動プログラムが脳に組まれることが原因とのことで、番組では歩行器の上でジャンプをしてから、それを降りて目を閉じてジャンプをすると、その場で飛んでいるつもりなのに前に飛んでしまうということを実験している。

 いかにもこの番組らしい小ネタ集というイメージ。なお2つ目のネタが史上最低点を記録したとのことだが、これはカンニング竹山のキレ芸のつまらなさもさることながら、ネタ自体もあまり面白くなかったのでは。実際、1番目や3番目のような目からウロコのようなところはなかった。

 それにしてもこの番組が芸人のプレゼン能力にかなり左右されているという体質は相変わらず、ネタとしてはまずまずなのだが、この作りは少し工夫が必要。

 

7/21 解体新ショー「金縛り&のどちんこ」

 身近な科学的な謎を解き明かそうというのがこの番組の趣旨のようである。スタンスとしてはお気楽極楽より。

 まず一つ目のテーマは金縛り。よく心霊現象の代表のようにあげられる金縛りだが、当然であるがそんな馬鹿げた原因ではなく、100%科学的に証明されている。福島大学で睡眠について研究している福田一彦教授によると、人間の睡眠というのは通常は最初に深い睡眠に入り、しばらくしてから夢を見るレム睡眠に入るのだが、そのリズムが乱れて入眠していきなりレム睡眠に突入した状態だという。番組では被験者の睡眠のリズムを意図的に乱すことで、人為的に金縛りを発生させている。またこの時に、被験者は目を開けているつもりだったのだが、実は完全に目を閉じていた。つまり夢を見ている状態。天井などが見えるのは寝る前に見た記憶によるものだったとのこと。だからこのときに幻覚が見えることがあるのだという。また押さえつけられているように感じるのは、筋肉が弛緩していて力が入らないから。

 金縛りについては私自身も何度か体験しており、その時に大体推測していたメカニズムがやはり科学的に正しかったようだ。なお金縛り中には強烈な不安を感じることがあるが、実験によると心拍や呼吸などに乱れがあるらしい(筋肉が弛緩しているせいだろう)。よく吊り橋効果などのように、心拍の乱れが感情の乱れのように誤解されるなんて例があるが、この時の不安感も原因は同じだろう。

 二つ目のテーマはのどちんこはなぜあるか。のどちんこの正式名称は口蓋垂というのだそうだが、これは鼻と口を仕切る口蓋の先が垂れ下がったものだという。この口蓋によって鼻と口が分離されるので、人間は物を飲みながら呼吸をスムーズにできるという仕掛け。またこの口蓋は発声の時にも関与しているという話。

 以上、身近なネタ2点。ネタとしては今更どうこうと言うほどのものではないが、金縛りについては未だに心霊現象だと信じていてそれをネタに良からぬ連中にだまされる者もいるので、これは100%生理学的現象であるということを解説しておくことは意義がある(もっとも、既に完全に洗脳されてしまっている者は、これを見てもやはり心霊現象だと主張してしまうのだが・・・だからそうなる前に正しい知識を伝えることが最重要なのである)。

 ただこの番組、ネタはともかくとして番組の作りがイマイチ。多分お気楽に楽しめる路線を目指しているのだろうが、これがいかにもNHK的なはずし方である。若手芸人を使っておちゃらけたイメージで作っているのが完全に滑っている上に逆効果。また2組の芸人の対戦形式にしている構成も何の意味もない。一言で言うと「ダサい」。番組イメージとしては土曜のお昼の「生活笑百科」(全国番組か関西ローカルかを私は知らないが)並のダサさなのである。もしこの番組の視聴者に若者を想定しているのなら、完全に失敗している。

 

6/12 クローズアップ現代「街をさまよう若者たち〜新しい形のホームレス〜」

 いわゆるネットカフェ難民を扱っている。内容的には4/3の「ガイアの夜明け」とかぶる部分がかなり多い。番組が密着取材したある青年は、やはり就職氷河期世代。地方の高校を卒業したのだが就職がなく、東京なら仕事があるだろうとやって来たものの、部屋を借りようと思うと最初に20万円ほどの資金が必要であったため、結局はホームレスとなってネットカフェを転々としている。日雇いの仕事がないと持ち金がなくなるので、そうなると野宿することになる。その日その日をギリギリでしのいでいるという生活である。病気などをしても何の保証もないので、将来に対する不安を強烈に抱いている。

 次に登場したのは派遣労働者の問題。現在、待遇改善を求めた労働運動が起きている。「この会社」では、派遣先から受け取った労賃から手数料を引いて労働者に渡すわけだが、そこからさらにデータ整備費用などと称してさらにピンハネをしており、派遣先からは13000円を受け取っているのに、労働者に渡るのは5千数百円なんてことになるらしい。

 この悪質な会社が「グッドウイル」であるということは、この世界について少しでも知っている者ならすぐにピンと来るが、この番組ではあくまで「ある会社」としか言っていなかった。多分、NHKらしいお上の事情があるのだろう。ただ途中で会議室が写った絵の時、会議室の扉が写る前に「グッドウイル」と手書きしたホワイトボードが1秒ほど写ったコマがあった。多分、NHK的には企業名を出せないのだが、現場の人間としてはグッドウイルのあまりの悪辣さに怒りを感じていたのではないかという気がする。私のうがった見方にすぎるのかもしれないが、私はこのコマに制作者のメッセージを見たと感じた。

 なお人材派遣のようなピンハネ業はかつては認められていなかったのだが、労働者を低賃金でこき使いたい財界の要請で認められるようになったものである。今ではこのピンハネ業の代表が労働政策審議会の委員などをしていて、「過労死は労働者の自己責任」だとか「祝日なんていらない」とか、労働者の労働条件をさらに切り捨てることを目指した発言をしまくっている。当然ながらこんな連中が仕切っている労働政策審議会は「サービス残業の促進」を目指しているので、次の選挙を乗り切ったら、またぞろ例の「ホワイトカラーエグゼンプション」こと「過労死促進法案」が浮上してくるのは間違いない。すると労働者の労働条件はさらに切り捨てられ、ネットカフェ難民に落ちていく若者はさらに増えるということになる。柳沢厚生労働大臣は、若者が結婚を考えられないぐらい労働条件を切り捨てるの躍起になっているのに、その一方で出生率低下が問題だなんていうのだからちゃんちゃらおかしい。もしかして彼の目指している理想社会は、多くの若い男は奴隷としてこき使われて、ごく一部の世襲の馬鹿ボンだけがハーレムを作って、女を産む機械として子供を産ませるような世の中か? まあこれは、彼の親玉である安倍晋三の描く理想社会でもあるのだろうが(多くの男は奴隷としてこき使われるだけでなく、安倍の取り巻きの利益のために世界のどこかに兵隊としても送られることになるのだろう)。

 

6/10 NHKスペシャル「激流中国 北京の水を確保せよ−しのびよる水危機−」

 北京オリンピックを前にして、先進国としての体裁を整えようとしている中国。しかしその影では数々の矛盾も噴出している。それらを紹介していくシリーズとのこと。

 今回扱うのは北京の水不足。北京においては急速な経済発展と、人口の増加によって水需要が急増、水の供給が追いつかない状況になっているという。北京の水瓶である官庁ダムではここ5年で貯水量が1/3に減ってしまったという。

 3年前に北京市水務局が発足、市民に節水を呼びかけると共に水の不法使用などの監視をしている。例えば緑化用の水を無断で戦車に使っていた業者などが摘発されたりといったことが行われている。また工場なども検査を受け、無駄に水を使用していた場合には罰金などの制裁がある。しかし利益優先の企業において、水の使用を押さえることには困難がつきまとっている。

 北京の切実な水不足は、周辺地域を犠牲にもしている。そもそも水が豊富ではない河北省では、本来は地元の治水や生活用水に使用されていたダムの水が、北京への供給を最優先にされたために、地元民にはダムの水の使用が禁止される事態になり、地元の農民は農業用水の確保にさえ困る状況になっているという。

 水不足の地域では雨雲にヨウ化銀を打ち込む降雨ロケットなども使用されている。このロケットの使用で降雨量が25%増加するとされているが、これとて万能の策ではない。

 中国では北京などの水不足を解消するための壮大なプロジェクトを実施中である。それは南水北調と呼ばれる計画で、比較的水が豊富な長江水系から北京にまで水を引こうというものである。しかしそれでも北京の人口増加を抑制しないと水不足は解消されないし、水源となる地域で汚染が進んでいるという懸念される事態があるという。

 水務局ではさらに監視体制を強化するために、住民の中から情報員を募り、水の無駄遣いの監視を強化している。しかし豊かさを教授する市民には節水の呼びかけはなかなか届きにくい。

 急激な都市化で北京では大変なことが起こっていると聞いてはいたが、確かにこれは大変だ。しかも現在の中国では、水不足と水源の汚染が同時進行しているので、かなりやばいことになっている。中国の水不足の問題は、日本としてはよそ事として高みの見物をしそうだが(中には喜んでいる奴もいそうだが)、今日のように中国と日本の経済的結びつきが強くなってしまうと、他人事では終わらない。実際、日本企業の現地工場が水不足の影響を受けたりという例もあるし、中国の農業生産が水不足で影響を受けるようになると、中国から多くの農産物を輸入している日本には切実な影響があるわけである。

 ちなみに水不足は中国だけの話ではない。世界的に見ると多くの地域では圧倒的に水不足で、しかもそれが深刻化しつつある。原因としては水を大量消費する近代農業や工業などの発展があるのだが、地球温暖化による気候変化や、公害による水源汚染も影響している。なお水不足とは無縁のように思われる日本でも、実は都市化が極端に進んでしまった東京などでは、圧倒的に水不足なのである。

 

1/10 クローズアップ現代「揺らぐ科学の信頼 〜東大・論文ねつ造疑惑〜」

 昨年末、東京大学では論文を捏造したということで、工学系研究科の多比良和誠教授と川崎広明助手に懲戒解雇という重い処罰を決定した。しかし論文の捏造については決定的な証拠を見つけるまでには至らなかったとのことで、多比良教授は「処分が重すぎる」として、川崎助手は「捏造はしていない」として、東大を相手に法的対応を検討しているという。

 疑惑の発端となったのは、彼らが遺伝子研究の分野で発表した論文。難病治療に使えるのではと注目されているsiRNAについて、これを簡単に作り出す方法を発表したのだが、これが海外の研究者から「再現が出来ない」と指摘されたのだという。

 東大では再度の実験を彼らに命じ、多比良教授は川崎助手と製薬メーカーに実験の追試を指示したのだが、川崎助手は論文通りの結果が出たと言ったのに対し、製薬メーカーの方では再現が出来なかったのだという。しかも川崎助手は実験ノートをつけていなかったということも分かり、どんどんと旗色が悪くなったようである。

 そもそも多比良教授は物理化学の分野が専門であり、遺伝子分野は専門ではないという。しかし今後遺伝子の分野が将来性があると見て、川崎助手などのスタッフを集めて研究を行っていたとのこと。当時のスタッフの証言では、多比良教授は川崎助手の研究の詳細については全く分かっていない可能性が高そうである。

 番組では1年がかりで彼らに密着して取材をしたらしく、川崎助手のインタビューなども紹介している(彼はきっぱりと捏造を否定している)。番組では事実を淡々と伝えるだけで、あえて判断は加えていないが、心象的には完全に黒である。

 そもそも科学においては、再現性が取れなかった時点でアウトである。科学は誰でも追試で再現できるというのが基本であり、特定の人物しか再現できないものは科学でなくて魔術と言う。となれば、後は重要なのは意図的な捏造の有無である。川崎助手自身も自分で把握できていない何らかの操作が鍵となって、彼だけが結果を再現できるという可能性は0とは言えないからである。それを確認するには、監視付で川崎助手が実験を再現するしかないが、彼がそれを頑なに拒否しているというのでは、黒としか言いようがない。

 捏造の動機としては、例によっての大学における悪しき成果主義である。短期的に成果を上げないと研究費さえ出ないようになったことから、とにかく短期での成果が求められ、それが研究現場での捏造に対する誘惑を強めているのである。正直なところ、今のままのやり方でいけば、技術立国日本基礎研究の場は、回復不能なまでに荒廃してしまうのではないかということを、私は懸念している。大学の研究室は企業と違って、短期的に金につながらないような基礎研究をやっていれば良いんだというのが私の考えである。物にならない研究も多いだろうが、その中から大化けする物がいくつか出ればそれで良い。そもそも科学研究なんてそんなものである。

 それにしても同じ捏造でも粗雑だというのが正直な印象。最近話題になった韓国でのES細胞の例などは、あれだけ受精卵をふんだんに使った実験などは、世界で追試できるところがほとんどないので、内部告発のようなものがなければ発覚しなかった可能性もあるが、こんな確実に追試が行われるような内容を捏造すれば、発覚するのは当たり前である。逆に言えば、あまり多くの追試が行われないようなマイナーな分野の論文などの場合、捏造がまだまだ潜んでいる場合も考えられるのではないか(実際に、捏造ではないが論文の間違い・勘違いというのは実は決して少なくはないのである)。というわけで、「最新の研究成果」というのには注意が必要であるということである。

 

12/10 NHKスペシャル「ワーキングプア2」

 今、社会的に問題となっているワーキングプアとは、キチンと働いているにもかかわらず最低水準の生活が維持できない人々である。

 最初に登場した31才の女性は、離婚後2人の子供を養って生活している。しかし子供を抱えてなかなか仕事はなく、パートの仕事をかけ持ちしており、毎日休みはなく睡眠は4時間程度だという。それでも家賃などを除くと生活費は2万円ぐらいしか残らない。彼女がようよう生活できていたのは児童扶養手当のおかげだったが、これも法の改悪でいずれは半額ほどに減らされることになっているという。国は母子家庭の就労支援のために資格取得の援助をすると言うことだが、彼女も資格を取ろうと考えたものの、そのためには専門学校に通わないといけないので、昼の仕事が出来なくなることが分かり諦めざるをえなかったという。国はすぐ「自助努力」といってごまかすが、果たして彼女にこれ以上どういう自助努力の余地があるのだろうか。

 北海道の23才の女性は町立病院で入院患者の食事を作る仕事をしている。最初は町の臨時職員として採用されていたのだが、町が調理の仕事を民間に委託したことで、時給は減らされボーナスもなくなり、今は月8万円の収入しかないという。彼女は絵が得意で成績も優秀、札幌で専門学校に入って将来はゲームメーカーへの就職を考えていた。しかし父が病気で失職したことで暗転、今は妹と二人で働いて家計を支えているという。彼女は努力して調理師の資格も取得した。しかしそれでも時給がたったの10円上がっただけだったという。自助努力などというが、全然その結果が反映されないのである。

 また経済のグローバル化は末端の中小企業へのしわ寄せも大きい。繊維産業の多い岐阜では、中小の企業は経営が成り立たなくなってほとんどが廃業に追い込まれつつあるという。その一方で、大手メーカーは海外からの研修生という名目で安い労働者を調達している。そしてそれがさらに中小企業に対する値下げ圧力につながるのだという。

 また高齢者も悲惨である。ある80才の老人は、夫婦で空き缶を拾って生活している。彼は8人兄弟の長男で、兄弟を養うために年金を払う余裕がなく、現在無年金状態なのだという。収入は空き缶拾いでの金だけなのだが、最近は年金では生活できずに空き缶拾いをする老人が増えているので、収入はさらに減っているという。もう既に高齢であり、空き缶拾いが出来なくなったら死ぬしかない。

 公園で清掃の仕事に従事している76才の老人は、この収入だけで生活している。年金は妻と二人で月に6万円あるが、それはアルツハイマーで特別養護老人ホームに入所した妻の費用で完全に消えてしまう。しかも介護保険法の改悪で自己負担分がさらに1万円増えることになったという。彼はもし自分が倒れた時の妻のことを心配している。

 もう暗澹たる事例ばかりである。しかしこのような事例が何も特殊ではないというのがさらに恐ろしい。働いても報われない社会に確実になってきているのである。そもそもこのような社会になったのは、無能な二世三世がのうのうと生きていけるように格差が固定した社会を作りたいと考えたボンクラ世襲政治家と、労働者に奴隷労働をさせたいと考えていた一部の守銭奴経営者の利害の一致で、このような方向に意図的に誘導されたからである。グローバリゼーションとか、市場主義とかいうのは、こういう格差社会をごまかすためのキーワードである。そしてこの方向をさらに明確に打ち出したのが、ボンクラ三世政治家小泉とアメリカのハゲタカファンドの利益代表の竹中のラインである。そしてそれをこれまたボンクラ三世の安倍晋三が継承しているわけである。当然ながらボンクラ三世が、いくら「再チャレンジ」なんてことをお題目に掲げても、そんなもの本気で考えているはずもない。再チャレンジどころか、そもそも一回目の珍レンジさえ出来ないのであるから。多分彼の場合、固定的貧困層が出来た方が、将来兵隊として前線で消耗させれる人員が増えて好都合とぐらい考えているだろう(実際にアメリカでは、軍隊にでも入らないと生活できない連中が多く。そういう連中がイラクでブッシュの利益のために使い捨てにされているわけである。)。

 番組では3人の有識者に意見を聞くと言うことをしていたが、2人目に出てきた有識者の「景気が回復したら問題が解決に向かう」というあまりに脳天気な分析には絶句した。いくら名目上景気が回復しても、結局はごく一部の連中の利益が増えるだけで、格差はむしろ拡大しているのである。そもそも現在は「戦後最長の好景気」だったのと違うのか? 基本的には一部の強欲者のために破壊されてしまった社会構造を再構築しないとどうにもならないのである。アメリカみたいな「明らかに失敗した国家」をモデルにしているようでは、世の中がおかしくなるのは当然なのだとも言える。

 

11/19 NHKスペシャル「分かっちゃいるけどやせられない〜内臓脂肪と闘う〜」

 今回のテーマは「メタボリ君しんどそーね」・・・じゃなくて、メタボリックシンドロームである。内臓脂肪は生活習慣病の原因になるとして警戒されているが、分かっていてもそう簡単に体重は減らしにくいもの。それに取り組んだ連中の物語のようである。

 舞台は東京の杉並。ここでウェストサイズプロジェクトと名付けられたプロジェクトが行われた。内容は、各人が目標を定めてそれを達成するために頑張るというもの。特別な減量指導があるわけではないが、同志が集まることで励ます効果があるのだろう。

 参加したメンバーは様々。番組に登場したのは、北海道の食品会社に単身赴任しているため、製品の試食や夜の接待などでカロリー過剰になって糖尿病の診断を受けた50代のサラリーマン。さらに家族の食べ残しを片づけているうちに体重が大幅に増えてしまっていたという主婦。またコンピュータソフトメーカーに勤務していて、ストレスのために酒が多くなって太ってしまったサラリーマンなど。

 減量のために生活を変えすぎてそのストレスで失敗したり、カロリーを抑えた食事をしていることで身体が飢餓状態になり、ちょっと食べ過ぎただけでリバウンドしてしまうと言うダイエットの罠にはまったサラリーマンなど、典型的な挫折例も登場する。

 最終的には番組が取材していた3人は、みんな努力の甲斐あってとりあえず目標達成でめでたしめでたしとなっている。もっとも実際は目標達成できなかった者も少なくないだろう。それにダイエットは減らすことよりも、それを維持することの方が大変なので、本当に大変なのはこれからである。

 うーん、もろにメタボリ君に該当する私としては、かなりキツイ内容。実際に私はかつて減量失敗経験もあります。食事コントロールと自転車中心の運動で10キロ以上減量したのですが、その後しばらくして仕事の関係で生活スタイルが変化したことがきっかけで、体重が大幅にリバウンド、そうして今日に至ってしまっているという次第。こりゃまた根本的に生活立て直さないといかんわ。

 それにしても某インチキ健康番組のように「これを食べるとダイエットに成功」なんてものを紹介するわけでもなく、真っ正面からダイエットに取り組む連中を淡々と描くだけという、この手の番組としてはかなり異色の内容(笑)。だけどダイエットって本来はこういうもんなんですよね。ダイエット食品メーカーなんかが言っている「努力なしで楽してダイエット」なんてのは間違いなく嘘です。もし何もしないで体重が減るとしたら、それは明らかに健康を損ねているということ。そんなダイエットは危険です。

 なおダイエットと言っても実は内容が異なります。今回登場したのは成人病の危険を避けるための健康維持のダイエットです。これが本来の意味でのダイエットです。痩せすぎの女性が、病気のモデルみたいになろうとして健康を損ねながらガリガリに衰弱していくことをダイエットと呼ぶ例があるようですが、あれはダイエットではなくて単に病気になっているだけです。これをやるとガリガリの醜い身体になって、最悪は命を落とします(つい最近もこれで命を落としたブラジル人モデルがいたようだ)。これをやっている人は、内科よりもまずは精神科の方を受診した方が良い例が多いです。

 

9/10 NHKスペシャル「マグロが食卓から消える?〜世界の魚争奪戦〜」

 日本人の大好きなマグロ。今まで日本人は世界中からマグロを買い付けて食べ続けていた。しかしその構図に異変が起きているという。まず今までマグロほとんど食べなかった欧米で、鳥インフルエンザやBSEでの食肉不安から、マグロの消費量が増え始めたという。また中国では経済の好調に伴う富裕層の増加で、今まであまり食べられなかった高級海産物の消費が増加しているのだという。

 大手水産輸入業者の双日では、今年は買い付けの異常が発生していたという。必要量のマグロが全く確保できなくなってしまったのだとか。買い付け担当者がベルギーでのマグロ商品の見本市に飛び、そこでマグロの輸出業者と交渉を行ったが、結局は必要量の1割しか確保できなかったという。そこで彼らが見せつけられたのは台頭する中国の力だった。

 中国では現在、食糧確保の観点から、海産物の消費拡大を国策で進めており、特にマグロの消費拡大を目指しているという。その結果、中国国内での海産物消費は猛烈な勢いで増加しており、今や輸入量では日本に次いで2位だという。中国のマグロ業者も日本向け輸出から、国内向けに重点を移すことを決定しており、これが日本にも跳ね返っているという。

 日本は6割のマグロを輸入している。台湾、中国、韓国などの天然物のルートとヨーロッパ、メキシコ、オーストラリアなどの養殖のルートがある。特に養殖は、価値の低いマグロに栄養価の高いえさを与えることで、日本人の好むトロを増やす畜養で、市場にも大きなインパクトを与えたという。しかしその一方で、輸入物のマグロと原油高騰のダブルパンチで、日本の遠洋マグロ漁船では廃業が相次いでおり、日本のマグロ自給率はじり貧になっているという。しかも廃船になった日本のマグロ漁船は高性能であると人気で、ロシアや韓国などの業者が購入していくという。

 そこにさらに暗雲がたれ込めている。資源の枯渇の問題である。台湾では資源の枯渇が指摘され、漁船の数が制限されて日本への輸出も大幅に減少することになった。また畜養を行っているヨーロッパでも資源の枯渇が問題化しているという。双日では、新たな畜養拠点を確保することや、逆に中国に進出することで中国でのマグロ流通ルートを押さえようとの対応策を練っている。

 オイオイと言いたくなるような厳しい内容。しかしどうもこれが、来るべき将来に訪れる国際的な食料品争奪戦の前哨戦に見えてならない。今はマグロだけであるが、これが穀物などの農産物一般にまで波及してくれば、食糧自給率の低すぎる日本はひとたまりもない。今は「トロが食べられなくなるかも」なんて言っている程度だが、今に下手をすると飯自体を食べられなくなる可能性もある。

 そしてここでも浮上するのが中国の影響力の増加である。今までは貧困に甘んじていた中国人が、豊かになるにつれて贅沢をしたくなり、それが地球全体に負担を与えつつあるのである。以前より、中国の国民が全員アメリカ人並の生活をしようとすれば、地球は破滅すると言われていたが、それが現実化しつつあるのである。しかも中国の次にはさらに人口大国のインドも控えている。いよいよ地球が狭くなりすぎてきたようである。飽食なんて贅沢が許された時代はいずれは過去のものになるのかしれない。そうなると「いくら食べても太らない夢のような身体」なんて言われているような連中は、真っ先に絶滅か?

 

8/20 NHKスペシャル「論文捏造〜夢の医療はなぜ潰えたか」

 人クローン細胞からのES細胞培養に成功。このニュースは朗報として世界を回った。クローン細胞からのES細胞合成に成功すれば、多くの難病の治療が可能になることが期待できたからである。多くの難病患者たちが希望を持った。しかし残酷にもそれは無惨に打ち砕かれることになった。

 論文を発表したのは韓国のソウル大学の獣医学部のファン教授だった。しかし彼の論文のすべてが捏造だったことが明らかになったのである。この番組は、その後の警察の捜査などで明らかになった捏造の過程を詳細に説明している。

 どうやら捏造の最初は半分は偶発的なものだったようである。病院から多くの卵子を提供させて(それでも足りなくてついには女性研究者からも卵子を提供させた)ES細胞培養の実験を繰り返したにもかかわらず、ES細胞ができずにファン教授が焦っていた時に、やっと1つのES細胞らしき細胞が生成する。しかしその細胞がES細胞であるかは試験で確認しないといけないのだが、その試験を担当した研究者がサンプルをなくしてしまい、慌ててファン教授に指示を仰いだところ、「出来ているのは間違いないのだから」と試験を行ったように結果を捏造することを指示されたのだという。

 早速ファン教授は画期的成果として論文を執筆するが、当初は雑誌にはなかなか掲載されなかったという。しかしファン教授の実験室が大量の卵子を使用して実験をしている(他の国では卵子の扱いに制約が多く、韓国のように大量に実験に使用するというわけにはいかない)のを見た、クローン研究の第一人者であるビッツバーグ大学のジェラルド・シャッテン教授が彼の論文を強く推したことで、権威ある雑誌であるサイエンスに掲載されることになったのだという。

 サイエンスへの論文の掲載で一躍脚光を浴びたファン教授は、直ちに難病患者のクローン細胞からES細胞培養に取りかかった。しかしその一方で、世界中でファン教授の実験を追試を行った研究者たちは、結果が再現しないことに首をひねっていた。

 意気揚々と実験に取りかかったファン教授の研究室だったが、細胞は次々に分裂を停止してしまい、最後の一個の細胞も瀕死の状態になっていた。その時に細胞の培養を担当していたのが、先に捏造を行った研究員で、彼は教授からのプレッシャーと功名心から瀕死の細胞をよく似た別の細胞にすり替えたのだという。そしてこのデータを元に、多くの細胞の培養に成功したとの論文を発表する。しかしそれらのデータは研究員が偽造した細胞の写真を大幅に水増ししたデータであり、その水増しを指示したのがファン教授自身だったという。

 しかし破局が訪れる。研究者たちが集まっているインターネットサイトで、論文に掲載されている写真に全く同じものがあることが指摘されたことから、論文の内容に対する疑問が一気に吹き出し、調査の結果、論文の捏造が発覚したのだった。国民的英雄になっていたファン教授の名声は一気に地に墜ち、今や研究費をだまし取った罪で刑事被告人であるという。

 自身も研究者の端くれである私としても、非常に重い事件である。ファン教授の捏造の動機については研究費を獲得するため出あることが指摘されている。実際に実験がうまくいっていなかった時は、彼の研究室は研究費を打ち切られる危険に直面していたらしい。また彼の論文を推したシャッテン教授にしても、研究費獲得のために捏造を意図的に見逃した疑いがあるようである。

 成果主義の負の面がもろに出てしまっているのである。昨今はどこの国でも研究者に対して即物的利益が求められようになった結果、研究成果に対する圧力が非常に強くなっている。しかし研究というものはうまくいく時もあれば、うまくいかない時もあるもので、うまくいかない時は延々と何年もうまくいかないということがある。先人たちはそれを忍耐で乗り切って大きな成果を上げていたのだが、最近は社会がそこまで待ってくれなくなっているのである(技術のことなど全く知らない事務屋が、研究予算を取り仕切るようになったことが大きい)。今や、世界中の研究者が捏造の誘惑と戦っているような状態であり、かつてのような科学者としての良心を信じるような論文査定では捏造は見抜けなくなってしまっているのである。

 科学界の信頼がこの一件で地に墜ちてしまったが、残念ながら今のようなもうけ第一主義原理が世界を覆っている限り、同じような事件は今後も再発してしまうのだろうと暗い気持ちにならずにはいられない。

 交通事故による脊椎損傷で歩けなくなり、ファン教授の研究に希望を託していた少年が痛々しい。番組の方も過剰な演出はしないで、事件再現ものと科学ものの中間の線で淡々と進めていたのが、逆に彼らのつらさをあぶり出しているように思われた。

 

6/4 NHKスペシャル「好きなものだけ食べたい〜小さな食卓の大きな変化〜」

 現在の子供の食生活がとんでもないことになっているという。一般家庭の食卓を調査したところ、典型的なパターンがいくつか見つかるという。1つは「切り札型」。食事に手をかけられない(かけたくない)母親が健康を気にした結果、出来合の食事に例えば野菜ジュースとかサプリとかを加えるというもの。2つめは「個食型」。家族全員がバラバラのものを食べているというパターンだという。そして一番多いのが3つ目の「好きなものだけ」という型だという。中には夕食のメニューがお菓子というとんでもない例もあるという。

 子供の食生活の乱れは健康に跳ね返っている。糖尿病や高脂血症などの予備軍が増加しているという。しかし家庭ではどうしても甘えが出て、食事の改善が難しいということで、問題のある児童に入院して食生活の改善を行うという取り組みもなされている。そこで入院した子供たちには食生活に根本的な問題があることが明らかになった。まず朝食を食べない。そして野菜などの嫌いなものには全く手をつけないということである。病院ではここのところの根本改善に取り組み、子供たちはその厳しさに不満を持ったり音を上げたりしながらも、なんとか仲間達と助け合って改善が見られた。今後は、彼らがこれを家庭で続けられるかがポイントである。

 また危険は肥満の増加だけでないという。ヤセの増加も問題になっているという。栄養が極端に偏っているために、栄養不足でヤセになるのだという。子供の頃の栄養不足はそのまま将来にまで響き、骨粗鬆症の増加などが懸念されているという。またヤセの女性が妊娠した場合、胎児が栄養不足で低体重児となる危険があり、このような胎児は後に成人病になりやすいと考えられるという。

 このような中、子供の好き嫌いを減らすことに成功した町がある。高知県の南国市では、子供たちに給食用の野菜を自ら栽培させたところ、野菜嫌いの子供が減って給食の食べ残しが劇的に減少したという。自らが食べるものに感心を持たせることで、子供の食生活が変化したのだという。

 かなり由々しき事態が広がっているという印象だが、子供が甘やかされすぎているとかの様々な問題が潜んでいるだろう。なお私個人としては、偏食の改善のために給食を全部食べるまで教室に居残らせるなどの類の指導法は駄目だと考えている。と言うのは、私自身が過去にこれをやられて、反発心こそ持ったものの、結局は偏食の改善には全く効果がなかったことを実感しているからである。それよりは子供たちに栄養の知識を指導して、自分たちから自発的に改善の必要性を感じさせるのが重要である。自覚のないところに強制しても、それは絶対に定着はしない。

 また野菜嫌いが増加している背景にはもう一つ忘れてはならない原因があると思う。それは農薬漬けで育てられている野菜はまずいということである。実際に私が農家で自家消費用の無農薬野菜を分けて貰って、これらは市場に出ている農薬漬けの野菜と根本的に違うことを実感した。南国市での試みが成功しているのは、食に対する関心云々以前に、自分たちで栽培した野菜が美味しいということが大きいと考えられる(学校で栽培する野菜をまさか農薬漬けにはしないだろう)。

 さらに無視してはいけないのは誤った価値観の蔓延である。テレビなどが異常にガリガリに痩せているのを美しいかのように宣伝した結果、その間違った思想が子供までを洗脳して、今では小学生のうちからダイエットをするような者まで出ている。最近になってヤセが増えているという統計には、栄養不足だけでなく、ダイエットによる人為的栄養不足も潜んでいるはずである。この辺りなどは、誤った価値観を流布させたマスコミなどが反省すべき点である。

 

6/2 NHKスペシャル「千年の帝国ビザンチン〜砂漠の十字架に秘められた謎〜」

 ビザンチン帝国とは、文明の十字路と呼ばれたイスタンブール(コンスタンティノープル)を中心として永らく栄えたキリスト教国であった。ここはかつて世界のキリスト教の中心として高い文化で反映した。ビザンチン帝国は後にオスマントルコによって征服され、今ではその面影はなくなりつつあるが、最近になってトルコのEU加盟によって注目を浴びるようになったという。

 というのは、ビザンチン帝国ではキリスト教国でありながらも、イスラムと共存を図っていたからだという。実際に現在のエジプトにあるビザンチン帝国時代からのの修道院では、今でもイスラム教徒であるベトウィン達が働いており、修道士達も彼らと共存しているという。

 かつてイスラム圏が強大化し、この修道院に危機が迫った時、修道士らは修道院内にモスクを造ることでイスラム教徒らによる破壊を免れたのだという。それ以来、この修道院ではイスラム教徒との共存を図ってきたという。

 またビザンチン帝国自身も、その高い文化をイスラム諸国に示すことで彼らと対立しながらも共存を図っていたという。

 皮肉なことに、この帝国を滅ぼしたのは同じキリスト教徒であったはずの十字軍であった。聖地奪還の大義名分とは名ばかりの略奪者集団であった彼らは、キリスト教国であるビザンチン帝国に攻め込み、略奪の限りを尽くしたのだという。これでビザンチン帝国は急激に国力が衰退し、後にオスマントルコ帝国に滅ぼされることとなった。

 本来はイスラム教徒の方が他の宗教に対して寛容で、キリスト教徒はかなり野蛮だったという歴史上の事実を思い起こさせる内容である。実はキリスト教徒でもビザンチンの連中は結構融通が効いたようだが、よりによって原理主義であるカトリックが生き残ってしまったのがキリスト教の悲劇でもある。とにかく他者に対する寛容をなくした宗教など滅びるのが運命と考えているのが私であるので、今のヨーロッパを取り巻く宗教状況には危機的なものを感じるのであるが。

 

4/16 ダーウィンが来た!生きもの新伝説「幻の巨大イカを見た!」

 ダイオウイカは深海に棲息し、全長は10メートルほどもあるという巨大イカである。しかし時々死骸が打ち上げられる以外はその生態はほとんど知られておらず謎の生物だった。その巨大な姿から、ヨーロッパなどでは深海のリヴァイアサンとして創作の世界に登場したりする一方、実はクラゲのようにふわふわと漂うだけの生物だという説もあったという。

 今回、そのダイオウイカの生態を初めてとらえることに成功したという。それは国立科学博物館(いわゆる科博ですな)の窪寺恒己氏。ダイオウイカの姿を撮影したいと考えていた彼は、クジラの楽園である小笠原で2002年から撮影に挑戦し、2年以上をかけてそれに成功したのだという。

 彼が小笠原を選んだのはそこにマッコウクジラが多くいるからだという。マッコウクジラはダイオウイカを餌にしていることが知られておりマッコウクジラが多いということはダイオウイカがいるに違いないと判断したとのこと。

 苦労の末に彼が撮影した映像には、見事に餌のイカ(共食い?)に襲いかかるダイオウイカの写真が記録されていた。その記録によるとダイオウイカは4時間も餌と格闘した結果、針にひっかかった触碗を自ら引きちぎって逃亡したという。この結果から、ダイオウイカはクラゲなどと違ってかなり活動的で力強い生きものであることが確認されたという。よくマッコウクジラとダイオウイカが深海で格闘している絵などが登場するが、あのイメージの方がどうやら現実に近かったようである。

 なおNHKでは現在、ハイビジョンカメラを深海に沈めての動画の撮影に挑戦しているという。これも成功したら多分番組での紹介があるだろう(多分NHKスペシャルぐらいになるだろうと思う)。楽しみではある。

 

4/9 ダーウィンが来た!生きもの新伝説「古代魚が跳んだ!」

 アマゾンに住み、1億年前からその姿をほとんど変えていない古代魚と言われているのがアロワナである。またこのアロワナは、アマゾンの水没ジャングルの中で豪快なジャンプで虫を捕らえることで知られているという。

 アマゾンは雨季と乾季で水位が極端に変わるため、雨期になるとジャングルが水没する。するとそれまでは川の中で小魚を食べていたアロワナは、水没ジャングルの中では小魚の隠れる場所が多すぎるので、小魚を捕らえられなくなり、ジャングルの水没で木の上に逃れている昆虫を捕らえて食べるのだという。

 そもそもアロワナがこのようなことをしないといけないのは、水の中での餌の取り合いだと敏捷な他の魚に勝てないからだという。海で進化して泳ぎが素早くなった他の魚に比べ、川の中で古代の姿を保ってきたアロワナは、餌取りでは負けてしまい、既に多くが淘汰されてしまったのだという。アマゾンでは樹上の昆虫を捕らえるという技を身につけたことで生き残ったのである。

 アロワナのジャンプの凄さは、水面直下で静止した状況から突然にジャンプできること。通常の魚だと深いところから助走をつけないとジャンプできないので、これでは樹上の昆虫を狙うことが出来ない。アロワナは水面直下で狙いをつけてから、その細長い身体を活かしてジャンプするのだという。この時は古代から残っていた細長い身体に大きい口という形態が有利に働いている。

 さらにアロワナは口の中で子育てをすることで知られている。こうすることで稚魚を確実に育てる。このような知恵で彼らはアマゾンという特異な環境に合わせて生き残ってきたのである。

 地球ふしぎ大自然終了を受けての新しい動物番組がこれであるが、枠が45分から30分に縮小したのに合わせて、かなり盛り込んだ内容になったという印象。その分、情報量がてんこ盛りになったのは、私のようなせっかちな人間には向いているように思うが、雄大な大自然の驚異を環境ビデオ的に見たいと思っている者には適していないだろう。この辺りが吉と出るか凶と出るか。私個人には、時々眠気を感じた「地球ふしぎ大自然」よりは、こちらの方が向いているのは明らかだが。

 あと、日曜の7時30分という時間帯を意識したのか、何となく演出に幼稚さを感じたのが懸念材料である。やはりこの手の教養系番組はあまり幼稚さを感じさせない方が良いと思うが。

 

1/10 プロフェッショナル 仕事の流儀「"信じる力"が人を動かす 経営者・星野佳路」

 プロジェクトXの後番組として始まった本番組であるが、やはりプロジェクトXと同様にビジネスを意識した路線で、各分野のプロフェッショナルを取り上げ、その人物がどのような流儀で仕事を行っているかということに斬り込もうという企画らしい。

 第1回の今回は、破綻したホテルなどの再生を請け負っている星野佳路氏。彼は親から相続した破綻寸前の老舗旅館を再生させたことから脚光を浴び、その後も破綻した大型ホテルや山代温泉の老舗などの再生を請け負う旅館星野リゾートという会社の社長を務めている人物である。

 彼が気を使っているのはいかにして現場のやる気を引き出すかである。彼によると破綻した企業に残っている社員は財産なのだという。企業の破綻の中で先行きに不安を感じている彼らのやる気と意欲を引き出すことが、再生には不可欠なのだという。彼がとっている方法は、徹底して現場の意見を聞くということである。彼は経営会議に当たる会議にも従業員などの現場の人間を加えて積極的に発言させる。彼自身がトップダウンで決断することはなく、結論は社員の議論に任せるのだという。彼の口癖は「どうしまうしょうか」であって、十分に中味のある議論の結果に従業員が至った結論だと感じた場合にはそれに従うのだという。

 彼の組織は実にフラットで、社長である彼は社長室さえ持っていない。忙しくて全国を走り回っているうちに、社長室が他に転用されてしまったのだと本人は語っているが、社長が偉そうに自室にふんぞり返っていたのでは駄目だという考えがあるのだろう。

 しかし彼のこのやり方も最初から彼が持っていたものではない。彼は苦い教訓によってこのやり方に行き着いたのだという。彼は軽井沢の老舗旅館の長男として生まれ、アメリカに渡ってホテル経営について学んだ後、帰国後は外資系銀行で働き、31才の時に父のホテルを次ぐことになったのだという。しかし当時はバブル崩壊の嵐の中でホテルの収益は急激に減少しており、彼は早急に建て直しを迫られることになった。彼はアメリカで学んだ経営学に基づいて、矢継ぎ早にトップダウンで改革を指示していったのだが、それが古手の従業員などから反発を買い、従業員の1/3が辞めてしまったのだという。急遽求人を出したが全く人が集まらない状況が続いたという。職安に求人にいった彼がふと壁を見ると「星野に行けば殺される」と書いてあったという。長時間労働に安い賃金、御曹司のトップダウンで評判が散々だったのだとか。どうすれば自分の元で社員が働いてくれるのかを考えた彼は、危機的状態に陥ったブライダル部門の建て直しに、結婚式場でカメラマンをしていた現場の若手を起用、彼にすべてを任せることで彼が大きく成長すると共に社員全体が活性化したのを見て、今日の方法に行き着いたのだという。任せることによって社員は自分たちで物を考え、積極的に動くようになるとのことである。

 ただ新しい組織で彼の方法が浸透するには時間がかかる。彼は新たに再生を請け負った旅館では、まず従業員に対して新たなコンセプトを提案するということを最初に行っている。そしてそれを制定する過程で、現場の鍵となる従業員を加えて、独自のリサーチに基づく資料などを開示した上で徹底的な議論を行った。最初はほとんど発言しなかった従業員達も、やがては星野に乗せられて積極的に発言するようになり、会議が終わる頃には各人の目の色が変わっていた。

 実はこの星野氏については、去年の9/6の「ガイアの夜明け」に登場しているので、私としては「ああ、こいつか」というのが本音(笑)である。人の使い方がうまいなとは思ったが、このような失敗を経験していたとは、この番組を見るまでは知らなかった。現場に権限を委譲するというのは確かにやる気を引き出すにはうまい方法ではある。ただそれで成功するには、従業員の質自体がそもそも十分であるかを見極める目は必要だ。はなっからやる気のない従業員ばかりだとこの方法はうまくいかないから。

 なお日本の組織では、下に権限は全く与えないくせに、いざというときの責任とツケだけは下に押しつけるというタイプの中間管理職が多いのが問題であり、そういう点でもとかく害になりがちな中間管理職を取っ払ったという点で、彼の組織は効率的なのだろう。ただトップの負担は相当に重いだろうとは感じる。また下に任せるのは結構だが、トップはやはり何かのビジョンを持っている上で下に移管する必要があろう。何のビジョンも展望もない経営者が彼の方法を習って、「どうしましょう」ばかりを連発していたら、その組織は舵取りを失って迷走する羽目になるので、アホな経営者が早合点をしないことを祈るのみである(笑)。

 さてこの新番組だが、正直なところ「ガイアの夜明けと夢の扉を混ぜて2で割ったような番組だな」という印象。しかもこの内容だと、人間ドキュメントとの違いも今一つハッキリしない。多分こちらの方はより組織論的な部分を重視するのだろうとは感じたが、最終的に目的が不明になってくる可能性はかなり高い。また第1回から非常にインパクトが強かったプロジェクトXに比べると印象は弱いし、感動のようなものも感じられない。番組的にはいかにも今風の演出が入っているところにNHKの若手の制作者が関わっているのだろうと感じられるが、残念ながらまだ独自のスタイルというところまでは至っておらず、全体的に薄さを感じさせてしまう傾向がある。

 というわけで、まだ今後継続してこの番組をチェックしていくかは不明なので、しばらくはこちらのコーナーの方に入れておきます。もし継続チェックすることになれば、プロジェクトXに変わって独立項目を立てることになる予定。

 

10/30 NHKスペシャル「日本の群像(6)食卓の上の自由化〜輸入牛肉をめぐる攻防〜」

 日本で牛肉の輸入が自由化されて久しいが、その間に日本の畜産農家は壊滅的打撃を受け、日本の牛肉の自給率は4割にまで低下した。そこにBSE発生によるアメリカ牛の輸入禁止が混乱を招いた。その牛肉生産の現場のレポートである。

 北海道の芽室町で2700頭の牛を柏葉晴良氏は、消費者にとって危険のあるものを徹底して排除した畜産に取り組んでいる。餌は抗生物質や遺伝子組み換えのものを除いているという。彼は牛肉生産に関するあらゆる情報をネットで公開し、消費者に安心感を与えることを目指している。コストではアメリカ牛に勝てないことから、安心感で勝負しようとしているのである。

 彼もかつて牛肉自由化によってアメリカから安い牛肉が入ってきた時、アメリカの工業化された大規模生産に対抗するため、アメリカ的なコスト削減法を導入した。それは牛に抗生物質を与えて太らせ、さらには牛の餌の藁も台湾から輸入するというのだった。特に抗生物質の効果はめざましく、大幅にえさ代が減少したという。しかしそれでも輸入牛肉との競争による価格競争は彼の予想を超えて激しく、彼の牧場の経営は行き詰まりつつあった。

 そこに国内でBSEが発生したというニュースが追い打ちをかける。これで牛肉に対する逆風が強くなると考えた彼は、今までのやり方を180度転換することにしたのだという。耐性菌を生み出して人間に悪影響の可能性があるという抗生物質の投与をやめ、さらに藁も台湾からの輸入をやめた。そして彼のこだわりの牛肉をブランドとしてアピールするために「未来めむろ牛」というブランド名をつけ、スーパーへの売り込みを行っている。

 一方、アメリカ牛の輸入禁止で大打撃を受けたのが牛丼の吉野家だった。アメリカでBSEが発生する2年前、吉野家ではアメリカ一極集中を避けるべくアメリカ以外の牛肉調達先を検討したが、全国で1000店に及ぶチェーン店に供給できるだけの牛肉を安定して確保するには、アメリカに依存するしかないという結論に至っていた。

 吉野家ではアメリカ牛肉の輸入再開を睨んで20ヶ月未満の牛で今までと同じ牛丼が作れるかを検討した。肉質には問題がなかったものの、輸入量の方を懸念しており、価格が高騰することを警戒しているという。

 アメリカ産牛肉の輸入が禁止になって外食産業が大打撃を受けたというが、これは外食産業がどれだけアメリカ牛肉に依存していたかを示すわけである。外食産業は価格優先だから、安い牛肉に飛びつくわけである。アメリカ牛肉が輸入再開となれば、たとえどれだけの危険があろうとも外食産業は再びこれに飛びつくだろう。だから私はこれから吉野家の牛丼を食べることは絶対ないだろうと思う。

 コストでは勝負できないので安全性で勝負という方向は正しいと感じる。今の消費者は明らかに二分化されており、たとえ脳みそがスポンジになっても良いから安い牛肉が欲しいという層と、少々高くても安全な食べ物が欲しいという層に分化している。この分化はどちらかと言えば、所得によるものというよりは知識によるものだと私は感じているが。

 大規模工業的に生産されているアメリカの農産物は、牛肉に限らず大抵のものが危険なものである。抗生物質漬けの牛肉、農薬まみれで遺伝子操作した野菜など危険極まりないものであるが、経済性だけを優先したらこういう農産物が氾濫するのは見えているわけである。だから日本としては同じ土俵で闘うと分が悪い。ここは別の土俵で闘うことを考えるべきだろう。恐らく勝負は20年後ぐらいに現れるだろうが。

 

8/21 NHKスペシャル「ウォーター・クライシス〜水は誰のものか〜 第2回 涸れ果てる大地」

 水の使用が最も多いのが農業であり、実に淡水全体の使用量の7割を占める(家庭用が1割、工業用が2割)。20世紀において人口が4倍に増加したが、それは食糧の増産がベースにあってのことで、その間に農業用水の使用量は6倍になっている。しかし現在、農業用水の不足が世界的に発生している。

 インド北部の乾燥地域であるパンジャブ州では、地下水による灌漑によって大規模に農業を発展させインドの穀倉地帯となっている。しかしこの地域で近年になって異常が発生している。井戸が涸れるということが頻発しているのである。水を求めて井戸は年々深く掘られることになり、多くの地域で地下水位は50メートル以下になっており、毎年1メートルほど低下しているという。

 地下水位低下の原因とされているのが稲作の普及である。この地域では小麦と稲の二毛作が普及したが、稲は水を大量に使うために負担が増しているのである。地下水位の低下によって財力のない農家では深い井戸を掘ることが出来ず、水不足で農業が困難になりつつあるという。水の問題で悩んで自殺する例も増加している。パンジャブ州では近年農業生産が頭打ちになっているだけでなく、塩害の発生も問題になっている。かつては海の底にあったパンジャブ州の地下には大量の塩分が含まれており、多くの井戸水に大量の塩分が混じる可能性が高くなっているのだという。地下水の汲み上げが地表での塩分の蓄積を促しているのである。現在は食糧の自給を達成しているインドも、このまま無計画な地下水汲み上げを続けていれば、いずれは食糧輸入国に転落するとの分析もあるという。

 しかしこれはインドだけの問題ではない。ある意味インドは近代農業の典型例であり、中国やアメリカでも以前より同様のことが行われている。また河川にも負担がかかっており、中国では黄河が断流するといったことが起こっており、アメリカのグランドキャニオンのコロラド川も断流を繰り返している。コロラド川の水は海に至る前に100%が使用されてしまっているという。

 カリフォルニア州のインペリアルバレーではコロラド川からの水が生命線であるが、その水を都市と奪い合う形になっている。連邦政府の介入により、インペリアルバレーの農業組合では都市が拡大をしているサンディエゴに水を売り渡す契約を結ぶことになったという。インペリアルバレーでは水の使用量を減らすために農家に保証金を渡して休耕を行っているが、現地の農民の中には休耕によって農地が荒廃し、周辺の農地にまで悪影響を及ぼすとして反対している者達もいる。

 その地に降る雨だけを頼りに農業を続けるという選択肢を実行している人もいる。アメリカのカンザス州のドウェイン・シュナイダー氏は、農地の半分ずつに1年おきに小麦を植えるというこの地に古来より伝わる農法を守っている。1年間農地を休ませることで、1年間の雨水を大地にため込めるのだという。これは雨の少ないこの地に伝わる知恵だったという。しかしこの方法だと農業生産が半分になるため、多くの農家では地下水を大量に汲み上げ、センターピポットと呼ばれる自動式のスプリンクラーで散布する大規模な灌漑農法が行われている。しかしこれらの水源はオガララ帯水層に長年に蓄えられた地下水に頼っているため、地下水位の低下が急速に起こっている。カンザス州の水資源部では、このままでは地域によっては後25年で地域によっては飲み水も残らないという状況になると言う。「子孫に残すべき水まで使ってしまっている」という言葉が印象的である。

 しかもその枯渇に拍車をかけているのが、牛の餌として栽培されているトウモロコシの栽培だという。トウモロコシは小麦の3倍もの水が必要であるが、収益が小麦よりも高く、地下水自体はどれだけ汲み上げてもただであるため、トウモロコシの栽培が急速に増加しているのだという。「もはや法的規制によってトウモロコシの栽培を禁止でもしない限り、どうしようもないだろう」という地下水管理組合の代表の痛切な言葉と「まだ後10年から15年は今まで同じように水を使い続けられるから、この水がある限りは使い続けていきたい」という農家の脳天気な言葉の対照性が問題の深刻さを感じさせる(先のことなど考えないこの脳天気さがいかにもアメリカンだが、そのアメリカン的脳天気が今や世界中の災いのもとになっている)。

 インドのやはり乾燥地帯であるラジャスタン州では、古来の手法によって農地の復活を目指しているという。この地では昔から雨期の雨を溜めるためのジョハドと呼ばれるため池が多かったのだが、近年は井戸に取って代わられていた。しかしここでも井戸が涸れて悲惨な状況になっていた。そんな中、現在は農村を支援するグループの活動によって、村人達の手によってため池の建設が行われているという。地形を巧みに利用したため池が増えたことで、地下水位が上昇し、涸れていた井戸が復活するなどのことが起こっているという。そして何より重要なのは、村人自身をため池建設に参加させることで、水問題を自分たちの問題として自覚して貰うことだという。

 あまりに救いのない内容なので、最後に辛うじて明るいエピソードを加えたという印象だが、この問題はかなり深刻であり、大規模灌漑に頼る近代農法の限界を示している。インドはアメリカ的技術の導入による近代農法の実験地のようなところがあり、ここで起こっている問題は早晩世界中に波及することは必定である。インドだけでなく中国も近いうちに食糧輸入国に転落するとされており、アメリカの農業も危機的状況であることを考えると、食料を全面的に輸入に頼っている日本にとっては、これは非常に深刻な事態につながる危険があるのである。自然から収奪するだけの近代農法を脱して、自然と調和していく循環型農法に切り替えようと云う動きもあるが、循環型農法は経済的効率で近代農法に劣るため、資本主義の原理では全面的な導入は不可能なのである。これが今日の資本主義の限界でもあり、グローバリズムの負の側面である。このような状況があるので、私はグローバリゼーションという言葉をまるで錦の御旗のように使用する連中を信用する気にはなれない(グローバリゼーションとは、結局はごく一部の強者による収奪を世界規模で正当化するということにすぎない)。

 

8/20 NHKスペシャル「ウォーター・クライシス〜水は誰のものか〜 第1回 狙われる水道水」

 水の惑星と言われている地球だが、人間が使用できる淡水はごくわずかしかない(全体の0.8%)。しかしその水を巡って危機的な状態が発生している。

 人間にとって絶対的に必要な飲み水だが、世界の6人に1人は安全な飲み水を確保するために不可欠の水道がない。水道を布設する資金がない途上国では、世界銀行などの融資を受けることになるが、巨大企業の利益代弁者でもある世界銀行では融資の条件に巨大水道資本の参入を義務づける場合が多い。しかしそれが原因で問題が起こっている例が多々ある。

 フィリピンのマニラでは水道会社の破綻によりとんでもない事態が発生した。水道を布設する資金のないフィリピン政府は、1990年代の半ばに民間企業に水道事業を委ねた。その結果、フランスの水道資本と地元財閥が連携したマニラッドという水道会社が設立された。しかしこの会社は、フィリピン通貨危機によるペソの暴落によってドル建てでの債務の返済が悪化し、2001年に水道料金の値上げを申請した。フィリピン政府はこれを認め、水道料金は倍になりマニラッドは水道料金値上げによって大幅な増収になったはずだったのだが、その後も再び水道料金の値上げを申請した。マニラッドが経費を削減する姿勢を見せないことに不信を感じたフィリピン政府の調べによると、マニラッドでは利益がフランスの水道資本に吸い上げられる形になっており、しかも設備投資などはすべて下請け会社に投げられるようになっており、これもフランスの水道会社に吸い上げられていた。そこでフィリピン政府は値上げを認めなかった。しかし政府とマニラッドがにらみ合いを続けているうちに最悪の事態が発生する。マニラッドの水道工事のまずさが原因で、水道水がコレラ菌によって汚染され、大量の感染者が発生したのである。結果としてマニラッドは破綻、フランス資本は撤退していった。その結果、マニラ市民は水道料金が数倍に値上がりするという事態に直面したのである。水道料金が払えない市民は水道を使えず、また違法に水道管から水を盗むという事件も大量に発生しているという。

 民営化が破綻する典型的なパターンは、水道事業を独占した巨大資本が、その後に一方的に水道料金を値上げするというやり方である。競争原理が働いてこそ資本主義は自律的に機能するが、独占である水道事業では、利益を第一にする企業が一方的に料金を上げることに対する抑制力はない。同様に水道事業を民営化していたボリビアでは、5年前に水道料金値上げをきっかけに大暴動が起き、民営化が破綻した。また南アフリカでは民営化後の料金値上げで水道を使用できない国民が増加しているという。

 水道民営化の問題は途上国だけではない。アメリカでも水道が民営化されている地域が多い。そんな中、片田舎の町フェルトンでは町を二分する論議が起こった。この町では以前から水道は民間会社が経営していたのだが、その会社が大資本に買収され、さらに1年後にはその会社がイギリスの世界第三位の水企業に買収され、この企業はドイツに本拠地を置く多国籍企業の傘下だったため、この町では水道に関する問題で交渉するには、遙か彼方のドイツとやり取りをする必要が起こってしまったのである。そのため各種のトラブルが続出、住民の間から水道を公営化するべきだとの意見が浮上してきたのである。しかしそのためには水道設備を買い取る必要があり、膨大な資金が必要である(住民が年間6万円を30年にわたって負担するとのこと)。そのために賛否を巡って町が真っ二つに分かれたのである。しかし住民投票の結果は、賛成派が有効投票数の2/3を上回る75%を確保し、水道が公営化されることが決定した。住民の「自分たちの生活に必要な水は自分たちがコントロールしないと」という意見が印象的。なおここで水道民営化の運動が開始されたきっかけも、水企業が当初の約束に反して、水道料金の値上げを一方的に通知してきたからだという。

 民営化でも公営でもない第三の道を選んだのがイギリスのウェールズである。ここではサッチャーの政策により水道会社が民営化されたが、民営化された水道会社は利益を追求して多角化に走った結果、事業に失敗してアメリカの電力会社に買収された。それを苦々しく感じていた社員の一人のクリス・ジョーンズ氏が、非営利目的のグラス・カムリというNPO法人を設立して水道事業を担うことになったという。グラス・カムリでは事業を水道のみに限定した上で、地域の住民を経営監視に参加させ、利益は地元に還元しているとのこと。クリス氏によると「水道は公益事業であるべきだ」とのこと。

 以上、現在の水道を巡る民営化の問題点である。公益性の強いものを何でも民営化したらこういうことになるのは当然のことである。マニラのケースは典型的であり、このパターンで水企業に搾取された国は枚挙に暇がない。なお日本では現在のところは水道事業は公営化されているが、アメリカ巨大資本の利益代弁者である竹中大臣は、いずれは水道事業もアメリカ資本に売り渡すことを考えているだろう(金融資本をアメリカハゲタカファンドに売り渡した次は、水道などの公益事業に目を付けるのは必然)。

 なおこの問題については私も以前に数冊の本を読んだことがあるので、参考図書として下記の書物を挙げておく。

 「ウォーター・ビジネス」中村靖彦著 岩波新書

 「水」戦争の世紀 モード・バーロウ トニーク・クラーク共著 集英社新書

 

5/8 NHKスペシャル「少年院」

 番組では愛知県の瀬戸少年院の第2学寮で取材を行っている。

 少年院は少年に刑罰を与える施設ではなく、少年を教育する施設である。これには罪を犯した少年も適切な再教育によって更正できるという考えがある。ただ最近は処遇に悩む少年もいるという。金銭トラブルで友人に集団暴行を加えて半身不随にした19歳の少年が収容されているが、彼には未だに反省の情が見られないという。また被害者は半身不随の上に目が不自由になり、言葉も不自由になったということなのだが、その境遇を想像してみろ言われても、彼の返答は「自分がなったことがないから想像できない」というもの。このような精神的に未熟な少年が最近増えているという。

 彼は不幸な家庭環境で育ち、小学生時代から喫煙の習慣などがあったが、非行といえるトラブルは今回が初めてだったという。しかし彼は感情を溜め込んで突然にキレるという傾向があるのだという。少年院の中では各自が委員になって役割を分担しているのだが、彼はその委員の仕事でトラブルを起こす。しかしそれは彼が前向きに仕事に取り組もうとしていた結果であるとして、変化の兆しを見ている。

 もう一人の問題少年は、殺人で収監されている少年である。彼は彼女を妊娠させてしまい、生まれた子供を殺したことで収監された。しかしどうしても深層の感情を見せようとしないのだという。少年院では子供の命日の前後の一週間、彼を単独房において連日の面接と作文で彼を自身の罪に直面させようとした。その結果、彼は自分が子供に愛情を感じていたことに気づき、自身の罪を実感していった。

 少年院は処罰する施設ではなく、教育する施設だと言っていたが、確かにその通りであるようである。実際のところ、金八先生を十倍濃くしたような世界が繰り広げられており、これは関係者の労力は並大抵ではないと感じた。今回は特に問題のあった2人を中心に、彼らが更正の手がかりらしきものをつかんでいく過程を描いていたが、果たして本当に彼らがこれから更正できるかは全く分からない。また少年院の教育は、人間の中心には善なるものが存在するはずであることを前提として、それをいかにして引き出すかに腐心しているように見えるが、果たしてすべての人間の中心に善なるものが存在するかは難しいところである。更正したように見えた少年が、本心を偽っているという可能性も否定できないからである。また少年だからといって、処罰の概念がなくても良いのかというのも難しいところである。

 

3/31 探検ロマン世界遺産「天空のメッセージ〜ペルー・ナスカ地上絵」

 南米ペルーのナスカ高原の地上絵が発見されたのは、飛行機の時代になってからである。この地上絵は実はただ単に乾いた大地の表面をひっかいて地面を露出させることで線を引いてあるだけであるのだが、この地域はほとんど雨が降らないことから、今日まで地上絵が残ったのだとのこと。

 このような地上絵の制作方法だが、まず元になる絵を地面に描いてから、その絵の各ポイントをロープなどを使って数学的に拡大、そのポイント間を線でつないだと見られている。番組でもレポーターの住吉アナも参加して、数十人がかりで4時間かけて、実物の1/2サイズの地上絵を再現している。

 さてこのような地上絵が制作された目的であるが、未だにはっきりとはしていない。古代人が気球で楽しんだという説や、実はカレンダーだったという説、さらには最近になって日本の研究者からは、天の川の星座を写し取ったという説なども提案されているようだが、どれも決定打にはなっていない

 なおこれ以外にも「宇宙人が作った」などという馬鹿丸出しのオカルト説もあるが、当然ながら番組は相手にもしていないし、私も相手にする気がない。この手の古代人の遺跡をすべてUFOに結びつけたがる連中の特徴は、古代人は馬鹿だった→その古代人にこんな凄いものが作れるわけがない→だからUFOが作ったに違いない という論理展開だが、その前提が根本的に間違っているのはいうまでもない。現代人が思いつくような方法は、古代人はより容易に思いつくというのが現実なのである。

 さて番組では、現地でもっとも受け入れられている説として、これらの地上絵は水源の位置を示しているのではという説をあげている。乾燥するこの大地では水は非常に貴重であり、近くの山に降った水が地下を通る地下水脈はこの地の命綱だったという。また天空の神に雨を祈る意味でも巨大な地上絵が必要だったのではないかとしている。

 

 TBSから「ブランドへのただ乗りだ」と抗議が入ったといういわく付きの番組である。この抗議に対してNHKの側は「番組の枠も志向も違う」と戸惑ったというが、確かに戸惑うのも当然だろうというのが私の印象。明らかにTBSの「世界遺産」とは目指しているところが違う。TBSの番組が格調高い環境ビデオの方向を志向しているのに対し、この番組は作りとしては明らかに「地球ふしぎ大自然」。民放の番組で説明するとすれば、「クイズを抜きにした世界ふしぎ発見」というイメージである。TBSの番組が10時台、こちらが8時台という枠の違いからも想像できる通り、ターゲットとしては明らかにTBSの番組よりも年齢層の低いところを目指している(俗に言うファミリー狙い)。CGによる案内キャラクターなんかを登場させているところは、いかにも「子どもにも見て欲しい」という意図が汲み取れるのだが、所詮は今時の子どもはこの手の番組は見ないし、子どもをメインターゲットにしたので視聴者に広がりが出ない。そこで本音ではその親の年代に当たる層を取り込みたいというのが、このCGキャラのデザインに松本零士氏を起用してたり、主題歌に松任谷由美を持ってきているところに現れている。しかしそんな「既に終わってしまっている作家」を持ってきてしまうところは、いかにもNHKらしいセンスの悪さというものである。

 制作費も結構かかっていると思われ、NHKとしてもかなり気合いを入れている番組だろうと推測されるが、これが成功するかどうかは難しいところ。実際のところ、視聴した私が感じたのは「やけに全体の印象が薄い番組だな」というもの。何となく構成が散漫であるように思え、この番組の場合は45分という尺(民放の番組だったら60分番組に匹敵すると推測される)がどうにも中途半端に見えてしまう。実のところ、番組全体でもっとも印象的だったのは、井戸の中に入っていく時の住吉アナのお尻というのが本音(下品で失礼)であり、内容が盛りだくさんすぎてついて行けなかったというところ。その遺産の建造の歴史か、それとも現在の周辺の風俗か、遺産の現状の紹介か、何をメインに置くのかをはっきりさせた方が良いように思えた。今回の番組の印象は「世界ふしぎ発見」に「宇宙船地球号」あたりをつき混ぜたというところで、NHKらしい強みは特に見られなかった。

 なおこれは個人的好みの世界にもなるので、この提案に従うことで番組が成功するとは限らないということを前提で言えば、お子様層は切り捨てて、もう少し高年齢層に訴える渋い作りにした方が良いというのが私の考え。どうしたところで内容は高度なので、どっちにしても子どもは見ないと思われるから(誰もが見ないとは言わないが)。TBSの「世界遺産」に比べると、尺が長い割に「見応え」といったものが今一つ感じられなかったのが、一番の不満である。

 

2/6 NHKスペシャル「巨大マネーが東京をねらう〜オフィスビル投資の舞台裏」

 現在、東京でオフィスビルの価格が上がりつつあるが、その裏に海外の投資ファンドの暗躍があるという。

 彼等の手口は銀行の不良債権となった不動産を安価に買い取り、そこにテナントを誘致してビルの付加価値を高めた上で転売するというものである。バブルの崩壊が彼等のビジネスチャンスになっているのである。

 また別の会社は空き室が目立つ中古のビルを買い取って、改造して価値を上げるバリューアップという手法で稼いでいる。例えば女子トイレを和式から洋式に改造する。照明を追加して明るくするなどのイメージアップで、テナントを増やしている。また究極は、ビルの貸し床面積を増加させる手法もあるという。例えば共用スペースのエレベータホールなどをオフィスに組み込む、屋内にあった避難ハシゴを屋外に移動させることでスペースを作るなど、このような手法で床面積自体を増加させるというのだ。

 このような海外の不動産ファンドの進出による不動産投資の活発化の影で、地元の商店街などはその狭間で翻弄されている。バブルの最中に相続税の負担を軽減するために借金をしてビルを建設したあるオーナーは、投資ファンドの進出ラッシュによりテナント確保が困難になり、賃貸料収入は以前の半分ほどまで激減しているという。

 一方、日本の機関投資家も不動産投資に乗り出している。主な投資先はJリートという日本の不動産ファンドだという。資金の運用に困る機関投資家が増加している中、これらのJリートは外国の投資ファンドと熾烈な争いを繰り広げているという。そしてJリートと投資ファンドの激戦は物件の不足をもたらし、物件の価格が急騰しており、さながらバブルの再燃の様相を呈してきている。

 この事態は先の海外の投資ファンドにとっては高利回りを確保するための手頃な物件の不足につながり、戦略の変更が迫られているという。そこで彼等は高利回りを要求される海外の投資家ではなく、より低い利回りでも良い国内の投資家向けのファンドを設立し、主に地方の金融機関を対象に売り込みに奔走している。

 このような流れは不動産の金融商品化であるのだが、この傾向が先行しているアメリカでは不動産ファンドが景気の影響を受けて乱高下しているという。日本の不動産投資もいずれはまた落ち込む可能性があると見られている。

 結局は「バブル」である。こいつらまだ懲りてないのか?というのが正直なところ。私が以前から言っている「経済の博打化」の象徴のような話である。結局のところバブルとは「ネズミ講型経済」であるから、当然ながらどこかで破綻して誰かがババを引くことになるのだが、参加している当人達は自分だけは逃げ出せると考えているのである。社会主義経済が行き詰まって久しいが、こんな博打経済をいつまでもやっていたら、資本主義も早晩行き詰まるんじゃないかというのが私の持論。うーん、マルクスの資本論ならぬ「博打論」でも書くか(笑)。

 

11/28 NHKスペシャル「63億人のデータマップ9 いのちの地球へ〜野生生物からのメッセージ〜」

 今、世界で絶滅に瀕している動物、絶滅危惧種は15000種以上の動植物が含まれる。今回はこの絶滅危惧種についてのデータマップである。

 多くの絶滅危惧種を抱えるのがインドネシアであるが、その中でも急速に生息数が減っているのがスマトラゾウである。生息地のスマトラ島リアウ州では、椰子の木のプランテーションを荒らすとして殺されるゾウが多い。リアウ州では森を切り開いてアブラヤシのプランテーションに変えられてしまったことで、ゾウは餌を求めてプランテーションに現れるようになったのである。人間はゾウを殺した例だけでなく、ゾウによって人間が殺された例まで存在するという。捕らえられたゾウは、ゾウ訓練センターに連れて行かれ、人間慣らされた上で工事現場などで使われるのだという。ここに連れてこられたゾウは二度と森に帰ることは出来ない(そもそも帰るべき森がない)という。現在ここに収容されているゾウは56頭もいる。

 日本では668種の動物が絶滅に瀕している。伊吹山では絶滅危惧種のイヌワシが生息している。ウサギや蛇を捕りながら森の生態系の頂点に君臨していたイヌワシであるが、自然環境の悪化によって餌となる生物が減少し、それと共にイヌワシが絶滅に瀕することになったのだという。さらにダム建設などによって、営巣するのに適した場所がなくなっているのも影響しているという。しかもイヌワシの死骸を分析したところ、ダイオキシンの蓄積も見られたという。これらの影響で生殖に異常をきたす可能性も指摘されている。

 一方、野生生物の絶滅を食い止める動きも現れている。アメリカのフロリダのエバーグレーズの湿地では、大規模な自然再生事業が行われている。開発された農地に変えられていた土地を再び湿地に戻そうというものである。総工費は1兆円であるという。

 しかしこの事業は何も最初から自然保護を優先して行われたわけではなかったという。かつてはいのちあふれる湿地帯と言われていたエバーグレーズも、農地や市街地の開発により、生物が減少、この地に生息するフロリダパンサーなどは絶滅に瀕していたという。しかし湿地の水の流れを断ったことで、市街地域で地下水位の低下による大規模な地盤沈下や、地下に海水が入り込むことで飲み水にまで影響が現れ始め、人々は初めて湿地の再生の必要性を悟ったのだという。

 日本では豊岡でコウノトリを甦らせるプロジェクトが実行されている。コウノトリは田んぼの虫などを餌にしているが、農薬の使用などによって餌がなくなり、この地から消えていた。そこで豊岡ではコウノトリの繁殖センターを作ると共に、無農薬・減農薬の農業に取り組むことでコウノトリを甦らせようとしている。

 以上、絶滅危惧種についての内容であるが、テーマがテーマだけに「宇宙船地球号」とかぶっているネタがあった。スマトラゾウについては8/1の回、コウノトリについては8/22の回で登場済みである。どちらの局が先に取材を始めたのかは分からないが、それだけ象徴的な事例であるということであろう。

 絶滅危惧種の問題については、一国だけの取り組みでは限界があり、世界レベルで取り組まないといけない問題である。特に発展途上国での環境の悪化については、大抵は先進国に責任があるだけに、なんらかの援助は必要であろう。それと環境の悪化をもたらすのは何も開発だけではない。戦争も最悪の環境悪化をもたらす。まずこんな愚かな行為を地球から一掃するのが必要である。現実にはまだまだ難しいだろうが・・・。

 

11/14 NHKスペシャル「地球大進化 46億年・人類への旅 第六集 ヒト 果てしなき冒険者」

 本来は先月に放送されるはずであったこの番組だが、例の新潟地震の煽りで一ヶ月遅れての放送になっている。シリーズも大詰め、いよいよ人類の登場である。

 人類が二足歩行を始めたのは700万年前だという。この頃の人類はアウストラロピテクスであり、まだ「二足歩行するチンパンジー」というだけの存在である。彼らは二足歩行をしてはいたものの、森の木に登って果実を得るなどして生きていた。

 しかしそんな人類に危機が訪れる。アフリカにおける熱帯雨林の減少である。5000万年前にインドとアジアの衝突によって始まったヒマラヤの造山運動は、700万年前にはすでに標高5000メートルに達し、地球の環境に影響を与えていた。ヒマラヤで発生した上昇気流は乾燥した大気を生成し、それがアフリカまでに及んでアフリカに乾期が発生したのである。その結果、200万年前には新たな環境に対応した2種類の人類が登場した。ホモ・エルガステルとパラントロプス・ロブストスである。

 彼らの進化は果実の減少による食糧不足に対する適応であった。ずんぐりした体格で丸顔のパラントロプスは食料を植物の根に求め、栄養豊富ではあるものの固い植物の根を食べるために、大きなあごと強い筋肉を発達させた。一方の長身でスラリとしたホモ・エルガステルが食料としたのは肉食獣などが食べ残した肉であった。そして彼らはそれらを求めて長い距離をさまよい歩かざるを得ず、そのためにスラリとした長身になったのだという。

 700万年に及ぶ人類の歴史の中で、20種に及ぶ種族が発生したが、その中の1つを除いてすべては絶滅した。草食性のパラントロプスも100万年後に謎の絶滅をしている。

 アフリカに広がるサバンナの中で肉食獣の脅威にさらされながら生き残ったホモ・エルガステルの身体には劇的な変化が起こる。それは脳の巨大化である。脳の巨大化には肉という高カロリーの食料は有効であったと考えられるのだという。そして脳を発達させた人類はついに次の段階に発展する。狩りの発生である。

 その後も人類は脳の発達は続き、20万年前についにホモ・サピエンスが登場する。しかし我々とほとんど変わらない容積の脳を持つ別の人類も30万年前に登場していた。それがネアンデルタール人であった。彼らは寒さに適応しており、氷河期のヨーロッパに進出して繁栄したが、3万年前に絶滅している。

 ネアンデルタール人はかなりホモ・サピエンスに近く、もしネアンデルタール人が大都会の地下鉄に乗っていても誰も変に思わないだろうという研究者もいるぐらいである。またネアンデルタール人のレグルドュー遺跡には死者を埋葬した跡もあり、精神的にもホモ・サピエンスにかなり近いことが分かっているという。

 この両者の運命を分けたのは言語能力ではないかとの仮説がある。マウントサイナイ医科大学のジェフリー・レイトマン博士によると、ネアンデルタール人とホモ・サピエンスの頭蓋骨では喉の裏側にあたる部分の形が違っており、このことはネアンデルタール人の喉仏はかなり高い位置にあることを示しており、発声能力的にホモ・サピエンスに劣ることにつながるというのである。

 複雑な言語を操れるホモ・サピエンスは、言葉で仲間と連携をとったり、知識を言葉で次の世代に伝えることで知識の継承が出来るようになり、それが自然環境に対する適応能力の飛躍的発展につながったのだという。そして最後の氷河期の厳しい環境の中で、ホモ・サピエンスのみが生き残ったのだという。

 かつては人類の進化とはアウストラロピテクス→ネアンデルタール人→クロマニヨン人などというように直線的に進化したと考えられており、私も学生時代にはそのように習ったものだが、最新の研究では複数の人類種が発生しては絶滅していったということが分かってきている。この番組はその成果を反映しているようである。つまり我々は至高の生物として一直線の進化の結果に誕生したものではなく、多くの可能性の中からたまたま生き残った末裔にすぎないということであり、これは実は宗教及び哲学に与える影響も大きなものである。従来の考え方は多分にキリスト教的世界観の影響を受けていると思われるのに対して、最新の学説はどちらかといえば仏教的世界観に近いと感じられる。

 一つだけ気になったのは、肉食が脳の発達に貢献したという考え。これは気をつけないと、かつてから欧米の中にくすぶっている肉食民族優位説に火をつけかねない危険もはらんでいる。人類の進化の問題と民族の特徴の問題は全く無関係であるのだが、自らの野心のために民族優位意識を煽るような類の愚劣な政治家は今までその類の無茶な論理展開を平気でしているから要注意である(ヒトラーのアーリア人種優位論などが典型的)。

 なお番組中、山崎努氏がネアンデルタール人のメイクを施して街中を歩くシーンがあったが、正直な感想は「ほとんどメイクなんていらないじゃん」というもの。初めて、この番組に山崎氏を起用した理由が分かったような気がした。ネアンデルタール人は3万年前に滅んだと言っているが、現代人の中にもかなり彼らに彼らに近い顔立ちの者はおり、実は細々と生き残っているのではないかという気も個人的にはしたりする。もし百万年後に武田鉄矢氏の頭蓋骨が発見されたら「百年前にはホモ・サピエンスと北京原人が共存していた」と学会に発表されるのではないだろうか(笑)。

 またホモ・サピエンスとネアンデルタール人の命運を分けたものが、言語能力の違いだとしたら、「むかつく、切れた、殺す」しかボキャブラリーのない現代の若者などは人類滅亡の最前線にいるということか・・・おっと失礼。これは暴論。

 

10/31 NHKスペシャル「ドキュメント市町村大変革 1.特区を巡る攻防」

 小泉内閣の目玉と位置付けられていた構造改革特区であるが、権益を守ることに汲々としている中央省庁の反発で、その実態はお寒いことになっている。その実情についてのレポートである。

 本番組であげられている例は徳島県上勝町と埼玉県草加市である。過疎の町の上勝町では一人暮らしの老人の生活をどう支えるかが問題になっている。選択が大変な老人に対しては、ボランティアで洗濯サービスをしていたが、依頼する老人側に気兼ねがあって、謝礼を払って洗濯を依頼したいとの要望があった。しかし山間の上勝町にはクリーニング店はなく、さらに謝礼を取って洗濯をするには厚労省の許可がいることから特区申請をした。

 財政難を乗り切るために特区申請をしたのが草加市である。高度経済成長期に東京のベッドタウンとして急激に人口が膨張した草加市であるが、彼らが高齢化したことによって税収は減少、財政は逼迫をしている。しかも当時に建設された小学校などの老朽化が進み、危険建物と認定される校舎が現れ、建て替えの費用負担がのしかかった。そこで草加市が考えたのが教室の天井を一般のオフィス並みの2.7メートルにするという案である。この案によって建設費の節約が可能になる。しかし建築基準法の施行令で教室の天井は3メートル以上と規定されていることから、特区申請を行った。

 しかしこれらの自治体の申請に対する中央省庁の対応は最悪のものだった。共に門前払いに等しいC判定(対応不能)を受けることになる。

 上勝町に帰ってきた返答は「健康に関わる衣類を扱うには公衆衛生上必要な基準を満たす施設で行うべきである」という典型的な定型的返答であり、草加市に対しては「天井の高さを下げることは児童生徒の心身の健康に影響する問題である」という意味不明な返答であった。共に中央省庁は地方の細かいことまでいちいち許認可権限を振りかざしたいという意図だけが垣間見えるものであった。

 この返答を受けた両自治体が動き始める。まず草加市では特区担当特命理事の中村卓氏が、教室の大きさぐらい地方自治体に決めさせろと反論を送る。これに対する国からの返答は「天井を下げることは児童に心理的な不快感を与える可能性がある」という文科省の意味不明な調査結果であった。この馬鹿げた解答に憤った中村氏らは、まず文科省の言い分にどういう根拠があるのかを調べるため、文科省の調査に直接関わった千葉大学工学部の柳澤要助教授の元を訪れる。するとそこで分かったことは、3メートルでも2.7メートルでも児童の圧迫感には差がなかったこと、諸外国では2.7メートルの例が多いことなどであった。

 上勝町には厚労省から洗濯サービス特区の詳細を確認する電話が入る。そのやり取りで厚労省は特区を認めることで既存業者の権益が脅かされることを警戒していることが明らかになる。これに対して町の担当者は怒りを抑えながら答える「クリーニング店などない地域の老人はどうすれば良いんだ!」。

 草加市では中村氏が再度中央省庁との会議に臨む。しかし文科省の反応は非常に鈍く、その後に文科省によって開かれた研究会などでも、教育研究者(いわゆる御用学者)などの「子供はのびのびした環境で教育すべき」の類の空理空論ばかりが踊り、中村氏は絶句させられることになる。

 しかしこれで引き下がるわけにはいかない中村氏は、学習塾で集めたデータ(天井2.5メートルでも不快感はないというアンケート結果)などを持参して再び文科省に乗り込むが、今度は「特区としてではなく、文科省主導の制度改定という形で対応したい」という省としての体面ばかり重視した対応をされる。

 最終的に上勝町の洗濯サービス特区にはB1判定(今年中に対応する)、草加市の天井引き下げにはB2判定(来年以降、文科省が制度改定の形で取り組む・・つまりかなり時間がかかる)という結果に終わる。なおこの年に申請された特区は229であったが、そのうち許可が下りたのはたったの38だったという。

 いかに構造改革特区なるものが空疎であるかということと、中央省庁がどんなつまらない許認可権限でも手放そうとしないということを目の辺りに見せつけられた内容である。両自治体とも担当者が怒りを必死で堪えていたが、それはよく分かる。あんな馬鹿役人ばかり相手にしていたら、私ならぶち切れてしまうところである(笑)。中村氏が「縦割り行政の実情を目の当たりに見せつけられた」と怒りを滲ませながら語っていたが、非常にその心境はよく分かる。どうして中央官庁はあんなアホの巣窟になってしまったとのかと私など疑問に感じるところだが、一番たちが悪いのは、連中は「国民はアホばかりだから、自分たちエリートがキチンと指導してやらないと滅茶苦茶なことをしてしまう」とどうやら心底信じているようであることである。やはり東大卒で固まった官僚連中を一掃し、民間企業体験者などの外の血を大量に入れないとどうにもならないのではなかろうか。

 それにしても教室の天井が3メートルから2.7メートルになったら児童の心身の健康に悪影響を及ぼすなんてアホな理屈を本気で言えるなんて、こいつら本当にまともな頭持ってるんだろうか? ちなみに広場恐怖症の傾向がある私には、小学校の無意味に高い天井は非常に不快感があり、心身に悪影響があったのですが・・・。部屋の天井は低い方が学問に集中できるという意見もあるはずですが(実際に、書斎は狭めに作る人が多い)。

 

10/24 NHKスペシャル「63億人のデータマップ8 中国豊かさへの模索」

 経済的に急成長を続ける中国だが、経済格差が問題となってきている。行政区ごとに所得を比較すると、最大で171倍もの格差が存在するという。

 上海の富人区と言われる金持ちが集まった地域では、事業に成功した富裕層が居住している。豊かになれる者は先になれという「先富論」に基づく改革開放経済下、電気製品製造の工場などで財産をなした張氏が力を入れているのが教育分野である。彼は豊かになった人たちがまず力を入れるのは教育と読んでのことだった。彼の作ったエリート学校は入学金が50万円と上海の平均年収の2年分にもあたり、貴族学校と呼ばれているが、今年も多くの新入生が押しかけているという。

 上海の経済を支えているのが、民工と呼ばれる農村からの出稼ぎ労働者である。彼らは上海市民の約半分の給料で働いており、彼らを雇用して一財産をなしている者もいる。最近の調査では農村から都市に出稼ぎしている人口は1億人に達しているという。中国政府はこれからも毎年500万人ずつ増加すると見ているという。

 しかし農村居住者と都市居住者の間には確固とした差別が存在している。農村戸籍を有する者は、上海では公立学校には入ることが出来ず、彼らの師弟はやむを得ず民工学校と呼ばれる学校に通っている。これらの学校は国からの援助がなく、設備なども非常に貧しい。このような民工学校は上海に400以上存在するという。しかし中学校に当たる民工学校はほとんど存在しないし、公立中学校への入学は非常に困難であることから、そこに通う子供たちは進学ができず、親と離れて故郷に帰るしかないこととが多いという。政府は昨年、民工学校の子供たちをなるべく受け入れるように通達を出したが、20万人もいる彼らの受け入れはほとんど進んでいないのが実態であるという。

 中国における都市と農村の格差は改革開放経済と共に拡大したが、それは政府も問題であるとの認識はしているという。全人代でも温家宝首相は経済格差の解消が重要であるとの見解を示したと言うが、対策は遅々として進んでいない。中国社会科学院の李実教授も、中国の貧富の格差が問題であり、このままいけばいずれ社会不安につながりかねないとの論文を発表している。

 経済発展に取り残された農村の実態は、さながら原始時代のようである。番組では最貧困地域の一つである寧夏回族自治区の中庄村という農村を訪れているが、ここには井戸も灌漑設備も整っておらず、村人は雨水を溜めて生活用水としている。また降水量が日本の1/6程度しかないため、農業生産を上げようにもそれが不可能であるという。村長は貧困から脱出するために教育に力を入れようとしているが、教科書代を払えないために学校を辞める子供も多く、50人の子供が学校に通っていない状態であるという。またこの村から大学に合格した少女が出たが、その父親は入学金の8万円を工面できずに苦悩しているというような実態があった(結果として、彼女の入学金は村が保証する形で借りることが出来たという)。

 中国で現在最大の社会問題となっている経済格差の実態である。しかしこれの解消は困難であるのは間違いない。というのも、前半の上海の繁栄を見ていると明らかなように、上海などの富裕層は農村の貧困層を踏みつけにすることで繁栄を謳歌しているというのが実態であるからである。昔より資本主義社会の理想は奴隷社会でもあるのである(資本家にとっては労働者の生活向上など単なる無駄な出費である)。そういう意味で現在の中国の状況は、日本などよりもよほど「資本主義的」であるとも言える。経済格差の是正は上海などの富裕層の利益に反するので、果たして政府がそれを実施できるかは難しかろう。

 もっともこんな社会矛盾が成立しているのは、中国が中央集権色が強い国家であるからである。この状況が続きすぎると中国の社会体制にも揺らぎが消磁する可能性がある。人は、全員が貧しいことには耐えられても、自分が貧困であえいでいる時に、その真横に何不自由ない豊かな生活を謳歌している輩がいるというような状況にいつまでも耐えられるものではない。ただ気になるのは、この中国の社会的不公平に、アメリカや日本を始めとして外国も乗っかっているということである。これが世界経済の後々のアキレス腱にならないかを個人的には懸念している。

 

10/3 NHKスペシャル「チベット天空の湖 標高5000メートルに生きる」

 チベットの奥地標高5000メートルの地にはプマユムツォという巨大な湖が存在する。そもそもチベットの地はかつては海であり、点在する湖はその名残だという。

 酸素の薄いこの高地に、世界で最も標高の高い村であるツィ村が存在している。村人はここでは羊を飼って生活している。飲み水は周囲の山の氷河から溶け出した水がわき出している。この豊かな水は草原を養い、夏に水分を含んだ草をたっぷり食べた羊の乳で、彼らはチーズなどを作って冬を凌ぐのだという。

 彼らはプマユムツォを神聖な湖として、ここの生き物には手を出さずにいるとのこと。ただし冬になると羊に食べさせる草がなくなるので、その時には湖に張った氷の上をわたって、湖の島に羊を移す。そこにはまだ草が残っているからである。しかし地球温暖化の影響はチベットにも及んでおり、湖の氷が薄くなっているとのこと。彼らは慎重にルートを選びながら、滑り止めにヤクの糞を燃やして作った灰をまいた道を作る。そしてその道を羊は島に渡るのである。

 なにやら信じられないようなゆったりした時間の流れている世界であった。こんな中で生きている人もいるんだな。それにしても1年を通した映像を流していたが、1年がかりの長期取材をしたんだろうか。大変な内容だ。番組としては滅茶苦茶地味なのに(笑)。

 

9/26 NHKスペシャル「地球大進化 46億年・人類への旅 第五集 大陸大分裂 目に秘められた物語」

 恐竜の間で細々と生きてきたほ乳類。しかしその恐竜が絶滅していよいよほ乳類の時代かと思ったが、実はそうでもなかった。5600万年前、カルポレステスと呼ばれる我らほ乳類の先祖が存在していたことが化石で確認されている。カルポレステスは夜に木の間を餌を求めてコソコソと動いていた。その過程でカルポレステスは大きな目を発達させたという。しかしこのカルポレステスの生き方は恐竜の全盛期とほとんど変わらない。

 ほ乳類をそのような状況に追い込んでいた生き物が、ディアトリマと呼ばれる全長2メートルの巨大鳥であった。これこそが恐竜絶滅後の生態系の頂点に君臨した生物であった。頭の化石のCTによる解析の結果、ディアトリマはライオンに匹敵する強力な顎を持っていることが分かり、ディアトリマは強力な肉食獣であったと考えられるという。このディアトリマの獲物とされていたのがほ乳類であり、そのために我々の祖先は木の合間に隠れて生息せざるを得ない状況に追い込んでいたのである。

 この頃、全世界各地で巨鳥の化石が発見されており、地球は巨鳥の時代を迎えていたと考えられる。唯一の例外がアジアで、アジアはツルガイ海峡でヨーロッパと隔てられ、北アメリカ大陸とはベーリング陸橋でつながっていたが、これは極地に存在したために生物が渡ることは不可能だった。こうして他の大陸と隔てられたアジアでハイエノドントという最強の肉食ほ乳類が進化する。

 恐竜絶滅から1千万年後、地球を覆っていた氷河が溶け始めることにより、アジアと北アメリカの行き来が自由になると、ハイエノドントはディアトリマが支配する北アメリカに進出する。この両者の争いは、体は小さいものの敏捷性に優れ集団行動するハイエノドントに軍配が上がる。こうしてハイエノドントはディアトリマを絶滅に追い込み、ほ乳類の時代が到来したのだという。こうしてほ乳類の時代が到来したものの、我々の祖先である霊長類の祖先はやはり木の上でひっそりと暮らすしかなかった。

 5500年前、大陸大分裂が起こり、グリーンランドとヨーロッパが引き裂かれる。この時マグマが海底のメタンハイドレートに触れたことから、大量のメタンガスが一気に開放され、地球の気温は10度以上も上昇する。その後、温暖化は500万年以上続き、地球環境は一変する。この温暖化により、それまで針葉樹の合間で貧弱に生息していたにすぎない広葉樹が、巨木の森へと変化する。広葉樹の枝は互いに重なり合い、樹冠と言われる木々の枝が重なった世界が発生する。ここは霊長類にとっての楽園となった。彼らは危険な地上に降りる必要がなくなったのである。樹冠の上で生活したことで、身体の側面に目がついていたカルポレステスから、目が正面に並んだショショニアスに進化する。目の位置が変化することで視界は狭くなったが、立体視の能力が備わったのである。こうして広葉樹の森の広がりと共に、霊長類は全域に広がっていく。しかしこのままでは終わらなかった。変動は南極から始まる。

 5500万年前の南極は、今のような極寒の地ではなく亜熱帯の森が広がっていたという。当時南アメリカやオーストラリアと陸続きであった南極は、陸づたいに流れてくる暖流の影響で暖かかったのである。しかし南アメリカやオーストラリアが分裂するに伴い、孤立した南極の周りには周極流と呼ばれる海流に取り囲まれ、これが赤道からの暖流を遮ることになる。暖流と切り離されたことで南極は急激に氷の大陸となり、これが地球全体を冷却することになり、3300万年前には30度も気温が低下したという。この気温の低下により、広葉樹の森は急激に範囲を狭めていく。

 こんな中で進化したのがカトピテクスと呼ばれる霊長類である。カトピテクスの特徴は眼窩後壁という目の後ろの骨が存在していることである。眼窩後壁があると言うことは、フォベアという視細胞が集中している部分を持つことになったのだと推測されているという。これは視細胞自体が増加した上に部分的に集中したということであり、これで物をはっきり見ることが出来るようになったのだという。この高い視力は、他の生き物よりも先んじて餌を発見することなどに有効に働いたと考えられるという。

 さらに霊長類の中でも真猿類と呼ばれるチンパンジーの仲間などで固有に発達したものがある。それは豊かな表情である。真猿類は表情筋が発達することによって表情が多彩になり、これが仲間とコミュニケーションを図るために重要になるのだという。こうして真猿類には一種の社会が発生したと考えられるという。

 かなり劇的な展開が繰り広げられたが、一つ気になったのは恐らく今回登場したのは必ずしも学会での通説ではないのではないかということ。例えば眼窩後壁の意味についてなどは、最近に発表されて話題になったと言っていたことから、まだ通説に至っているとは思いにくい。また5500万年前にメタンハイドレートのせいで唐突に気温が上昇するというのは、あまりに激しすぎる気がするし、また南極が孤立したことで3300万年頃には気温が低下するという理論も、地球における熱の収支が変わっていないとしたらエネルギー量的に無理があるように思える(同じ熱量のところで、一カ所の温度が低下したら、その分は他の部分の温度が上がるのではないか?)。番組を理解しやすくするために詳細を省いたと言うことも考えられるが、どうもまだ完全にオーソライズされた通説がないような気がした。そう言う意味で今回の内容は面白くはあったが、10年後ぐらいのNHKスペシャルではまた全く内容が変わっているのではないかという予感がする(笑)。実際、10年以上前の「地球大紀行」などと比較すると、今回の内容はかなり変わっているから。

 

7/25 NHKスペシャル「にっぽんの"ゴミ"大陸へ渡る〜中国式リサイクル錬金術〜」

 最近、古紙の価格が急騰。世田谷では市民から回収した古紙が持ち去られる事件が発生しており、監視のパトロールまで始めたという。このように価格が急騰しているのは古紙に限らず、金属スクラップなどもである。そしてこのような廃棄物価格の高騰の背景には中国のバイヤーの存在がある。

 彼らはプラスチックゴミやスクラップなどあらゆるものを回収、これを中国に輸送して再生しているのである。このようなリサイクル業は日本では人件費の高さで既にビジネスとして成立しなくなっているのだが、中国では人件費の安さを活かして、人海戦術による徹底した分別によって金属類などを再生しているのである。こうして再生された金属は再び日本に輸出されたりすると言う。また金属類だけでなくペットボトルなども買い付け、これを梱包紐などに再生したりしているという。中国の再生技術では純度が低いため、ペットボトルから長い糸を作り出すことは難しいが、これらを綿として再生しているのだとのこと。

 このような中国でのリサイクルビジネスの発達は、日本の再処理業者とゴミの奪い合いという状態を発生させているという。日本では多くの業者はゴミをただで譲り受けた上に、補助金を交付されて処理を行っていたのだが、そこに中国の業者が乱入し、ゴミを有料で買い取っているのである。そのため、自治体の中にもこれらの業者に処理を切り替えるところも現れているという。

 しかしゴミを中国に押しつけるだけで良いのかという問題も存在している。かつて古紙と偽って有害な廃棄物をフィリピンに持ち込もうとした事件があったが、中国でも似たようなことが発生しているとのことで、習志野市では現地の視察を行った上で、環境に悪影響を与えていないことを確認して業者との取引を決定したのだが、その直後に別の業者が不法に廃棄物を持ち込んでいたことが判明し、中国政府が急遽ゴミの持ち込みを一時停止する措置をとったたため、ペットボトルが宙に浮いてしまったというようなことも起こっている。処理を外国にのみ頼ることの危険性である。

 またコンピュータ基板などの再生が困難なゴミが中国に持ち込まれ、環境汚染を招いてもいる。中国のある村では基板から金属類を回収しているが、その際に重金属などが漏れだし、地下水を汚染しているという。中国政府は基板類の持ち込みを禁止しているが、収入を求める村民は密かにこれらの作業を行っているのだという。

 なおなお考えさせられる内容である。問題は「中国が再生してくれるんなら、それでいいじゃん」と安直に言っていられないことである。所詮はゴミなのであるから、有害物が最終的にどうしても発生するので、それの処理をどうするかの問題があるのだが、現状ではそれを中国に一方的に押しつけているだけである。また中国でこのようなリサイクル業が成立しているのは、中国の異常な人件費の安さが背景にあるわけであり、いわば中国農村部の人々の貧しさを土台にしているのである。それを考えると、果たしてこのようなシステムをいつまでも続けることが可能であるのかの疑問もある(このシステムを続けるには、彼らが永久に貧民層として固定化されている必要があるわけであるのだから)。

 さらに懸念されるのは、「中国で再生してくれるんだから」と日本でゴミ減量などの機運が衰えることである。例えリサイクルしようが何であろうが、大量のゴミを出し続けるような社会はその他の面でも環境に負荷をかけているのは確かであるので、これからのことを考えていくと改善していく必要があるのだが、その深刻さを日本人が忘れてしまう恐れをがあるのではないか。

 とにかくゴミのリサイクルには技術開発も必要なわけであるから、少なくとも日本はその点で世界に貢献していくべきであろう。

 

7/17 NHKスペシャル「地球大進化 46億年・人類への旅 第四集 大量絶滅 巨大噴火が哺乳類を生んだ」

 生物の大量絶滅といえば、かつての恐竜の絶滅が有名であるが、実はそれよりも遙か以前の2億5000万年前にも生物の大量絶滅が発生しているという。それに関する最新の学説の紹介である。

 2億5000万年前、地上にはほ乳類型は虫類と言われる、我々ほ乳類の祖先に当たる生物を中心とした豊かな生態系が築かれていた。その中には我々の直接の先祖に当たるキノドンと言われる生物や、後の恐竜の祖先となる双弓類なども棲息していた。しかしこれらの生物の95%は2億5000万年前を境に死に絶える。

 この2億5000万年前、地球に何が起こったのか。シベリアでの石油の掘削の際、2億5000万年前に大量の溶岩が噴出していることが明らかになったという。その面積は日本の10倍、その量は富士山がかつて1万年に噴出した量の10万倍だという(想像もつかん)。吹き出した溶岩の高さは2000メートルから3000メートルに達したと考えられている。噴き上げた溶岩はシベリアの森林を次々と飲み込み、ほ乳類型は虫類たちはその中を逃げまどうことになったと考えられている。

 今から3億年前、パンゲアと呼ばれる超大陸が形成された時、大陸周辺の海溝から海のプレートが核に落ち込み、その反動として核からスーパーブルームと呼ばれる直径1000キロの噴流が地上に吹き上げたのだという。これがシベリアの大地を裂き、大量のマグマを噴出させたと考えられているという。

 また近年新たなエネルギー源として注目されているメタンハイドレートが、この2億5000万年前に大量に融解ことも分かってきているという。先の巨大噴火が40兆トンもの二酸化炭素を大気中に放出、その温室効果によって地球の気温が上がる。さらに海水の温度が上昇することで、海中のメタンハイドレートが融け始め、大量のメタンガスが大気中に放出される。メタンの温室効果は二酸化炭素の20倍あるので、さらに温室効果に拍車がかかり、それがさらなるメタンハイドレートの融解を促すという破局的連鎖を招き、赤道で7〜8度、極付近で20数度という劇的な温度上昇が発生、環境が激変し、多くの生き物が絶滅したのである。

 辛うじて生き残った我々の祖先キノドンには、さらなる試練が襲いかかる。南極での地層の調査の結果、生物の大量絶滅後の地層から、ベルチェリンという高酸素濃度下では生成しない鉱物が発見されており、この時期の地球の酸素濃度が極端に低下していたことが推測されているという。植物の減少と大量に発生したメタンとの反応により、それまで30%の濃度のあった酸素が、一気に10%程度にまで減少したと推測されているという。ようやく生き延びたキノドンはこの低酸素濃度とも闘う羽目になるのである。

 こうして長らくの生物の空白の期間を経て、1億年後、再び生物が地上に復活した時、その様相は一変していた。恐竜の時代が訪れたのである。その中で我々の祖先はネズミのような姿に変わり、恐竜の間で生き延びていた。恐竜の繁栄の秘密は気嚢システムにあるという。このシステムは鳥類に残っているものだが、このシステムを使用することで肺を常に酸素に満ちた状態に出来るため、酸素取り込みの効率が劇的に向上するのだという。大量絶滅後、地球ではしばらく低酸素の時代が続き、そのことが恐竜の繁栄をもたらしたのだという。

 一方の我々の先祖であるほ乳類も低酸素環境に合わせた進化を遂げていた。トリナクソドンと呼ばれるほ乳類では、横隔膜を持つことにより、呼吸の効率を上げることに成功したという。またその過程で副産物として、子に対して授乳が出来るようになったのだという。そしてさらに卵生から胎生へと進化を遂げることになった。初めて胎生を行った生物はエオマイアであるとのこと。これがすべてのほ乳類の祖先となった。

 このシリーズでは、「母なる地球」という観点ではなく、「荒ぶる父なる地球」という観点で地球の歴史を描いているのだが、確かにこれでもこれでもかとばかりに生物に試練を科してくる地球の姿は、なかなかに衝撃的である。もっともここで扱われているのは、「最新の学説」ではあるが、必ずしも最も権威を持った学説という訳ではないというのには注意しておく必要はあろう。ただ実に見応えのある内容で、このような最新学説を学ばせてもらえるのは、さすがにNHKの大型ドキュメントである。

 なお気になったのは、火山による温室効果の発生から引き続いたカタストロフィである。これは火山の噴火が原因でなくてもあり得る話である。現在の二酸化炭素による温室効果の進行も、ある限度を超えた時点でこのようなカタストロフィを招く恐れがあると言うことである。これは是非とも、あの「馬鹿でマヌケなアメリカ大統領」に見せる必要がありそうだ。

 

6/27 NHKスペシャル「21世紀の潮流“アメリカとイスラム” シーア派の選択 革命25年目のイラン」

 戦争大好きのブッシュが、イラクに続く次なる標的として掲げているのがイランである。そのイランの現状を伝えている。

 イスラム革命による新政権が誕生したイランは、フセインによって追われたシーア派の難民などを受け入れてきた。フセイン政権が倒れたことでシーア派住民の中にはイラクに帰還しようとするものも出ている。しかし当初はフセイン政権を共通の敵と見ていたシーア派は比較的アメリカ軍に協力的であったのだが、アメリカによる支配が長引くにつれて対立が強まってきた。その抵抗運動の中心となっているサドル師が師と仰いでいるハーエリ師はイランにいる。アメリカはイランの動きに神経をとがらせているという。

 一方のアフガニスタンとの国境ではアフガニスタンからの難民と共に、密輸団なども暗躍しているという。密輸団は難民を輸送すると共に、その料金を払えないような難民には人質を取って密輸の手伝いをさせているという。イラン政府は取り締まりを強化しているが、今も大量の麻薬や武器が密輸されているという。

 イランは最近、密かに核兵器を開発しようとしているとして批判を浴びている。イランはこれに対し、ヨーロッパを味方につけて難局を乗り切ろうとしている。

 アメリカとサドル師の対立の最中、シーア派の怒りを呼ぶ事件が発生した。シーア派にとっての最大の聖地とも言えるアリー廟が傷つけられたのである(アリーはシーア派が崇拝する人物である)。これによって多くのシーア派教徒がテロ攻撃を志願することになっているという。またアメリカの横暴と、その支援を受けたイスラエルの暴挙などは、サドル師を中心としたシーア派、レバノンのヒズボラ、パレスチナのハマスなどの抵抗勢力を互いに結びつけることにもなりつつあるという。

 一時はイラクへの帰国を考えた難民達も、いつまで経っても治安の回復しないイラクに見切りをつけてイランに帰ってくる例も多いという。彼らは隣国のイランでイラクの情勢をじっと注目しているという。

 イランが今後アメリカと友好関係を結ぶことが出来れば中東情勢は変化すると期待できるが、アメリカの言う中東の民主化がイスラムの排除とアメリカ主義の押しつけであるのなら、これからも混沌は続く可能性が高いとのこと。

 私の見たところ、イランは穏健なイスラム主義国家としてやっていける可能性が高いと思われるのだが、問題はアメリカの姿勢。キリスト教原理主義者と軍事資本の連立政権であるブッシュ政権では、イスラム教徒=邪悪=根絶やしといった短絡発想しか出来ないので、共生の余地が全くなくなっており、それが中東地域の緊張感を高めることにつながっている。やはり一番は、今