【 CRACKET Of BlackGlassLand 】
文:星忍冒険  構成:亜考愛美 提供:SA.Fantasy企画部

(第0版)2003.06.13
(第1版)2004.11.21 (一部修正、加筆)

ブラックグラスランドのクラケット

《目次》

0.はじめに
1.平和な日常
2.白い霧
3.古代遺跡
4.トロウにて
5.あとがき

 

--------------------------------------------------------------

0.はじめに

 


 このお話は、トロウの街で、冒険者をしている、クラケット族の「アリサリス・ゴキカブリ」の昔話です。

 

--------------------------------------------------------------

1.平和な日常

 


♪僕らは陽気なクラケット!

 ブラックグラスのクラケット!

 生い茂る草木は黒いけど、

 僕らは陽気なクラケット!

 ブラックグラスのクラケット!

 ゴキカブリ・クロワムン・チャバネにヤーマト

 4つの氏族は仲間さ家族!

 さぁさ踊ろう飲め食え歌え!

 僕らは陽気なクラケット!♪

 ブラックグラスのクラケット!

 洋服地味だし、汚れちゃいるが、 僕らは陽気なクラケット!

 ブラックグラスのクラケット!

 ブラックセンサー、ブラックウィング、ブラックレッグにブラックバディ!

 4つの集落は仲間さ家族!

 さぁさ踊ろう飲め食え歌え!

 僕らは陽気なクラケット!

 ブラックグラスのクラケット!♪

 

 『食ベルヨ!』


 黒い草の茂る草原、木陰に3人の子供たちが、ゴザを引いてお弁当を広げている。

 女の子が、二人に、男の子が一人、男の子は、小さな竪琴を鳴らしリズムに合わせて踊る。

 「あはは♪その歌なあに?」

 コリル・チャバネは、踊りながら歌っている、ファグ・クロワムンに尋ねた。

 「ボクの作ったクラケット一族の歌だよ♪」

 「あれー?ちゃんとしたの無かったっけ?」

 『タベルヨ!

 「あるけど、あれ、難しい言葉ばかりだし、眠くなるもん。」

 「ソウネ、あれ、眠くなるよネ。まるで、呪いの歌みたい。」

 「それ、『呪歌(じゅか)』って言うんだよ。」

 『タベルヨ!

 「へぇ?あの歌、『呪歌』って言うの?って、・・・あああああああ!」

 「え?・・・ああっ!」

 『『 お弁当が! 』』

 コリルと、ファグが、声をそろえて、口いっぱいに、お弁当を頬張った、アリサリス・ゴキカブリに向かって叫んだ。

 「もぐもぐ、タベルヨ!って言ったヨ!食べたヨー!」

 アリサリスは、二人に宣言した。

 『『 うわあああああアアアアアアああぁああああぁああああああああああんん 』』

 子供たちを遠めで眺めていた、コリュウ・チャバネは、それを見てため息をついた。

 「なにやってんだ?あいつら?」

 とはいえ、彼も14歳くらいの少年に見えるクラケットだ。

 クラケットは、妖精の末裔で、子供の姿のまま老いることを知らない。

 アリサリス達もクラケットだが、

 コリュウから見たら、年相応の姿のアリサリス達は、子供に見えるのだ。

 ファグなんかは、子供というか赤ちゃんといってもいいくらいに見える。

 たしか、アリサリスが、13歳で、コリルが、12歳だったか? ファグは、10歳のはずだ。

 めんどくさそうに、コリュウの横を、ウィズデッド・ヤーマトが荷物を両手に、歩いていく。

 「あー、もう、どうせ、足りないと思って、私、余分に作ってきたから泣いてはだめです。」

 ウィズデッドも、14歳くらいの少女に見える。黒く長い髪を風になびかせ、赤い瞳が、子供たちに向けられている。

 『あ、わーい、ウィズデッド先生ー!お弁当!お弁当!』

 『アリサリスったら、私たちの分までタベタヨウ!』

 「わかったから、おとなしくなさい。」

 コリュウは、そんな彼女たちを眺めながら、周囲を一応警戒していた。

 コリュウと、ウィズデッドは、学校の先生だ。

 ウィズデッドの担当する生徒は、アリサリス、コリル、ファグの三人で、コリュウは、その補佐を仕事にしている。

 先生としての仕事以外にも、狩猟や、雑務など、他にも仕事はあるのだけど。

 見た目だけでなく、肉体的にも精神的にも若いが、

 コリュウは、実年齢は、28になるし、ウィズデッドは、なんと、57歳になる。

 クラケットは、若さを保ったまま寿命を迎える。徐々に死なずに、突然死んでしまうのだ。

 だから、彼らは、毎日を悔いのないように楽しく暮らしている。

 今日は、課外授業のピクニックだ。草原を歩いて、草木や天候の勉強をする。

 もっとも教えるのは、ウィズデッドの仕事で、コリュウは、その逞しい肉体を生かしての護衛兼荷物持ちである。

 コリュウの背中には、授業で使う書籍や道具がつまった背負い袋と、泊まりになっても良いように簡易天幕まで詰め込んであった。 

 とは言え、そろそろ、お開きだろう。

 予想通り、お弁当は持ちそうにないし、

 あのままだと、テンションが、高すぎて、どうにかなってしまいそうだから。

--------------------------------------------------------------

2.白い霧

 

 太陽が、ブラックグラスランド(黒い草原)の地平線に沈むまでには、まだ時間があるが、

 コリルや、ファグ、アリサリスの集落は、それぞれ結構な距離があるので、帰ることにした。

 クラケットの脚は、短いが、人間の数倍の速さで駆け抜けることができる。

 普通に歩いていても、走っているように見えることもあるくらいだ。

 子供たちは、ニコニコしながら、「楽しかったネェ、楽しかったネェ」と繰り返し言いながら、

 草原を駆けてゆく。

 コリュウと、ウィズデッドは、子供たちが、どんどん先に走っていくので、少し、慌て気味に、追いかけていく。

 「おいおい、ウィズデッド先生、年かい?子供たちに追いつかないじゃないか?」

 コリュウが、荷物を担ぎなおしながら、ウィズデッドをからかった。

 「荷物が重いでしょう?そのせいです。」

 ウィズデッドは、むぅと、眉間にシワを寄せながら、子供たちから引き離されないように必死に走っていた。

 「どれ、荷物をもってやろう。かしなよ。」

 コリュウが、空いている方の手を差し出した。

 ウィズデッドは、「いらないわよ。」と言って、手を払おうとして、バランスを崩した。

 あわてて、払おうとした、コリュウの手を掴もうとした。

 中途半端に掴んだせいで、コリュウの手袋が脱げそうになる。

 コリュウが血相を変えて、荷物を放り出して、脱げそうになった手袋を押さえた。

 「ご、ごめんなさい!」

 手袋からわずかに見えた、コリュウのどす黒い手の甲を見ながら、ウィズデッドは、謝った。

 「いや、俺も不注意だった。まぁ、脱げたところで、封印は容易いからどうってことないよ。」

 落とした荷物を拾い上げながら、思い出したかのように、コリュウは、言った。

 「封印をしてくれた、ウィズデッドに、言うことじゃないか・・・。」

 先を見ると、子供たちが、立ち止まっていた。・・・待っていてくれているのだろうか?

 違う。

 視線の先に、アリサリスの一族、ゴキカブリ氏族が主に住んでいる集落、「ブラックウィング」の建物群が見えている。

 「なんだ、あれは?」

 「霧?白いもやだわ。」

 コリュウと、ウィズデッドは、「ブラックウィング」を覆う、白い霧を、観察した。

 「なんだろう?あれ?先生あれは、ナンデスカ?」

 アリサリスが、ウィズデッドに問うた。

 「わからないわ?霧に見えるけど、あたりは湿っぽくないし、火事とかの煙にも見えないし。」

 「オレが、見てこよう。・・・ウィズデッドと、お前たちは、ここで、待っているんだ。」

 コリュウが、集落に、むかって、駆けて行った。

 「私も参ります。・・・あなたたち、ここで、まってなさい。」

 ウィズデッドも後を追った。

 子供たちは、不安そうに、その背中と、霧を眺めていた。

 

 

 「・・・なんだ?これは。」

 「酷い。」

 霧に覆われた、集落の中には、おびただしいほどの、クラケットの死体が転がっている。

 どれもこれも、胸や喉をかきむしり、苦悶の表情で倒れている。

 「まずいわ、コリュウ!ここを離れましょう。」

 「ああ、これは、毒ガスだ。」

 布を口にあてがい、彼らは、子供たちの下へ戻ろうとした。

 『ぎゃああああああああああああああああああ!!!!!!』

 遠くで悲鳴が上がった。

 「・・・アリサリスの声だわ! あの子達たら!待っていてと言ったのに!」

 「行こう!」

 声は、アリサリスの家からだった。

 アリサリスが、両親の亡骸にすがって泣いている。

 狂わんばかりの形相で、両親を呼んでいる。

 「おがちゃん、おどぢゃん!おがちゃん、おどぢゃん!おがちゃん、おどぢゃん!おがちゃん、おどぢゃん!」

 「うぇええええええええん」「ひゃあああああああああん」

 コリルと、ファグも、腰を抜かして、地べたに座り込み、泣いていた。

 コリュウは、唸り、コリルとファグを引き寄せた。

 ウィズデッドは、アリサリスを両親から引き剥がした。死体に正体不明の粉が付着している。危険だ。

 「ぎゃあああ、放して放して放して放して!」

 ウィズデッドは、何も言わずに、アリサリスをきつく抱きしめた。

 アリサリスが、腕に噛み付こうとも、爪で顔を引っかこうとも、黙って抱きしめた。

 ずっと抱きしめていた。

 

 どこかで、小鳥が、鳴いていた。

 

 

 「じゃあ、ファグの集落の方を頼む、俺は、コリルと、ブラックセンサーの集落を見てくる。」

 コリュウと、コリルの集落は、同じだ。彼ら、チャバネ氏族は、主にブラックセンサー集落に住んでいる。

 ファグは、クロワモン氏族だから、ブラックバディに住んでいる。

 「じゃ、急ぐわよ。しっかり捕まってね。」

 恐怖で腰を抜かした、ファグを背負い、ようやく落ち着いた、アリサリスの手を引いて、

 ウィズデッドは、ブラックバディへと走った。

 

 

 「どういうことだろう?何が、起こったんだ・・・。」

 焚き火の灯りを絶やさないように、集めた、枯れ木をくべつつ、コリュウは、つぶやいた。

 子供たちは、泣きつかれて、天幕の中で、寝入っている。

 集落は、例外なく全滅だった。たまたま、外に出たままのクラケットは、無事なのかもしれないが、

 出会うことは無かった。

 「わからない、・・・見たことも無い、粉末が、大量にまかれていたみたい。 」

 ウィズデッドは、現場にあった、粉や土を入れた、小袋の中を見ながらそう言った。

 「誰の仕業か知らないが、あんなに大量に毒をまいたなら、この草原は、使い物にならないんじゃないか。」

 コリュウが、悪態をつくと、ウィズデッドは、小袋から元気に這い回っている虫を取り出した。

 「みて、コリュウ、虫は、毒にやられてない。集落では、小鳥の鳴き声もしたわ。」

 「・・・?」

 「この毒、多分、クラケットだけに効くのよ。」

 「はぁ?そんなバカナ?そんな、都合の良い毒が、あるかよ。」

 「あるのかもよ?」

 「・・・、だからと言ってなんのために・・・。」

 「わからないわ。」

 

 

 朝が来た。

 「起きて、みんな、行くわよ?」

 ウィズデッドが、子供たちを起こした。

 コリュウの用意した、朝食を食べる。

 スープを飲みながら、「どこに行くの?」と、コリルが聞いた。

 「とりあえず、草原を出て、北の街へ行くわ。人間に助けを求めましょう。」

 のろのろと、一向は、歩き出した。

 「・・・?アレ何?」

 ファグが、空を指差す。

 うつむいていた、コリュウや、ウィズデッドが、それを見た。

 「なんか、飛んでいるぞ?鳥か?」

 「それにしては、大きいわ・・・あれは、・・・風船?」

 丸いものが浮いていた。鳥に偽装したつもりなのか、大きな風船に、1対の翼が生えていて、フワフワ浮いている。

 風船の下には、樽のようなものが、ぶら下がっていて、白い霧のようなものをばら撒いていた。

 見ると、一つではなく、あちこちに、浮いている。

 「だめだ、迂回しよう。」

 風船を避けるようにして、歩き始めるが、風で、霧が、広がり、行く手を阻んだ。

 「駄目だわ。北には行けそうに無い。風船が去って、霧がなくなるまで待ったほうが良いわ。」

 「いや、見ろ、風船が、こちらに来るぞ!・・・逃げろ!」

 コリュウと、ウィズデッドは、慌てて、子供達を担ぎ、手を引いて、風上へと走り出した。

 

 

 風船が、見えなくなったあたりで、一旦休憩を取ることにした。木陰に集まり、身を潜める。

 「あの分だと、北には、行けそうにないわね。」 ウィズデッドが、ため息をついた。

 「ああ、何者かが、生き残りのクラケットを、殲滅するために、あの風船を使っているんだ。」

 コリュウは、乾燥肉を噛みながら、風船が、浮いていた方角を見やった。

 「どうするんダヨ。ワタシ達も死ぬの?死ぬのコワイヨ・・・。」

 同じく、乾燥肉を噛みながら、アリサリスが、涙ぐんだ。

 ウィズデッドは、思案し、

 「西にも南にも東にも、近くには、街や村は、ないし・・・困ったわね。」

 と、コリュウを見た。

 ファグが、口を開いた。「東には、遺跡があるヨ。」

 「ん?遺跡?」 コリュウが、ファグを見た。

 「うん」 ファグは、小さな竪琴を、ポロンと鳴らした。

 ♪草原の東に遺跡がある。むかしむかしの物語。

  魔法使いのハーフティンは、遺跡の主(あるじ)。

  遺跡は、門(ゲート)。東へ西へ、はるか遠くの街へ、

  魔法使いのハーフティンは、大忙し♪

 「遺跡に隠れるの?」

 コリルが、首をかしげた。

 「東か、東には、トロウの街が・・・いや、遠すぎるな。・・・。」

 コリュウは、首を振った。

 「遺跡・・・そういえば、東にある遺跡には、街の魔法士が組み立てた魔法の門があって、遠くの街に行けるって聞いたことがあるわ。」

 ウィズデッドは、思い出した。彼女は、若いころ。北の人間の街に住む、魔法士が開いていた学校に留学していた。

 魔法士の先生は、変わり者の知り合いの魔法士が、ブラックグラスの東にある、古代の遺跡を研究所に改装して、「空間移動」の公式研究をしていると教えてくれたことがあったのだ。

 「それは、確かなのか?」

 「行ってみる価値は、あると思うわ。」

 「そうか・・・みんなの意見は、どうだい?」 コリュウは、子供たちに語りかけた。

 「イクヨ!」 と、アリサリス

 コリルが、うなずき、ファグは、ウィズデッドに抱きついた。

 彼らは、立ち上がった。

 

 

 

--------------------------------------------------------------

3.古代遺跡

 

 クラケット達は、黒い草原を東へ、ひたすら、東へと走っていった。

 やがて、前方に、石造りの3階建てほどの大きな建造物が見えてきた。

 「きっと、あれだわ。」 ウィズデッドが、みんなに向かって叫んだ。

 「アレダヨ!」 アリサリスが、マネをする。

 コリルと、ファグは、建物のあまりの巨大さに身をすくめた。

 「ほぼ、長方形の建物だな。窓はないようだ・・・入り口は、どこだろう?探してくるから、そこで、待っていろ!」

 コリュウは、みんなに命令を、建物に向かって走っていく。

 ウィズデッドは、子供たちが、どこかに行かないように、3人の手を握り、周囲を観察した。

 入り口は、簡単に見つかった。後ろ側に、扉の後があり、四角く、大きな空洞が、開いていた。

 入ってすぐには、ホールになっていて、上に上がる階段と、他の部屋に通じていると思われる、扉があった。

 コリュウは、危険が無いか、注意しつつ、扉を開け、階段を上がった。

 2階と3階には、壊れた家具や、研究に使われたと思われる、ガラクタ。寝室などが、見つかった。

 どうも、この建物は、破棄されてから、ずいぶんと、経っている様子だ。

 1階に、地下へと通じていそうな階段を見つけたところで、ウィズデッドが、アリサリスと、コリル、ファグを連れて、駆け込んできた。

 「大変!霧吹きの風船が、こちらに来るわ!」 

 「クルヨ!白い霧がクルヨ!」 アリサリスが、叫ぶ。

 「チヌよ。ちんじゃうヨー」 コリルが、バタバタする。

 ファグは、言葉にならないようで、ガクガク震えている。

 

 急がなくてはならない。

 

 コリュウは、背負い袋から、松明を出して、火打ち石を鳴らし、灯を灯した。

 「みんな、用心するんだ。」 腰から広巾の剣を抜いて、コリュウは、先頭に立ち、階段を降りた。

 アリサリス、コリル、ファグ、しんがりに、ウィズデッドの順番で、後に続いた。

 

 階段は、グネグネとうねりながら下へ下へと下ってる。

 湿った空気が、頬を伝い、ぬれた石の階段で、滑りそうになる。

 「あ、ドングリだヨ。」

 階段が終わり、通路を進んでいると、アリサリスが、落ちていた、ドングリに気づいた。

 「?動物が、持ち込んだのかしら?」

 ウィズデッドが、首を傾げる。

 「それより、十字路だ。どうするかな。」

 コリュウが、先を示した。

 クラケットたちは、それぞれの道を観察した。

 「まっすぐの道を見て。」

 ウィズデッドが言う。

 「なんか、光っているヨ。」

 アリサリスが、気づいた。

 「行ってみよう。」

 コリュウが、決断し、彼らは、正面の通路を進んだ。

 小さな光に向かって、通路を進むと、鉄の扉が開いていた。

 扉の向こうには、丸く広い部屋があった。

 部屋は、床がなく、ポッカリと穴が開いていた。

 部屋の中央にだけ床があり、入り口から、その床に、小さな橋が、掛かっている。

 床の上に、台座があり、その上で、丸いものが光っていた。

 「あの光だったのか。水晶球に見えるな。」

 「そうね。表面に、文字みたいなものが見えるわ。」

 コリュウが、それを聞いて、なにかに気がつき、腰に下げた小袋から、小さな玉を取り出した。

 玉は、ボンヤリと光を放っている。

 「見てくれ、ウィズデッド、これは、この遺跡の2階で見つけたんだ。表面に文字みたいなものがあるだろう?似ていないか?」

 ウィズデッドは、コリュウから、玉を受け取り、覗き込んだ。

 「本当ね。この文字は・・・ルーンかしら?」 ウィズデッドが、文字に触れると、文字が飛び出した。

 びっくりして、コリュウは、飛びのき、子供たちの前に立ちはだかった。

 ウィズデッドは、慌てて、玉を落としかけたが、飛び出した文字に見覚えがあった。

 「これは・・・、昔、留学していたときに覚えた、『古語』だわ。」

 ウィズデッドは、浮かび上がった文字を読み始めた。

 「?古語って、なんだ?」「タベタレルの?」「こごこご。」「怖いよ、捨てようヨ。」 コリュウやアリサリス達は、勝手なことを口にしたが、ウィズデッドは、無視して、文字の解読を行った。

 「なるほど、この台座が、魔法士が研究していた空間移動装置。『門(ゲート」)』なんだわ。」

 ウィズデッドは、うなずいた。

 「みんな、よく聞いて? コリュウが、見つけた、この小さな玉は、空間を移動するための装置、『門(ゲート)』の取り扱い説明書なの。これによると・・・

 1.この門は、東の都「トロウ」付近に設置した、もう一つの『門(ゲート)』に空間移動するための装置である。

 2.空間移動は、台座の上のクリスタルを用いて行う。クリスタルに触れ、定められた順に結合詠唱を行うこと。

 3.結合詠唱は、クリスタルに触れてから、30秒以内に完了する必要がある。これは、改良の余地があると思われる。

 4.結合詠唱は、この説明書に刻まれた、ルーンを順に選択せよ。クリスタルが示すルーンは、汎用性を高めるため、全てのルーンを表示するが、基本的には、説明書のルーンを選ぶこと。

 5.結合詠唱を時間内に完了すれば、台座の乗っている床に立っている者を、空間移動させる。

 6.空間移動につかうエネルギーは、台座に設置した、マジッククリスタルから供給される。1度の起動につき、1つ消費する。

 ・・・ということみたい。」

 ウィズデッドは、みんなを見た。

 彼らは、呆けた表情で、ウィズデッドを見ていた。 理解してない様子である。

 「ええと、つまりね。この台座のある床に立っていれば、トロウの近くにある、同じような場所に、瞬間移動できるのよ。」

 コリュウが、それを聞いて、うなずく。

 「ううむ、なるほど。それで、注意することは、あるのかな?」

 ウィズデッドは、ため息をついて説明した。

 「さっきも言ったけど、装置を動かすには、作業を開始して、30秒以内に、結合詠唱・・・ええと、スイッチを押す必要があるの、時間以内にしないと駄目みたい。後は、燃料が必要で、台座についている石を一つ使うみたいね。」

 「ふむ。それで、スイッチっていくつあるんだ?」

 ウィズデッドは、説明書の玉のルーンを数えた。

 「30個ね。1秒につき、一つ、間違いなく、順番に押さないと駄目だわ。」

 コリルが、台座を指差して 「石って、あの台座の横についてるヤツかなぁ?」

 見ると、石がかつてはまっていたと思われるくぼみが、台座の側面にいくつもあり、一つだけ、くぼみに残っている透明の石があった。

 「・・・つまり、失敗なしの1度だけってことね。」 ウィズデッドは、唾を飲み込んだ。

 「操作は、ウィズデッドに頼むよ。・・・それじゃ、みんな、橋を渡って、台座のある床に行こう。」

 コリュウは、先頭に立って、橋へと向かった。

 狭い橋は、ギシギチ音を立てて、たわんだ。

 ぞろぞろと、狭い橋を渡りきり、台座の側に近づいた。

 ウィズデッドは、説明書の玉のルーンを確認する。

 「じゃぁ、始めましょう。邪魔しないようにね。」

 みんなが了解したことを確認すると、ウィズデッドは、台座のクリスタルに触れた。

 台座を中心にして、クリスタルから、光の帯状にルーン文字が浮かび上がり、ゆっくりと輪を描いて回りだす。

 同時に、何者かが、部屋に入ってきた。

 赤褐色の肌、鋭い犬歯、2メートルを超える巨大な半裸のオトコが、棍棒を振り上げ唸り声を上げた。

 『ウゥガガアアアア!!』

 「!!?なんだアイツは!?」

 コリュウは、剣を構え、迎え撃つために、橋を渡った。

 ウィズデッドが、ギョっとして叫ぶ。 「だめよ。コリュウ!戻って!」 ルーンを選択する手は止められない。

 「最後のスイッチを押したら呼んでくれ!飛び込む!」

 コリュウは、怪物の振り回す棍棒を交わしながら、叫び返した。

 怪物は、コリュウより、やわらかそうな、ウィズデッドや、アリサリス達が気になるようだ。

 コリュウを無視して、橋を渡ろうとする。

 「くそっ!」

 コリュウは、怪物の正面に、回りこみながら、悪態をついた。

 「ニャー!!」

 アリサリスは、腰に下げた小袋から、鉄の玉を出して、同じく腰から下げていた、皮紐・・・スリング(投石紐)で、それを、挟み込んだ。

 彼女は、これで、高い木に実った木の実や、鳥を落とすのが得意だった。

 スリングを片手で回して遠心力を高めながら、橋を駆け渡り、怪物の振り下げた棍棒をかいくぐって反対側に飛び出した。

 怪物は、アリサリスを追いはじめる。

 慌てて、コリュウが、間にはいり、手にした剣を振り回し、怪物の気を逸らした。

 「ばか、戻れ、アリサリス!」

 「ニャー!ニャー!」 アリサリスは、興奮して取り合わない。

 コリュウの後ろから、鉄球を投射する。

 鉄球は、怪物に当たるが、効果は無いようだ。顔をしかめるが、怪我一つつかない。

 台座の側で、コリルと、ファグは、コリュウとアリサリス、そして、結合詠唱中のウィズデッドを不安げな顔で交互に見た。

 ウィズデッドは、台座のクリスタルを中心に飛び出した「ルーン文字」・・・光の帯になって、囲んでいる文字の中を凝視し、説明書のルーン文字通りに順番に触れていく。

 焦りで、手が震える。間違えてはいけない。焦ってもいけない。でも、急がないと!

 怪物は、アリサリスを目標としたようだ。

 コリュウは、全力で、剣を怪物に突き立てるが、熱い赤褐色の肌の上を刃がすべるばかりで、全く歯が立たない。

 アリサリスは、パニックに陥りながらも、怪物の振り下ろす棍棒を、すり抜けながら避けている。

 「ちくしょう!台座の側に戻れ!アリサリス!」

 コリュウは、焦って、怪物に突進した。

 振り回された棍棒が、コリュウの腕に当たり、剣が吹き飛ばされ、石の壁に当たって、廊下に滑っていった。

 手の激しい痺れを無視して、滑っていく剣を拾い上げようとして失敗した。

 「う!」

 利き手を、骨折している。剣を持てない。

 「チヌー!死んでしまうううううううーーー!」

 アリサリスが絶叫しながら、怪物の周りをカサコソと駆け回っている。

 棍棒が何回か、彼女を掠めた。

 コリルが、台座の側で、震える手で、狩りに使う、短弓に弦を張ろうとするが、何回も失敗していた。

 ルーン文字の大半が選択済みになり、あと数文字となった。

 何度も様子を見るために振り返りたいのを堪えて、ウィズデッドは、確実に、ルーンに触れていく。

 額から流れる汗が、何度も作業を邪魔する。

 コリュウは、何かを決心すると、両手の手袋を脱ぎ捨てた。

 あらわになった、彼の漆黒の両手から、黒い影・・・靄が噴出し、辺りが一気に暗くなった。

 ウィズデッドが、それに気づき、青ざめた。「危険だわ、やめて!あ!」

 危うく、ルーンの選択を間違いかける。

 「ヘイ!こっち向けよ、怪物! オレの、二つ名を教えてやるぜ!コリュウ・チャバネこと『ブラックハンド』だ!」

 コリュウは、両手を前に突き出したまま、怪物に突進していく。

 怪物が、それに気づいて、棍棒を振り落とした。

 構わず、闇の塊を伴った両手で迎え撃つ。

 棍棒と闇が接触した、その、瞬間。

 「ガアアアアアアアアア!」

 「うぉ!」

 闇がはじけると同時に、怪物は、棍棒を取り落とし、絶叫した。

 コリュウは、床に転がり、頭の神経が切れそうな痛みで、意識を奪いそうになう。

 その刹那、彼の思考に、昔の記憶が横切っていく

 −−−−− 彼は、子供の頃、人間の町に、クラケットの大人に連れられて、商売の手伝いに行ったことがあった。

       その時、いたずら心で、盗みを働き、見つかってしまった。

       しかし、相手が、悪かった。

       その人間は、コリュウに、『呪い』をかけた。

       「お前の両手は、"恐怖"をまとう。触れるものを傷つけ、自らも滅ぶ。暗闇の呪いを受けよ!」 −−−−−−

 

 「うおおおおおお!」

 雄たけびを上げ、痛みを、堪えて、その勢いのまま起き上がった。

 ずいぶん、遠くで、ウィズデッドが、叫んでいるのが、聞こえる。

 「封印の手袋をはめて!その呪いは、触れるものも、あなたも傷つけてしまう!」

 (そういえば、あの時、人間の街に、留学中のウィズデッドが、必死で文献を調べて、知り合いの魔法士と、この手袋を探してくれたんだっけ。)

 コリュウは、思い出を頭に描きながら、両手を突き出し構えた。

 「走馬灯かよ?ハンっ!なに、センチメンタルになってるんだ!? 俺は!死ぬツモリはないぜ!」

 怪物が、怒りの形相で、コリュウに迫ってきた。 思惑通りだ! いいぞ!

 コリュウは、暗闇をまとった腕を、振り回し牽制した。 怪物は、警戒して、唸り声を上げた。

 

 (あと、ひとつ!)

  ウィズデッドは、緊張した。コリュウに、声をかけなくては!

 「先生!はやく!はやく!」

 「きゃ!」

 ファグが、ウィズデッドを急かし、抱きついたのだ。

 「あっ」

 たちまち、ファグの姿が消え失せてしまった。

 

 ウィズデッドの手が、間違った、ルーンに触れていた。

 [[ 単体移動オプションが、割り込みで、選択されました。正常動作しました。現在の処理は、継続されます。 ]]

 台座から、感情のこもっていない、性別不明の声が、発生する。

 「え?え?」

 なにが、起こったの? なにが、起こったのか、わからない!!!!!

 [[ 残り時間、2セコンド。]]

 台座が、宣言する。

 ・・・後、二呼吸しか時間が無い。 「・・・こ、コリュウ!アリサリス!最後のルーンを押すわ!」

 アリサリスと、コリュウが、それを聞いて、顔を見合わせ、橋に向かって、駆けた。

 怪物は、叫び声をあげた、棍棒を地面に叩き付けた。

 反動で、橋が大きくたわんで、コリュウと、アリサリスが、打ち上げられた。

 アリサリスは、つまずきながら、橋を渡りきり、台座のある床に転がり込んだ。

 コリュウは、足を滑らして、橋から飛び出した。

 「あ!」

 間一髪、橋げたを掴み、ぶら下がる。両手の「暗闇」が、バチバチ音を立て、コリュウの目が白黒になる。

 アリサリスが、それを見て、跳ねるように立ち上がり、橋に向かって飛び出そうとした。

 

 

 

 ウィズデッドは、決断した。

 

 

 

 「あれ!? コリュウ!?コリュウが、いなくなったヨ!」

 そのままの勢いで、駆け出したアリサリスは、突然現れた、壁に手を突いて、

 見えなくなったコリュウを探すため、顔をキョロキョロと、めぐらせた。

 最後のルーン文字を押した姿勢のまま、ウィズデッドも、グルリと辺りを見回した。

 側に、台座があり、クリスタルが、乗っている。クリスタルは、暗く、光は無かった。

 先ほどとは違い、石造りの小部屋には、床が一面にあり、出口と思われる金属製の扉が、見えた。

 光源は、手にした、説明書の玉だけのようだ。

 コリルが、呆然として、座り込んでいる。

 アリサリスは、辺りを走り回って、ときどき、立ち止まっては、何かを探している。

 ファグは、見当たらない。

 コリュウも、いない。

 

 ウィズデッドは、ペタリと、座り込んだ。

 体の震えが止まらず、両腕で自分を抱いた。

 アリサリスは、扉に向かって、歩いていく。

 押すと、わずかに扉が動いた。

 「開いているヨ。」

 アリサリスが、ウィズデッドに、話しかけた。

 「え?」

 ウィズデッドは、反応した。 そうだ。ファグが、ひょっとしたら、外にいるのかもしれない。

 へたり込んでいる場合じゃなかったんだ。 トロウに行くまでは、気を引き締めないと!

 立ち上がり、コリルの手を引いて、アリサリスの側に歩いていった。

 扉の隙間から外を覗くと、陽の光が、見えた。

 背の高い、緑の草が沢山生えている、見たことの無い草原。

 少し先に、石で出来た、壁と、門が見えた。草原でなくて、手入れのされていない、庭なのかもしれない。

 「箱がアルヨ。宝箱カナー?」

 アリサリスは、台座のある部屋の奥へと戻っていった。

 部屋の隅に、小箱が落ちていた。

 「あ、待ちなさい。アリサリス。まって!」

 慌てて、立ち上がり、アリサリスの後を追う。

 コリルは、振り向いて、それを目で追うが、外が気になるので、扉の隙間から、外の風景を観察することにした。

 小箱は、鍵が掛かっていたようだが、壊れていた。

 ウィズデッドは、そっと開けてみた。中には、布にくるまれた、『指輪』が入っている。いくつかあったが、

 一つを除いて、割れていたり、崩れていたりしていた。

 「指輪」には、ルーン文字が刻まれている。外側に、読める字で、「火球(ファイヤーボール)の指輪」と刻まれていた。

 「これは、見たことがある。・・・『簡易記述式』の魔導力学が使える指輪だわ。」

 ルーン文字は、殺傷力のある言葉が刻まれている。

 「??かんいきじゅつしきってナンデスカ?」

 アリサリスが、質問した。

 「え?ええと、言葉ひとつで、魔法がつかえる指輪なのよ。でもね、これは、人を殺せる危険な魔法だわ。・・・明らかに、違法品でしょうね。きっと、この装置の持ち主は、犯罪者だったんだわ。」

 ウィズデッドは、迷ったが、指輪を、指にはめた。

 トロウに着くまでに、危険を撃退できる、唯一の武器だ。

 指輪をくるんであった布を広げてみる。地図が描いてあった。

 「うん、ここの建物には、門があるみたいね。そこから真っ直ぐ行けば、トロウの街があるようね。」

 立ち上がり、アリサリスの手を引いて、扉の側にいる、コリルの方へと歩いていく。

 「コリル、アリサリス、良く聞いて? ファグが、先に来ているはずだから、辺りを探しましょう。 コリュウのことは、心配ないわ。彼が、強いことは知っているでしょう?門(ゲート)は、使えないけど、きっと、トロウまで、来ると思うの。」

 「うん、コリュウは、強いヨ!」

 「うん、ファグを、探そう!」

 二人が、頷いて同意するのを、微笑んで、確認すると、ウィズデッドは、扉を押し開けて、外に出た。

 後ろには、先ほどまでいた石造りの低い塔になってた。石壁が、周りを囲っていて、先のほうには、外に出るための門が開いていた。

 今いるのは、庭のようで、背の高い草が生い茂っている。

 左手に、半ば埋まった、石造が見えた。ワニのような顔をした、怪物の石造のようだ。

 「わーい」

 アリサリスと、コリルは、門に向かって駆けていった。

 「あ、待って!」

 ウィズデッドが、追いかけようとした、その瞬間。

 左手の地面が、爆発して、ウィズデッドと、アリサリスたちとの間に、何か巨大なものが、音を立てて落ちた。

 目を見張る。

 ワニの顔をした怪物・・・石像が、土煙の中から現れた。

 「しまった。魔法士の、魔法の守護像(ガーディアン)だったんだ。」

 ギシギシと、クビの辺りにヒビを入れながら、顔を巡らし、アリサリスとコリルを発見した。

 ウィズデッドは、指輪をつけた手を突き出し叫んだ。

 

 「『火球(ファイヤーボール)の指輪』よ!敵を焼き尽くせ!!」

 

 指輪が、赤い光を放つと同時に、石像が、炎につつまれ、爆発する!

 熱風と、砂煙が視界を奪う。

 「・・・うぅ、すごい、威力だわ。」

 

 両手で、目をかばい、ウィズデッドは、魔法の威力に戦慄した。

 

 突然、真っ暗になった。

 熱いものが、喉にこみ上げて、胴の辺りに焼き鏝を当てられたような痛みが走る。

 天地が、逆転し、視界がグルグル回った。

 体中に、ものすごい、衝撃が走る。

 「?????」

 自分が、地面に転がっているのが、分かった。

 見上げると、半ば崩れている怪物の石像が、目標を見失ったかのように、キョロキョロと、顔を動かしていた。

 石像の口から生えている、石の牙に、赤いものが付着して垂れていた。

 ウィズデッドの目の前に、赤い水溜りができている。・・・違う、水溜りの中に、自分が、横たわっているんだ。

 立ち上がろうとして、ひざから下が無いことに気がついた。

 腕が、変な方向に曲がっている。

 お腹から何かが、飛び出している。

 

 「・・・・・。」

 

 「先生が!先生ぇ!」「今、向うに落ちたヨ!」

 

 コリルと、アリサリスの声が、石像の向こう側から聞こえてきた。

 こっちに来る気だ。・・・いけない!

 

 「駄目よ!わ ( たしは、大丈夫だから、無視して、にげなさい! )」

 言いかけて、言葉を飲み込んだ。

 遺跡で、コリュウを助けに飛び出した、アリサリスの姿を思い出した。

 こんな、言い方では、駄目だ。

 もっと良い言葉。

 力を振り絞り、声を放つ。

 「聞いて!アリサリス!! 怪物が、邪魔で、そちらに行けないわ! 先生は、反対側の門から、逃げるから、そのまま、目の前の門から逃げなさい! 真っ直ぐ行けば、トロウの街があるわ! トロウの街で、落ち合いましょう! いいわねっ!」

 

 返事が、無い。 お願い、・・・お願いだから、逃げて。

 

 「分かったヨ! トロウに行くヨ! コリル早く!」  「・・・う、うん! 先生、気をつけて!」

 

 よかった。さすが、私の生徒たち。

 こうしては、いられない。 まだ、死ぬわけにはいかない。

 立ち上がって、石像の注意を私に向けないと。

 足の感覚が無いけど、ひざ立ちでも歩けるはずだわ。指輪もあるし。

 指輪。指輪は、どこ? 見えないわ。

 腰から下が、分からない。大丈夫、動くはず。 腕は? 声が出ない。 指輪を。ゆ・・・

 

 

 

 石門をでて、草原を駆けていく。石像が、追ってくるのが見えたが、振り向かないで、走り抜ける。

 追いかけてくるなら、先生が、逃げれるし、私の脚なら、逃げ切れる!

 アリサリスは、頑張った。

 大きな、爆発音が、聞こえたけど、わき目も触れずに、アリサリスは、必死に、走った。

 ガマンできなくなって、振り向いてみる。

 石像は、見えなかった。 逃げ切れたのだ。

 「よかった。助かったヨ! あれ?」

 一緒にいるはずの、コリルが、見当たらなかった。

 「あれ?あれれ? コリル!? コーリールー!!」

 声を張り上げ辺りを走り回って探した。 逃げている最中に、はぐれてしまったのだ。

 「タイヘンダ!」

 真っ青になって、探すものの、いつまでたっても、コリルを発見できない。

 「どうしよう。先生の方へ行ったのかも?」

 迷った挙句、元の道を戻り、石塔に行ってみた。

 石門を、ビクビクしながら潜り抜ける。

 粉々になった、石造らしきものと、血溜まりを見つけたが、ウィズデッドの姿も、コリルの姿も見つけられなかった。

 アリサリスは、多分、二人とも、トロウに向かったんだろうと、考えた。

 決心し、トロウの方角へと走り出した。

 

 

--------------------------------------------------------------

4.トロウにて

 

 トロウで、アリサリスは、冒険者になった。

 食べていくには、いろいろと大変だったけど、なんとか街で仕事を見つけて過ごすことができた。

 3年たったある日、トロウ付近にある、「龍神村」で、コリルと再会することが、出来た。

 その数ヵ月後、魔法の門(ゲート)を使わず、その脚で、トロウに向かって旅をしてきた、コリュウとも会えた。

 未だ、行方がしれない、ファグと、ウィズデッドを探して、コリュウは、トロウ付近を旅して回ると伝え、出ていた。

 アリサリスは、トロウから、たびたび、「龍神村」に、コリルに会うために、遊びに行った。

 コリルは、都会が、苦手なのか、「龍神村」から、離れようとはしなかった。

 

 トロウの商店街で、小さな、お祭りがあり、出店がでていた。

 アリサリスは、安く食べ物が食べれると思い、出店の辺りをグルグルと歩いていた。

 いろんな、お店が、お祭り価格で、安くなっていて、人が沢山集まっている。

 果物屋の前に来たアリサリスは、「これくださーい。」と、おいしそうな色をした真っ赤なリンゴを指差した。

 「あ、私も、それを包んでくださいな。」

 大地の神イーヴノレルの神官衣を着た、黒髪の少女が、アリサリスと同じ、リンゴの山を指差した。

 

 二人の視線が、お互いを凝視して、固まった。

 

 「ア、アリサリス!!」

 「せ、先生ぇ!!!!」

 

 両手を伸ばし、お互いが、お互いの顔を挟み込んで、確認する。

 アリサリスと、ウィズデッドは、抱き合い、大声で泣いた。

 周りの人々が、驚いた。 果物屋の店員までが、驚いて固まった。

 「無事に、トロウに来れたのね?よかった! コリルは?コリルは、どうしたの?」

 「無事ダヨ!近くの村に住んでいるヨ! コリュウにも会ったヨ!先生を探して、旅しているヨ!」

 「ええ!?コリュウも、トロウに!?あああ、なんてことでしょう!」

 

 「「・・・ファグは?」」

 

 二人して、見つからない、クラケットの名前を尋ねた。

 悲しみと、失望の表情が、お互いの顔に浮かぶ。

 ウィズデッドは、立ち上がり、言った。

 「大丈夫よ。みんな無事だったんだもの。ファグも強いクラケットよ。きっと会えるわ。」

 「・・・ソウダヨ!会えるヨ!・・・先生は、いま、どうしているの?」

 「私?私は、いま、イーヴノレル神殿でお世話になっているの。」

 ウィズデッドは、あのときの・・・思い出したくも無いあのときの事を回想していた。

 

 −−−−− 動けなくなったあの時、

       石塔の付近にある、森へ、薬草を摘みにきていた、イーヴノレルの神官や司祭が、近くにいたのだ。

       騒ぎを聞きつけて、彼らが駆けつけてくれなかったら・・・偉大なる天使の技を司祭様が、行使してくださらなかったら、

       私は、死んでいただろう。 −−−−−

 

 

 遠くで、吟遊詩人の歌声が聞こえてきた。

 祭りは、吟遊詩人の稼ぎ時だ。

 アリサリスは、興味深げに、耳を傾けた。

 人々の雑踏に混ざって、竪琴の音が鳴り響き、歌が始まる・・・

 

 


♪僕らは陽気なクラケット!

 ブラックグラスのクラケット!

 生い茂る草木は黒いけど、

 僕らは陽気なクラケット!

 ブラックグラスのクラケット!

 

 

 −−−−− アリサリスと、ウィズデッドが、顔を見合わせる。

 

 

 ゴキカブリ・クロワムン・チャバネにヤーマト

 4つの氏族は仲間さ家族!

 さぁさ踊ろう飲め食え歌え!

 僕らは陽気なクラケット!♪

 ブラックグラスのクラケット!

 

 

 −−−−− 弾けるように、地面をけり、駆け出す。

 

 

 洋服地味だし、汚れちゃいるが、 僕らは陽気なクラケット!

 ブラックグラスのクラケット!

 ブラックセンサー、ブラックウィング、ブラックレッグにブラックバディ!

 

 

 −−−−− 人垣を押しのけ、すり抜け、駆け抜ける。

 

 

 4つの集落は仲間さ家族!

 さぁさ踊ろう飲め食え歌え!

 僕らは陽気なクラケット!

 ブラックグラスのクラケット!♪

 

 『食ベルヨ!』

 『ファグ!』

 

 

〜おしまい〜

 

 

--------------------------------------------------------------

5.あとがき

 勢いだけで、書いたので、直したいところもあるし、直さないかもしれないし、そんな文章です。

 面白かったら、幸いです。

 ご感想よろしくお願いいたします。

 

 SA.星忍冒険こと、ゴキ−GM

 --- 2003.6.13 ---
SA.home page