はじめに・作者紹介
大野つや子
1944年4月 長野県埴科郡戸倉町に生れる
1965年12月 結婚して神奈川県川崎市に在住
1968年3月 横浜市に移住
1997年 ころより俳句、パステル画を習う
2002年4月 病没
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薄墨やいにしへ人の花の宴
春の宵ふらり木戸開け出たくなり
掘り残し竹の子達の背比べ
偉ぶらず奢りもなくて諸葛采
群生を離れ一りん諸葛采
花菖蒲夜来の雨に照り映えて
行過ぎて振り返らせて栗の花
紫陽花の湿り欲し気な小径かな
風そよぎさざ波渡る青田かな
浸み出づる水を集めて不動滝
カーテンの風の動きに今朝の秋
また此処に今年も咲ける野菊かな
どんぐりを拾ひて歩みまた一歩
ひと角の明暗作り石蕗の花
日向ぼこ猫の背伸びを真似てみる
水仙の香に導かれ岬巡る
風花は予告もなしで束の間で
初午を守り伝へし家族あり
椿油で明日葉揚げて島の味
椿園黄色もありて人目引く
重田朝歩編「プラーザ句会二十周年記念誌」(平成十一年九月二五日発行)所載
束の間の熟睡糧に夏の朝
露集めすり込む墨の清々し
指立ててこの指止まれ赤蜻蛉
水車小屋秋の静寂を作りをり
束の間の普請頼みて神の留守
冬帽を被せてもらふ地蔵かな
暖房の余熱に伸びる猫の足
塀越しに愛でる梅見の声しきり
今日ひと日使はずじまひ春炬燵
丹精の皐月愛でつつ古希祝ふ
ブナ林に石楠花ひそと咲き添へる
(平成11年7月〜12年5月)