第12話:死の大金庫
何と言う事だ、まさか国際救助隊のエージェントであるレディ・ペネロープが、イギリス銀行で金庫破りをするなどとは…。
だが安心して欲しい、これは銀行の頭取から頼まれた金庫の安全テストなのだから。
今回は、パーカーに金庫破りという過去があった事が明かされるのだが、そのパーカーをこき使っている(笑)レディ・ペネロープも並の貴族令嬢ではない事が判明する、見逃せない回だ。

前編
能ある鷹は爪(を)隠す(のうあるたかはつめ(を)かくす)。
タカが、獲物を捕える時に使う爪を平生は隠しているように、真に能力ある人は、いつもはそれをひけらかしたりしないで、まさかの時にこそ思いもよらぬ真価を発揮するものだという意。

パーカーが元・金庫破りだったという事も驚きだが、今回は何より、板に付いたペネロープの女王様ぶりに驚かされたなあ(笑)。
霧にむせぶロンドン。
イギリス銀行の前にペネロープとパーカーが登場、スコットランドヤードなのか銀行の私設警備員かは不明だが薬で眠らせた後、パーカーは警報配線を切断、ペネロープは扉にプラスチック爆弾を仕掛けるのだが、ここで「パーカー、早くヒューズを…」って、たしかに「fuse」には違いないのだが、一般的にヒューズと言えば電気の「電流制限用」の方を思い浮かべるであろうから、この場合は「信管」または「時限信管」、あるいは「fuze」の方の「起爆装置」と訳してしまった方が適切だったのでは無かろうか。
02:00
プラスチック爆弾で入り口の鍵を破壊して銀行に侵入するのだが、誰も出てこないのは何故だ?
国立銀行なのに、警備員はたった一人しか居ないなんて、もしかしてこれは、シャーロック・ホームズの時代から連綿と伝わる伝統かもしれないな(笑)。
02:20
いよいよパーカーが金庫の解錠に挑戦する。
無論ペネロープにとっては他人事だから「あとは任せるわ、時間はあるのよパーカー」と、至って気楽なモノではある(笑)。
02:55
だがさすがに時間が経つにつれて心配になり「新しい探知機を使った方が早くない?」とアドバイスするのだが、パーカーにとってはそれこそ余計なお世話、「父はいつもこの聴診器を使っておりました。おじいさんもひいじいさんもそうです」と一蹴されてしまう。
04:00
「あとひとつで終わりです」
「2時間25分で、無事任務を完了しました」
と報告した所で照明が点灯し、大勢の人間が居た事がわかるのだが、ここで、このコンビの銀行強盗が、実は銀行頭取のシルトン卿から依頼されての事と判明する。
「政府もこれで、もっと新しい装置の、安全な金庫に換えるでしょう」(シルトン卿)
と言う訳だ。
帰途の車内でパーカーが「私に負けない腕を持った男をひとり知っております。あと10年はまだ入っておりますでしょう」と話すが、これが伏線で、その後パークモア・スクラブズ刑務所に画面が切り替わり、その噂の男の脱獄シーンになる。
だが、潜んだゴミ缶の中でもくわえタバコって、いくらなんでもやりすぎじゃないのか(笑)。

さて、銀行の方では早くも新しい金庫に変わり、頭取は「イギリス銀行もこれで生まれ変わった」とご満悦の様子だが「ただひとつの電子キーは私が持っている」って…。
普通はより安全を期すため、二つのキーを別の人間が保管し、それを同時に使用しないと解錠できないシステムにしているのではなかろうか。
ともかく、頭取はペネロープから食事に招待されているので本日の業務を終了するのだが、リストを見て点呼をしておきながら、一人確認できないのを「先ほど仕事でどっかへ出て行きました」という言葉を鵜呑みにして内部確認もせずに金庫を閉鎖するあたり、これではいくら近代的な設備にしてみても意味がなかろう。
まあ「まさに現代科学の結晶です。ことに空気を出して真空にする装置はすばらしいと思います、紙は真空の方が傷みませんので」って言葉にも、科学信仰が見て取れるのだが。
で、案の定金庫室内には行員が一人残っているのだが、「誰にも邪魔されずに仕事に集中したい」って、それ以前に終業時間くらい覚えて置けよ。
あるいは、残業が日常茶飯事だから、気にしてなかったのかな?
いやそれより、こんな、新設された金庫室内にこもって仕事をするようなヤツなら、これまでも実行していたと考えられるのだが、閉じこめられた経験がないのが不思議だな(過去に一度でもそういう事があれば、本人は元より周囲も注意するはずだ)。
一方頭取は、ことさら「キーはちゃんとカバンに入れたよ。どんな事があってもこのカバンは離さん」と言っているあたり、これは多分必要な時に、どこかに置き忘れてくるという前ふりだろう。

さて、どこを探してもランバート(金庫室内に残った行員の名前)の姿が見えないということで、ようやく金庫室内に閉じこめられた可能性があるからとインターホンを使って金庫室内部との連絡を試みるのだが、金庫室内部の監視カメラが無いのも不思議だ。
で、金庫室に居る事を確認し、金庫室内の空気があと2時間で無くなってしまうから頭取と連絡を取ろうとするのだが、「夕食に呼ばれていると聞いただけで、どこかわからん」ってあたりも情けない。
責任者ってのは、常に所在を明らかにしておくべきだろうに。
まあ、緊急連絡が取れるようになっているだけでもマシかな?

画面がペネロープ邸に切り替わると、キッチンではパーカーと料理人が無駄口の応酬を繰り返しており、どちらも言葉遣いが悪い上に、料理人はくわえタバコで料理をするわ、パーカーは新聞を読みながら食事をするわという行儀の悪さに驚かされるのだが、この作品は英国生まれなのだから、このあたりの裏での使用人の態度の悪さは、英国貴族の屋敷では当たり前の光景と考えて良いのだろうか(汗)。
それはともかく、パーカーは「金庫破りのフィンガーが脱走した」という新聞の見出しに愕然とし、その後不可解な行動を取るのだが、この理由は後編を見ればわかるのだろうな。
一方シルトン卿の元には緊急連絡が入るのだが、これがいわゆるポケットベルなんだな。
ペネロープがコンパクト型の、現代で言うカメラ付きケータイを持っている事を考えるとひと世代遅れているのだが、ここで当たり前に連絡が付けられたのではその後の話の展開上都合が悪いから、仮にこの時代に普及が始まっていたとしても、何のかんのと理由を付けて持ってなかった事にしただろうな。
パーカーは、ここでのペネロープの「銀行強盗でも入ったのでしょうか」というペネロープの冗談に思わずコーヒーの乗ったトレイをひっくり返してしまい、シルトン卿がとにかく銀行に電話連絡しようとすると電話配線を切断、挙げ句の果てには、急遽シルトン卿を銀行に送る事になると FAB1 をノロノロ運転する。
さすがにキレたペネロープが「怒りますよ! さあ早く!」というのだが、このあたりはまさに女王様の風格充分だったな(笑)。

金庫室内の空気を示すランプは3/4から1/2に切り替わり、残り1時間半となったのだがシルトン卿とは連絡が取れないから、やむを得ず国際救助隊に出動を要請する事になり、基地では1号に出動が命じられるのだが、ちょっと待て!
以前アルプスまで2時間と言っていたはずだから、間に合わないのではないか?
それにそもそも、こんな点呼確認不足で発生した事故までいちいち対応していたのでは、国際救助隊がいくつあっても足らないだろうに。
たしかに、これまでも「人命はなにより大切」と繰り返し言ってきた手前もあり、短時間なら呼吸が止まっても助かるとは思うし、たとえリスクが大きくても、あるいは間に合わないとわかっていても、要請があった以上最終的には出動する事になるだろうと思うのだが。

ってところで『つづく』だ。

後編
千丈の堤も螻蟻(ろうぎ)の穴(けつ)を以(もっ)て潰(つい)ゆ。(韓非子 喩老篇)
堅固な堤もケラ(螻)やアリ(蟻)の穴がもとで水漏れし、遂(つい)には決壊してしまうこと。ほんのささいなことから大事に至り、失敗をまねくものだという意。

点呼確認が不十分」という通常なら問題にもならないような事が原因で、FAB1 によって壁は壊されるわ対向車ははね飛ばされるわ、国際救助隊が出動してトンネルは壊すわ金庫は壊すわと大騒動に至ってしまう。
この損害額がどれほどになるのか、又、その損害は誰が補償するのか、関係者は考えたくもない事だろうな(笑)。
さて1号が発進し、2号に第5装備を持たせ、バージル一人では手が足らないのでアランが同行することになる。
あと1時間
1号の着陸場所はロンドン・ヘリポートだが、1号が到着した時点で「あと1時間しかありません」って事は、30分足らずで到着した事になるのだが、それなら以前言っていた「アルプスまで2時間」ってのは何故なんだろうな。
一方 FAB1 は、ペネロープの言葉責め(笑)のおかげで速度を上げて走っていたのだが、たどり着いた所は心中岬(LOVERS LEAP)。
事ここに至ってはペネロープも根本的な相互理解が必要とパーカーを詰問し、その理由(刑務所仲間のフィンガーの最後の仕事を完遂させてやりたい)を知るのだが、そこでパーカーの言い分を聞き入れて自分が運転するあたりがただの貴族令嬢ではない度量の広さであり、だからパーカーも従っているのだろうと思わせてくれる。
尤も、スピンターンとか四輪ドリフトと言えば聞こえはよいが、その運転技術はお世辞にも上手いとは言えず、おかげでパーカーは座席で震え上がる事になるのだが(笑)。

あと30分
さて、バージルたちは金庫室の扉を破ろうとするが歯が立たず、本部に相談したところ、おばあちゃんから「今はモノレールが空中を走っているが、昔は地下鉄と言って地下に電車が走っていた」という話を聞き、地下鉄跡のトンネルから金庫室の壁を破る事にする。
あと10分
FAB1 はペネロープの運転で、近道を通りスピンもなんなく立て直すのは良いが、対向車を蹴散らし壁を破壊しと、まわりの迷惑を考えないあたりはさすがに女王様だな(笑)。

この時点でようやく金庫室の中にいるランバートが異常に気付くのだが、10/120つまり10%以下の薄い空気の中でこのように歩き回れるものだろうか。
あと3分
バージルたちは金庫室の壁に爆薬をセットするための穴を開けているのだが、ここで FAB1 も銀行に到着する。
あと1分
ようやくシルトン卿が銀行に到着したのだが、
「早くキーを」
「キー?」
「そうです、カバンに入れて必ず持ち歩くと言っていた…」
「カバンか…、あのカバンはペネロープさんの家へ忘れてきたらしい」
という、部下が部下なら上司も上司という予想通りの展開(笑)。
そこでパーカーがヘアピンを使って金庫の解錠に挑むのだが、「このパーカーにあけられないような金庫はどこにもありません」って、カッコイイじゃないか(笑)。
で、バージルたちが壁の破壊に成功し、ランバートと会話をしているわずか1分の間に金庫扉を解錠するのだが、そこで「君さえもっと早く来てくれたらこんな苦労をしなくて済んだのに」というのは責める相手が違うぞ。
そもそもは、きちんと点呼を取ってさえいればこんな騒ぎにはならなかったのだし、シルトン卿がペネロープ邸に行かなかったら簡単に解決していただろう、あるいは、行員に行き先を教えていたらもっと早く連絡が取れ(その場合はパーカーの勘違いも無かったろうから)すぐに銀行に戻る事も出来たはずだし、忘れ物にも気が付いた事だろう。
つまり、責められるべきはシルトン卿を始めとする銀行関係者なんだな。

さてシルトン卿は、こうやっていとも簡単にパーカーが扉を開けたのを見て、せっかく更新した金庫だが再度取り換える事を決意する。
「前に使っていたようなのがいいな。あれには2時間半もかかったのだから」
だが実は、最初の時は見物人が居たから皆を楽しませようと、パーカーはわざと時間をかけて開けたのだ。
そんな会話をしている時、銀行の壁を破ってフィンガーが登場するのだが、壁は破れているわ金庫の扉は開けっ放しだわという状況を見て失望する。
「これがイギリス銀行の有名な金庫かね。こんなとこじゃ盗む気にもなれねえや」

と言うわけで、今回一番頑張ったのは「ヘリポートでありながら、ヘリとは比べものにならない重さの1号と2号を乗せてもビクともしなかったロンドン・ヘリポート」だが、一番の被害者は、何と言ってもフィンガーだろうな(笑)。

次回『第13話火星人の襲来』へ。


  目次ページへ
  トップにもどる