『お父さんの少女漫画』 12/ 劇画・森脇真末味のこと


 森脇真末味は1980年前後からプチフラワー等を中心に活躍する人です。非常に寡作な人ですが、現在も持ち味を変える事なく独特な作品を描き続けています。
とにかく目を奪われるのは特徴のあるそのタッチ。実際あれを少女漫画に分類して良いのだろうかと考えたりもします。むしろ青年誌的な劇画に近いと思うのですが、そのせいか正統的少女漫画ファンには受け入れられ難い部分もある様で、どうもビッグマイナーの印象を拭えないままでいる感じです。

代表作『緑茶夢シリーズ』とその登場人物をリンクした『おんなのこ物語』ではバンド活動に情熱を燃やす若者像や人間模様を鮮やかに描ききりました。これも20年近く前の作品になってしまいましたが、当時の私はかなりの衝撃をもって読みました。なにしろ女が殆ど出てこない(笑)。一人、二人は出てくるけど主人公じゃないし、ホントにどこが「おんなのこ物語」なんだろう。実はこのタイトルは今でも口に出すのが恥ずかしいんですよ。とにかく男ばかりが出てくるワケで、それも当時の少女漫画といえば「やおい」が猛威を振るい始めた時期・・なのかな?実は詳しく知らないんですが。だからさぞかしハードなホモネタが展開されるのか?とご想像の方がいらっしゃったらすみません、ハズレです(笑)。

このシリーズは実に丁寧に「人間関係」を描いているのです。「相関関係」と言い変えても良い。誰と誰とが友人で、誰それの回りに何人かの仲間がいてバンドを組んでいる。ところが彼はこちらの作品で主人公を張っているし、この人物はこちらとあちらで出てくるが微妙に性格が違っている・・という具合。その複雑なもつれ具合を楽しむ様に、森脇真末味は内的宇宙を気ままに展開しているのかも知れません。そう、これはかなり「趣味の世界」なのです。『緑茶夢』の続編として始まった『おんなのこ物語』が時間的には過去に遡っての話である辺りを見ても、構想としてはかなり古くから作者の胸中にあったのではと想像します。

そして特に目を見はるのがその心理描写の巧みさ。複雑に絡み合う相関関係が生み出す様々な葛藤や苦悩。登場人物が見せる優しさや醜さ。それらを実に生き生きと表現するその演出や技法は正に少女漫画が培った最大の武器だと私は考えるのですが、それを劇画的な絵に乗せて展開したこの作品は、私的見解ですが後の青年漫画隆盛の先駆的作品だったのではないか・・などと考える事もあります。
再三言う様で恐縮ですが、当時の軟派少年漫画に辟易していた私は自分の受け皿となってくれる漫画を求めていました。当時も青年漫画はありましたし勿論大好きで欠かさず読んでいたのですが、萩尾ショックから以降の私は青年誌すら物足りないと感じる様になっていました。そんな私の空白を埋めてくれたのが森脇真末味だったのです。森脇真末味はやはり少女漫画なのでしょうが、男が読む分には一番抵抗が無い人であると言えましょう。

次回「 当惑・森川久美のこと 」に続く

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