スペイン王国(議会君主制)
スペインも二院制です
日本との違いを読んで感じてみてください
平成13年12月14日
国会
スペインの国会は下院(Congreso de los Diputados)と上院(Senado)の二院から構成され、国権の最高機関として立法権を行使し、予算を承認し、政府の行動を監視する。両院の議員とも普通選挙で選出されその任期は4年である。ただし議会が解散された場合はその日に任期満了となる。国会議員は兼職を禁じられているが、その身分は手厚く保護されている。立法の発言権は内閣、国会が主体的にもつが、特異な点は自治州議会および50万人の署名を集めた場合は国民がこの権利を行使できる。
下院議員は人口に応じた比例代表制で選出される。下院は次の点において上院に対し優位である。
@ 内閣総理大臣を選出すること
A 内閣の信任の可否を議決すること
B 法律の承認、改正、廃止には必ず下院の絶対多数の議決が必要なこと(詳細はクリック)
C 国民投票の実施にあたっては下院の事前承認が必要であること
Aと@は下院だけが持つ権能である。
下院が上院に対して優位であることが定められている理由として、下院議員の選出方法がより民意を忠実に反映していると考えられていることによる。
下院議員定数は憲法で上限400人、下限300人と規定され、現在は350人である(1996年)。選挙区は県を単位として各県に最低議席数(2人、ただしセウタとメリーリャは1人)を割り当て、あとは人口に比例して議席を配分される。
上院議員定数は254人である。選挙区は県を単位としている。各県の議席数は4人である。ただし島嶼からなる県や二特別自治市は規模に応じて1〜3人が配分される。さらに各自治州に1人ずつ、各州の人口100万人に1人を州議会が選出する。選挙は多数代表制で選挙人は定員よりも1人少ない人数を投票し、得票数の多い順に選出される。
近年上院の性格が曖昧なことと下院に比べ著しく権能を制限されていることを理由に上院不要論がしばしば飛び出している。
内閣
内閣は総理大臣、必要な場合におかれる副総理、閣僚、および法律で定めるメンバーで構成され、内政、外交、民事行政、軍事行政を指揮するとともに憲法と法律に基づいて執行権、規則制定権を行使する。
内閣は下院の信任の上に成り立っていることから、下院に対して連帯して責任を負う。内閣総理大臣の選出にあたってはまず国王が議員を有する政党の代表者と事前に協議したあと、下院議長を通じて候補者を推挙する。候補者は下院に施政方針を提示した後、議員の絶対多数の支持を得て信任されなければならない。閣僚の任免は総理大臣の具申に基づき国王が行う。
内閣は下院に信任決議案を否決されたり、不信任動議を可決されたりすると総辞職しなければならない。また下院議員の任期が満了したり、下院が解散されたり、総理大臣が死亡または辞任した場合も同様となる。このような仕組みは総選挙で多数を占めた政党の党首を総理大臣に任命するという政党政治の原則に沿ったもので、内閣と国会の協力関係が円滑に維持されるように配慮されたものである。
内閣の主な権能は以下のとおりである。
@ 内政面では公益に資する行政を種種の法律に基づいて行い、その手足となる行政機関を設置し、統括運営する。
A 対外政策を主導する。(対外的に国家を代表するのは国王であるが、対外政策を主導するのは内閣である。)
B 国家予算案を作成する。
C 内閣は下院による一定の監視下にあるが、その権能を主体的に行使できる。
D 国会の委任を受けた場合、特別かつ緊急の必要がある場合、制定された法律を補足するために細則が必要な場合などに規則制定権が認められている。
E 内閣総理大臣は実質的な国防上の最高責任者である。(軍の統帥権は国王が有するが、無答責であるから。)
F 警戒状態、非常事態、厳戒状態など国王に重大な異常事態が発生した場合には、下院と連携しながら対応策を講じる。
国王
国王は国家の統合と永続性を象徴する国家元首である。対外的にはスペイン王国の最高代表権を有し、憲法が明示する義務を遂行する。その人格は不可侵かつ無答責であるので、国王の国事行為については首相または所轄大臣の副署が必要であり、副署したものがその責任を負う。またブルボン王家の現国王フアン・カルロス1世(Don Juan CarlosT)が正統な王位継承者であることが確認され、その相続人による世襲制である。
国王の権能は象徴的、名誉的な性格のものに限られているが、日本の天皇と比較するとはるかに強力である。
憲法に規定された国王の権能は以下のとおりである。
@ 法律を裁可し、公布すること
A 国会を召集、解散すること。選挙を公示すること
B 国民投票を公示すること
C 内閣総理大臣の候補者を指名し、任免すること
D 内閣総理大臣の提案に基づき、閣僚を任免すること
E 政令を公布、文官・武官を任命、栄典を授与すること
F 国事に関する報告を受けること。このための閣議を内閣総理大臣の要請に基づき閣議を主催すること
G 軍隊の最高指揮権を行使すること
H 法律に明記されている恩赦を与えること
I 王立学士院の最高の保護者たること
フアン・カルロスT世について
スペインの民主化過程で不可欠な役割を果たしたのがフアン・カルロス(Don Juan CarlosT)である。スペイン国王アルフォンソ]V世の孫にあたる。スペインに独裁政権を樹立したフランコ総統(Francisco Franco Bahamonde)より後継者として指名される。
1975年フランコ総統の死後、王政復古を宣言し、どういう行動をとるか注目された。当初国民も民主化推進派もフアン・カルロスに大きな役割を期待していなかった。しかし後に知られることだが、当初から民主化を目指していたフアン・カルロスはフランコ政権内の改革派をよく観察し、なかなか進展がみられない民主化に最適な指導者としてアドルフォ・スアレス(Adolfo Suarez Gonzalez)を選んだ。国王自ら民主化に着手したことは国民をはじめとした人々を驚かせた。国王の努力なくしてスペインの民主化はなかったといえる。
フランコ総統死後、フアン・カルロスは権力を奪取しようと思えばできたであろうし、当初は王政復古による新たな独裁政権が樹立されると考えられたが、国王の正当性という威信をつかうことによって新しい民主政権を支持し、保守派を抑えることに成功した。1981年のクーデタの際、軍隊のほとんどがクーデタに参加しなかったことは国王への忠誠という要因以外では説明できない。憲法では様々な大権が規定されているにもかかわらず、政治の危機的状況以外には政治の表舞台に出ず、社会党政権ができたときも政治介入することなく、あくまで立憲君主制下の国王としてふさわしい役割を果たした。対外的にもスペインで最も有能な大使として国際的評価を得ている。
⇒以上より制度上の国王と現国王のフアン・カルロスとは違いがあるように思える。
参考文献
新訂増補スペイン・ポルトガルを知る事典 池上岑夫他 平凡社 2001
スペインの政治 川成洋・奥島孝康編 早稲田大学出版部 1998
政治学事典 猪口孝他 弘文堂 2000
世界の憲法集〔第二版〕 阿部照哉他 有信堂 1998