2003年3月に観た映画


                     歓楽通り  ヘヴン  007ダイ・アナザー・デイ  過去のない男  リロ&スティッチ


 

                <リロ&スティッチ>

 

                <過去のない男>

『過去のない男』を観て来ました。
フィンランドが誇る今や名匠と言っていいアキ・カウリスマキ監督の新作です。カンヌではグランプリ受賞作。
個人的には素晴らしい作品に巡り会いました!

暴漢に襲われ記憶喪失になった男だが、普通なら、記憶を取り戻したいともがくか、でなければ元の自分を知りたいと願望するはずなのに、この主人公は、そんな事はどうでもいいかのように、ホームレスだらけの貧しいこの場所での生活に満足して行くのだ。このタッチの描き方が独特で僕は大好きだ。現実になはさそうな良い意味での映画的なウソとでもいうか、この演出やタッチだからこそ許される(それがこの監督の技量の凄いところだと思う)映画が本当に映画らしい幸福感を味わったのだ。そもそも、記憶喪失ものといえば、大抵はサスペンスだったり、犯罪ものだったりする。しかしこの映画はある種コメディなのだ。こんな作品は珍しい。
そういえば、コメディといえば、意識的に笑わせるシーンはほとんどない、主人公はまず笑わない。だが、クールなんだか、優しいのだかわからない、その独特な語り口調がおかしみを増すのだ。

非常に幸福感のある映画で、一種のメロドラマなのだろうけど、コメディ味もありながら実に渋いのには感動した。それはまずセリフの粋さと、俳優の素晴らしさによるところが大きいと思う。寡黙でぶっきらぼうな主人公ではあるが、そのぶっきらぼうなセリフが実は名セリフの宝庫だったりする。芝居も実にいい。カウリスマキ常連のカティ・オウティネンも独特の存在感で引きつける。脇も皆、ピリッとしてていいなあ。出てくる人はほとんどが中年以上の人たちばかりだが、これがベテランの味というやつか、実にいい。

監督の音楽の拘りも見事で、主人公2人がとても見かけではそうは見えないのに共にR&Rが好きという設定も意外性でいい。当然かかっている音楽も見事だ。フィンランドには、お国的にフィンランド版ムード歌謡的なジャンルが根強く好まれているらしいのだが、この辺も見事にマッチしている。小津や黒澤を尊敬するカウリスマキらしい日本を意識してるシーンも出てくるのが、音楽も日本語の歌が出てくるのも聞きもの。
そして、画のタッチや、フィンランドの風景なども美しいのも特筆。

表のアカデミーが「戦場のピアニスト」なら、裏アカデミーは、この「過去のない男」だろう。
ハマる人にはハマる、素晴らしい傑作だと思いました。

 

             <007ダイ・アナザー・デイ>

                 <ヘヴン>

『ヘヴン』を観て来ました。
いい映画でしたね。罪を背負っていく人間が寓話的になっていくのは賛否あるだろうし、そこでこの映画の評価は分かれると思うので、万人に良いと言わないけれども、僕は素晴らしい映画だと思うし、いい意味での映画的なウソや、イタリアの美しい景色、キャスト・・・文句なしです。1番、惹かれたのは、罪人となった彼らが、最後に警察や裁判所ではなく、天(ヘヴン)に裁きを求めたように見えたことだ。そういう、はっきりとした明確なシーンはないが、僕にはそう感じたことだろうか。
正直、この作品を観る前は、逃亡する男と女の墜ちて行くロードームービー的なものを想像していた。それは一見そう見えるのは確かだが、本質がまるで違っていたようだった。
生きている限り、まだ償っていない罪の上の愛は成り立たないことは2人は承知している。だが、その複雑を理解しつつ、運命を感じてしまった人間同士は、逃げることでなく、行かねばならない行き場を求めていたのだろう。

それにしても凄いのはケイト・ブランシェットだ。僕は彼女のだファンなので点数が甘くなりがちではあるが、それを差し引いても、自分の髪をそり落とすという体当たりの熱演ぶりは凄い。彼女は自身の出演作で1作たりとも同じ外見の映画はないのだが(これ自体が凄い!)、今作など極めつけだろう。悪女もやれば、優しい女性も演じられ、それが全く不自然に見えない、近年稀に見る女優である。僕はメリル・ストリープの再来と思っている。もちろん、彼女は彼女であるというのは言うまでもありませんが・・・。

                 <歓楽通り>

『歓楽通り』を観て来ました。
正に、パトリス・ルコントの世界そのものでした。
一生かけて愛する彼女の世話をする中年男。しかも理想の男性まで見付けたりする・・・。これは第3者から見て良いのかどうかは分からないが、形はどうであれ、彼はそれを成し遂げた事が何より凄い。いや、ちゃんと回りは見ていた。純粋なものは誰が見ても分かるのであろう。
しかしながら良く考えると、彼の彼女に対する愛情は、一切、見返りを求めない無償の愛なんだよね。これって、親が子に対する愛に近いよね、正に。だけど、決して娘のようにと思って捧げてる愛として接してないところが、この映画のキーポイントであり、不思議なるところでもある。
この不可思議な点を微動だにせず、すべてのエピソードを、無償の愛で描ききった演出が僕はとても好きだ。