2003年1月に観た映画 |
<ボーリング・フォー・コロンバイン>
『ボーリング・フォー・コロンバイン』を観て来ました。
非常に楽しめる(といったらいけないか?)、娯楽作としても成り立つほどのドキュメンタリーでしたね。
監督のマイケル・ムーアは、ジャーナリストとしてという感覚じゃなく、映画作家として自分の主張をかましておりました。もう突撃リポーターという感じでしたね。そのお手並みは、余り上品とは言えなけど、される側がもっと品がないのだから、100%許せるのだ。
アメリカ以上に銃社会であるカナダにほとんど犯罪がなく、アメリカに充満してる。この例を出して、アメリカの根本的な病気ともいえる症状を浮き彫りにしようという試みは一応は成功はしてる。しかし、映画はここまでだ。これをどう受けとめるかは個々に委ねるしかない。
非常に面白く、良く出来たドキュメンタリー作品だが、はっきりいえばアメリカ人以外が観ても興味はわかない。銃の向こうに、交戦しなければならない理由や、兵器のビジネスとしての国の莫大な収益・・・・そういう方面に根本があるという強調をもっと突っ込んでくれないと、アメリカ以外の人が観ても面白みはないのだ。<僕のスウィング>
『僕のスウィング』を観て来ました。
実にピュアな匂いをかもし出す映画でしたね。
ロマ族と言うジプシーの流れを持つ民族から、以前、ウッディ・アレン作「ギター弾きの恋」でも取り上げられていた、天才JAZZギタリストジャンゴ・ラインハルトを生んでいるのである。そのジプシー音楽の継承者であるチャボロ・シュミットが出演し、神業的なギターを弾き芝居する姿は感動的である。その音楽、そして民族と絡め、少年と少女の淡く切ない友情と小さな恋を描いてもいる。その模様とジプシー音楽と、共通するのものは、嘘や駆け引きのないピュアな感性だ。大人になると失ってしまう純粋な感情。そして、純粋さを失った大人の残された純粋なもの・・音楽。この2つの流れが実に心地良い。
ストーリーも余りない内容だが、映画自体が詩のような世界観を持っていて胸を打つ。
チャボロ・シュミットが川のそばで蓄音機でギターで音を拾うシーンは涙が出る。そして、別れ・・・・。人は寂しく哀しい。
映画として優れているかどうかと問われれば、決してそうではないだろうが、僕はこの手の作品がとても好きである。<西洋鏡>
『西洋鏡』を観て来ました。
中国版「ニューシネマパラダイス」的と言えなくもない作品だ。
だが、映画と言うものに初めて触れた中国人の雰囲気や、西洋に対する文化の違いなども描かれていて、違う感覚も伝わってきて、とても楽しめた。描き方はストレート、もろに20世紀初頭の中国が舞台なので、ぢこを切っても中国一色的な感じがするが、映画的に紐解けばかなり西洋映画そのものの手法の作り方といえるのではないだろうか?正直、子の部分だけは、あまり好きになれなかったが、メカに強く、英語も話せた青年の、押さえ切れない新しいものへの好奇心はこちらをも、ときめかせてくれるかのようだ。
しかし、後半、古い文化や、お世話になった写真館や同朋たちとの亀裂に発展して行くが、ラストが予定調和的なのがやや惜しい。
が、心には心地良く響く良質の作品である事は間違いないようだ。<カンパニーマン>
『カンパニーマン』を観て来ました。
あの世界を震撼させた「CUBE」から5年。自作のプレッシャーに潰されかかりながらも作り上げた若き才気ヴィンチェンゾ・ナタリ監督の待ちに待った長編第2作。
以前は余りに期待度が高かったが、プレッシャーの話を聞いて、大目に作品を観てあげようという気になっていたのか、非常に楽しめた一篇でありました。
「CUBE」とは全く違い題材なだけに、すベてが謎だった前作と比較するのは酷だが、確かに度肝抜く作品ではなかった。ラストの行方も読めてしまったし、ただ、僕には充分、不条理さは感じられたし(ラスト10分以外までは)、そういう作りに持っていってるのは上手いと感じた。セピア調の映像はシュールだし、奇をてらった映像ではないのに、レトロと新鮮味が上手くブレンドされていると言うか、見せ方も編集も上手いと感じましたね。
この監督、この2作で、無機質な描き方をするとは誰でも感じるところだろうが、実は、今回も愛やヒューマンなものが裏に隠れていて、人間を描く事が大好きなのではないだろうかと思いましたね。これは好感が持てる。ここを持っているなら、今後、傑作をたくさん作れるような気がします。
新しい題材や映像を追求しつつ、「エンゼルハート」や「007」シリーズ等、ナタリ監督は、過去の影響受けたであろう作品や監督への影響も見受けられたように思う。ブライアン・デ・パルマの様とでもいうか。
僕は好きだな、この作品。とにかくディティ−ルが好きだから!
<ウォーク・トゥ・リメンバー>
『ウォーク・トゥ・リメンバー』を観て来ました。
正直、若い2人の純愛ドラマは実は好きだったりします。
しかしながら、この物語は、良質のものを感じながらも余り感情移入する事が出来ませんでした。
理由を挙げれば、主人公たちは不幸な結末に向かってしまうという設定ながら。不自然なくらい回りの家族達が人が良過ぎる事ですね。男の子の両親はもっと反対するのが普通だろうし、へタをすると逆にトラブルになったりもするのが今のアメリカですよね。この辺のリアリティのなさに、本当の暖かさや悲しみを見出す事が出来ませんでした。
しかしながら、主演の2人は瑞々しいし、親役のダリル・ハンナや、特にピーター・コヨーテが良かったですね。
が、僕的に、この作品は今1つ、乗りきれませんでした・・・。
<ラストプレゼント>
遅れ馳せながら、『ラストプレゼント』観て来ました。
僕も号泣でした。
確かにストーリーも読めるし、TV風でベタだけど、純粋に正当映画で見せたのが、とても良かったし、丁寧に作ってましたね。
恋人でなく夫婦を焦点にした部分がポイントだし、いろんな人の絡みが見事でした。素晴らしい作品だと思う。この感動がどれくらい残るか自分ではまだ判断つかないけど、この夫婦の気遣いは変化球なのに、作風がストレートという、このストレートさには打たれたなあ。
『春の日は過ぎゆく』とは違うイ・ヨンエは、また素敵でしたね。彼女の表情だけでも伝わるモノがありました。彼女には惚れましたねえ。
いくつかの名しーんがりましたね。
多くは語れないけど、彼が自分の家の前で電話するシーンには、グッときました。
<草ぶきの学校>
『草ぶきの学校』を観て来ました。
本当に昨今の中国映画にはハズレがない。素晴らしい一遍でした。
中国映画は、どの作品も純粋で、ヒューマンな作品が多いが、純朴度という点においては、この作品が1番かも知れない。「あの子を探して」も「山の郵便配達」も純朴度はかなり高いが、この作品が上ではないだろうか?
映画自体はエピソードの集まりであるが、多くを語らない口調がとても好感が持てた。少年、家族、学校・・・これらを題材にしたものではかなりの秀作であろう。傑作ではないかも知れないけれども、少年の心になり切れて映画を観れるという点では素晴らしく、何度も頷いてしまった。
中国で、40年も前の田舎が舞台。生徒達は、全員、演技経験のない子供たちというが、とても信じられない程に上手い。そして自然だ。
郷愁と言ってしまえばそれまでだが、自分の子供時代には今と違うものが誰でもあったはずだ。ふと、そんな事を考えてしまう作品だった・・・。<バルティーノおじさん>
『バティニョールおじさん』を観て来ました。
何てことない、ただの精肉屋のおじさんが、隣のユダヤ人が、自分のうちの肉を盗んだ事から、本来持っていた優しさを子供達の為に注いで行くストーリーだが、当初はもちろん、善意からの行為ではなかった。
・・・この普通の描き方が、とても心地良く、何気ない話を誠実なものにしている気がしました。
本当は辛いかもしれない物語を、ユーモアに溢れた描き方で、とても好感が持てるし、読めそうで読めない、そして読めなそうで読める展開にドキドキしたりする。巻き込まれて行く姿と、何とかしようとする姿の程合いが絶妙なのだ。
確かに、「ライフ・イズ・ビューティフル」の雰囲気がある。もちろん本当の親子ではないし、作品的にも、今作の方が、現実的でコメディの要素が強い分、違いはあるが、悲劇に対処する暖かい愛情は同じ匂いがするのかもしれない。
名作「タンデム」等でパトリス・ルコント作品の常連であるジェラール・ジュニョの監督・主演作で、これまでも「パリの天使たち」など数本の監督作があるが、今作が1番と言う位、出来が良い。
キャッチコピーにあるように、自然にヒーローになっていくおじさんがカッコイイ!
<ピーターパン2・ネバーランドの秘密>
『ピーターパン2・ネバーランドの秘密』を観て来ました。
純粋に楽しめましたね。
ここのところハズレが多いディズニーフルアニメ作品群だけど、手堅く、夢と冒険とファンタジーと感動を届けてくれました。今作が前作と大きく異なるのは、ヒロインだったウェンディが大人になリ2人の子供のママになリ、あの長女であるジェニーがヒロインであること。ジェニーは魅力的に描かれていて、とても良いと思う。ピーターパンの能天気さも良いし、どことなくティンカー・ベルが今風な顔立ちになってる気がしたけど・・・キャラは魅力があったなあ。
ディズニーは「ライオンキング」など始め、名作といえども続編はことごとくビデオ&DVDのみというスタイルと取ってきたが(あの101匹わんちゃん、でさえそう)、このピーターパンだけは何故か劇場盤として製作した。異例の事である。いかに力を入れているのかが伺える。<CQ>
『CQ』を観て来ました。
『CQ』は、フランシス・F・コッポラ監督の息子、ローマン・コッポラの長編としては初になる監督作。設定も1969年と、お父さんが映画界に進出した年になっているのは単なる偶然か?
このレトロ感触れる演出はやはり只者ではないというか、才能を感じますね。面白い構成や編集も見せるけど、基本はしっかりしている感じ。お話的には、悩める映画監督が主人公で、どことなく内容も映像もヌーベルヴァーグ的な匂いも感じましたね。
ただ、流れが平坦なんで、退屈な部分もありました。娯楽に行くか、内面で行くか、きっちりした方が良かったと思う。ただ、これが狙いなら別に何も言わないけど、そうならやや物足りないな。
<わすれな歌>
『わすれな歌』を観て来ました。
素晴らしい!タイ映画恐るべしの作品だった。
普通に言えば、辛い話を、のどかに、笑いもあって歌仕立て風に仕立ててる秀作なのだが、それだけでないのは、監督特有のブラックな要素だ。こういう映画には、余りお目に掛かった事はない。風味がブラックで、根底には中国映画にあるような切ない“河”が流れている映画と言った良いだろうか。これだけ映画を見てきた僕でもショックであった。
正直ものだが、要領と運のない主人公の翻弄されて行く人生だ。先は読めないし、無茶な人物は出てくるし(これがまた、キャラクターが秀逸!)、余り無理なんで、見ているこちらかが、もどかしく、恥ずかしくなってくるくらいだ。
歌に託す演出。タイの魅力溢れる音楽は、この手の音楽を聴かない、この耳にも訴えてくるものがある。歌詞は圧巻だ。
う〜ん、正月早々、凄い映画と出会ったものだ!<SWEET SIXTEEN>
『SWEET SIXTEEN』を観て来ました。
ケン・ローチお得意の、イギリス労働者階級ものではあるが、今作は「ケス」以来の少年が主人公だ。
とても痛く、切ない作品でした。傑作!
それが、とても自然で、遥かに回りの人間より、知恵も度胸も冷静さを持っている少年。だが、彼はまだ15才。間違いや、失敗を犯して当然の年だ。大人でも迷走して行く、イギリスの労働者階級。愛する母が刑務所から出所する日を心待ちにし、ヤクを売り、家を買う少年。
悪のツボにハマり、自分を見つめる余裕すらない。登場人物は、優しさに満ちている人間もいれば、悪どい奴もいる。だが、共通してるのは皆、底辺の人間なのだ。必死でもがいて生きている。
少年の一途な行為は善悪関係なく心を打つ。
姉が言うセリフ「あんたのは勇気じゃない。自分を捨ててるけ・・・」には思いつめた複雑なテーマが見え隠れしているかのようで心打った。ラストの切なさ。久々に切ない思いが僕の胸をはち切れんばかりによぎった・・・。素晴らしい作品だ。
<グレースと公爵>
『グレースと公爵』を観て来ました。
いや、素晴らしい作品でした。
映像と絵画と融合。何はともあれ、このレトロでこのトーンの映像を作ったエリック・ロメールに乾杯!!冒頭で絵画から動き出す人物のシーンは圧巻だ。僕はロメール監督の大ファンで、現代の質の高い恋愛模様を撮らせたら右に出るものがない程の巨匠だと思うけれど、この78才にして、重厚で、このフランス革命をテーマにしながら、この恋愛とは程遠い描き方での深い恋愛劇。愛が終った後の、友情と貞淑な関係。恋が終った後に友情が続いた経験のある人なら、どんな形であっても何か思うことはあるはずだ。僕は自分の過去を思い出し泣きそうになった。人は地位や金だけでは生きられない。愛がなければ虚しいものなのだ。ロメールの恋愛マジックにはいつもやられてしまう。本当に彼は巧い。巧すぎる。
男性でも生きるのが難しいこの時代に、1人でも、確固として気高く生きた女性の物語としても一級品である。