2002年9月に観た映画 |
<明日、陽はふたたび>
『明日、陽はふたたび』を観て来ました。
母国イタリアでも大ヒットとなった「かぼちゃ大王」の女性監督フランチェスカ・アルキブジの最新作です。
聖フランチェスコで有名なイタリアのアッシジ付近で実際起きた大地震を題材にして(具体的な場所は架空地)、被災者の人間模様を、あくまで人間臭く描いた作品なのだけど、このあくまで人間臭くと言うところがミソなのです。
地震の災害に苦しむ人をテーマにしているが、その苦悩の物語だとか、ましてや復興の物語ではないのだ。傷ついた家族たちの人間の物語にスポットを当てている。あくまで“地震”は引き金になっただけで、極端に言えば地震でなくても良かったというくらいのストーリーである。
そしてもう1つ。ストーリーと申し上げたが、大きな流れのストーリーと言うものはない。街ぐるみのいくつかのエピソードの集合体で構成されている。
小さな街であので恐らくかなりの人同志が顔見知りであって、家族内や、そういう他人との関係は、いろいろある中にも、それなりに表面的には順調そうに見えた。それが地震という予期せぬ事態が起こって、それらの関係が大きく歪み始めるのだが、そのくだりの感じが何とも淡々と描いていて、自然で、逆にリアル感を感じる。ここが素晴らしいと思うのだ。
普通の人々の生活や人生を、カメラは温かく見つめていて、素晴らしく珠玉な作品となつているのは間違いないだろう。人は皆、何か大きな空虚感を誰しもが持っていて、何かをきっかけにそれが爆発するのである。心の地震とでも言うのだろうか・・・・。
同じイタリア映画で、この淡々とした語り口は近年で言えば、僕個人は「息子の部屋」などが思い浮かんだ。もちろん題材も内容もまるで違うのではあるけれど・・・。
<スパイキッズ2>
『スパイキッズ2』を観て来ました。
これは、前作イマイチ、乗り切れなかった(面白くなくはないけどね)前作とは打って変わって、完全、冒険活劇ものに徹している。そう、前作とは良い意味で随分違いますね。まず、キャラクターが面白い!面白すぎる。ピクサーやドリームワークスが作るキャラクターより数倍面白いんじゃないかと思うほど。まあ、遺伝子操作で動物が合体してるだけなんだけどね(笑)。これを作っちゃった博士が、S.ブシェーミ氏とあっちゃあ、子供向け作品でも観に行かねばというのがファンの心得?(笑)。
出来は予想以上に良かったというのが感想かな。大雑把な作りだけど、これにツッコミを入れるのは野暮というものでしょう。<赤毛のアン アンの結婚>
『赤毛のアン・アンの結婚』を観て来ました。
実は僕はこの前2作が大好きだ。映像・物語が見事だからだ。それに、ミーガン・フォローズ、後にも先にも彼女以外のアンはないくらいイメージ通りだし、作品の出来の良さと相俟って、今後、赤毛のアンを再映画化する必要がないというものだったと思っている。「オズの魔法使い」や「サウンド・オブ・ミュージック」がリメイクされないようにね。
さて、今作は、前2作から12年を経て作られてた完結編というべき作品です。実際、原作では5年後なのだが、その当たりは物語上大きな影響を与える事はないのでご安心なのだが、かなり内容的には前2作とは様相が違ってくる。その後の番外編といった感じで、凄まじい大河ドラマ風に仕上がっている。あの、プリンス・エドワード島の自然や風景を背景にした作風を期待すると肩透かしを食うが、これは実に重厚な物語となっている。
アンの作家志望の仕事、婚約者への愛、の前半部から、凄まじいまでの戦場シーンへと移って行く。そう、時は第一次大戦、真っ只中。戦火へ向かう婚約者の医師。連絡が途絶え、はっきりしない生死の情報に1人、ヨーロッパへ向かう・・・。
確かに前2作とは違うアプローチだが、アンのひたむきさは変わらない。ミーガン・フォローズ年は重ねたが更に輝きは増していたと思う。
元は孤児だったアンが母親を目の前で死んだのを見て、思わず子供の安否を思い、子供を救うシーンは象徴的なものがあり、思わず涙が出た。
今作もダイジェスト版上映なので、濃密で、詰め込み過ぎと思える程だが、この波瀾の人生を描くには丁度良かったのかも知れない。この部分はじっくり見たかったかもというところは、なくはなかったので、それはいづれ完全版を観てみたいと思う。<サイン>
『サイン』を観て来ました。
この作品は、M・ナイト・シャラマンの3作目だが、前2作とは明らかにアプローチが違う。すべてネタバレになるので、省略するが、これはドラマであるという点だろう。ミステリーは必然という名のドラマで、仕掛けが一度観ただけでは分からない程に散りばめられている。この点は凄いね。もう1つは、完全にヒッチコックを意識(特に“鳥”)した映像、主人公の視点、なども刺激的だ、冒頭の音楽からして、まるでバーナード・ハーマンである。ぼくなどはニヤリ、である。こりゃ、アメリカ人には受けるだろうと考えつつ観ていたら、予期していたとはいえ、意外な進展となった。必然の映画。○○を取り戻す映画。
ただ、映画を観ていて同時にシャラマン監督のあざとさも目についた。計算してはいるし演出もなかなか見事だが、根本的なものがあざといのだ。これは「シックスセンス」から感じてはいる事だが、今作は余りに露骨だ。
それに監督の出演は、登場人物が少ない作品なので余計浮いてるよね。
極端に言えば、テーマはとても良いが、あざとい。これは僕の見方だ。
こっちが勝つ以上、高得点はあげられない。
<ロイヤル・テネンバウムズ>
『ロイヤル・テネンバウムズ』観て来ました。
何かと前評判の高い作品でしたが、僕はまあまあと言った感じでした。
この作品は、風変わりなファミリーコメディだが、辛口というか、ブラックでシニカルな要素もあって、その辺はとても好感が持てて良かったです。
それぞれ家族の1人1人の傷や隠し事で、登場人物全員が、おたおたしたり、おどおどしたりしている。話の中心のジーン・ハックマン扮する父親が実は1番おどおどしているのであるが、ところが持ち前の、いい加減で明るさが1人だけ浮いていて、それが映画にインパクトを呼んでいて、とても良いのだ。そして風変わりな一家と関係者は翻弄されていく・・・。
アメリカ作品であるが、アメリカ人から見れば異色の作品で、家族崩壊という「アメリカンビューティ−」以降、アメリカ人にとって重要の1つであるこのテーマなら受けて当然だろうと推測する。特に批評家筋には受けがいいはずだ。その辺は差し引いて考えたい。
但し、作品としては間違いなく成功しているし、良く練られている。
それはストーリーより人物設定に重点を置いたからであろう。
1つ例に取れば、グイネス・パルトロウの仏頂面だ。映画通して、そのままなのだ。笑顔が1度もない。これが例えば良い意味で緊張感や、この家族のよそよそしさを表現していると思うし。役作りも素晴らしいのだろうが、監督の人物に焦点を置いた演出に尽きるだろう。
<ズーランダー>
『ズーランダー』観て来ました。
いやあ、面白い!こりゃ、おバカ映画の秀作がまた1つ誕生だ、というような、才気溢れるベン・ステイラーの製作・監督・脚本・主演作だ。
キャラクターの作りも見事だが、豪華カメオ出演者たちも見事だ。デビット・ボウイなんぞ自ら主演買って出たと言うし、ジョン・ボイト(カメオではないが)なんて、ボケちゃっていいのかなあ、という成り切りぶり。というと、まるで「オースティン・パワーズ」のようだが、おタク度の高い笑いのお「オースティン〜」に対して、こちらは陽気で陰気さが微塵もないおバカぶりだ。才人故に、ところどころで、バカバカしいながらも考えられた粋な笑いもある。だが基本はおバカ。ガソリンスタンドでバカをしたモデル仲間の3人組のオチには笑った。僕の生涯の1本「2001年宇宙の旅」のパロディは最高。80年代のヒット曲満載で、僕など大満足。これで、あと全米でもスマッシュヒットとなったダナ・カービー主演のおバカコメディも立て続けに観られれば最高だ。早く公開してくれいぃぃ。。
さあ、皆もマグナムの顔キメポーズをしよう!!<まぼろし>
今や、フランスの名匠と言える、フランソワ・オゾン監督の「焼け石に水」に次ぐ最新作。
これは、ある熟年に達した女性が、突如として愛する人を失った時の、感情、状態、
いろんななものを見事に描いている。目の前で死んだり、手紙があったりではなく、
突然、何も告げられず、空気の様に気が付けばいないという、その事による空虚感。信じがたい事実と、突然1人になった孤独というものの2つが、彼女を取り巻く。その恐ろしいテーマが秀逸だ。
愛する人の死を認められない時、こうなるのだろうか?現実逃避し、まぼろしに浸り、愛する人がまだ自分の側にいると思い、それが安住の地というか、やすらぎの逃げ場になっている。人は愛する人を失った時、無意識に妙な場所(何か思い出の場所とか)にいたり、似た服の人にハッとしたり、その程度の事は誰でもあるはずだ。それがもっと極度に理性を失っていくと、恐らく、こうなるのだろう。そして、重要なのは、実は元の自分に戻っていくには、それはどうしても必要な過程なのではないだろうかということだろう。もちろん、その過程を踏めなかったリ、そのままか帰って来れなければ本当に精神が病んでしまうのだろうけど・・・。救いは主人公が泣き叫び、彼のまぼろしに駆け寄るシーンだ。ここに、この回復への過程の大きな前進があったように僕には思える。そこには辛く大きな哀しみはどうしても伴ってしまうのだけど・・・、完全に現実を受け入れるという事だろう。「息子の部屋」や「チョコレート」の様に、希望らしきものは見える・・・。但し、彼女には孤独という現実は待ってはいるが・・・。
主人公マリーを演じたシャーロット・ランプリングは良い芝居を見せる。あの「愛の嵐」の時代のイメージからは想像もつかなかったが、惜しげもなく哀れで孤独な50代の女を熱演している。
物語は、ややミステリアス雰囲気を持って進んでいくけれども、その分、現実の残酷さが浮き彫りにされている様で印象深い。なかば現実を受け入れても見えるまぼろし・・・。その希望にすがるのか・・・、その様相が哀しく心を打つ。やはり人はすべてを受け入れないと、先へは進めないのだ。それがかすかにしかない希望だとしても・・・。
評価そのものは、観る人の世代や、状況にも大きく左右されるだろうから、難しいとは思うが、このフランス映画らしい特有の雰囲気と、この海のシーンと相まった浮遊感は素晴らしいと思う。個人的には、一点に絞ったテーマと演出がとても好きなので、なかなかの秀作だと思う。<記憶のはばたき>
『記憶のはばたき』を観て来ました。
何とも不思議感の漂う作品でした。少年時代にお互い好きだった少女の死。そして20年後・・・。切ないお話でなかなか良かったのですが、不満の残る作品でもありました。
惜しいのは、後半での主人公サムの心の変化が、映画の中から伝わって来ていない気がする。だから彼の心が解放されたように見えてこないのだ。過去との共存、過去との
決別、本当の意味でのお別れすら感じ得なかったのである、僕は。おとぎ話のような雰囲気にも感じて良い演出なだけにもったいないです。
そう言いつつ、前半のシーンはとても良い。
反して、神秘的になる後半のシーンとの対比がまた良いのかも知れない。神秘とは無縁の自然そのものだから・・・。
思い出のあの時のシーンはどれもこれも瑞々しくて大好きなシーンです。ある暖かい昼下がりの1日、彼女を自転車に乗せて走った町の風景、二人で交わした“言葉あそび”、少女の愛読書“エリオットの詩集”・・・。そして抱っこして入った川の中の初めてのキス。素敵なシーンだと思う。
少女時代の役の子は良かったですね、瑞々しくて。エキセントリックで不思議な役が得意なヘレナ・ボナム・カーターは確かに巧かったんですが、神秘性はなかったなあ。というか、あの濃いメークが良くない気がします。あれじゃあ・・・。続々、公開作も多いガイ・ピアーズは単調な芝居でした。ジョニー・デップにも感じる能面のような芝居。嫌いな俳優ではないが、もう少し役作りして欲しかったな。
総評は、題材もおとぎ話風物語も切なくて良いけれど詰めの甘い作品といった印象が残るといった感じです。<ディナーラッシュ>
『ディナーラッシュ』観て来ました。
とてもとても素晴らしい映画でした。少なくとも僕にとっては、他の方の誰より評価が高いと思います。というのは、この作品、当然ながら、レストランを舞台にしているのだけれども、僕はお店をやっているので凄く感情移入してしまうのです。それと、もう1つ、限定した空間だけの映画って大好きなんです。主にお店関係が特にですが、それが「ダイハード」のようなアクション映画ですら、それは感じます(そういう人も多いはず)。舞台に近い感覚なのかも知れません。しかし、この作品は、映画的なカメラワークも見事で、両方の良さが、更に引き立っている気がします。
それもそのはず、この14年ぶりに劇場用映画となるボブ・ジラルディ監督は、マイケル・ジャクソンの「ビートイット」を代表とするミュージッククリップを数多く手がけてきた人なのです。
たった一夜の、それも数時間の物語なのに、何て素敵なひとときなのでしょう。僕のように全然グルメじゃない人でも、このお店という空間の
お店側(経営者&従業員)とお客側の人物像が、これでもかというように自然で、実際に体験してるかのような感じで登場してきます。いろいろな人間達や、いろいろな性格の持ち主も。こういうお店での、接し方に、本音の人間性が出たり、逆に無意識のうちに他人に対して演技してたりします。人間てそういうものだと、良く分からせてくれてますね。本人は気が付かないけれど(もちろん僕もそこに居たら)、客観的に見たら、人って本当にいろいろな意味で千差万別ですね。
というと凄く小難しそうですが、コメディタッチだし、とても見やすくて、面白い。かなり笑える作品でもあります。ただ、人物像や設定や映画の感じが渋くて良いですね。とてもアメリカ映画とは思えない出来です。人間観察や各人物像が魅力的だし、笑わせて、少し感動させて、ドキッともさせる。見事な脚本・演出、そして作品です。
その脚本自体も凄い捻りが効いている訳ではないのに素晴らしいのです。これは映画というものが持つ力なんでしょうね。お店というのは、どんな商売でも、多かれ少なかれやくざな商売なんです(良い意味でです)。その辺が実に巧みに描かれているのも魅力です。
特筆は主演のダニー・アイエロです。元々好きな俳優だったのですが、この作品で、僕は完全に彼の凄いファンに変貌しました。それ位、今回の彼の芝居は素晴らしい。今年観た男優の間違いなくベストパフォーマンスの1つです。最高かもしれない・・・・。喜怒哀楽が激しい役柄も多かったアイエロだけど、この静かで、だけど心に意志のある雰囲気、それをさりげに表情で時折見せる様は素晴らしい。優しくて、度胸があり、気配りのある男、だが綺麗事だけで生きて来なかった匂いもプンプンする様が憎いほどの役柄と言うのもいい!こういう男になりたい!!素直にそう感じさせてくれました。久々に映画観て、男に惚れましたね。ネタバレになるので、ここでは書けませんが、彼が、ラスト前に新入りのコックに言うセリフ、カッコ良くて、でも寂しそうで、とても感動しました。
PS. (余談)ダニー・アイエロ
ちなみに、彼はギャング役も多かったのですが、今作は逆に若いギャングに脅されるという設定も
ニクイです。
傑作「ドゥ・ザ・ライト・シング」でピザ屋のマスター、あの「レオン」でも怪しいけど何故か表面上はレストランの主人という、そういうイメージがあるのも面白いですね。<メルシィ!人生>
『メルシィ!人生』を観て来ました。
この作品は、ちょいと小粋で良質なフランスコメディを見せてもらった感じです。実に面白かったですね。
あの一風変わった傑作コメディ「奇人たちの晩餐会」のフランシス・ヴェベール監督の最新作。元々、脚本家である彼のセンスが出ていますね。今作も、脚本&監督です。
凄く、展開や人物なんかもひねって作ってあるのにも関わらず、そつがないというか、1つ1つをツボにはめてきますね。上手い作風です。脚本が良いんでしょうね。だって、内容はかなり無茶苦茶で無理のある設定なんですが、まあいいか、っていう気にさせてくれちゃいますし。それは、遊び心を加えてるように見えて、綿密に作ってるからなんでしょうね。
「奇人たちの晩餐会」のように、一筋縄ではいかない要素もたっぷり堪能できます。少し哀しくて、ちょっぴりオカシくて、ほろ苦さもあって、と、これもフランス映画の良さの1つとニンマリ。ゲイをベースにしてるコメディですが、ゲイだとカミングアウトすることで、話を堂々と面白くしていく展開は見事としか言いようがない。
アイデアがいいですね。未だに差別を受けてしまったりする問題を、偽善的にならずに真実を付いているのだ。僕は唸りましたよ。お見事です!これは、物凄いシリアスなコメディと言い直した方が良いのかも知れない。首になりかけた人間が会社を追われる理由にされたくない為に打った芝居。ゲイにになる芝居なんて出来ないという主人公に、「君は今まで通り変わる必要はない。そうすれば周囲の目が変わる」という隣人の老人のセリフは、人間の真実を射抜いた言葉だと思う。これがまたいい。差別をする人間を皮肉った名言だと思う。
僕が大好きな「八日目」や「橋の上の娘」等のシリアス俳優ダニエル・オートゥィユが、コメディというのも意表つかれていて面白いですが、ジェラール・ドパルデューのボケぶりが強烈に個性出してます。その他にもティエリー・レルミット、ミシェル・ラロック、ミシェル・オーモンなどのフランスを代表するスター達がたくさん出ているのもみどころですね。<13ゴースト>
『13ゴースト』観て来ました。
この作品は予想とは多少違う、ビジュアル型ホラーとでも言いましょうか、そんな感じの作品でした。予告ではもっとベタな感じのホラーかと思っていたのですが、意外や凄く洗練された作品です。
密室ホラーというには、綿密な作りで、かなりSF的な要素も強かったですが、からくり屋敷みたいな古典的な家のセットと今っぽいガラス張りの部屋が妙にミスマッチで、そのガラスがある役割をするという効果と兼ね合わせて、視覚的にもとても斬新さがありました。
ただ、結末というか、ラストの展開がイマイチでしたね。詳しくは書けないんですが、あっけないという印象を持ちました。
ゴーストのカメラ割りのカットも面白かったし、霊とモンスター(じゃないけど)の中間的イメージでしたが、これがガラスという効果が両方に状況で雰囲気変える感じも面白かったですね。<インソムニア>
『インソムニア』観て来ました。
いやあ、素晴らしいですね。予想と違って、単なるサスペンスという意見が多かったので、そういうつもりで見なかったのが良かったのでしょうか、素晴らしい作品でした。
あくまでリメイクなので、オリジナルがある作品という事で、「メメント」のような作品は期待しないほうが良いと思います。あれはあの作品だからの良さがありますし、今作は今作の良さがあるというのが僕の意見です。
1つのミスというより、その人が持ってる人間性が、状況や感情という人間の1番不安定なものを通過した時にどうなるかという、見事な心理劇だったと思いました。愚かなアル・パチーノの変化。敏腕刑事として、アラスカの極地に降り立った主人公、ツボにハマって行く主人公、ラストの主人公、それぞれの変化を自分に置き換えてみて、この作品を観ると実に身につまされるというか、形は違えど、こういう事はあるだろうなあと実感。
その主人公を見事に演じたアル・パチーノはさすがに素晴らしい。いつものオーバーアクトは一切なく(なくても上手い人なんですが)、疲れて、擦り切れて行く芝居は圧巻ですね。静かだけどベストパフォーマンスと書かれているのは、言い過ぎではないですね。
やはり凄い俳優だなあ。
何かと評判のよろしくないロビン・ウィリアムスですが、僕は良かったと思う。出番が意外と少ないので、印象度も薄いのだろうし、悪役は似合わないという評価は、ある意味正しいとは思うが、ある意味間違いであるとも思う。サイコ犯でもないし、この犯人像は難しい役柄ですよ。能面のような表情で悪事をする普通の男。僕は巧く演じたと思う。持ち味が出なかったのは、ヒラリー・スワンクの方ですね。他の女優さんでも良かった役ではありましたね。ここはちょっと残念。だけど、今までにない役なので興味深くはあったですね。
淡々としたサスペンスを、だからこそ心理的に描く事によりテーマが見えてくる、それを巧い俳優たちが演じる。それに尽きると思いました。<歌え!フィッシャーマン>
『歌え!フィッシャーマン』を観て来ました。
この作品は、日本では公開が数年に1本くらいしかないというノルウェー映画です。運良く昨年も「はじまりはオペラ」という傑作が公開されたので、2年連続なんて初めてなのではないでしょうか?
しかも今作はドキュメンタリーなんです。
ドキュ作品は、僕自身、やや苦手なところもあるのですが、作品が良ければ、大いにハマる事もあります。
この作品は、まず主に年配者たちで構成される合唱団の歌声が圧倒的です。これが北欧(ノルウェーでも最北端の地域が舞台)の寒い風景と相俟って、声や人間の持つ生々しいパワーが伝わって来るかのようです。
これは人間賛歌でしょうね。映画を観ていて1番強く感じたのはこれですね。自分の感性でマイペースで生きる、この熟年たちの持続するものこそが芸術と言えるような場面では、爽やかな感動すらありました。
退屈を呼ぶ場面も確かにあるけれど、決して悪くないドキュメンタリーでした。<ドニー・ダーコ>
予想以上に難解で考えさせられる作品でした。1回観ても結論は出なかったけど、ある種「メメント」以上の思考を要する作品かもしれない。
あらゆる登場人物が絡む。その彼らだ誰で、何が起こるのか?その関係は?謎が謎のまま物語は進む。世界の終りの日に主人公の少年の身に何が起きるのかというこれも謎で観客を映画に引きつけ続ける。この辺は絶妙なのだろう・・・。ラストは足元をすくわれたような感覚になるのだろうか?僕自身、分からない点がいくつもあるので、これ以上コメントする事が出来ない・・・。
この作品は良く考えると、SF、サイコサスペンス、青春ドラマ、犯罪映画、ホラー、などの要素がふんだんにあることに気が付いた。この辺も妙味だろう。ただ、分かりにくいという点を除いても、暗くて展開が結構ダルイという感じは否めないですね。
評価は難しいが、凄い作品ではあると思う。タイムパラドックスものの新時代の作品かもしれない。もう1度観なくては・・・。<チャドルと生きる>
素晴らしい作品でした。
2001年のヴェネチア映画祭の金獅子賞受賞作ですが、この作品はイランの女性の現実・
実情を描いた作品で、今だ政治的な理由で国内での上映が出来ない状態な作品でもあるのです。
同伴者がなく女1人でタクシーに乗っただけで娼婦にされ、逮捕されてしまう程の女性の扱い・・・。この女性たちの1人1人を上手く繋ぎ合せてリレー形式で、それぞれを女性を見せていきます。主人公たちは、警察から仮出所したばかりの女性たちがメインです。
女の子が生まれる−成長−妊娠−子を捨て−娼婦−・・・数々の女性ならではの苦難を淡々と現実的に描く様は見事で、ドラマとしても見応えがありました。まず、冒頭のシーンから凄いです。ここから、イランの女性の置かれている立場、一生が始まるという意味において重要かつ、実に考えられた演出シーンだと思う。これでもう唸りましたもの。
この作品を作ったジャファル・パナヒ監督に乾杯したい。<ブレッド&ローズ>
『ブレッド&ローズ』を観て来ました。
今やイギリス映画界を代表する巨匠ともいえるケン・ローチの「マイネーム・イズ・ジョー」以来の新作となる今作は、アメリカで初めて撮った作品となった。しかしながら、この人にはアメリカンナイズのかけらもないところが素晴らしい。あくまでケン・ローチはケン・ローチであると言う事だ。
ただテーマははっきりしていて、とても見やすい。しかも重厚に、かつ繊細に作り上げる術は見事で、もしかしたら彼の最高傑作かも知れない。素晴らしい作品でした。
ローチの作品のどれにも共通する部分で素晴らしいところなのだが、労働者階級の人間達の日常や苦しみを描いていても決して説教臭くならない。ここがまず良い。今作はアメリカへのメキシコ女性の不法入国問題や、人種問題も絡めた、労働者たちの苦難や日常、闘いを、自然に人間臭く、ややコミカルさを交えながら描いている。いつものローチ作品と違うは、ややドラマティックな作風だという事だろうか。
ただ、ドラマティックと言っても、感心すべきは安易ににステレオタイプの感動に持っていかない点だろう。
素人俳優を配した物語の主たる清掃員たち。実に上手い。主人公マヤの成長して行く姿もしっかり納得できるし、何より僕はマヤの姉ローサがマヤに全身で伝える告白に胸をえぐられた。久々だ、こんなに映画で胸をえぐられたのは・・・。
この作品には、人種や入国といった問題に賛同したベニチオ・デル・トロやティム・ロスなどがカメオ出演しているのも見どころ。
実に素晴らしい作品だ。僕の中でケン・ローチは完全に巨匠になった・・・。<バイオハザード>
『バイオハザード』観て来ました。
もう僕はゲームを余りやらない人なんで、元のイメージや先入観が何もなくて、純粋に映画として観てしまいましたが、密室の恐怖を折り込んだ、この手のアクションSFホラーとしては、かなり上出来な方ではないかと思いました。もちろん、単純な話ではあるけれど、スタイリッシュな映像と室内物の恐怖が上手く噛み合っていました。展開もなかなか面白かったですね。ミラ・ジョボヴィッチはクールでカッコイイ。見た目な感じがクールに見える人だから、余計いいですね彼女。それから、特筆なのが「ガールファイト」でも存在感があったミシェル・ロドリゲスですね。男勝りさと、それだけでない内面の強さを上手く見せていて、存在感がミラ以上でした。
しかし壮絶なシーンもあり、かなりホラー度高かったですね。
ただ僕は怪物やゾンビより、ハイテクに襲われる前半の方が個人的には好きですね。