2002年2月に観た映画


                     ピアニスト   プリティ・プリンセス   オーシャンズ11   ABCアフリカ  
                     アモーレス・ぺロス   エネミーライン   ジーパーズ・クリ−パーズ
                     ミルクのお値段   WASABI   マルホランド・ドライブ  落穂拾い  
                     ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ                  


                          <ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ>  

                 素直に感動した。もちろん感動作という類の作品ではないが、描き方や主人公
                 に感情移入出来たからだ。使われてる曲の質がこれまた高いし、手抜きどころ
                 か、しっかり練られて作られているのにも好感が持てる。前半の途中まで観てて、
                 この映画は、ある種ミュージカルなんだろうと気がついた。予備知識は持って
                 観なかったのだが、後でチェックしたら、元は舞台のミュージカルだった。
                 ドラッグクイーンとロックと、過激さと哀愁が見事に組み合わさった近年、この手
                 の映画では希にみる傑作だと思う。終った後、凄く心地良くて、純粋な映画を
                 観た気がしました・・・・。

                                <落穂拾い>                   

                 同じドキュメンタリーでも、こちらはヌーベルヴァーグ紅一点だったアニエス・バル
                 ダ監督作。ミレーの絵画からインスピレーションされた旅の構成は良い視点だと
                 思う。人間と物を繋ぐ基本的な姿勢であり、行為である、かがむ姿。それが、
                 企画に合わないといって捨てられた穀物だったり、ゴミ置き場だったり、果ては、
                 それが思想だったり、世界の循環までも垣間見せてくれる手腕はお見事だ。

                              <マルホランド・ドライブ>            

             これは、デビット・リンチが『ストレイトストーリー』から完全に元に戻ったという
             だけでなく、進化しているではないか。彼の作品は、僕自身、はっきり好きな
             ものと嫌いなものに分かれてしまう。観客に答えを委ねすぎてしまう作品には
             イマイチ反応できないと言ったところか?『ブルーベルベット』は映画史に残る
             傑作だが、カンヌグランプリの『ワイルドアットハート』は駄作みたいな・・・。

             映画作りの定石として、謎の提示→謎の解決→を繰り返していくパターンがあ
             る。ところがこの映画は、そのパターンの謎ばかりを次々に観客の前に突きつ
             け、それが飽和状態に達したところで一気に根本から突き崩すという凄さを見せ
             つけた。『ロスト・ハイウェイ』では最後まで物語を謎で埋め尽くした感じだったが、
             今作は、映画の最後の30分でそれまでに提示した謎をすべて無効にしてしまう
             という豪腕ぶりだ。更にそこにレズビアン、嫉妬、陰謀が見隠れし、見応え十分
             となっている。この人お得意の、異常人物、その大胆なストーリー展開。今回も
             突然、予測不可能な流れで場面が転換したり、人が急にスウィッチしたり、悪夢
             的な展開をする。しかし、あのカウボーイが出てくる場面は、ゾッとしたよ〜。

             マルホランド・ドライブ・・・そこは美しくも怪しいワンダーミステリーへの入口だっ
             た。それは1度知ると誰でも味わいたくなるものなのか・・・。これは、リンチ好き
             嫌いの僕は、吉と出ました。傑作でしょう。もう1回ビデオで観るぞ。

                             <WASABI>  

                               <ミルクのお値段>              

             また1つ、上質の素晴らしい映画と出会った。それは『ミルクのお値段』。
             このニュージーランド産の寓話ともいえる、男と女のお伽話なのですが、実に
             不思議な色合いと展開を見せる。あの『アメリ』も彷彿させるところもあるが、こ
             ちらの方が、もっと不可思議な世界だ。登場人物も少ないながら、奇妙なのに
             普通だったり・・・。正直『アメリ』より楽しめたし、出来もいいと思う。
             それに加え、世界一と言われるニュージーランドの牧場の美しい風景、そして
             美しい映像、そして特筆なのは音楽だ。おおよそ映画のスタイルとグリーンを
             基調とした映像とはかけ離れたクラシカルな音楽がミスマッチかと・・・いや、実
             にマッチしているのである。この監督はただ者ではないと直感した。
             年に1本、いや、普通入ってこないニュージランド映画がわざわざ公開するのだ
             から、と思いきや、やはりそれだけの内容だからこそ、日本公開もあるのでしょ
             うね。いや、映画に国境はないし、数の多い少ないというの差だけで、どこの国
             にも良い映画は存在するいう事が良く分かる良い例だと思いました。
             製作者のフィオナ・コップランドは言います。
             「この映画は、素晴らしい描写と叙情的な音楽で満ちた昔の抒情詩風の超ロマ
             ンティック・ラブストーリーです。しかし、いかように説明しても、この映画は、あな
             たが思いもよらない映画でしょう」
             製作者が言う言葉とはいえ、的を得た言葉であるので掲載してみました。 

             恐らく大都市のみの公開かと予想されますが、もしそうなら残念でなりません。
             『アメリ』に大行列。この映画は埋もれていくかも・・・。1映画ファンとしたら、この
             辺が辛いところですね。でも逆に言えば映画ファンだけの密かな?楽しみでも
             ある訳ですが・・・(^o^)。

                             <ジーパーズ・クリ−パーズ>   

                                <エネミーライン>  

                               <アモーレス・ぺロス>  

                 いや、まったく凄い映画と監督が現れたものだ。これが映画を観ての第1印象だ。
                 3つの異なるストーリが存在し、ある事件を元に微妙に絡むのだが、そうすると
                 タランティーノの『パルプフィクション』を思い出すと思うが、あとはまるで違う。
                 スタイリッシュでクールな描き方なのに深い。最後まで全く読めない秀悦な展開
                 (脚本)に、目が離せない不思議なストーリー。それでいて、すさんだ人間模様を
                 描く目が凄い。何気ない描写が凄くリアルだし、キーワードは犬だが、その使い
                 方がまた凄い。劇場で是非、ご覧になって欲しいですね。
                 映画を観終わった後に良く考えれば、矛盾点や無理のある設定も確かにあった。
                 しかし、このストーリー世界は観ている間には全く感じさせないパワーみたいなも
                 のが間違いなくあるから、気にしないで済むのであろう。しかし、これがアレハン
                 ドロ・ゴンザレス・イナリツという監督の劇場用映画デビュー作とは恐れ入った。
                 この重厚な語り口はメキシコの巨匠と言っていい位、熟練している感じだ。かつ
                 て世界が小津、溝口、黒澤の日本映画を発見したような感じといったら言い過ぎ
                 だろうか。
                 これを観たら『トラフィック』が飛んでしまったよ。
                 また1つ、良い映画と巡り会えたなあ。。。
                 今年は『バスを待ちながら』といい、ラテン・南米の熱風が凄いようですね。  
          

                               <ABCアフリカ>    

                 これは、あの傑作中の傑作『桜桃の味』のアッバス・キアロスタミ監督のドキュメン
                 タリー作。いや、こりゃ痛い映画だわ。エイズと、それに伴う孤児。この現状って
                 多少予備知識あったとしても映像で叩きつけられると凄いものがある。ここでは、
                 そういう救済活動と言うより子供達に視線が向けられてる気がする映画だと思い
                 ました。
                 確かに映画としては退屈な部分は多い。しかし時折、ドキッとする映像シーンや
                 台詞に、凄い説得力がある。暗闇だけをシーンを延々と見せる監督なんてこの人
                 位じゃないかな。。。

                              <オーシャンズ11>  

             おお、これは意外や面白かった。リメイクものでこれだけ成功してる例はそうは
             ないんじゃないかな。俳優人も豪華だし、それだけで楽しめるものがある。『ミッ
             ションインポッシブル2』などより、ずっとスパイ大作戦してると思いましたね。ただ、
             上手く展開しすぎて緊張感にかけるのと、これまでのソダーバーグ演出から見る
             と、ちょっと大人しい演出かも。まあ、これは致し方ないか。古い話で恐縮ですが、
             この映画でのジョージ・クルーニーとブラッド・ピットの関係って、『荒野の七人』の
             ユル・ブリンナーとスティーブ・マックィーンの関係を思わせるものがありますね。
             僕はそんな風に感じましたよ(例えが古いかな?)。
             個人的には大変、楽しめました。しかし、クルーニーは渋いですね。

                             <プリティ・プリンセス>                               

                 王道を絵に書いたような作品だけど、結構楽しめます。もっと笑えるかなとも思っ
                 たけど、そうでもなかったですね。アン・ハサウェイは王道の美少女。個人的には
                 余り魅力を感じなかったけど、この映画での、彼女のメイク方や、顔立ちを見ると、
                 ここ20年位のアメリカの美女の定義というのは、ブルック・シールズのままなんだ
                 なあって、余計な事を考えてしまった。
                 この映画は何といっても、ジュリー・アンドリュースに尽きるでしょう。往年の大スター
                 の久々の作品で、自ら若い頃舞台でやったマイフェアレディ(映画ではオードリー・
                 ヘップバーン)型のシンデレラストーリー。悩む主人公は現代的な感じがしますね。
                 難しい事はこの際いいでしょう、この手の映画は楽しむ事が1番ですね。

                               <ピアニスト>  

             ミヒャエル・ハネケの『ピアニスト』を観ました。かなり衝撃を覚えた。精神的に来る
             作品だった・・・。抑圧されたものって、必ずいつか歪みが来る。その事を、寓話的
             に、誇張して、ややブラックなジョークを混ぜた形で描いている。個人的には男女
             の愛と性の2つの微妙な関係についても考えさせられた。   
             主人公を演じたイザベル・ユペールは凄い女優だ。この複雑で、厳格さと、無意識
             に行う奇行。この奇行は彼女が全人生で背負ってきたものだ。それを、表現する
             には並大抵のことではない。正に関係を持つシーンでの、表情1つですべてを表現
             した彼女の演技力は驚くべきと、思う。1月の時点で恐縮だが、今年の主演女優賞
             はもう決まり!、といっても過言ではないと、実感した。    
             ラストの後味の悪さは監督の真骨頂さで言えば天下一品といえば良いのだろうか? 
             よって、この映画は嫌悪感をもって鑑賞する必要があるだろう。ハネケ作品は“ファ
             ニーゲーム”しか観てないが、これで全部観たくなった。
             かつてスタンリー・キューブリックは、男たちの本能や欲望を提示し、そして女の前
             にそのもろさを露呈するかを描いていたが、ミヒャエル・ハネケのこの映画では、
             逆に、その女性側の側面から描いている様にも見えた。