2002年11月に観た映画


                     戦場のピアニスト(東京国際映画祭)2003年ランキング分
                     プロフェシー  至福のとき  マドモワゼル  ストーリーテリング  サラーム・シネマ
                     酔っぱらった馬の時間  マーサの幸せレシピ  ハリーポッターと秘密の部屋
                     ゴスフォードパーク    


 

                 <ゴスフォードパーク>

『ゴスフォードパーク』を観て来ました。
これは面白かった。ロバート・アルトマンは個人的には当たりハズレがある監督で、鋭い部分と妙に時代遅れの感性の持ち主だな、というのが混在した監督です。今作は当たりでしたね。
群像劇としては、前半は完璧と言って良いのではないでしょうか。
うっとりするくらい、人物像が魅力的だし、絡み具合、引き具合、絶妙です。マギー・スミスは見せ場は少ないながらも凄い存在感。さすがです。意外と良かったのが、クリスティン・スコット・トーマス。意外な貫禄が見れて上手いなあと脱帽。皆上手いのだけど、特にマイケル・ガンボン、ヘレン・ミレン、アラン・ベイツ、デレク・ジャコビ、ジェームズ・ウィルビー、エミリー・ワトソンいいですね。

主賓の主人。その妻。来客人に付き人。執事に奉公人、召使い。どれにも均等に満遍なくスポットを当てた演出はお見事です。位は天と地でも同じ人間。その人間臭さに焦点があって実に見ごたえがある。
地位があっても利害が絡むだけど尊敬の「そ」の字もない貴族たちだが、尊重心だけは持っている。しかし、何かが起こった時、その尊重も消え、わだかまりも憎しみも愛情も一気に噴出すのだ。ここも上手い!

何もしない現状維持を誇りとしてきた貴族。過去を持ちつつ懸命に生きる召使い達。実は、位の違いがここまで人間性を違えているのではなく、その生きてきてしまった環境や、人間そのものなんだという事が手に取るように分からしめてくれる。
貴族と成り上がりものの違い、これも面白い。例えば、成りあがり者の映画スターのピアノの弾き語りに、見向きもしない伯爵夫人。しかし、一方で遠くから、懸命に耳を澄ます召使いたち。この3者の描写がまた面白いのだ。マギー婆さん、あんたは最高だ!


ただ難を言うと、後半から殺人の謎解きっぽくなるのは、ちょっと個人的にはマイナスでした。普通に見たらとても面白いのでしょうが、僕はうっとりするような前半の人物の絡みが良かっただけに、流れを変えられて残念でした。でもまあ、終盤は立ち直ったので良かったですが・・・。
で、その謎解き部分、ワザとかどうか、何故かアガサ・クリスティの貴族群像ミステリーの世界に一瞬なっちゃいます。ジョークなら僕は100点つけますが、マジなら0点です、この場面。だって出てくる刑事が、刑事なのにポワロ探偵みたいでした(笑)。
同じアメリカ人の監督でも、ヨーロッパの貴族を描く事に拘り続けるジェームス・アイボリーはひたすら、興味とあこがれと愛情を感じるのに対し、アルトマンはあくまで皮肉的だ。この違いもまた面白いのだ。

PS. この映画の設定は1932年。ちなみに、初めて本格的な群像劇と言われた映画「グランドホテル」は1932年に製作された作品です。


         

              <ハリーポッターと秘密の部屋>

『ハリーポッターと秘密の部屋』を観て来ました。
人からの批難も覚悟?で、1作目を駄作と公言し、面白くないと言い切った僕の第2弾鑑賞でした。
今作は、「賢者の石」に比べて面白くなってましたね。これは原作の良さなのでしょうか?ここまで当たるのは相変わらず理解できないものの、非常に冒険・ファンタジー・対決・学校そのもの、が良く描けていたし、見せ場も多く、レトロ感たっぷりなCG(何か特撮と呼びたい!)も良かったですね。これで初めて映画と言えると思う。1作目は単なる学校紹介で、話も何もないまま2時間数十分見せるのは詐欺だと思いましたから。
スピルバーグが自ら監督しても良いと言った3作目の出来が凄く良さそうなので、この感じだと次作は期待できそうだと思いました。

                <マーサの幸せレシピ>

『マーサの幸せレシピ』を観て来ました。
これが、僕の持ってるドイツ映画のイメージとは一線を画す、ストレートでヒューマンで、ややフランス映画タッチも感じさせる作品でした。
いや、ストレートなのはドイツ映画の本質でしょうか。。。
レストランを主とした、料理が主役な・・という作品ではなく、姉の死とその子を引き取ることとなった主人公の、人間成長物語というのがテーマです。主人公を初めとする人間にスポットを当てたこの作品を面白く観ました。
だから、僕は料理に付いてコメントをするつもりはなく、と言いたいところなのですが、この作品には、その料理と人間性が大きく関わってくるのです。店のオーナーが「あなたは街で2番目に腕のいいシェフ」と言われてしまう。その意味とは・・・。要所、要所の料理(食事と言った方がいい)も、ポイントになってきます。
主人公マーサは料理は天才的なシェフですが、反比例するかのように人間関係には不器用。この不器用さを示すエピソードが僕には面白かった。これでグイグイと物語に引き込まれたので上手い演出だなあと思いましたね。それに脇役の配し方が絶妙ですね。ストレートでTVドラマ風なんですが、細かい演出が映画的な雰囲気を充分出しています。
ラストの、その後のマーサと回復具合を見れる部分と、小粋なオチを同時に見せるくだりは、ニクイです。

                <酔っぱらった馬の時間>

最近、映画にも良く登場するようになったとはいえ、まだまだその実態を知られていない(僕も知らない)、クルド人の苦難と悲劇をドキュメンタリースタイルで描いている。
イラクとの国境間近の高山に済むイランのクルド人。母を失い、父までも地雷で亡くした5人の幼い子供たちが主人公だ。そして、襲いかかる貧困、難病、雪・・・。しかも主人公は子供たち。こういうと、これ以上なくらいに、お涙モノになうのは間違いないが、この映画が単にそれだけに留まっていないのは、リアリズムが圧倒的に勝っているからだ。それに、わずかなユーモアも忘れていない。そして、その描き方が実にクールで、感情を押さえた、脚色もメッセージもない、ありのままの演出が素晴らしい。ありがちな感動の押し付けは微塵もないのだ。「人生は苦労ばかり・・・子供ですら老いていく」と密輸トラックの中で歌う子供に何とも言えない苦味を感じてしまった。
涙は出なくても泣ける映画とは、正にこの作品の事だと思う。
これまた、素晴らしい作品だと思う。  
             

                 <サラーム・シネマ>

 次回作を製作するためのオーディション風景を撮影した、ドキュメンタリータッチの作品だが、監督の強い質問が演出効果を数倍にもし、普通の映画を観ているような感覚でしたが、、それは素晴らしい出来ですね。観始めた直後、すぐにリチャード・アッテンボローの「コーラスライン」を思い出してしまいましたが(影響はあるのだろうなあ)、もっと込み入った作り方が印象的でした。
まず、オーディションの訪れる人々が多種多様で圧巻だ。中には俳優になる為に映画に出る訳ではないという奴までいる。イランでは映画のステータスが異常に高く、出た人に身分証明書まで発行しちゃうくらいの映画に対してステータスを持つ国だ。よって、集まってくる群衆の数も凄いが、中身も凄いこれだけでまず圧巻。動機が不順な奴ほど面白かったりする。それを上手く利用する監督も凄いが、良く考えれば、あざとい感じもする(笑)。しかし、それ以上に面白い効果をあげているのだから、文句は言えまい。
一言が身に染みた。「映画は一般大衆の為にある」
凄い作品だと思う。  

                 <ストーリーテリング>

『ストーリーテリング』を観て来ました。
これは、あの異色傑作『ハピネス』のトッド・ソロンズの最新作。今度はヘヴィに傑作です!これは面白かった。
この人の映画は、とにかくダメ人間とダメ人間の絡み合いが、情けなくて、痛くて、下世話にも笑えて、面白いのだが、今作はまっとうに変なのである。変化球で変なのでなく、直球で変なのだかから、引き込まれますね。
身体障害、人種、階級、それに性の嗜好までを、この差別はないと歌い上げる自由国家アメリカの、実はそうでない偽善さをチクチク付いて描いている。このチクチク感が、切なさをを伴っているので、非常にクオリティが高い作品だといえる。主人公達の痛みも愚かさもすべて。
しかしまともな奴は出てこないな、この作品も。こういう映画を、堂々とアメリカ国内で作って世に出すということが、まずもって素晴らしいと思う。大丈夫なんだろうか?
「アメリカンビューティ」など、彼の作品を観れば、何てことない作品だと言えるでしょうね。
冒頭にかかる音楽が素晴らしく印象に残った事も付け加えたい。
トッド・ソロンズ、凄い監督だ。
                

                   <セレンディピティ>

『セレンディピティ』を観て来ました。
運命を信じた女性と、翻弄された男性。それが共に、あることから、本当に運命が見えたところから、2人がその運命に迷いながらも進んでいく話・・・・まあ、こういうと何てことないお話なのですが、事実、流れ的にはTVドラマの域は出ていません。だけど、マンハッタンの街並みや、シチュエーション、ニューヨークの都会を生きる人々、さりげないシーンが印象に残る作品でした。
ニューヨークの人気スポットはお洒落でなかなか良いし、ベタな甘いストーリーは雰囲気はいいと思う。僕はいい恋はたくさんしてきたので、こういうベタな感覚でも素直に見れますね。斜めには見ない。ただ、分かりきってる結末と内容をどう見るか、ですね。その一点でしょう。この映画の好き嫌いは。
主演のジョン・キューザックとケイト・ベッキンセールは魅力は出していたと思う。この手の役はハマリ役と言っていいキューザックは待ち味を出し切ってます。彼で成立してる作品でしょうね。ちょっと生真面目でイギリス人らしさが妙に良かったベッキンセールも魅力がありました。いいコンビでしたね。(絡むシーンは異常に少ないのですが・・・)

                    <マドモワゼル>

『マドモワゼル』を観て来ました。
本当にわずかな時間の、大人の恋物語としてはかなり堪能できる作品でした。フランス映画の粋な感じとセンチメンタルな部分が上手く交差して実に、さらっとした大人の恋が、深いものとして画面から伝わってくる。
灯台の模型の忘れものが、それまで自分の枠の世界だけで生きてきた2人を結びつけることになる。だが、それには余りに一瞬過ぎる時間であった、そういう大人の我慢、そして判断には切なくなったなあ。
実に控えめに演じる主演のサンドリーヌ・ボネール、ジャック・ガンブランの2人がいい。この2人しかいないと思わせる魅力振りだ。久しぶりに恋をしたくなる恋愛映画を観た。
2人の立場を暗示するのは、最初の薬局での出会いである。
お互いの買っているものが、その楽しい会話が、あくまで後で切ないセリフとして響いてくる。
恋愛映画は切実感が画面からかもし出される映画ほど良い。この映画にはそれがある。往年の名作「逢いびき」を思わせるような終わりを予感させながら終わって欲しくない大人の切実な匂いがかもし出された乾いたメロドラマだ。あくまで、“乾いた”がいいのである、この作品。
この映画のもう1つの魅力は即興芝居である。大きな2つの芝居には僕自身もワクワクさせられた。映画の中の芝居は即興でも、この演出は実に緻密なのである。良く出来ている。
そして更にもう1つの魅力は音楽である。バイクのシーンにかかるJAZZは絶品である。そして灯台と並ぶ小道具であったピクルス。このコミカルな曲「大好きなピクルス」をジュークボックスで流すシーンも、名シーンだ。

             
<以下、ネタバレありです。ご注意>

あのままカフェに戻っておしゃべりしたら、彼女をまた電車に乗り遅れさせることになってしまう。どんどん離れられなくなってしまう。そう思って、男の人は自分の気持ちを押し殺して、女の人を予定の電車で家に帰らせるために、あえて身を引く。それで彼女にもその思いが伝わって、付いて行きたい気持ちを抑えて、ちゃんと帰る道を選んだのかもしれない。
灯台の模型の忘れものが、2人を結び付けたから、記念にあれを置いていったのだろう。思い出の品だ。良く考えたら、灯台というのが面白かった。小道具としてはかなりユニークだし、いい感じでだった。あれがキーポイントの映画でした。素敵な小道具が生きると、切ない度はアップするし、映画としても、画面が引き締まる。

              
<以上、ネタバレありです。ご注意>

「明日の朝の列車に乗り遅れるのは、行き過ぎだろうか?」というセリフは名セリフだと、長い映画の歴史で出尽くした恋愛映画にもまだまだ名セリフはあるものだなと感心したし、良い気分にさせてもらった。
素敵な映画だ。
本年度最高の恋愛映画の1本だと思う。

                    <至福のとき>

「至福のとき」はチャン・イーモウらしい素敵な映画でした。彼は裏切らない映画を作りますね。コミカルな笑いを入れつつ、このさえない中年男の主人公は、もどかしいながら何処までも憎めない、普通の人間を見た思いですね。この役の為に10kg近くも減量したドン・ジエは好演してます。体はげそげそで痛々しさが伝わって来るし(でも愛らしいですね)、でもちゃんと世間を見る目を持っていた後半〜ラストは感動しました。チャオ・ベンシャンの顔を触るシーンは、映画史に残る名シーンなのではないでしょうか。
笑わない少女、それが笑顔を見せるシーンにはいたく感動してしまった。やはり観る側のツボは熟知してる監督だと思いますね。
悲劇的なコメディ、チャン・イーモウらしい、「泣き笑い」作品であったと言えますね。ジーンと心に残る、いい作品でした。

                    <プロフェシー>

プロフェシー」は、謎が解明されないまま、サスペンスと不思議な現象が相俟って、なかなか面白い作品に仕上がっていました。「隣人は静かに笑う」で見せたマーク・ペリントン監督の鬼才ぶりは、それなりに本領発揮されていたと思いました。怪現象、伝えてくるメッセージ等で全貌は段々と明らかにされていくが、目的がわからない以上、非常に不思議にに進んでいく。それは、そういう事かと分かるラストシーンを見てもだ。M・ナイト・シャラマンの「サイン」は神とか信仰とか、伝わって来る大元や意図は何となく分かる。しかしこの作品は、大元が誰で目的が分からない。ここにこの映画の特徴があると思う。実話だからこその、現実性。これは何なのか?不思議な余韻に浸れる映画でもある。でも、途中の演出は少し間延びした感じで、もっとスピーディに演出しても良かったと思う。

                    <戦場のピアニスト>

東京国際映画祭で「戦場のピアニスト」を観て来ました。
とてもとても、ひたすらヘヴィな映画だった。
前情報ほとんどなしで観に行ったせいか、もっと音楽ものが絡む話かと思いきや、実にナチの非道さを、そのままクローズアップして、主人公をひたすら客観的に見つめた、それは痛い作品でした。
そもそもロマン・ポランスキーはユダヤ系ポーランド人で、この主人公一家と同じで、幼少時に戦争体験してる訳ですが、それが、ありのまま画面に現れていたのじゃないかと思いました。それくらいリアル。
彼の、大人になって映画監督になってからの、異常とも思える屈折感や、死や、幻想、などを盛り込んでる作風は、この幼少時の体験が影響下にあるのでしょうね。
故に、それが、珍しく、そのまま映画になっている。彼の集大成なのだろうか?いろいろ考えてしまった。だから、細かい場面は、子供の目で観てきた真実の些細な描写らしきものが凄く、心えぐられるようでした。凄まじい映画を作ったものだな、ポランスキー!!
逆な意味で言うと、今作は、そのストレートな分、ポランスキーにしては王道極まりない作品になったといえるかもしれない。ストーリーというか、ナチそのものが異常だから、他に異常さをかもし出す隙もなっかったのだろう。但し、この主人公のピアニストは余りに悲惨な体験で、段々と精神が病んでいく・・・その様は、いつもの、いやかつてのポランスキーそのものだろう。
途中から、やや映画の方向性が見えなくなると感じたので、そこはマイナス点だと思うのですが、そういう意味では決して完璧ではないけれども、間違いなく傑作だと思う!