逢坂夏の陣 

我が力姫、一枚看板黒岩剛。 

惜しいかな。三階級制覇を逃す。

一本目、試合前日初めて試したハイパーベンチシャツを着てシャツの効きを確かめるかのように慎重に胸におろしたあと、いとも簡単に230キロをさしてしまう。

力姫本部へ嫁さんをもらいに熊本行きの途中ちょいと練習によって仮縫いシャツを着て220を挙げてから初めての230である。

天才なのであろう。。

調整のため小包の往復二回。

遠距離で直の調整ができないため、少しづつの調整しかできない。

一週間前はシャツの伸びの最高状態で練習でさした220があがらないと泣きが電話ではいる。

この男大人物なのかただのアホなのか、試合前に二度しかシャツを着ていない。

その上試合に使う靴は底になにも溝がない靴を使う。

もちろん滑る。 もうなんかい試合で滑っているのかわからない。

二百を遙かに超える重量を支えている足が十センチほどスタートを待つ間に滑る。

見ている方は気が気ではない。本人も気にしているのだが改善する気がない。

一週間前の電話からもう一度詰めます。そして試合の前日に試しましょう。

それでだめなら前日にミシンを掛けて、当日の朝シャツを試しましょう。

そういう約束になった。

220が途中で止まったシャツを七ミリずつ詰めた。

黒岩データーからは、このシャツなら240ならあがるだろう。

去年の大谷さんの記録は237.5。これに絡むためには・・。

黒岩がねらうのはもちろん日本一。

そして日本記録。

しかし。 ねらうなら狙えるだけの準備をしてもらいたいものだが。

これが彼のキャラクターだ。

試合前日。

60キロ級辻選手。67.5私。 そして75キロ級原田選手の試合が終わって。

調整が始まった。

210で下がらない。当然だ。 目標は240なのだから230でやっと下がってもらわなくては意味がない。

ハイパーベンチシャツを知らない見物の中からはきつすぎるのじゃないかとの声も聞かれるが無視。

230を挙げたのは九時近くだった。

 

さて、一本目で230を軽くきめた彼のテンションは絶好調。

私の胃の調子も絶好調。

昨日一本目でシャツを破っている私は、彼のバーが胸につくまでは胃が痛いほどである。

昨日しこたま飲んだ酒は頭の中で転げ回っていたのだが、一瞬おとなしくなってしまった。

そして二本目は日本記録の240.5。

軽く挙げた。しかし、ベンチシャツに精通している私の目には一抹の不安が、やはりこのシャツは240シャツなのだ。

そして彼のねらった重量250まさにいけいけである。

大谷選手は242.5で確実に日本一と日本記録をねらう。

240.5キロを挙げた黒岩のシャツの具合を見て私は勝利が微妙だと感じた。

そして二日酔いがぶり返した。

250の勝負になるならもう一縫いだったな。

やはりシャツは240シャツだったのだ。

 

黒岩さんには悪いがこの勝負、大谷さんか。との予想と私の酒粕状態の脳味噌が判断する。

それとは裏腹に黒岩が勝負にでる。

250キロ。私の予想を裏切ればいいが。

気合いを入れる黒岩。

そのテンションにもしかしたらという気持ちになってくる。

もしかしたら、もしかしたら。

 

 

 

 

250を支えて、バランスをとっている間にも彼の足が滑る。

スタートの合図がもらえない。

靴さえ滑らなければ、惜しい勝利を逃した。

ブリッジのバランスが崩れて微妙なバーの軌跡が乱れて、パワーポイントをはずした。

バーは一度あがりかけたが再び彼の胸に吸い込まれた。

 

 

この主審のあわてようからも、彼の体に不似合いな重量250というのがよくわかる。

あと一縫いしておれば、惜しまれる試技である。

ねえ、黒岩さん靴変えようよ。 模様のある靴底がついた靴に。

そして、せめてベンチシャツは三週間ほど前に試合重量を試してくれ。

 

辻さんがんばったね。

初出場で7位だ。

6位の中山さんに体重差で入賞を逃したが練習でのマックス160を挙げたのは立派。

一本目の150軽い軽い。軽すぎて止まらない。

胸の上で止まらない。

二本目はなにを考えたか。152.5のコールだ。

この2.5キロには何か意味があるのだろう。

さて、ともあれ152.5は確実にとる。

そして、160キロ軽い。

 

上等の、試技でした。

 

ロングストロークの原田さん。

確実に三本とっての10位でした。

ノーブリッジで、(本人は少しは進歩したと言っているが、さすがのパワーハウスも彼のブリッジには歯が立たないか)

ロングストローク、デッドの原田が全日本ベンチに挑んだ記念すべき試合でした。

上腕はすでに水平なのにバーはまだまだ普通の人のスタートポジション。

これで破けないシャツはやはり力姫シャツである。

それでも破く私はなんなのだろう。

それにしてもすごい、私には胸までおろせない。

たぶん彼に合うシャツは48号ではないだろうか。

それにしても彼の闘魂には脱帽だ。

野崎のシャツが破けた、ストロークが長い俺のベンチ。

破けないはずがない。

パワーハウスのみんなも心配していた。

大丈夫だろうか。

しかし、代表が縫ったシャツだ。

 

今更、逃げるわけにもいかないだろう。

失敗したら野崎のせいだ。

だいたい何で俺がベンチ大会などに、俺はデッドの原田だ。

そんな不安のオーラでピントも曇った。

 

極めつけはなんと言っても私のベンチ。

慎重に。似合わない慎重にと言う言葉、本来なら190スタートで三たてのケース。

ところが、私も学習するのです。

もし、とっておきのハイパーベンチシャツが破けてスタート190だったらとてもサブシャツではあがらない。

一応、ここまで考えているのです。

で、スタート180、このところ三試合ベンチシャツを破いているのでここは慎重に。

まあ、予想通り、裂けました。鳩尾から首にかけて生地が真ん中から裂けました。

全日本で聞くベンチシャツの破ける音は最高ですね。

いい音でした。

みなさん喜んでいただけました。

その瞬間を見事に写真に撮った方がいます。

原田さんです。

まるで予想したかのようなシャッターチャンスです。

ああまたやっちまった。予想通りだ。

しかし、原田さんも私のベンチシャツが爆発したのを見るのは初めてだと思います。

 

今回のベンチ、みなさんいい記録の続出でした。

大坪さん、伊東さん そして三土手さん。 三土手さん三種、1トンは軽く超えますね。

すごい。重量級のスポーツで世界に通用すると言うか もう凌駕したスポーツです。

 

 

 

 

 

 

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