史料-1

陶窯巡り
大森光彦著より

昭和五年 太陽堂書店発行


     宣伝文          

  本書は抱腹絶倒不知不識の間に  
   陶器鑑賞の要諦を会得せしむ  

 本書は陶匠豚助氏(大森光彦)其弟子
蚊六君を伴ってあまねく陶業地を巡歴せ
る旅日記なり。地理に叙景に故事に来歴
に其見聞するところ其儘を記述し配する
に現代大家の風格をもってす。加之に到
処蚊六君の失敗談は珍奇を極め読者をし
て抱腹絶倒をおく能はざらしめ其叙事の
軽快叙情の妙は、初めて陶器の鑑賞に志
す者をして不知不識の間に其要諦を会得
せしむ本書は実に陶祖藤四郎より帝展ま
での陶器を総覧するものにして著者の、
「硬い陶器を軟かく見たる旅日記」なり
 
 この本は20年程前に吉祥寺の
古書店で買いました。内容は豚
助と蚊六の二人が美濃尾張をは
じめとする多くの窯業地を、弥
次喜多よろしく視察して廻る、
漫遊記です。両名の会話、訪ね
る土地どちでの地元の人々との
軽妙なやりとりは、自ずと当時
の世情風俗を彷彿とさせます。
 また類書にない特色は、当時
東京に住んで活躍していた陶芸
作家を訪問し記録している事で
す。その中には板谷波山氏の田
端の仕事場への訪問記もあり、
氏の日常や人柄が克明に描かれ
ています。他にも祖師谷の富本
憲吉氏、赤塚の沼田一雅氏等々
当時帝展で活躍し東京近辺に住
んでいた陶芸作家のほとんどを
訪ねており、興味が尽きません。

 

   駅前のタクシー



笠間人車軌道

人車軌道に就いては非常に詳しいページがあるので紹介したいのですが、うまくリンクさせられません。 yahooの検索で是非訪ねてください。 http://www.kk-net.com/~tauchi/KASAMA

 昭和四年六月二十七日、今回は蚊六一人で益子、笠間の陶業地  への旅にでます。益子では大塚政四郎の案内でくまなく見学し  その日は下館に泊まります。翌二十八日いよいよ水戸線に乗り  笠間をめざします。                  


  ・・・・前略・・・やがて山が少し開けて北の山の端を自動車が 走るのが目につくと汽車は笠間に着く。               駅の口には沢山の自動車が客を呼んでいる。さすが稲荷の笠間らし い。  ・・・・中略(笠間稲荷の縁起について)・・・       沢山の自動車には其前後に皆賃銭が大きく書かれている。前にある 跛躄車に似たのは軌道自動車とでも云ふのか片道五銭の往復七銭とあ る。これが一番割安だが、どうも車があまりペチャンコなので自負心 の強い蚊六は乗る気になれない。之に反して駅の入口に客待をしてい る一台は車台も高く側面が赤く塗ってあって、跛躄車よりは遙に美美 しい。片道八銭の往復十銭とあって最も割高だが蚊六此処大のブルジ ョア気分を出して之に乗る。乗って見ると車掌も運転手も女だ。三銭 高くとも此方がやっぱりよかったと蚊六頗る可い気持で奥の方の座席 におさまる。さうかうする中此車だけ続々と客が乗り込む。大入満員 だ。アア誰の心理も同じものかナと蚊六は肚の中で笑っている。    道は坦々たる八間道路。運転手はモガだ。他の乗合を乗り切って風 のやうに飛ぶ。十町ばかりを一飛に間もなく稲荷様の前につく。   蚊六は車から降りてキョロキョロ四隣を見廻す。何処かへ休んで徐 に訪問先を定めやうとするのだ。忽ち鳥居前にテーブル式のお休処が 眼に入る。                                   ・・・中略・・・次頁に続く



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