同期生からのメッセージ
2000年7月24日寄稿
川口幸男くん(3−1)からのメッセージ
近況報告ー役人生活25年ー
3年1組 川口 幸男
先日、と言っても随分時間が経ってしまったが、城中HP管理者の長縄(折立)啓子さんからHPへの寄稿の依頼を受け、大変貴重な機会を頂いて光栄である反面、何を書いたらいいのか迷ってしまった。
取りあえずと言っては何だが、7月8日の同期会に出席できなかったこともあり、まず近況報告からはじめたい。また、近況報告に加えて、私は大学を卒業して通産省に入り役人生活を送っているが、同期生で役人の道を選んだ方は少ないと思うので、これまでの25年間の役人生活を通した最近想うことなども思いつくままに記したい。このところ官僚の不祥事などが相次ぎ、役所に対する信頼は大きく揺らいでおり、世の中の風当たりには大変厳しいものがある。こうした問題に対し、役人のひとりとしてどう考えているかなどをこの場を借りて述べてみたい。少々堅苦しく退屈な話となることもご容赦願いたい。◇役人生活25年
昭和42年3月に城中を卒業して早いもので33年の年月が流れた。昭和50年に通産省に入省してからは、25年が過ぎたところである。通産省という職場を選んだ理由は、それほど深く考えて決めたワケではないが、資源エネルギー政策に関心があったことと、先輩の話を聞いて、通産省という役所が非常に活気に満ちて面白そうな職場に見えたからである。現在は、通産省工業技術院の産業科学技術研究開発課というところで、産学官の連携によるいわゆる「ナショナルプロジェクト」を担当している。バイオ、IT(情報技術)、新材料などの技術開発プロジェクトの企画・立案や予算の確保、事業の運営などが主な仕事である。
通産省では長くても2年程度で担当部署を異動するのが通例となっている。私の場合もこれまでに所属した課を数えてみたら3年間の海外勤務(オーストラリア)を含めて14だった。従って平均すればひとつの部署にいたのは2年弱ということになる。これは民間企業では到底考えられない短さだと思うが、その理由のひとつとして、特定の仕事をあまり長く担当すると、関係企業との癒着が生じるおそれがあることが上げられている。(産・官の癒着問題により、今年の4月に国家公務員倫理法ができ、関係企業の人(利害関係者と呼ばれている)とは、一緒に(割り勘も含め)食事をすることも出来なくなった。)また、前向きの理由としては、広い視野にたった政策を立案するために、いろいろな分野における業務を通じて経験を積むことが重要であるという点が上げられている。こうした理由で、ようやく仕事を覚えた頃には全く分野の異なるポストに異動するということを25年間繰り返してきた。実際、広く浅くだがいろいろな分野の仕事に携わることが出来て大変勉強になる職場だと実感している。また、それぞれの部署で相当数の企業や関係機関の方々と知り合うことができ、大きな財産にもなっている。私の場合は、これまでにとくに資源エネルギー関係や技術開発関係、九州通産局、ジェトロ海外事務所(出向)などの業務やポストを経験することが出来た。現在のポストには昨年の7月に着任し、ちょうど1年を過ぎたところだが、課員の既に半数以上は異動により入れ替わり、自分より新しい人たちになっている。
現在のポストでの主な仕事は、来年1月に通産省から経済産業省に変わる機構改革に関することと、通産省の研究開発制度を改革することである。前者の方は、工業技術院が来年1月にはなくなり、新たに産業技術環境局ができることとなっているため、新しい体制に向けての準備をすること(具体的には、現在、私の所属する産業科学技術研究開発課は、エネルギー研究開発課と統合されて研究開発課となる)。後者については、政府の研究開発費をもっと効率的に使えるよう無駄や重複をなくし、研究開発投資の重点化を図るために諸制度の見直しを行うことである。◇趣味はゴルフ
私的な面では、まず家族構成は、妻と大学1年生の娘、そして猫一匹(メス8歳)の3人+1匹で、毎日女性に囲まれた生活を送っている。東京の練馬区東大泉に在住。
趣味はゴルフ。省内コンペのハンディは12だが、実力はもっと下手だと思う。本格的にゴルフを始めたのは、今から11年前、海外勤務でオーストラリア(パース)に駐在したときで、ほとんど毎週のようにやっていた。家の近くには車で10?20分以内にパブリックコースが数カ所あり、18ホールのプレー代は約千円。キャディなしでセルフカートを引いてのプレーであり、日本のゴルフ場のように豪華絢爛なクラブハウスも無い。18ホールを休み無く一気に回るため、時間もかからない。朝早くスタートすれば昼頃には帰宅している。
メンバーシップのゴルフ場では、年会費(ゴルフ場によって違うが10万円くらい)を払えば何回でも無料でプレーができる。ただしメンバーシップは日本の会員権を売買するような制度はなく、簡単にはメンバーになれない。審査委員会で2名以上のメンバーの推薦を受け、審査の結果、文字通りメンバーとして認められた者のみがメンバーとなれる。名門コースになるほど審査が厳しい。従って、我々のようなせいぜい3年位しか滞在しない日本からの駐在員は、専らパブリックコースでゴルフを楽しむこととなる。
日本ではゴルフは最低でも2万円位はかかる贅沢な大人の遊びだが、オーストラリアではそういった感覚は全くない。ゴルフは気軽に誰でも楽しめるスポーツで、パブリックコースでは特別に子供や老人(年金生活者)のための割引料金が設定されている。従って週末はよく家族3人で散歩代わりに近くのコースを回った。日本に帰国してからはさすがに回数が激減し、現在では月1回がせいぜいとなっている。ただゴルフ練習場だけは毎週末欠かさずに行くので家族からは呆れられている。家内もオーストラリアでゴルフを覚えたので、たまに一緒にプレーすることもあるが、これが家内から週末に家庭を顧みずにゴルフに行くのを反対されない秘訣かもしれない。◇官僚への批判
ところで皆さんは役人あるいはお役所に対してどのような印象をお持ちだろうか?「国民の利益より役所の利益(省益)ばかりを優先している」、「日本が経済大国となった今、役所の多くは不要であり、小さな政府を目指すべきだ」、「役所の縦割り行政の弊害は大きい」、「役人は天下りなどによって破格の待遇を保証されている」などといったところが霞ヶ関の官僚機構や役人に対する大方の見方ではないだろうか?大蔵省や厚生省などの相次いだ不祥事などにより、官僚機構に対する悪いイメージが定着し、こうした役人批判が国民の総意となっているのではないだろうか。しかし、霞ヶ関に身を置く人間のひとりとしては、こうした役人の虚像ではなく、もっと役人の実像を知って欲しいという気持ちが強い。
来年1月には行政改革により22省庁が1府12省庁に統合再編されることとなっている。通産省は経済産業省となり、名称が変わるのと局や課の数が減るという比較的マイナーチェンジだが、省庁によっては複数の役所が統合・再編されるなど大きく変わるところもある。ただ、これらの官庁の組織はあくまで「入れもの」であって、再編・統合したからといって次官や局長の数が減るだけで、世の中から見ればそれ自体大きな変革ではない。今最も求められていることは、むしろ入れものの中身である「官僚自身の意識改革」であると思う。◇官の改革
かって日本はキャッチアップ型の行政、すなわち、欧米先進国に追いつき追い越せという政策をとってきた。通産省も日本の産業の競争力を強化するために、産業振興という観点での産業政策を進め、一定の成功を治めた。国益のために奮闘する通産官僚の姿を描いた城山三郎の小説「官僚たちの夏」を読んだ方もいると思うが、あれは高度経済成長時代の1960年代の実話である。しかし最近では我が国の産業は政府がとくに支援しなくても欧米企業に対等あるいはそれ以上の力をつけてきている。そのため、従来型の産業振興的な産業政策は最早不要となってきている。それでは、これからの官僚機構に求められる役割は一体何であろうか?また、我々役人は何を明確な使命として仕事をしていくべきなのだろうか?もちろん社会の治安を守る警察や鉄道・航空等の許認可を行う運輸省などは、誰の目から見てもその役割は明らかである。むしろ経済官庁である通産省が中央官庁の中でも最も役割がはっきりしなくなって来ているのかもしれない。
こうした今後の「官の役割」については、私は次のように考えている。
21世紀の日本の経済社会を展望したときに、少子化や高齢化が同時進行するなかで持続的な発展をいかに遂げていくかが重要な課題であり、そのためには「民」の活動を中核としつつ、「官」による国の将来像の提示(戦略的な目標、グランドデザイン)や必要な環境整備(規制措置・規制緩和や社会システムの整備等)を進めることにより大きく貢献していくこと。そしてそれを達成するために、新しい時代が求める行政を効率的に展開できる「官」の意識改革を行うこと。
最後に天下りの問題については意外と誤解されている面が多いので若干付け加えておきたい。退官後にいくつもの有力ポストに就き、「渡り鳥官僚」などと批判されるようなケースがあることは事実だが、それはごく一握りの官僚に過ぎない。もちろん一部のことだからというのは理由にならず、きちんと改めるべき問題であると思う。また多くの官僚は役所に残りたくても50才前後で外に出されてしまう場合が多く、局長以上になる人間のみがそのまま役所に残るシステムとなっている。こうした人事システム自体を変えていかないといつまでも天下りの問題は解消されない。定年まで役所の中で働けるような人事システムや本当に有用な人材を適材適所で外部登用できる人材登用システムなどが必要であると思う。◇おわりに
とりとめがなく、あまり面白くない内容になってしまったが、2001年1月にスタートする1府12省庁の「新しい霞ヶ関」の誕生に向けて、まず役人自らの意識改革が強く求められていると思うし、私自身もそうした気持ちを持ち続けてこれからの仕事に取り組んでいきたいと思う今日この頃である。
最後に、7月8日の同期会は残念ながら出席できませんでしたが、HPに掲載された同期会の写真を見て、とても懐かしく思うとともに、先生方のお元気そうなお顔も拝見でき嬉しく思いました。今回の同期会を準備し、開催を成功裏なものとされた幹事さん方、本当にご苦労様でした。また、この城中HPが同期生の方々の協力により一層内容が充実し、ネットワークの輪が広がることを期待したいと思います。
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