第10回公演「エルサレム心中」

2002年 3月23、24日 新宿シアター・プー

106KB

  九月十一日、崩壊するビル。砂煙、悲鳴、怒号、瓦礫。
 操縦桿を握ったテロリストの自らの生を賭した行為は、我々の擬制と虚飾を確実に暴いて見せた。「一人の命は地球より重い」。夢と幻想でしかないその言葉。個人など、虫けらにしかすぎない。そう思わざるを得ない、あの光景。
 しかし、確実に両手で足りる数のテロリスト達が、世界と渡り合ったという逆説。虫けらでしかない個人の、暴力を回路としての世界との対峙、拮抗、そして擬制と虚飾の暴露。世界の真の姿。我々は眼前にした。個人の、自らの生を賭した一行為が、世界を確実に変えて見せたことを。
 心中を選ぶ、二人の男女。互いの生を、互いの自らの手で暴力的に奪い合う、いや、求め合う二人の個の、永遠と絶対への志向。暴力という回路を通底器とするならば、彼等の死、二人の心中が見せる地平と眺望の内にも、あの日、そして世界が仄見えてくるのではないか。ごくありふれた、心中する男女の構図の内にでさえ。
 我々は生きる。生きて在る。自らの生を賭す人々から、だらしなく見られようとも。いかさまの神話、誘惑を断ち切りながら、我々は神なき煉獄を歩まねばならぬ。我々のエルサレムは、ここに在る事にしかない。そのことを選んでここに在ることを、私は信じたい。テロリスト達、そして心中する彼等との、唯一の違いがそこにしかないこと。「エルサレム心中」。私達は、発信する。
 「さらば、あの日から昨日までの世界、そして我々」。

砂上の楼閣 主宰 望月芳哲
(パンフレットより)


33KB
戻る戻る