6月の読書 6冊
最後のストライク 津田恒美と生きた2年3ケ月 津田 晃代 剄文社 1995 2001
| 1年位前だろうか。この本がドラマ化された。石田ひかりと岸谷五郎によって演じられたこの作品は、見ていて涙がいっぱい出てきて辛かった。32才の若さでこの世を去った津田恒美。11年間広島カープに在籍し、炎のストッパーとして私の記憶にも鮮明に残っている。素朴な顔からは親しみを、投げる姿は生命力を強く感じた。好きな選手でもあり、活躍していただけに30才での引退には驚いた。スポーツ新聞にも大きく取り上げられ、世間も騒いだものだった。そして2年後のオールスター第一戦で、津田の死が伝えられた。(それが最後のストライクというタイトルにもなっている。)その時の衝撃は、津田を忘れかけていた、私の頭にガンという強い衝撃をもたらした。涙があふれ出た。ツネゴンが...。私が一番良く野球を見ていた時に活躍していた選手なだけに、いろんな思いが頭をかけめぐった。そして今も、津田の笑顔は心に焼きついて忘れられない。 もう8年も経つんだなあ。 去年のドラマで、ツネゴンの脆さを知り、優しい人であったんだ、そのままの印象の人だったんだなあと知らない一面を覗け、また短い結婚生活とそのなかでも長かった闘病生活を晃代さんが献身的に、ツネゴンに接していたことを知り、いいお嫁さんをもらったなあと人の一生とはと考えさせられたのだった。この本はドラマの元となっただけあり、全く同じものである。(食事療法と病院を替わるところは、ドラマでは省かれているが。)安仁屋宗八コーチへの「の・み・す・ぎ・ん....ように」それと、観覧車から見下ろすツネゴンの姿を「寂しげで頼りなげな主人の姿を見たとたん、私は胸がしめつけられるようなショックを受けた」晃代さんの場面は、ドラマで印象的だった。野球選手というと、精神的にも肉体的にもタフなイメージがあるが、だからこそツネゴンの死には多くのファンが驚いたのだろう。記憶に残る選手になりたいと常々思っていたそうだが、早死にしなくてもツネゴンはみんなの記憶に残る選手であったに違いない。読んでいて、1年前に他界したおばあちゃんの介護の様子と重なった。少しの反応でも嬉しいものなのだけれど、それしか出来なくなることは寂しいことでもあるんだよね。 津田恒美 昭和35.8.1 山口県新南陽市和田生れ 南陽工業高校(甲子園春夏)〜昭和53 協和発酵〜昭和56 広島東洋カープ1位 プロ通算成績 286試合登板 49勝41敗90セーブ542奪三振 オールスター5回(7試合) |
Brazil John Updeke 寺門 泰彦 訳 新潮社 1998 2001
| 黒人で貧しいトリスタンと裕福な家庭に育った白人のイザベルとの20年間の出会いから、別れまでを描いた作品である。奇想天外なジェットコースター物語で、ついていくのも?マークがつくほど話がすっとぶ。リオ・サンパウロと観光地紹介を混ぜながら、イザベルの父から逃避行を続ける二人。実はイザベルの父は娼婦を買っていて、それがトリスタンの母で二人は兄弟かもしれないという、すごく古臭い設定なのだ。一度は別れるが、お互いを忘れられず、また逃避行。ゴイアスで、トリスタンはガリンペイロ、イザベルは売春を行う。イザベルはトリスタンの子供ではない男との間に二人の子供を出産する。(胡散臭い話である。) 大きな金塊を見つけたことから、二人は鉱山から逃げる。インディオと暮らし、イザベルは王の第三王妃となる。奇跡で、トリスタンの肌は白くなり、イザベルは黒くなる。(なんなんだ!この小説は!)トリスタンは「白い肌を手にいれたために、能生が諸々の可能性(選択、代案、計画)をもった直線で碁盤の目のように四角にしきられた箱になったみたいだった。」と、私の頭では理解できない話ばかりになってきた。そしてたった2頁で金持ちになり、イザベルのお父さんに会いに行く。フイリヨー・ダ・ブータ(=ばかやろう・娼婦の息子の意)や日本語訳にポルトガル語の発音がかぶせてあったりして、「あ、これこういう意味だったのか」「懐かしいなあ」と以前旅行へ行ったときにはわからなかった言葉が出てくるので、そういう意味では読んでいて楽しかった。しかし読むのが辛い作品であった。最初は訳が悪いのかと思っていたが、そうでなくこの作品のせいであると後半気が付いた。 |
交錯する文明 東地中海の真珠キプロス 篠田 節子 写真・鴨志田孝一 中央公論新社 2000 2001 週刊読売 等に連載
| 先日、本屋に平積みでおかれていた本が図書館にあったので借りる。どうせ出版社の特典いっぱいつき招待旅行なんだろうな、と思い読んでみると本当にそうであった。私が19才の秋に、初の海外旅行でギリシアに訪れた事がある。まず、土の色が違うことに驚き、海の青さに感動した。そんなんで、ギリシアと近い、キプロスの写真が多く取り入れられたこの本を読むのは楽しかった。かなり私的な色合いが強く、篠田節子という人物に迫れる本である。八ヶ岳山麓スーパー林道だの、温泉、ほうとう、山梨、諏訪神社の大祭だの、篠田さんの目に映るキプロスの風景は、日本の風景と強く結びつくらしい。その為、読んでいてイメージしやすく、「うん、うん確かにそうかも」と笑える。後半は、北キプロス・トルコ共和国へ半日観光の様子を綴っている。こちら側は、1974年にトルコが占領し、トルコ以外の国はどこも承認していない国なのである。規制が厳しく、トルコ兵がうろうろしているという。情報も少なく、危険らしい...そんなこわごわしつつも、それを楽しんでいる様子が伝わってきます。美男子に反応するおばちゃん(篠田さん)が微笑ましく。こちらの地方の写真は、大変海が青いのですが、それは、塩分濃度が高く、プランクトンがあまりいないためであるという。こんな素敵な写真と、旅行記を作ってみたいものです。売れっ子作家への出版社からの、大変素晴らしいプレゼントだと思います。 |
アメリカン・スナップショット 22歳の視線
we didn’t have none of them fat funky angels on the wall of heartbreak hotel and other reports from america
Bob Greene 井上 一馬 訳 河出書房新社 1989 2001
8つのコラム集である。私はアメリカの情報に疎く、また映画に全く興味がないので、アメリカの有名人はとんと知らない。(ビバリーヒルズ青春白書だけは、別であるが。)なので、「ボブ・グリーンの本だからそうそうつまらなくはないだろう」という思いで読み進めた。登場人物の顔形は思い描けないけれど、想像するにがたくない文である。「マイナー・リーグ」について。野球好きな私としては、たまらない気持ちになるコラムである。29才である私は、よくプロ野球観戦に出掛けるが、選手を最近このような気持ちでみるようになってきた。(小・中・高と周りの仲間より体も大きく、運動能力もありもてはやされる事も多かっただろう。いくつかの挫折もあったろう。でも出来る人であったことは、確かだ。しかし、そのできる人達があつまっては、上に立つことは今までになく苦いものだろう。体力も衰え、普通に就職している人よりは給料を貰っているとはいえ、将来の事にかなりの不安を感じえずにいられないことであろう。と。) そんな思いで、30を過ぎた選手を見るものだから、このコラムには胸打つものがありました。日本の選手より、レベルが高いにも関わらず、この状況なのであるから。日本はサッカーに人気を奪われつつあるようだが、野球は大変魅力的なスポーツである。いつまでも少年達に夢を与えつづけて欲しい。それこそが野球である。ボブ・グリーンはよくわかっている。フランク・シナトラについては、ボブ・グリーンの文章であるのに、フランク・シナトラ自身が心の内を描いたようなもので、感情移入をついついしてしまう。
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レディ・ジョーカー 高村 薫 毎日新聞社 1997 2001 サンデー毎日連載
| 図書館の予約コーナーでいつも目にしているこの本。そんなに人気があるのなら、と借りてみた。(バトル・ロワイヤルもすごい人気だ。) こんなに読むのに難儀した本はない。2週間くらい掛かってしまった。上下巻で900ページ近くあり、字も割りに小さめで、2段組。ナンだかそんな感想が最初に出てきてしまった。内容は、刑事が数名の競馬仲間と企業を脅す。企業には同和地区に住む青年を差別から、不採用にしたり(=身内が絡んでいる)、総会屋との確執もあったりと要求を呑む。記者が探りを入れる、地下組織の裏金工作ルートが浮上する。そんな話だ。最初の件が、同和問題という今興味のある問題だったので、ひきつけられた。また、高村薫さんの書くこの話の視点が、犯人側からのものが殆どなく、城山恭介での視点だったため、実際にひたりひたりと犯人が側にいて見ている恐怖心を植え付けられる感じを受けた。 人物の描写が少なく、どういう人物なのか把握できないまま物語が進んでいく感じで、裏表紙にある主な登場人物一覧がないと読み進めるのに支障を来たした。また、上巻ではインパクトの強いレディも下巻では薄い存在になり不満もある。佐野、根来の失踪も闇の中、城山は銃殺。警察内の事件の大変さはわかるが、行確といういやらしいことをお互いわかっていながらするものなのか。途中から、半田と合田の話に摩り替ってしま中途半端なまま終わったような。すっきりしないなあ。 ちなみに高村薫さんは女性です。 レディ・ジョーカー(岡村清二 物井清二 半田修平 高克己 布川淳一 松戸陽吉 レディ) 日之出麦酒(城山恭介 倉田誠吾 白井誠一 杉原武郎 野崎孝子 杉原晴子 糸井佳子) 総会屋&政治家(田丸善三 酒田泰一 青野昭二) 東邦新聞&根来関係(菊地武史 岡部智彦 佐野純一 久保晴久 根来史彰 菅野哲夫) 警察(神崎秀嗣 平瀬悟 安西憲明 合田雄一郎 加納祐介) |