Le Poeme HarmoniqueとChristophe Tellartさん 来日同行記

05/27/05


フランスの古樂グループLe Poeme Harmoniqueが初来日しました。ひょんなことから、このスーパーグループの滞日中一緒に遊ぶことになりました。メンバーの中にハーディーガーディー奏者のChristophe Tellartさんが含まれていて日本のHG奏者と交流がしたいと申し出てくれたためです。

1:来日前
ハーディーガーディメーリングリスト(以下HGML)でLe Poeme Harmoniqueの来日ニュー スが流れたのは4月8日。

以下は美術館作成のプログラムからの引用である。「ラ・トゥールが聴いた響きをもとめて」と題し、フランスで大人気の古楽アンサンブル「ル・ポエム・アルモニーク」が演奏します。ラ・トゥールの絵に描かれている珍しい楽器ヴィエル(手回し琴)もまじえながら、この時代の空気を蘇えらせます。

HGMLでは、古楽のグループなので、おそらくシンフォニュームを弾くのであろうが、時間がある方はいかがでしょうか、という反応であった。この時点ではLe Poeme Harmoniqueが凄いグループで古楽の世界では飛びぬけて いることなどまだ誰も知らなかった。

数日後、フランス語が堪能でおそらく日本で一番 のHG奏者であるタイの大竹さんより、来日するHG奏者は数年前にアメリカのHGフェスティバルでも講師を務めたことのあるChristophe Tellartさんであるとの情報が寄せられた。さらに驚くべきことに、Christopheさんは日本のHG奏者と交流したい旨、アメリカの HGMLに書いているとのこと。そのとき既に私は演奏会のチケットを入手していたため、 ぜひお会いしたいと連絡して欲しいと、大竹さんにメールを打った。

数日後大竹さんから、私のアドレスも先方に連絡済みであること、東京での ChristopheさんとHG仲間の集まりをコーディネートして欲しいなどの連絡が入った。私はフランス語は全く判らない、英語もかなりひどい、という語学力だが大丈夫だろうかと問い 合わせたところ、Christopheさんは英語は問題なし、さらに日本語も少しわかり、大竹 さんはメール中に"Christophe さん"と書いているとのこと。"何故日本語が?“と、これはまたこれで、謎が一つ増えてしまったが、とりあえず歓迎のメールを英語で書き送付した。

しばらく返答が無かったため、私の英語はよほどひどくて意味が通じないのであろうかと心配し たが、本人からローマ字混じりのメールが届いたのは、来日5日前。内容は日本のHG奏者と一 緒に弾くのを楽しみにしているとのことで、日本の伝統的な飲み会に招待したいが 都合はどうかという質問に対しては、喜んで参加したい、箸で食事もできるよ、という回答が 付け加えられていた。

また、日本のHG奏者と一緒に演奏したいというChristopheさん希望に対し、ロバハウスの松本さんが場所の提 供してくださることになり、演奏会のない13日にHG奏者が集まることとな った。

この段階で決まったスケジュールは10日に来日し、12日演奏会の後で飲み会、13日は ロバハウスで集会の2点。その他11日はリハーサル、14,15日は演奏会があるが、それ以 外の時間はフリータイムとのことだった。自由な時間には希望があれば、日本の伝統楽 器の店に案内しようとこちらから申し出たが、自由時間がそんなに多いのか正しいスケ ジュールがわからず、また、また演奏会のチケットが買えなかった人達は招待してくだ さるとの話であったが、こちらも定かではなくスケジュールに一抹の不安をのこした状 態で来日当日を迎えた。


2:5月11日
10日の夜に宿泊先のSofitel東京に到着との予定だったので、予めホテルのフロントに 私の携帯番号を書いた歓迎の手紙、名刺などを預けておいた。

11日の昼前、Christophe さんから携帯に日本語で連絡が入った。"今、ホテルのロビーにいます。今日の予定を 決めましょう"という内容だったが、なんとなく上手く伝わらない。急遽ホテルに直行 するので待っていて欲しい旨話し、ホテルに急いだ。ホテルのロビーにはLe Poeme Har moniqueのメンバー全員が集合しており、皆と挨拶をしたのちChristopheさんと昼食を 食べながら予定を話そうということになった。第一印象ではとても感じの良い丁寧な人 で、かなりの知性とユーモアを併せ持つ人らしい。第一印象は最後まで変らず、それは メンバー全員に当てはまった。

昼食は街のラーメン店に行き、具を全部載せたラーメンと餃子を半分づつ食べたが、カ ウンターだけのラーメン店はパリには無いとのこと。ここは旅館なのかとの質問があり 、カウンターは一番小さい店で旅館にもあるかもしれないなどと答えた。
食後は上野公 園、アメ横などを案内し、夜のリハーサル後日本料理を食べようということになった。

リハーサル終了時刻はPM8:00ごろ。テノールのセルシュさんと平均律以外も調整できる チューナーを売っている店はどこか、などと相談を受けつつ適当な飲み屋を探した。一 行はクリストフさん、テノールのセルシュさん、バスのアルノーさん、ヴィオールのシ ルビーさんとイザベラさん、今回はマネージャーだが本国ではプロデュースもするとい うアナさん、に私の7人。店の選択に際しては、なるべくいろいろな日本の食べ物を試 してもらいたいこと、ありきたりな天ぷら、寿司は避けること、値段が高くないこと、 日本人がいないと絶対に入れないことなど基準に考えたが、寒いこともあり鍋料理を食 べられる店を探した。

運良く近くにウドンすきを看板にしている小さな居酒屋があり、4人掛けテーブルが2個 空いていたため殆ど歩き回らずに席をとることができた。
頼んだ物ははうどんすき、ちゃんこ、もずく、煮込み、冷奴、おでん、焼き鳥、刺し盛 りで、もずく以外はどのメニューも好評だった。青紫蘇や煮込みのこんにゃくなどが珍 しいそうで、おでんの汁は美味しいスープとして好評であった。飲み物は地酒を7種類1 合づつ頼みそれぞれを試飲する形にした。

実は鍋が出てくる前にかなり満腹状態になっ ていて、大盛りの鍋が2つも出てきたので"おお・・・・"と悲鳴に似たつぶやきが。 私もこれは失敗したと思ったが、いざ鍋ができて、各自に取り分けてみると、とても口 にあったようで自分たちでどんど取り分けてものの10分で完食した。
みんなとても喜 んでくれたが、中でもテノールのセルシュさんの一言、"フランス人は食べる物をとて も大切にしているんだ。この店は我々だけでは絶対入れない。食べたことの無い日本の 食べ物でとても美味しかった。値段も高くないしね"、私の狙い通りの感想を述べてく れとても感激した。 。


3:5月12日
待望のLe Poeme Harmoniqueコンサートの初日。初対面である名古屋のHG奏者古川さん と西洋美術館前で待ち合わせの後、LaTour展特別展観の後いよいよコンサートである。

コンサートの内容は動きのある歌、ダイナミックな構成、器楽と声楽の絶妙のバランス と、私がイメージしている古楽とは全く違い、当時の民衆の音楽を再現するという彼ら の意図がよくわかる内容であった。

演奏終了後、既に顔見知りのメンバーたちに感想を 述べ、クリストフさん、古川さんと一緒に近くの蕎麦屋風居酒屋を訪れた。ここでは、 おばんさい、朧豆腐、まぐろの大鎌、更科と田舎蕎麦を注文。朧豆腐と大鎌はかなり好 評で、蕎麦も予想通りの味だったのこと。

いよいよ私の自宅にてHGを教えてもらうこと になる。まずは古川さんの楽器を調整。新品に近い楽器ではあるが、プロからみるとか なり気になるところがあるらしく30分位を要した後、私の楽器を調整。こちらも30分位 を要したためこの日の練習は殆ど調整方法の講習で終わってしまった。練習は明日のロ バハウスでということになる。


4:5月13日
平日ではあるものの、古川さん、櫻井さんと2人の熱心なHG奏者が名古屋近郊から参加 しHGのワークショップが行われた模様。

その後クリストフさんはロバハウス主催者松本さんと会食。実は立川にあるロバハウスからJR御徒町までクリストフさんが一人で帰って来れるかとかな りの不安があった。ロバハウスは立川からモノレールに乗り換えて数駅の場所にあるが 、その乗り換えが駅から一旦外にでるため初めてでは日本人でもよく判らないという。

行きは古川さんが同行したが、帰りは列車の時間が早いためどうしたらよいかとかなり 悩んでいたが、櫻井さんがもう1泊するとのことで御徒町まで同道をしてくれることに なった。クリストフさんはかなり酔っていたが、HGの練習を見てくれるという。櫻井さ んの要望で不等間隔のクーの出し方などを教わり深夜帰宅した。


5:5月14日
待望の休日。前日のうちに、尺八の店(高田馬場、目白)、神田明神大祭、ビデオ販売 店などに行く予定を伝えてあった。

尺八は日本に来たら手に入れたいと思っていたとの こと。神田明神はお祭りそのものよりも、長唄の演奏があるため日本の伝統音楽が見た いとの要望にあわせた。またビデオ販売店は、飛行機機内で見た"いぬのえいが"がと ても良い映画で親戚に見せたいとのことだったが前前日に行った店では売っていなかっ たとのことで探しに行くことになった。

ところが待ち合わせの12時を過ぎてもクリストフさんは現れない。時間が正確な人なの で同行予定の櫻井さんと心配しながら待つが、1時間たっても現れず、一緒に神田明神 から参加予定のアルノーさん、イザベラさんもどうしたんだろう、と話している。とり あえずこの2人にはタクシーの指示方法を紙に書いて渡し、先に言ってもらうことにす る。

2時にようやくクリストフさんが登場、12時と2時、jyu ni ji と ni ji だが最初 のjyu が時だと思ったとのことで、この辺かなり日本語の数字が曖昧な感じであった。 急いで神田明神へ行き先行の2人と合流、3時からの長唄上演を待つことになる。長唄は 日本人には退屈で、集まった観客が次々と減っていく中3人は興味深げに観賞していた 。

私が待ち時間に買ったベビーカステラをとても気に入り、自分たちでも買いたいとの こと。夜店のカステラ屋に行き、カステラを買う。
リハーサルの集合時間までの間、甘 い物を食べようと思い美味しいケーキ屋を探すがどこも満員のため、甘味屋に入り餡み つ、白玉みつ豆などを試してみることになる。あんこ、黒蜜は口にあったようだが肝心 の寒天が余り好きで無いようで、寒天を残してホテルに戻る。

当日夜のステージは櫻井さんが招待されているが私は家の近所で買い物(HGの調整に使う強力な糊)をしつつ、夜の連絡を待つことに。結局当日は美術館のスタッフと会食 になったため、明日の予定を連絡して就寝。


6:5月15日
いよいよ最終日。前日の長唄を見たアルノーさんが、買える値段の物なら篠笛を買いた いと言ったことから、浅草の宮本に行くことになる。

この日の同行はクリストフさん、アルノーさん、イザベラさん、アナさん、パーカッションのミシェルさんの5人。ミシェルさんは加藤登紀子の友達だそうでパーカッションでアルバムに参加したこともあるのこと。

篠笛を買うアルノーさんとミッシェルさんどちらも横笛奏者では無いのだがと思いきや、2人ともとても上手くてビックリした。店の中にいた他の客も彼らは何物なんだろうとビックリして眺めていた。お囃子用、本調子などそれぞれの管の違いを説明 し、本調子の6本半を購入。
イザベラさんは近所の子供たちの土産に木製の笛が欲しか ったようだが、安くて気に入った物がなく鳴子を買って帰った。

次は三味線屋さんに行くことになる。以前楽器を買ったことがあり、こちらの素性を話 すとおそらく弾かせてくれるであろう店に行き、弦の張ってある三味線をイザベラさん ミッシェルさんに渡したが、全然弾き方がわからず余り興味のない様子。
"さわり"のことなどを説明し、店を出ようとしたところ、楽器が滑らないように膝の上に載せる布に目が留まった。かなり気に入ったようで"これは素晴らしい"と購入した。

次にイミテーションの寿司が欲しいとのことで、運良く近くにお店があると言ってカッ パ橋商店街に向かう。フランスではピングーが人気らしく至るところにあるカッパの人 形をみて、"ピングーか?"と聞かれる。クリストフさんにカッパを知っているか訊ね ると、有名な日本の伝統で良く知っているとのこと。早速ピングーか、と訊ねるメンバ ーに説明をしてくれた。
しかし、お目当てのイミテーションは彼らの想像以上の値段だったようで、アナさんが 1つ買っただけであった。

夜の最終公演は音楽関係者を多数呼んでいたとのことで初日よりも気合の入った緊張感 のあるステージであった。
コンサート終了後メンバーと美術館関係者、その他関係者で寿司屋で送別会があるとい う。私はどれにも当てはまらないのでどうしたものかと思ったがメンバー友人というこ とで参加した。メンバーそれぞれがコンサート日程が無事終了しホッとした雰囲気のな か、すし屋の閉店時間に急かされつつ楽しい雰囲気の宴会であった。

彼らは翌朝6時にソフィテルを出発。短いが充実した交流であった。



メンバーにサインの寄せ書きを貰いました。真中の"和"はバンサンさん。メンバー全員に書いてもらったあとで最後に彼のところに持っていったのですが、全員のサインがあったので”おお“とビックリした後、すかさず漢字で書いてくれました。さすがですね。