・ 断 乳(卒乳)
いつ断乳をするかは、色々な考え方があります。1才ぐらいがよいとか、1歳半までとか、もっと遅くともよいとか…。自然にいつの間にか乳離れをしたという子もいますが、たいていは、時期を見計らって断乳をすることが多いと思います。また、断乳の仕方についても、色々なやり方や工夫が育児書などには出ているようです。
市販の育児書の中でのお勧めのひとつは、『ひとりひとりのお産と育児の本』(毛利子来・著)(平凡社・刊)です。小児科医の毛利さんの解説は、おおらかで、安心させられることが多いです。それに、お母さんにとっても優しい!(障害児に対する関わり方等、個人的には、意見を異にする所もあるのですが…)
「新米ママのおっぱい入門」というサイトも、とっても参考になりますよ。
さて、ボクのコーナーでは、断乳をめぐる気持ちの問題にしぼって、お話ししていくことにします。
(1)断乳の寂しさとうれしさ
断乳は子供にとって、ママとの小さなお別れ。不安や寂しさはつきまとっても、自然ですね。「オッパイ欲しいよ〜」という気持ちは、別れの苦しさを引きずらないためにも、しっかり聞いてあげてたいですね。でも一方で、断乳のうれしさというものも、子供にはあるのです。赤ちゃんを卒業して、ステキなお兄さん・お姉さんになるんだ!といううれしさです。時期が来れば、子供は内なる成長欲求を、ちゃんと持つようになるのです。つまり断乳の時の子供の心は、「赤ちゃんのままでいたい」という気持ちと、「赤ちゃんを卒業したい」という気持ち、ふたつの気持ちの間で揺れ動くのです。
「ガマンして! 泣くんじゃない! もうお兄さんになるんでしょ!」と叱咤激励ばかりしていては、前者の気持ちが無視されてしまうので、子供はつらい。でも、逆もあります。前者の気持ちにばかり目がいって、ついおっぱいをあげてしまうと、なぜかイライラした感じが出てくる子がいます。じつはこれ、赤ちゃんを卒業できなかった挫折感なんです。
「断乳中に子供が荒れ始めたので、一時中断しました。そうしたら、よけいに荒れ始めて…。よっぽどつらかったんでしょうか。」という相談を受けたことがあります。慰めの抱っこで聞いてみると、全く逆だということがわかりました。つまりその子は、「おっぱいへの未練が断ち切れない、赤ちゃんみたいな自分」に怒っていたのです。さっそく断乳を再実行してもらったところ、お子さんの荒れは、ウソのように収まりました。子供自身のもっている成長欲求って、大人が考える以上にすごいんですね。すっかり感心してしまいました。
(2)二つの気持ちを、両方とも受け止めていくには?
まずは、「赤ちゃん卒業したい」という気持ちを応援していきたいもの。でもこの時期の子供は、自我がまだ十分に発達していないので、つい誘惑に負けてしまい、内心落ち込むのです。だから、ママの応援がいるのです。気を紛らわしたり、たくさん遊んであげる等の工夫もしてみましょう。でも、それでもおっぱいを欲しがったら、しっかり目と目を合わせて、「赤ちゃん卒業しようね。がんばろうね」と、励ましてあげてください。
それでもやめようとしない場合があります。頭では決意していても、つい、体が動いてしまうのです。そんな時は、叱らずに、ママが体で止めてあげてください。それをきっかけに泣き出したら、今度は、「赤ちゃんでいたい」という気持ちを慰めるチャンスです。「おっぱい、やめようね」と励ますより、「おっぱい飲みたいねえ。ガマンできないねえ」と慰めてあげるとよいでしょう。そんなことを言ったら、よけいに未練が出てしまうかというと、これが逆なんです。「飲みたいねえ」と声かけすると、いったんは、泣き声は大きくなるのですが、その分、未練はたっぷり吐き出されるのでしょう。落ち着くまで付き合ってあげると、あとはびっくりするほど、スッキリするものです。(ただし、この方法、ほとんど「慰めの抱っこ」ですから、ママが苦しくなったり、迷いを生じるようだったら、ほどほどにね)
(3)卒乳の儀式
本人だって、内心その気はあるのですから、「子供が自分で断乳を決意する」ということはとても大切です。単なるガマンというより、「赤ちゃんから、お兄ちゃん(お姉ちゃん)になるチャンス」という位置づけの方が、やる気が出るというもの。“断乳”ではなくて、“卒乳”というステキな言い方を、あるお母さんから教えてもらいましたが、なるほど、イメージとしてはこちらの方がピッタリですね。そのためは、抜き打ちで決行するのではなく、まずは、断乳プランを子供に話し、決意してもらうことです。子供の成長欲求を信じ、「チャレンジしてみようよ」と言うお母さんの姿勢は、子供を勇気づけます。(もっとも、いくら決意したところで、いざとなると弱気やグチをこぼしたくなるのが人間というもの。「やっぱり欲しいよ〜」というベソには、先に書いたように付き合ってあげてね。)
さて実際の卒乳の儀式(卒乳式?)は、いろいろなやり方がありますね。中には、「目の前でほ乳瓶を割る」なんていうやり方も聞いたことがありますが、なんだか子供を信用していないみたいなやり方だし、ショックだろうし、第一、卒乳式らしいエレガントさに欠けますねえ。桶谷式では、最後のとびきりおいしいおっぱいをあげた後、おっぱいに「へのへのもへじ」を描くそうです。これについては、ママが描くのだとばかり思っていましたが、あるお母さんから、「子供に描いてもらった」という話を聞きました。赤ちゃんを卒業する決意を込めて、バイバイそしてありがとうの気持ちを込めて、その子が「へのへのもへじ」を描く姿を想像したら、こちらまで、胸が熱くなってきました。
(4)ママ自身のうれしさ・寂しさ
卒乳は、わが子がまた一歩成長する、うれしい出来事ですね。でも、子供の中に相反する二つの気持ちがあるように、ママの中にも二つの気持ちが出てきて、揺れてしまうこともあるようです。
「断乳中に子供が荒れ始めて…」と相談に見えた、先ほどのお母さん。何度かお話を聞くうちに、自分の気持ちに気づいたそうです。「私の中に、実は、子供が離れていくのが寂しい気持ちがあったみたいなんです。自分でも、今まで気づかなかったけど…」 卒乳のことで子供にぐずられた時、苦しくなったりイライラしてきたのは、このお母さんの場合、自分の抱えている寂しさが刺激されてしまったからなんですね。そんな時は、「私も寂しいよ〜!」というママの気持ち、ぜひ周りの人に受け止めてもらうといいね。こんな気持ちが起きたとしても、ちっとも変じゃないからね。