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はじめに
私が運営する相談室には、子育てについてのさまざまな悩みがもちこまれます。「しつけがむずかしい」「すぐにかんしゃくを起こす」「落ち着きがない」「友だちと仲良く遊べない」「チックや指しゃぶりがひどい」「こだわりがある」「言葉が遅れている」「目が合いにくい」などなど、内容は多岐にわたっています。
子どもの個性はいろいろですから、活動的な子もいれば、消極的な子もいます。友だちと遊ぶのが好きな子もいれば、一人が好きな子もいます。また小さいうちは、言葉の発達のペースも、個人差が大きいもの。ですから一時は悩んでいたことも、成長とともに、だんだん気にならなくなっていくことも多いのです。
ところが、それが単に個性や年齢のせいではなく、子どもの「成長の土台」ができていないことが原因だとしたら、事態は違ってきます。年齢が上がるほど悩みが大きくなったり、「一つ解決したと思ったら、また新しい悩みが…」という状態になりやすいのです。親ががんばっても、せっかくの努力が空回りになり、イライラがつのって、いつの間にか険悪な親子関係に…という結果にもなりかねません。
成長の土台ができているかどうかは、子どもの「泣く」「ダダをこねる」「甘える」といった行動を見ると判断できます。子どもの育ちに関する実践的な研究が進み、こういった行動は、子どもの成長にとって重要な役割を果たしていることがわかってきました。つまり、一般的な“常識”と違い、泣き上手・ダダこね上手・甘え上手な子どもほど育てやすく、発達面でのつまずきも少ないのです。
育てにくい子どもの多くは、泣き方に特徴があります。あまり泣こうとしなかったり、反対に、ギャーギャーという悲鳴のような声で泣きつづけたり。また、あまりダダこねをしなかったり、逆にちょっとしたことでパニックを起こすタイプの子もいます。抱っこを嫌がったり、反対に、親と視線が合わない形の抱っこにこだわる子もいます。
甘えやダダこねには、ストレスを解消する働きがあります。ですから、そのメカニズムがうまく働いていない子どもは、親が気づかないうちにストレスをためこみ、「落ち着きがない」「聞き分けが悪い」「情緒が不安定」「チックや指しゃぶりがひどい」といった問題が出てくることが多いのです。
また、甘えたり泣いたりすることは、自己表現の第一歩として重要な意味があります。ですから、甘えや泣きにブレーキがかかっている子どもの場合は、言葉の発達が遅れてしまう可能性があります。
さらに、身辺自立や友だちとの関係(集団参加)には、甘えによって育つ“安心感”が必要です。積極性に欠けたり、集中力がなかったり、すぐにあきらめてしまうような子どものほとんどは、「親に助けを求めようとせず、自分だけで無理をしようとするから、すぐにストレスでいっぱいになり、意欲を失ってしまう」という心のメカニズムがあるのです。
相談室を訪れるお母さん・お父さんには、子どもの表面的な行動に目を奪われないで、成長の土台に働きかけていく育て方をアドバイスしてきました。その結果、お母さん方は、「子どもの気持ちがわかりやすくなった」「やる気を出してくれるようになり、親のがんばりが空回りしなくなった」とおっしゃいます。そして、「何より、子どもと一緒にいることが苦痛でなくなったのが、一番うれしい」とおっしゃるのです。
「成長の土台作り」は、0歳から小学校低学年ぐらいの子どもまで、健常児・障害児の区別なく取り組める方法です。慣れてくれば、とてもシンプルな考え方なのですが、「単純なものほど、わかりにくい」といいますから、最初のうちは戸惑うことが多いかもしれません。そこでこの本では、基本となる考え方をできるだけわかりやすくていねいに説明し、家庭で今日から取り組める具体的なアイデアも豊富に紹介しました。
私の相談室には、自閉症・アスペルガー症候群・ADHD(注意欠陥・多動性障害)・LD (学習障害) などの発達障害をもった子どもたちも通っています。こういった子どもたちの場合も、成長の土台ができていないと、ストレスをためやすくなり、2次障害を併発しやすくなります。ところが、泣き上手・甘え上手になってくると、気持ちが安定してきて、うんと育てやすくなるのです。
今まで多くの親子が実践し、成果を上げているこの方法は、「つづければつづけるほど、着実に効果が出てくる」という特徴があります。ですから、できるところから、できる範囲で、ぼちぼちペースで取り組んでいってください。
萩原 光。。。。
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