(4)セッションの実際


 ここでは、私が自宅で開いている相談室(シャローム共育相談室)で、援助者として進める場合の「典型例」(標準的なパターン)をご紹介します。セッションの進め方には、親子の状況や個性によって、実に様々なバリエーションがあります。感情というデリケートなものに関わる作業ですので、「形」より、「現状に即して」ということを優先するからです。また、援助者の個性・考え方によっても、進め方は変わってきます。そのことを考慮しながら、読んでいって下さい。


●セッションの形態
 親子関係を促進する援助法ですので、お母さんとお子さんで来てもらいます。私の所は保育の体制がありませんので、兄弟がいる場合、預けてきてもらうか、お父さんに一緒に来てもらいます。ママ1人・子ども2人だと、兄弟も「ボクもかまって!」という感じになり、結局どっちつかずになってしまうからです。


●所要時間と回数
 1回のセッションは、一時間半。若干延びることもあります。
 私の場合、最初は、月2回(隔週)ぐらいのペースで来てもらうことをお勧めしています。もちろん、「とりあえず、1回だけ」という場合もあります。「ムリをしない範囲で決める」というのが原則だと思います。
 3ヵ月ぐらい通ってもらうと、ほとんどの場合、手ごたえが実感できるようになります。発達の遅れや障害のあるお子さんの場合は、6ヵ月ぐらいで、何らかの変化の兆候が始まる子が多いようです。ただ、このあたりは個人差がとても大きいのも事実です(1回で終了になる場合もあります)。一般に、年齢が低いほど、手ごたえが出てくるのは早いようです。
 その後どうするかは、お母さんと相談して決めます。この頃になると、お母さんは、わが子の状況が理解できるようになり、主体的に判断できる自信を回復し始めるからです。「手ごたえが出てきたから、このままのペースで続けたい」、「自分で関わっていくコツが分かってきたから、月1回のペースにしたい。(あるいは、ひとまず卒業としたい)」など、人によって選択は様々です。

 
●セッションでやっていくこと
【溜め込んできた不安・緊張を解き放っていく段階】
▲「マイナス感情を親に訴える→受けとめてもらう→だんだんに落ち着く→不安・緊張が解消する」というSOSサイクルに対する強力なブレーキを、どうすればはずせるのか、感情解放を促すやりとりのしかたを具体的にお教えしていきます。
▲初期の段階で見られる「感情爆発」(慢性的に蓄積された不安感情・緊張の急激な解放)の、安全かつ効果的な受け止め方(体の保持の仕方)を具体的にお教えしていきます。
▲SOSサイクルのブレーキの根っこを探っていき、そのことにまつわるマイナス感情を解消していきます。
▲「育てにくいわが子との格闘の疲れ」「進まない親子関係による苛立ち・寂しさ」「発達が遅れていることの心配」等、お母さんが抱えるストレスについても解消できるようなアプローチを考慮していきます。
 初期のこの段階では、まだ、目だった変化が表れないケースが多いようです(もちろん中には、「1回でOK」という親子もいますが)。多くのお母さんは、「本当に、この子に不安な気持ちなんてあるの?」と半信半疑の段階。「でも、信じてやっていくしかない!」と、がんばって通って来られています。

【日常的にSOSサイクルが機能していくように促していく段階】
▲表面的な様子・行動からは想像できにくい、お子さんの抑圧感情(恐怖・不安・「本当はお兄さんらしく頑張りたい」という気持ちなど)を、何気ない行動や様子から読みとっていく方法を具体的にお教えしていきます。
▲日々の暮らしのなかで、お子さんがマイナス感情を抱え込んでしまった時の「サイン」を学んでもらいます。そして、そういったサインを見つけたとき、不安・緊張の解消回路であるSOSサイクルをどう促していけばよいのかを具体的にお教えしていきます。
▲「わが子が訴えてくる気持ちを受けとめる」という今まで未経験な親子関係に、お母さんが戸惑ってしまう場合もあるので、そういった面での精神的なフォローもしていきます。
 この段階では、多くの子どもに、「目が合いやすくなる」「表情に変化が出てくる」「甘えやすくなる」「ママとの関わりを求めたがる」「ベソをかきやすくなる」「直球のダダこねや自己表現が出てくる」等の、親子関係が進み始めたことを示す変化が見られるようになります。また、コミュニケーション意欲に変化が表れ始めます。抱っこ法の効果が実感され始める時期です。
 また、「しつこいダダこね」や「気になるクセ・行動」(多動、こだわり、自傷行為、パニックなど)のほとんどは、お子さんがマイナス感情を抱え込んでしまっているサインです。そういった場合の対処のコツもだんだん分かってきて、日常的なお子さんとの関わり方が、ずいぶん楽になっていく時期です。


【お兄さん(お姉さん)らしい行動や挑戦を励ましていく段階】
▲身辺自立課題・発語課題・認識課題などに挑戦させていく時の有効な、体の保持の仕方や、挑戦にまつわる不安を解消していくSOSサイクルの活用法などを具体的にお教えしていきます。
 今までの段階が、「過去から抱えてきた不安・緊張の解消」「現在進行形の不安・緊張の解消」であったとすると、この段階のねらいは、「未来へ向かって、お兄さん(お姉さん)らしく歩を進める」ことにあると言えます。子育てへの自信がさらに深まり、わが子の「本当は、がんばりたい」という気持ちが実感される段階です。


 以上の3つの段階は、抱っこ法による「発達援助の個別セッション」の内容を、分かりやすく整理したものです。実際のセッションは、個々の親子の現状に即しながら、この3つの要素を取り混ぜながら進行していくこともあります。したがって、必ずしもこの順番通りにセッションが進行していくというわけではありません。お子さんの状況によっては、3つのうち1つないしは2つに集中してセッションを行うということもあります。


★最後に、ちょっと一言

 このコーナーをお読みになり、お母さんご自身が、抱っこ法による「個別セッション」を受けようと決断されるのは、けっこうなことです。しかし、お母さん自身ではなく、周囲の人(お父さん、そのお子さんを担当する職員の方など)が、「セッションを受けることを、強引に勧める」ことは避けてください。というのも、どんな方法でもそうですが、お母さん自身が「ぜひ取り組んでみたい!」と主体的に決断しないことには、効果は半減してしまうからです。それどころか、お母さん自身が、かえって苦しい気持ちにもなりかねません。もちろん、お母さんにこの文章を読んでもらい、「親子関係が進みにくいワケ」「言葉や情緒の発達の道筋」「親子関係の進め方」「抱っこ法のセッションの実際」などについて知ってもらうことは大切です。しかし、セッションを受けるかどうかの最終的な判断はお母さんにゆだね、決心がつかないようなら、見守っていてあげて下さいね。

 「様子を見て、早めに決断をする」ということは、とても大切です。しかし、お母さんの心の状況によっては、「早ければ良いというものではない」という場合もあります。特に、「障害児なのか、否か」という心配のある場合は、よりいっそう、お母さんの気持ちに配慮することが大切です。
 あるお母さんからのメールをご紹介します。
 私は、抱っこ法のセッションを受けようか、受けるまいか、1年以上悩みました。正直言って、恐かったのです。個別セッションを受けるということは、私の中では、わが子の遅れを認めるということだったからです。わが子の遅れを認めることが恐かった。それを認めると、私の心は崩れてしまい、立ち直れそうになかったからです。だから、「もうすぐ、追いつくはず」と毎日自分に言い聞かせてきました(本当は、遅れていることは感じていたのですが)。1年たって、ようやく私の心の中の嵐は落ち着きました。児童相談所へ判定に行く勇気も出ました。結果は「約1年半の遅れ」。でも、何か吹っ切れた気持ちです。遅ればせながら、抱っこ法のセッションにも通い始めました。セッションが始まり、もっと早く通い始めるのだったと悔やまれることもあります。でも、私には、これが精一杯でした。私には、必要な1年間だったのです・・・。
 私からのお返事です。
 一生懸命なママが、悩んだすえ出した結論。親子にとって、一番良い道を選択したのだと思います。ママの気持ちが揺れているのに、無理にセッションを始めたとしても、かえってお子さんはつらくなっていたことでしょう。そんな中で、わが子の事実を受け止めようとしたら、親子共倒れになっていたことでしょう。親子にとって大切なのは、前を向いて進んでいくこと。「これでいいのだ!」と、どうぞ胸を張って、一緒に進んで行ってくださいね。


★抱っこ法による「個別セッション」を希望される方へ★

・各地域在住の援助者の情報は、下記までお問い合わせ下さい。
・援助者が在住していない地域もありますので、あらかじめご了承下さい。
・このコーナーの文章は、日本抱っこ法協会の公式文章ではありません。私が抱っこ法から学んだことをベースにしていますが、個人的な見解も多く含まれています。したがって、文責は萩原個人にありますので、このコーナーの文章に関する質問・疑問は、抱っこ法協会の方へは持ち込まないでくださいね。
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