(2)それでも変化がないようなら


 変化が始まったら、あとは、抱っこ法的な関わりをその調子で続けていくと、親子関係がだんだんに進み、つきあいやすくなっていくはずです。あとは、「1才児だったら、1年間」「5才児だったら、5年間」ぐらいかけるつもりで、長い目でお子さんの成長を見守ってあげていて下さいね。薄皮をはがすように、しかし着実に成長していき、「先細り」ならぬ「先太り」の子育てになっていくはずです。抱っこ法は即効薬というより、体質改善の漢方薬のようなものなのですから。

 しかし、「それでも、なかなか光が見えてこない」「悪循環が止まらない」という場合は、お子さんのブレーキが強すぎるのかもしれません。また、お母さんの方の気力が出ないという場合もありますね。そのような場合は、もうひとつの抱っこ法である「慰めの抱っこ」に取り組んでいくとよいでしょう。「慰めの抱っこ」は、健常児・障害児の区別を問わず、発達の土台となる親子関係にダイレクトに働きかけていく技法です。


(3)「様子を見ましょう」という診断について


 0才で、わが子の発達の遅れが心配になり、「ひょっとして、障害がある?」と相談に行ったとしても、「大丈夫ですよ」と言われるか、「様子を見ましょう」と言われることが多いようです。1才6ヶ月健診あたりでも、よほど顕著な傾向が出ていない限り、「少し気になりますが、もう少し様子を見ましょう」と言われ、「もっと話しかけてあげて」とか「お母さんと一緒にいる時間をたっぷり取ってあげて」といった一般的なアドバイスが返ってくるだけのケースも多いようです。
 親としては、何か宙ぶらりんのような気持ちになり、「早く、ハッキリさせて!」と言いたくなってしまいますね。でも、これにはワケがあるのです。

 第1の理由は、「多くの知的障害・情緒障害は、早期診断がしにくい」ということです。 ダウン症など、ごく一部の障害などについては、血液検査等ですぐにはっきりとしたことが分かります。しかし、発達の遅れが気になる子どもの多くは、「実際に、どういった発達の経過をたどるか」ということを見ていかないと、判断がつかないのです。また、ADHD、LD、自閉症などの情緒障害は、特徴的な行動パターンが出そろうのを待つ必要があります。
 もっとも、遅れがはっきりしてきたとしても、ほとんどの子どもは、「何らかの原因による(原因不明の)発達遅滞」という診断になります。つまり、「○○症(あるいは○○病)による発達遅滞」という原因が特定された形の診断を受けるのは、ごく稀なケースなのです。また、情緒障害の場合、ボーダーラインのお子さんが多く、その場合、「自閉傾向はあるが、自閉症ではない」といった曖昧な診断だったり、判定者によって、「ADHDだ」「いや、LD傾向がある」「そうではなく、高機能自閉症だ」と、診断結果がまちまちになることも少なくありません。
 一方で、「心配な様子があったが、その後の経過を見ていったら、そのうち心配がなくなった」というケースも多いので、診断する立場の人としては、慎重にならざるをえないのです。

 第2の理由は、たとえ発達の遅れが懸念されたとしても、認知的な療育指導の開始は3才以降になることが多いので、さしあたり大切なことは、「家庭でのふだんの関わりの中で、親子関係を進めていく」ということだからです。

 そういう意味でも、このHPや本で紹介しているような「抱っこ法的な接し方」によって、親子関係を意識的に進めていく工夫は重要です。また、場合によっては、早めに「慰めの抱っこ」に取り組んでいくとよいでしょう。きっと接し方のコツが分かってくるはずです。