3.親子関係が進みにくい場合、どうすればよいのか


(1)まずは2ヵ月間、やってみるとよいこと

 これまで見てきたように、「言葉(コミュニケーション)」「お友だち関係(集団参加)」「身辺自立(しつけ)」「認識能力」といった成長の重要な要素は、すべて親子関係が土台になっています。個々の能力よりも先に、親子関係という土台に注目していったほうが、育てやすくなってくるのです。

 本来、親子関係というものは、特に意識しなくても、「自然な子育て」の中で、いつのまにかに進んでいきます。しかし、不安や緊張を抱え込みやすい子どもの場合は、どうしても「意識的な働きかけ(子育て)」が必要となります。今までの悪循環は、育て方のせいではなく、子どもの側の「心の緊張」に原因があったとしても、そこからの脱出のためには、親の側の意識的な働きかけが必要なのです。
 親子関係(特に、その中心となる「プラスの気持ちの表現」「マイナスの気持ちの表現(SOSサイクル)」)を、意識的に進めるための有効な手段として、お勧めしたいのが、抱っこ法(このHPで提唱している「癒しの子育て・親育ち」の元になっている考え方)です。HPや本では、抱っこ法について、「一般的な子育ての知恵の集大成」「よりよい親子関係を作っていく方法」という形で紹介しています。
 また、もともと抱っこ法は、言葉や情緒発達に遅れがあり、ふつうの接し方では、なかなか親子関係が進展していかない子どものための療育技法でした。HPや本では、「一般的な子育てのコツ」という形でご紹介していますが、このコーナーをここまで読んでこられた方は、「一般的な子育てのコツも、成長を支える親子関係の伸ばし方も、遅れや障害をもった子どもの育て方も、本質的には同じ」ということがお分かりになったことだと思います。

 宣伝めいて恐縮ですが、特に本(『心を抱きしめると子育てが変わる』萩原光・著、主婦の友社・刊)の方では、「プラスの気持ちの表現」の育て方、「マイナスの気持ちの表現(SOSサイクル)」の育て方、親子遊びのコツ、泣きやカンシャクとの付き合い方、お母さん自身の気持ち等について、実例をあげて具体的に解説しています(幼児の実例が中心ですが、赤ちゃん・小学生の場合も、接し方のコツはまったく同じです)。本屋さんで注文すれば手に入りますし、図書館の方でもけっこう置いてくれているようです。ぜひ参考にしてみて下さい。また、抱っこ法関連の他の図書も、大いに参考になるはずです。(→こちら

 抱っこ法の考え方にもとづき、ふだんの接し方に少し工夫を加えていくと、2ヵ月もすると、何かしら手ごたえが出てくるはずです。親子関係が進み始めると、
▲ママに甘えやすくなってくる。ママと一緒にいたがるようになる。(プラスの気持ちの表現)
▲かわいいベソをかきやすくなる。今まで平気だったような場面で、恐がるようになる。ここぞと言うときダダこねが出やすくなるが、一方で意味もないようなカンシャクが減っていき、カンシャクが出たとしても収まりやすくなる。(SOSサイクル)
▲表情の硬さが取れていき、表情に変化が出てくる。
▲多動傾向だった子どもに、落ち着きが出てくる。
・・・といった変化がまず表れてくるはずです(もちろん、子どもによって個人差はありますが)。このような変化は、小さい子特有の変化ではありません。小学生であっても、親子関係が良い方向に行き始めたときは、一時的に、「ベソをかきやすくなる」「甘えやすくなる」といった様子が表れるものです。
 
 ただ、「よおし、苦しくても、何が何でも2ヶ月間、がんばり続けるゾ〜!」と、あまり肩に力を入れて取り組まないでくださいね。まあ、ぼちぼちと、「ぴっかりの言うことなんか、信じられないゾ。そんなにうまくいくワケないじゃないか!」「でも、だまされたつもりで、何となくやってみるか」ぐらいの感じでね。そのほうが、お子さんも緊張しないのでいいのです。
 それに、ガマンガマンで、お母さんの方が、自分のSOSサイクルにブレーキをかけっぱなしでがんばると、お子さんの方だって、ボクもがんばる!とブレーキをかけ、「ブレーキ競争」になってしまいます。ですから、一人ぼっちで取り組まず、お母さんのマイナス感情もまた、周囲の人にたくさん受けとめてもらいながらいってくださいね。

 あと、「1.親子関係が進んでいくメカニズム」でご説明したことは、「不安材料」として読むのではなく、「良い方向に向かい始めたことの励み」として利用してください。ただし、2ヵ月で、ここに書いてある「気がかりな様子」が全て無くなるというわけではありません。あくまでも、変化の「始まり」なのです。そして、「始まり」は、たいてい、一見たいしたことがないような、何気ない出来事の中に、その兆候が現れるものです。