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(9) 泣くことは、癒しの過程

人ごみの中で迷子になった、小さな子。涙を一生懸命こらえて、ママの姿を探し求めています。数分後、やっとママと再会。抱き上げられた子どもは、ママの胸の中で、号泣しはじめました。街でよく見かける光景。でも、よく考えてみると、ちょっと変です。ママに出会ったからには、もう泣く必要はないはず。なのに、今まで泣いていなかった子が、どうして?
実は、子どもが泣くとき、その多くは癒しの過程なのです。悲しいから泣く、寂しいから、怖いから泣く…というより、泣くことによって、心に溜め込まれた悲しさ・寂しさ・恐怖といったマイナス感情を吐き出し、心が傷ついてしまうのを防いでいるのです。
泣くことは、心の痛手から立ち直るために、生まれながらにもっている癒しのメカニズム。だから、「もう泣かないで」「いい子だから、泣きやんでね!」とせかすより、「寂しかったね。心ゆくまで、泣いていいよ」と、落ちつくまで抱きしめていてあげるほうが、心の健康のためにはよいのです。
けれども、私たち親は、子どもが泣き出すと、いてもたってもいられず、つい泣きやませにかかってしまいますね。
ひとつには、「子どもが泣いているのは、子育ての失敗」という、世間の常識や非難の視線を感じ、そうさせてしまうのでしょう。でも、子どもに泣かれるとイライラしてきたり、つらくなってしまう…というのには、私たち自身の心の問題もあるのです。
それは、私たち自身が、「泣かないのが、よい子」と育てられてきたことです。泣きたい気持ちを、心の奥底に押し込めながら生きてきました。だから、子どもに泣かれると、自分が抱えている「泣きたい気持ち」が刺激され、不快になってしまうのですね。
子育てにつまずいたり、親子関係が悪循環に陥っているという相談を受け、親子に出会ったとき、まずはママの心の中に「泣きたい気持ち」がたくさん詰まっているのを感じます。ママの苦しい気持ちを存分に吐き出してもらい、心からの涙が溢れてくると、自然に心がラクになり、子育てのつまずきを乗り越えられることが多いのです。そう! 泣くことは、大人にとっても、癒しのメカニズムなんですね。
近代化が進んだ社会ほど、自然な感情を表すことはタブー視されます。日本だって、平安時代の物語などを読むと、別れの場面などで、男の人だって、着物のたもとをグッショリ濡らすほど泣くような描写があります。そういう時代には、自然の癒しのメカニズムが働いていたので、現代社会のようなストレスはなかったことでしょう。
泣きたいときは、泣いていい。これこそが、子どもが教えてくれる最大のプレゼント。あなたも、泣きたくなったときには、無理に止めようとしないで、子どものように、心ゆくまで泣いていいのですよ。
ただ、「大人も泣いてよい」というのは、残念ながら、まだ社会の常識にはなっていません。あなたが泣き出すと、周りの人は混乱して、「だいじょうぶ?」と無用な心配をしたり、「親が泣いていて、どうするの!」と非難をしたり…という事態も考えられます。だから、安全に泣ける場所・場面・相手を賢く選んでくださいね。
                                             (おわり)

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