『ロラおばちゃんがやってきた』の主人公ミゲルとその家族は「ヒスパニック」である。「ヒスパニック」というのは、中南米のスペイン語圏出身の人たちとその子孫を指す。ヒスパニックといっても、メキシコ系、プエルトリコ系、キューバ系、ドミニカ系など、一口ではくくれない。なおかつ、メキシコ系はテキサス、カリフォルニア、ニューメキシコを中心としたアメリカ南西部、プエルトリコ系はニューヨーク、ニュージャージー周辺、キューバ系ならフロリダとか、だいたいの棲み分けが自然にできている。
ミゲルたちはドミニカ系。たいがいは、ニューヨーク・シティ周辺に暮らしているので、ミゲルたちのように、ヴァーモントへ引っ越すのは、とても珍しい。(作者アルバレス自身がそうなのだけれど。ちなみに、アルバレスは、ミゲルのママが勤めているらしき大学の卒業生。)
で、なにがいいたいかというと、多民族国家アメリカといっても、地域別に人種構成の違いがあって、ミゲルたちのいるヴァーモントのあの辺りは、白人率がひじょうに高い。すぐ近くにあったわたしの州立大学も、ニューヨークシティ近辺出身の学生が1/4くらいいるというのに、当時、全学生の95%は白人だった。外国人留学生も、1%に満たないくらいだったのではないか。これは、アメリカの民族構成から見ると、かなり異様というか、偏っている。しかも、大学、大学院での外国人率は、小、中、高をふくめたほかのアメリカ社会に比べて、高いのが普通なのに。わたし自身、学内で父兄からめずらしそうに見られたこともあるし、地元住民も、有色人種をこれまで見たことないのか、通りを歩いていたときに車内からやけにまじまじと見つめられたこともある。(ついでに、このあたりの人にとって、ニューヨーク・シティは別世界なので、そこに多種多様の人たちがいることは、まったく次元が違う現象だととらえている。)
これはたんなる憶測にすぎないが、南北戦争で奴隷が解放され、アフリカ系アメリカ人が北上するとともに、保守的な白人はさらに北上して、最後に居着いたのがヴァーモントなり、ニューヨークの北東部ではないかとさえ、思ってしまったのだ。けっして、現在の住民が差別主義者というわけではないだろうが、白人だけの生活が当たり前の人たちが、初めて見かけの違う人に会ってびっくりする気持ちは理解できる。(わたしも、見た目だけで英語が通じないと思われ、切手1枚買うのに苦労したことがある。先入観が先走って、こちらのいっていることなんか聞こえなくなったらしい。)知らないというのは、ほんとうに怖い。