愛すべき海洋ほ乳類 『いたずらラッコのロッコ』 神沢利子作、長新太絵(あかね書房)
今や、水族館のアイドルで、漫画『ぼのぼの』もヒットしたりして、すっかり日本人の心をつかんだラッコ。でも、私が幼かったころは、知らない人のほうが多かった。もちろん、私にとっても『いたずらラッコのロッコ』は衝撃だった。こんなオモシロイ動物が実在しているなんて!
海草にくるまり、海にぷかぷか浮きながら寝て、おなかにのせた石で貝を器用に割って食べる。そんな「事実」が摩訶(まか)不思議で、コロボックルや座敷わらしといった「妖怪」を彷彿(ほうふつ)させ、同時に、北の海にいけば会える生きものだと考えると妙にわくわくした。
学生時代、米国カリフォルニア州のモントレーに留学していたとき、野生のラッコに遭遇した。最初は、海面にゴミが浮かんでいるのだと思っていたら、しばらくすると、そのゴミが動きだした。ゴミはふにふにと動きつづけ、やがて、それは海草を巻きつけて昼寝をしていたラッコの親子だとわかった。赤ちゃんラッコが起きたらしく、お母さんラッコのまわりを泳いでいたが、やがて親子そろって沖のほうへ泳いでいってしまった。
ラッコのロッコとそっくり! 当たり前といえば当たり前なのだが、ひとり異国にいた身にとっては、なんともうれしい再会と発見だった。
この本がきっかけで、ラッコにかぎらず、イルカ、アザラシ、クジラなど、海洋ほ乳類はずっと好きだ。年に二、三回は、水族館へ会いにいく(できれば、野生のほうがよいのだが)。
本のタイトルを、「いたずらラッコ」ではなく、「イタズラッコ」(=いたずらっ子+ラッコ)という掛詞(かけことば)だと思いこみ、そのまちがいに気づいたのは大人になってからだ。それも子ども時代の楽しい思い出のひとつ。長新太さんによる愛嬌(あいきょう)たっぷりの絵も、ラッコびいきになる大きな決め手だった。
いたずらラッコのロッコ 神沢利子著・長新太絵
出版社 あかね書房
発売日 1985
価格 ¥ 1,260(¥ 1,200)
ISBN 4251063643
bk1で詳しく見る