『ポケットモンスタークリスタル 〜ライコウ 雷(いかずち)の伝説〜』
外伝ということで、サトシ&ピカチュウを初めとするレギュラー陣は出てこない。ポケモンアニメの次シリーズパイロット版としてなのか、はたまた、あくまで外伝なのかはよくわからないが、この番組をつくった意義ははたしてあるのだろうか。
「ポケモン」といっても、ゲーム、アニメ、マンガ、カードとジャンルがたくさんあって、それぞれに個性があるため、ここではアニメ版とだけ比べたい。それも、毎週放映されるテレビ番組ではなくて、劇場版とスペシャル版『ミュウツー我ハココニ在リ』に限定する。
まず、バトル。映画、スペシャル版は、毎週のアニメで見られない、迫力あるバトルが売りなので、べつにクリスタルでなければいけない理由はない。クリスタルだからできること、できたこともない。ライコウを初めとする主要ポケモンにとっては初めての活躍の場だったが、これも、映画&スペシャル版では当たり前のこと。
主役のトレーナーが変わったのは、ゲームの設定に合わせた以外には(ゲームからのファンにしてみれが、この点が一番重要なのかもしれないけれど)、これといってメリットはないように思える。主役の三人を、サトシ、カスミ、タケシと比べると、共通項が多くて(正義感が強くてとにかくポケモン大好きな主人公、ちょっとミーハーで自意識過剰気味のヒロイン、女好きで三枚目の仲間)、とくにきわだった個性や独自性はない。逆にいえば、サトシ、カスミ、タケシは、ケンタ、マリナ、ジュンイチでも代替可能ではないかともいえる。もともと、サトシたちはポケモントレーナーとして「こうあるべき」姿の象徴みたいなものだから、レギュラー降板から復帰を果たしたタケシはまだ別としても、キャラがあまりたっていない(悪くいえば、没個性的な主人公←決して悪い意味で言っているのではない。没個性的だからこそ、感情移入できるという利点もある)。サトシが主人公のはずなのに、ポケモンのほうばかり目立ってしまって、あまり一般認知度が高くないのもこのためだろう。
そして、ピカチュウとロケット団トリオがいないこと。これが一番大きいし痛い。というか、穴うめもまったくできていない。「Pikachu the Movie」というキャッチが定着しているように、「ピカチュウ」と「ポケモン」はほぼ同格である。ポケモンファンはこれに異を唱えるかもしれないが、世間認知度的には、そうである。ピカチュウのいないポケモンアニメは、まる子のいない『ちびまる子ちゃん』であり、ドラえもんのいない『ドラえもん』である。それほど、価値が激減する。そして、サトシは、あのピカチュウがいるからこそ、主人公になり得ているんだと再認識してしまう。ピカチュウほどでないにせよ、ロケット団トリオ(ムサシ、コジロウ、ニャース)も、アニメのオリジナルキャラで、しかも主人公軍団の人間たちよりも存在感が強いのだから(なんたって、サトシよりもグッズが出ているくらいである)、いないのはとても不自然だった。通常の番組とはちがって、映画やスペシャルではサトシサイドについて、助けたりちゃちゃを入れたりするのも、それはそれで作品のほどよいスパイスになっているのだ。
結論からいうと、ストーリーとバトルは今までと同じ路線で、サトシ、カスミ、タケシとあまりかわらない主人公たちが活躍して、しかもピカチュウとロケット団トリオがいないこのスペシャル、あまり意義を感じられなかった。やはり、ポケモンアニメの立役者は、アニメを通じてその存在を確立したピカチュウとロケット団トリオなのである。主人公三人にほんわかと恋愛感情がからんでいたのが目新しいかもしれないし、そしてそれを喜ぶファンもいるかもしれない。が、だからといって、ピカチュウとロケット団トリオを差し引いたら膨大な赤字である。ポケモンファンでない人が、ポケモンアニメを見たらこんな感じかな?とさえ思ってしまった。つまり、「理屈抜きにおもしろい!!!」と言わせる魅力は見いだせなかったのである。
ポケモンのアニメファンの反応(というか、機嫌?)をうかがってか、アニメの最初と最後に、わざわざ「どこにでも」「だれにでも」などという言葉を補っていたのも気になった。ポケモンアニメのヒーローはサトシだよと強調するために(=サトシは特別だから安心してね!というようなメッセージをこめて)、わざわざつけたのだろうか。
個人的に細かい感想:
・直後にすぐ本編をやるというのに、予告編、予告編とうるさい&しつこい。
・主人公トリオ、髪型変すぎ。前髪から枝が生えているようなケンタ、とさかもどきのジュンイチ、なんとかして。
・スピアーがいい役で登場してくれたのがちょっと嬉しい。
・ライコウ、やっぱりカッコわるい。映画にも出させてもらえない扱いで、気の毒に。
・オープニングにちょびっと出てきたヒノアラシが可愛い。ついでにプリンもいつもながららいい味をだしている。
・ムウマが個人的には一番よかった。