ポケモンはアニメで成功した、初めてのゲームである。ポケモン・アニメ、というと、97年12月の事件を思い出す方も多いかもしれない。しかし、あれはアニメ製作技術に問題があったのであり、ポケモンのコンセプト自体は全く悪くない。ポケモン自体は、「安心して子どもに見せられる」と親からの支持も高い。休止している間も子どもの支持は変わらなかったし、再開してから現在まで、人気は相変わらずだ。昨年は映画化もされ、『踊る大走査線』に続く邦画第二位の興行成績をあげた程だった。『ドラゴンクエスト』、『ファイナルファンタジー』、『スーパーマリオブラザーズ』など、これまでの大人気ソフトでさえ、なし得なかったワザだ。では、ポケモンはどうして成功したのか?
アニメ・ポケモンは、基本的にはゲーム(RPG)とストーリーは一緒である。主人公の少年(アニメではサトシ)が、ポケモンマスターめざして、ポケモントレーナー修行の旅をする。各回は一話完結で、行く先々で色々なポケモンや人に出会い、サトシは少しずつ人間として、トレーナーとして成長していく。
それぞれの話は、昔からよくあるパターンを踏襲している。善玉の主人公(サトシ)一行の行く先々で事件がおこり、そこに悪玉(ロケット団)が邪魔に入り、悪玉をやっつけ、めでたく事件も解決。昔人気があった、『タイムボカン』シリーズなどをついつい思い出してしまう。必ず勝つ主人公に、何度負けてもめげない、ちょっと抜けていて、ユーモラスな悪役。『タイムボカン』にしろ、ポケモンにしろ、適度なはらはらと、十分な安心感のあるアニメだ。
サトシは、ゲームの主人公とはだいぶ異なっている。 RPGでは、才気あふれる有望なトレーナーの主人公(プレーヤー自身)がさくさくと課題をクリアしていくが、主人公が第三者であるアニメでは、ゲームと同じ人物設定では味気ないからだろう。サトシは、ポケモンへの愛情は人一倍だが、ドジで短気。「ポケモンゲットだぜ!」が口癖の割には、全然ポケモンをゲットしない。サトシの持ちポケモンは、そんな彼のポケモンに対する熱意に打たれて、自分から仲間になる(「友情ゲット」と呼ぶ)場合がほとんどだ(ちなみに、ゲームには友情ゲットなんてない)。ゲームでは、ポケモンはゲットした途端に従順になってしまうが、アニメではトレーナーとして未熟なサトシの言うことを聞かなかったりするポケモンもいて、彼の失敗、苦労は絶えない。しかし、そんな等身大のサトシが持つ親しみやすさ、ポケモン大好きさが、アニメをゲームより、より近いものとしたのかもしれない。
また、アニメ・ポケモンは、ゲーム最大の特徴であるポケモンたちを最大限に活かしている。まず、主役のピカチュウ。容姿の愛らしさもあって、ゲーム発売当初からの人気ポケモンではあったが、アニメ化によって加わった、声、しぐさ、性格が、ピカチュウの魅力を最大限に引き出し、突出したキャラクターになった。
さらに、アニメでは、毎回異なるポケモンが登場する。ピカチュウがアニメ全体の主役であるのに対して、各回ごとの主役ポケモンがいるのだ。ポケモンは、現在RPGに登場するものだけでも151種類。しかし、一般的認知度が高いのは、ピカチュウを含めた数種類だろう。それぞれの人にとって、いわば「脇役」にすぎないポケモンたちを、アニメでは各回で主役にピックアップし、きちんと描く。そこで、新しい発見と親近感が生まれる。
ポケモン・アニメは、ゲームの世界観を守りつつ、アニメとして、もう一つの独自なポケモン世界を創り出した。ポケモンにおいてゲームとアニメは、共通点と相違点が巧みにからまり、お互いに補完しあっている。ところで、モンスターといえば、先に挙げた「ドラゴンクエスト」、「ファイナルファンタジー」にもたくさん登場している。しかし、なぜこれらはアニメ化でヒットしなかったのかについては、別の機会で論じたい。