『バレエ・ダンサー 上・下』 2000.6.28更新

ルーマー・ゴッデン著、渡辺南都子訳、偕成社、ともに1800円(税抜)

読んだのはもう2、3年前のこと。バレエが趣味だから、当然バレエものは押さえるのだが、その中でもピカ一。いや、「バレエものでは」という冠はいらない。単純に物語としてすごく良いです。しかも、主人公が男の子だからというわけじゃないが、バレエ=オンナの子向けという固定概念をつき崩す程のしっかりした物語です。最初にバレエを習っているのは、主人公のデューンではなくて、お姉さんのクリスタル。しかし、クリスタルだって、容姿、才能ともにプリマになれる素質が十分にあるんだけれど、とんでもないダークホースがいて、それが弟なのです。バレエを軸に、この姉と弟の確執がすごい。要は才能の世界ですからね。蝶よ、花よと大切に育てられてワガママいっぱいの姉と、みそっかすでいつも邪魔者だったけれど、素直を絵に描いたような弟。どっちも魅力的です。デューンの思いっきりピュアなバレエへの愛も、単なるイヤなライバルというだけじゃなくて、挫折して、それでもバレエをやめられないというクリスタルのガッツもいいなあ。

『壁のむこうから来た男』 2000.6.28更新

ウーリー・オルレブ著、母袋夏生訳、岩波、1748円(税抜)

イスラエルの作家、オルレブの作品で、原書はヘブライ語。第二次世界大戦中に、ユダヤ人のゲットーへ忍び込んで物資を運ぶ義父と少年マレクの話。じつはマレクの亡くなった実父もユダヤ人だったんです。戦争がいかに人間の良心をむしばんでしまうかとかがよく描かれている。戦争ものって、どうしても暗くなりがちで、あまり、これ!と思うのはないのですが、こういうふうに、少年の目で周辺部分を突くみたいなところが気に入った。

『悪者は夜やってくる』 2000.6.28更新

マーガレット・マーヒー著、幾島幸子訳、岩波、1700円(税抜)

とても評価の高い児童文学作家で、たくさん翻訳も出ているのですが、いままでこれ!!!!というお気に入りはなかった。だから、この本が出てすごく嬉しい。学校の図書館に入れるために、生徒が物語を書くようにいわれる。その理由はコーヒーメーカーを買ったがために、本の予算がなくなってしまったというところからして、ぶっ飛んでいてナイス!最初は学校の宿題なんて、けっ!とか思っていた主人公なんですが、突然本の主人公のアイディアがひらめいてしまった。で、その本の主人公は現実世界に飛び出てきて、あれこれ注文をつけたりするし、はたまた妹が勝手に物語を書き加えちゃったりで、はちゃめちゃに展開していくのだが、それがなんともバランスが良い。作品を読む楽しさに加えて、物語をつくる楽しさってのが、たっぷり味わえます。すごい悪者だというわりには、ユーモアのきいた物語の主人公も良い。挿し絵も、作中の本の主人公などが「ナイトメア・ビフォア・クリスマス」っぽく不気味でしゃれた感じで好き。

『ダンデライオン』 2000.6.28更新

メルヴィン・バージェス著、池田真紀子訳、東京創元社、1900円(税抜)

なんともハードな話。14歳の主人公の少女ジェンマが、家出したボーイフレンドのタールを追って、プー生活を始めるんですが、やがて二人は同年代のジャンキーカップルと同居し始める。で、案の定、楽しい共同生活はほんのつかの間。それからはみんなジャンキーまっしぐら!!自分たちは「いつだってやめられる」とか言っているけれど、そんなに人生甘くない。コカインづけなのに子ども産んでしまったりと、かなり過激です。それでも、ジェンマの芯の強さがピンとしていて良い。逆に、どうしようもなく墜ちていくタールには、人生の無常を感じてしまった。家出した当時は、一点のしみもないような純な男の子だったのに、いつの間にか、ジェンマや友達からお金はぬすむ、平気で嘘はつく、はたまたジェンマに暴力ふるったりと、すさんでいきます。それでも、彼は彼なりにはいあがろうと頑張るところが切ない。字は小さいし、本は厚いしでしたが、読み始めるととまらなかったです。強いて文句を言うとしたら、1900円という値段は高すぎる。ペーパーバックみたいな装丁なのに!

『黄金の羅針盤』『神秘の短剣』 2000.6.28更新

フィリップ・プルマン著、大久保寛訳、新潮社、2400円、2100円(税抜)

久々に登場した大型の本格ファンタジー。ナルニアもゲド戦記もリアルタイムで知らない私としては、この作品がタイムリーに読めるのは素直に嬉しい。全3巻で、最終巻の原書は今年の夏だか秋だかに出るらしい。『黄金の羅針盤』では現実世界と似ているけれど、違う世界が登場。私ら人間との違いの一つとして、ここの人たちは「ダイモン」という守護精霊みたいなのを必ず持っている。これは自分の精神の一部というか、影みたいなもので、肉体から離れると生きていけない。子どもの時は、色々な動物に変身するのだけれど、大人になると、一定の動物(サルとかイヌとか)の姿に固定してしまう。『神秘の短剣』の方は、私たちの世界と同じようなもの。『黄金』の最後にこの2つ目の世界へのつながりができるのです。ちなみに、主人公は、『黄金』では女の子ライラ、『神秘』では男の子ウィルとライラ。このふたりはともに世界のカギを握るキーパーソンなんです。いろいろ象徴的な意味や、伏線もたーーくさんある。でも、最終巻が出ないと、全容はわからない。とにかく波瀾万丈で、読んだら止まらない本なので、少しでも興味がある方はさっさと読みませう。ぜったいに損はしませんよ。




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