「院長からのお便り」バックナンバー
               これまでに表紙に掲載したお便りです

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 No.14 (2001.11.12)「熱性けいれんと予防接種」

 このHPに「熱性けいれんの部屋」というコーナーがあります。検索エンジンのYahooで「熱性けいれん」を調べるとこのHPだけが表示されることもあり、多くの方々から質問のメールが来ます。特にこの時期はインフルエンザワクチンの接種に絡んだ質問が急増します。
 以前は熱性けいれんを起こしたお子さんの予防接種は1年間できないと言う規定がありましたが、現在では医師の裁量に任されています。かつて1年空けていたのは「けいれんがなぜおこるか良く分からないので、なるべく刺激になる可能性があるものは避けよう」という発想によるものでした。一方「熱性けいれん児はできるだけ発熱を避けるように」との考えからあまり間隔を置かずに接種するという考え方もあります。また予防接種が(麻疹接種後の発熱の問題などを除けば)けいれんの誘引にはならないこともはっきりしてきました。
 しかし今でも半年程度の期間を空ける医師が多く、「早く予防接種をしたいのにできない」という悩みをお持ちの方が多くいます。また「多くの医師は接種はしばらく控えるのに、早く接種しようという医師もいるがどうなのだろうか?」という疑問のメールも来ます。
 私は全身状態が落ち着いていれば、けいれんから1ヶ月程度でも接種を行うことがあります。しかしこれが絶対に正しいと言っているのではありません。「けいれんの引き金になるのでは」という不安と「なるべく発熱をおこさないように」という試みのバランスをどこにおくかという問題です。まず熱性けいれんとは何かをよく理解して頂くことからすべてが始まりますが、これは医師と患者さん(家族)との共同作業であり、一方的に「こうしなさい」とか「これが正しい」とは言い切れない面があります。


No.13(2001.9.11)「SSPE」

先日このホームページをごらんになった方からメールを頂きました。ご本人から了承を得ておりますので、メールの内容を転載します。

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麻疹についてインターネットで検索している中で、ホームページを拝見しました。

次女 文は1980生まれ が、高校2年生の時(1997.6月)にSSPEを発症し、現在人工呼吸器を装着して、自宅におります。意識はありません。親の会(SSPEあおぞらの会)で、最近、麻疹の流行が増えていること、
予防接種の勧めをどうしたらよいか、が話題になっています。

ホームページを拝見し、麻疹の予防接種の勧めをお話くださっていることで、心強く感じました。知人に麻疹の予防接種の勧めをする際、マイナス面はどうなのかを、インターネットで調べている最中だったものですから。

患者さんにお話しいただく時に、文のような患者がいることをお話しいただくことで、接種の勧めの後押しになるようでしたらぜひ、お使いください。写真等、お使いいただくこともかまいません。又、予防接種の接種率を上げるにあたって、もし親の会でできることがあれば、お教えいただけますでしょうか。

ちなみに、文の場合、麻疹罹患は11ヶ月、当時、予防接種は1歳半からでしたから、接種前でした。潜伏期間はちょうど16年、とSSPEにしては特に長い方です。16歳11ヶ月の時、「足がぴくっとする」と言い出し、ホームドクターに、横浜市大神経内科に紹介していただき、1ヶ月後に診断がつきました。その後は、9ヶ月半で、意識がなくなり、その一ヶ月後に呼吸が厳しくなると言う、SSPEのなかでも、早い進行でした。

先生のプロフィールを拝見しました。文は、湘南高校でした。先生の後輩にあたります。

今の文の仕事は、こういう状態でも、訴えることはできることだ、と考えて、看護学生さんの実習を積極的に受け入れたり、いろいろな方に、文のことを話したりしています。毎日の生活では、訪問看護婦さん(週5日、計7回)やボランティアの方にたいへんお世話になっています。

突然のお便りで失礼いたしました。
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これにはちょっと説明が必要ですね。メールの中にあるSSPEとは「亜急性硬化性全脳炎」という病気の略で、これは麻疹にかかったときにウイルスが脳にまで入り、5-10年あるいはそれ以上たってから症状が現れるものです。
麻疹にかかった人の10万人に1人程度に起こります。残念なことに麻疹のワクチンでも起こることがあるのですが発病は100万人に1人程度と1/10に減らすことができます。進行を抑えるいくつかの薬ができて来ましたが、病気そのものを治すには至っていません。
麻疹についてはこれまで病気の重さや感染力の強さについてお伝えしてきましたが、このSSPEのことも知って頂きたいことです。
上記のメールは多くの小児科医に伝え、各地で講演や資料作成の参考にして頂いています。またいくつかの報道機関にもお知らせしてご家族の意思が形になるように努力しています。


 No.12(2001.7.2)「大人の予防接種」

いつのまにか今年も半分が過ぎました。春から夏は小児科の患者さんが少ない季節ですが、今年は水痘やおたふくなどの方が続き大人の発病も目立ちます。(ファミリークラブ通信39号をご覧下さい)

 予防接種の対象となる病気の中で一番の問題は麻疹です。韓国は乳児期の接種に加えて4-6歳で2回目の接種をしますが、接種率が低く流行が収まらないとして、小中学生500万人に緊急接種を行って根絶を目指しています。一方日本ではまだ「麻疹はカゼの重いもの」程度の認識で麻疹後進国のままです。また「実際にかかったほうが強い免疫ができるから接種しないほうがよい」という本末転倒な話が出てくるのも日本だけでしょう。この考えのどこが間違っているかお分かりですね。

夏は予防接種を避けるという考えが以前はありましたが、現在では根拠がなくなっています。幼稚園や小学校に行く方は休みの間に接種を済ませるのが効率的です


No.11 (2001.3.20) 「インフルエンザ流行中です」

 この冬はもう流行しないかと思われたインフルエンザですが、2月中ごろから少しずつ出てきました。そして3月に入り患者さんが急激に増加しています。とくに中旬からは毎日多くの患者さんがインフルエンザと診断されるようになりました。インフルエンザは普通は1-2月頃に流行のピークがあり、3月も下旬になればほとんど下火になりますが、今年は何とも異様な流行状況です。大人の方の高熱に引き続いてお子さんも発病するパターンが多く見られています。日頃元気な大人の方がこの時期に高熱や強い倦怠感があるようでしたら、早めに治療を開始して家庭内感染を最小限に食い止めることが大切です。

 これまでもお知らせしていますが、インフルエンザの診断と治療はここ数年著しい進歩を見せています。これまではウイルスの証明に手間がかかり、冬に熱が出てあるていど症状が強ければ「インフルエンザ」と診断され、特に効果がある薬もないので、一応解熱剤と念のために抗生物質を処方するという具合でした。しかし今ではインフルエンザウイルスを簡単に証明できるようになり、またこのウイルスに効く薬も発売されています。

 人間がかかるインフルエンザにはA型とB型があります。現在簡単に使える検査キットにはA型を検出するものとA型B型の両方を検出するもの(AかBかは分からない)の2種類があります。A型に効果がある薬(シンメトレル)が2年前から使われていますが、今年はこれに加えてAB両方に効果がある薬(リレンザとタミフル)が発売されました。しかし小児に使えるのは今のところシンメトレルだけですので、インフルエンザを疑った場合お子さんにはA型の検査をして陽性ならシンメトレルを、大人にはAB両方で出る検査をして陽性ならタミフルをお出ししています。

 この1-2月はインフルエンザの代わりにウイルス性胃腸炎、水痘(みずぼうそう)、おたふくかぜが目立っていました。嘔吐や下痢をおこすウイルス性胃腸炎は通常10-11月頃に多いのですが、昨秋少なかった分年が明けてから増えています。水痘やおたふくかぜは一年中ある病気ですが、これも1月から多く見られています。とくにおたふくかぜは5年ぶりに流行期に入ったと言われています。

 おたふくかぜは耳の後ろの耳下腺が腫れるだけでなく、激しい頭痛や腹痛で入院が必要になることも多いものです。また耳の神経に影響を与えて難聴を起すことも知られて来ました。ワクチンでかかる可能性をできるだけ減らしておきたいものです。

 4月からの入園や入学を控えている方も多いことでしょう。3月中にワクチン接種をできるだけ済ませておきましょうね。


No.10 (2001.2.4) 「インフルエンザはもう流行しない??」

 この冬はインフルエンザが流行するという予測に反して、大変静かな毎日です。それでも1月下旬から全国各地(特に関西地方)で少しづつインフルエンザの発生が報告されています。全く流行しないことはないでしょうが、大きな流行は幸いにして避けられそうです。

 インフルエンザが少ないのはこの冬北半球で広く見られています。インフルエンザの流行株が変わったのである程度の流行は起こると考えられていましたが、今のところは外れています。

 その理由は不明ですが、大陸の大寒波が影響しているのではとの考えがあります。中国奥地やモンゴル、シベリアではこの冬大寒波に襲われており、遊牧民の羊が凍死しているという報道も見られますが、このために渡り鳥の飛来が早まり、例年12-1月に北国から日本に渡ってくるものが秋のうちに来ているそうです。インフルエンザはこの渡り鳥が媒介しますが、ウイルスが増殖する以前に故郷を離れてために日本に到着したウイルスが少なかった、という説です。自然環境が悪化して渡り鳥がいなくなったらインフルエンザもなくなるのでは、という考えもあるほどです。

 私のところに限らず、この1月は全国の小児科で患者さんが少なかったとのことです。病気の方が少なくて医院が暇なのは結構なことです。のんびりとやっていますので、何でもお気軽にご相談ください。
   


No.9 (2001.1.1)「21世紀の小児クリニック」

これまで病気の治療が中心だった小児科の仕事も時代と共に変わっています。これからの小児クリニックのあり方を考えてみましょう。

25年前と何が変わったか:
 100年前のことは知りませんので、私が医師になった25年前を例にとります。ちょうど今若いご両親になっている皆さんが子どもだった頃ですね。当時小児科に入院する方の多くは脱水症や喘息の治療のためでした。その後嘔吐を抑える坐薬や長時間効果がある気管支拡張剤の出現などにより、入院者数は明らかに減少し、このため小児科病棟を閉鎖する病院も出て来ています。しかし今話題のインフルエンザ脳症など小児科の入院設備がどうしても必要な病気はいくつもあります。その維持には人手も経費もかかりますし、重症の患者さんを診る医師はそれに専念してもらう必要もあります。軽い症状の患者さんはまず診療所で診察し、必要に応じて病院で手間のかかる検査や入院ができる分業体制を進めていくことと同時に、病院小児科への公的援助も重要になるでしょう。

病気の治療から予防へ:25年前はちょうどワクチンの副作用のために三種混合の接種を一時中断していた時期で、多くの百日咳のお子さんが入院し、中には亡くなる方もいました。その後三種混合は安全性の高いものが使用されていますが、今でも接種が遅れたための百日咳が時々あることは残念です。麻疹も激減しましたが、これも接種もれの方から乳児に感染するという流行が伝えられます。以前は誰でも知っていた病気が予防接種の普及であまり縁のないものとなったために、なおさら接種を呼びかける必要が高まってきたといえましょう。

病気のほかに事故の防止も:これまでもお伝えしてきたように、現在では病気よりも事故の方がお子さんの健康を損なう大きな原因となっています。最近もジェットバスで髪が引き込まれて死亡した女の子やレーザーポインターで目に障害をおこすことなどが報道されています。その時は注意するものの、稀な事故であれば次第に忘れ去られます。「このような事故があった。家ではこのように注意しましょう。」と伝え続けることも重要な役割と考えます。

いかに情報を伝えていくか:ただクリニックで待っているだけではなく、お子さんが健康な時にどうやって健康を維持するための情報をお伝えするかが重要になります。院内報やHPに加えて、新しいお母さんを対象としての「赤ちゃんケア入門講座」といった企画も考えています。また障害を持っておうちで生活しているお子さんへの支援も大きな課題です。家族の皆が健康で快適な毎日を過ごすことはどのご家庭にも共通した願いです。そのお手伝いが小児クリニックの目的なのです。


No.8 (2000.11.26)「インフルエンザが少しずつ近づいています」

 
インフルエンザワクチンの予約は順調に進み、毎日多くの方が来院されています。一時ワクチンの供給に滞りがあり接種予約を中止しましたが、現在は予約を再開しています。しかしこれも限りがありますので、ご希望の方はお早く申し込み下さい。
 また予約をされていてまだ接種を始めていない方は、早く接種を開始するようにして下さい。

 全国各地でインフルエンザの発生が報告されています。2年前からのどや鼻を綿棒でこすって簡単にインフルエンザが診断できるキットが使われるようになり、それまでの結果が出るまでしばらくかかる面倒なウイルスの検査にかわって発生がすぐ分かるようになりました。横浜でも2例報告されていますが、幸い周囲への流行とはなっていません。インフルエンザウイルスはすでに私たちの周囲にはいるものの、気候(低温と乾燥を好む)などの条件がそろわないので多くの方が感染するほど増えてはいません。しかし流行となるのは時間の問題ですので早めの予防が大切です。

 本日「東日本小児科学会」に出席し、そこでインフルエンザワクチンの最新の動向を聞いてきました。
現在使われているワクチンの最大の難点は、効果が70%程度と完璧ではなく、また小児では2回接種が必要なことですが、現在米国で試験中のワクチンは1回で90%以上の効果があり、また注射ではなく鼻に噴霧するというものです。実用化されれば患者さんの負担も大幅に軽減されることでしょうね。


No.7 (2000.11.1) 「インフルエンザワクチン」

 このところインフルエンザワクチン接種で多くの方が来院されています。そんな中、10月29日の朝日新聞日曜版「ふしぎの国の医療」でインフルエンザ脳症と解熱剤の関係がとりあげられました。この問題については後日詳しくお知らせしようと思いますが、その記事の末尾に下記の文面がありました。

   ”一方、学童に効かないと分かった日本のインフルエンザワクチンが、その後、特別な
  研究もないのに「高齢者には効く」ことになった。根拠の乏しいまま何十億、何百億も税金
  を使おうとする行政も理解しがたい。”

 一生懸命予約を取って安くはない料金を払って接種しようとする方々には冷や水を浴びせられるような話です。この問題はインターネットの会議室などでも大きな話題になりました。また来院された方からも質問を受けました。
 
 「学童に効かない」というのはかつて前橋市で行われて調査で「ワクチン接種によって冬の学童欠席率を改善できなかった」というもので、これを根拠にそれまで行われていた学童への公的(無料)接種を中止したという経緯があります。しかしこれはインフルエンザを「集団かぜ」とのみ捉え、一般のかぜとは重症度が異なる重い病気としてに認識に欠けた調査でした。その後の流行株を予知する方法の進歩と相まって、ここ数年小児にも老人にも効果があることが明らかになっています。特に老人では昨冬の調査で1回接種でも2回接種と変わらない効果があることが分かりました。

 世界的に広く行われている接種(インフルエンザに限らず)に否定的な論調がでるのも「ふしぎの国」ならではという見方もあります。かつての厚生行政がワクチンの副作用発生そのものをすら認めなかったというかたくなさは批判されるべきですが、目の前のお子さんを病気の脅威からどのようにして守るかを第一に考えたいと思っています。

 厚生省といえば、10月半ばになって「13歳以上65歳未満は従来どおり2回接種」との方針を明らかにしました。65歳以上は1回で効果があるという研究成果があるが、65歳未満では不明である(研究の結果不明ということではなく、研究をまだしていない)という理由です。半年前にはワクチンの使い方(これも厚生省が関与)
としてすでに13歳以上は1回か2回ということが明文化され、市中の医師はそれに従って患者さんに説明しワクチンを注文しました。1回でもかまわないとされたものが急に2回必要と言われてもいまさらワクチンを追加することもできません。

 当クリニックは昨年大人の1回接種をお願いしましたが、今年も同様の方針です。厚生省が研究成果がないと言っても、インフルエンザワクチン1回接種は世界の広く行われている方法だからです。来年にははっきりした研究成果がでることでしょう。



No.6 (2000.9.19) 
                
 リクルート社から「赤ちゃんのためにすぐ使う本」という育児情報誌が創刊されましたが、この中の記事に私がちょっと顔を出しています。「ベストマッチな医者に出会う方法」という記事で、お母さん方のアンケートに対する意見を編集者の方にお話した内容がまとめられています。あくまでも医者探しというか医者との付き合い方の入門編といった内容ですが、機会があればご覧下さい。(クリニックにも展示してあります)

 その記事でも「小児科医が少ない」といったことが書かれています。事実小児科に進もうという医学生は少なく、また中規模病院で小児科をやめるところが増えています。しかし同時にこれまでなら病院勤務を続けていたような小児科医の開業が増えているという側面もあります。私のところは開業して7年半ですが、この間に周囲に3軒の小児科が出来て大変小児科密度の高い地域となりました。患者さんにとっては選択肢が広がり、それぞれのニーズにあった小児科が選べるという、全国的に見ても稀な状況かも知れませんね。そのような「激戦地」で小児科クリニックを運営していくために皆さんの要望にいつでもお答えできる力と体制を作っていかなくてはと思います。

 このホームページから私のところへ直接メールを送って頂けますが、先日患者さんから、「どんなことでも相談していいのでしょうか?」 「医療費はかかるのでしょうか?」というご質問がありました。メールでのご質問はどのような内容でも結構ですが、拝見するまで時間がかかることがありますので、緊急のご用には間に合わないかも知れません。これまでの多くは予防接種のスケジュールのことで、その他ミルクの飲みや体重増加に関するものもありました。医療費や相談料は別にかかりません。何かの際に私のクリニックを受診して頂ければそれで十分です。

 早いもので今年もインフルエンザワクチンが話題となる時期になりました。詳細は今月末発行(予定)のファミリークラブ通信などでお知らせしますが(このホームページにも転載します)、昨年のようなワクチン不足の大混乱だけはないように願っています。接種は10月下旬から開始の予定です。今冬は流行株(ウイルスの種類)も替わり、3年ぶりの大流行が予測されています。そのためワクチンの重要性もこれまで以上と考えられます。円滑な接種のための体制作りと準備を進めていますが、早めの接種を心がけるようにお願い致します。


  No.5 (2000.8.29) 「外来小児科学会」

 8月も終わりですが、暑い日が相変わらず続いています。今が一年中で小児科の患者さんがもっとも少ない時期です。その理由は不明ですが、夏休みでゆとりを持った毎日を過ごせる、学校や幼稚園がないので感染の機会が減る、といったことも考えられます。患者さんが増えて来るのは9月半ばからですね。それまでに予防接種などはできるだけ済ませておきたいものです。

 8月26日(土)に一日だけ臨時休診しました。例年この時期の土曜に休んでいますが、これは「日本外来小児科学会」に出席するためです。ファミリークラブ通信を愛読されている方はご存知かも知れませんが、この学会は難しい病気の研究のためではなく、小児科クリニックをどのように運営していくのが患者さんと医師にとって好ましいことかを考える会なのです。今回私は院内でどのような迅速検査(ファミリークラブ通信の部屋をご覧下さい)を行うことが望ましいかというワークショップのリーダーをしました。またファミリークラブ通信を展示して全国からの参加者に見てもらいました。

 「小児科」というとこれまでは内科のおまけのような存在と思われていた方が多いかも知れません。しかし小児科は発達途上のお子さんを診るという特殊性があります。体が出来上がった大人を診るのとは違う知識や経験が必要となります。「外来小児科学会」は小児科にすべてを賭けた医師の集まりといえましょう。他の学会は休診せずに時間の許す範囲で出席していますが、この学会だけはお休みを頂いています。

 学会中に30人ほどで懇親会を行いましたが、店の人から「皆さん禁煙団体の方ですか」と聞かれました。それは誰一人としてタバコを吸っていなかったからです。タバコはお子さんが誤って飲む事故のほか、吸う人だけではなく周囲への障害や環境の悪化など良いことは何もありません。吸うと気分が落ち着くというのは麻薬と同様の習慣性や耽溺性によるものです。また親が吸うことの最大の問題はその子どもが抵抗なく喫煙を始めてしまうことです。タバコの誤飲で来られた方にはかなり厳しくお話していますが、それは皆さんすべてにお話したいことでもあります。

 小児科医がタバコの害をお伝えするのは義務だと思いますが、自分自身で吸っていては何の説得力もありません。食べたい放題食べて太っている医師が減量を勧めても何の説得力も無いのと同じです。私は懇親会出席者がだれも喫煙しなかったことを嬉しく思います。ただ学会場の喫煙所でタバコを吸っていた少数の方の大半が若い女性であったのは残念です。

 小児科は単に病気を診るだけではなく、このような生活上の問題にも立ち入ることがあります。予防接種のことも同様です。「かぜを診てもらいに来たのに、何でいろいろと他のことも言われなくてはならないのか」とお思いの方もいるかも知れませんが、それが本当に健康な毎日を送るためのアドバイスなのです。


 No.4 (2000.7.23) 「夏の予防接種」

 暑い毎日が続きますが、みなさんお変りありませんか? 今の時期熱が出る方が多いようです。手足口病を始めとするウイルス性の夏カゼから色々な細菌感染までさまざまです。

 以前は「夏は予防接種をしない」という考え方があったのをご存知ですか? 今でもそのように思っている方もおられるようですが、今回はこれについてちょっと書きましょう。

 5年前までは、麻疹のワクチンは7-8月をできるだけ避けるようにという注意がありました。また他のワクチンもなるべく避けるようにとの考えがあり、今でもそのように指導している医療機関があります。その理由はどこにも明示されていないのですが、広く信じられているのは「夏は暑くて体力が消耗するから、余計な刺激は与えないほうが良い」というものです。それでは熱帯地方の子どもはいつまでたっても予防接種ができないではないか、との反論がすぐ出る程度の話です。実際は「夏はウイルス性の下痢症などが多くて免疫のでき方が悪いから」ということなのですが、これも昭和20-30年代の衛生状態をもとにした発想です。

私は「夏の予防接種は避ける」という考え方は過去のものと思います。しかし高温で体力の消耗があるのは事実ですから、外出するだけでも大変な日や時間は避けて来院し、接種後は早く帰宅して室内で過ごす、といった注意は必要です。一方で幼稚園や学校に行っている場合、夏休み期間中は他のお子さんから病気をもらってくる可能性が減りますので、みずぼうそうやおたふくかぜについては効率的で望ましい接種時期ということもできますね。
                                                   


 No.3 (2000.6.18)    「手足口病と登園停止」

  今年も夏カゼの代表格、手足口病の患者さんが増えてきました。手足口病は文字通り手と足と口の中に発疹が出来る病気ですが、時に高熱が続いたり、口の中の痛みで水分も取れなくなったりします。幸い今の所は軽い症状の方がほとんどです。この病気をおこすウイルスは何種類もあり、その違いで発疹の出方や症状の程度がいろいろ変わります。一度なったからもうかからないというものでもありません。

 症状が軽い場合に一番問題になるのが保育園や幼稚園に行ってよいかどうかです。以前は発疹が消えるまでは登園停止とされていましたが、現在の文部省の基準では「全身状態が安定していれば登園(登校)はかまわない」とされています。要するに元気だったら休む必要はないということです。それでは他の子にうつしてしまうのでは、というご心配はもっともで、事実周囲の子にうつしまくり流行は続きます。

 それではどうして登園してもかまわないのでしょうか。実は一度かかるとウイルスを1ヶ月近く出しつづけるので、発疹があるときだけ登園停止にしても流行を抑える効果がないからなのです。うつさないから登園してもよいのではなく、1ヶ月間休ませる訳にもいかないからかまいません、ということなのです。

 実際には発疹が出ている間は登園停止という保育園や幼稚園はまだ多く、先日も保育園から「手足口病の場合はお医者さんが登園してもかまわないといっても発疹があるうちは預かりません」と言い渡されて来られた方がいました。保育園や幼稚園が旧来の基準を守り続けているということもあるでしょうが、一方で園が新しい基準を承知していても他の保護者からのクレームを避けるために厳しく対応している可能性もあります。「発疹が出ている子を休ませないのでうちの子にうつされてしまった」ということですが、感染の仕方を十分に理解して、予防法がない病気はお互い様であるという考えで集団生活を送って頂きたいものです。これは一開業医ではどうすることも出来ない問題ですが、保育園や幼稚園、その園医、そして保護者がお子さんにとって(保育園では親にとっても、ですね)何が良い選択かを検討して頂きたいと思っています。

 しかし手足口病で厳しく登園停止にする保育園に、1歳を大分過ぎても麻疹のワクチンをしていないお子さんがいたりすることは何とも変ですね。日本以外の多くの国では保育園や学校の行くには予防接種記録の提出が義務付けられています。日本は個人の自由を尊重する国ですのでこのようには行かないのでしょうが、これが先進国で唯一「麻疹がまれではない国」となっている最大の要因です。


 話は代わり自動車のチャイルドシートの件です。当院で乳児健診を受けられた方はお分かりでしょうが、事故は病気以上にお子さんの健康を害する原因となっています。現在発売中の「暮らしの手帳」6,7月号には衝突実験での評価などの記事が載っていますが、結論をまとめますと、ベッド型よりイス型を、2点固定式より3点固定式を正しい装着で、ということです。すでにシートを購入された方も多いとは思いますが、この記事のコピーを作りましたので参考にされる方はお申し出下さい。

 私も参加している日本外来小児科学会では以前からチャイルドシートの安全性について検討してきました。先日の会でも、ベッド型の危険性に加え、ジャケット型は問題外(事故に際してはほとんど効果がない)であることが強調されました。文字通り万一に備えてのことですが、それゆえ色々な情報を集める必要がありますね。
(暮らしの手帳のコピーについてはこの会のメンバーが同誌編集部から小児科診療所でのコピー配布の承諾を得ています)


No.2  2000.6.4   

 前回も書きましたが、関西から始まった麻疹の流行が全国に広まっています。町田や川崎でも麻疹の患者さんが増え、乳児の死亡例も出ています。横浜ではまだ西部や北部に限られていますが注意は必要です。

 「1歳になったらまず麻疹の予防接種を」ということは日頃からお伝えしていますが、接種がまだの方はなるべく早めに済ませておきましょう。1歳未満で麻疹の患者さんと接触した場合は2日以内ならワクチンの効果が期待できますので有料になりますが接種することもあります。大切なのは麻疹の患者さんが出たという情報を早く知ることです。クリニックの周囲で麻疹が出た場合にはこのホームページなどですぐお知らせします。

 これも前回に書きましたポリオワクチンの副作用(?)問題ですが、横浜では4月に終わってしまったためかこの件に関するご相談はわずかでした。その後もワクチンを飲んだお子さんからお父さんが感染して麻痺を起こした事が報道されています。新聞などでも不活化ワクチンへの切り替えが話題になっていますね。

 北海道では昭和30年代に多くのポリオ患者が出ましたが、ここではワクチン接種が中止になったことでポリオ感染の不安を訴える声が強いとのことです。その病気を身近に感じることでワクチンに対する関心も高まります。麻疹ワクチン接種率が下がったのも麻疹の怖さが実感されないからかも知れません。

 今週発売の週刊誌AERA(アエラ)に「喘息治療のコペルニクス的転回--小児喘息、根性では治らない」という記事があり、このホームページからもリンクしている星川小児クリニックの山本淳先生もその中に登場しています。

 喘息は母親が甘やかすためにおこるとか、本人の努力が足りないから治らない、といわれた時代がありました。きちんとした治療法がなかった時代には「乾布摩擦で鍛錬する」位しかなかったかも知れませんが、現在ではきちんとした治療指針が出来て多くの方が発作に苦しまずに済むようになりました。しかしまだ旧来の精神論をかざす医療機関や、それを信じる周囲の目があります。

 私のクリニックにも喘息で何年も服薬を続けたり毎日何回も吸入をしているお子さんも来られています。発作に苦しまずに充実した毎日が過ごせる的確な治療ができるように私も努力しています。


No.1 2000.5.17 

 連休明けはみずぼうそうやおたふくかぜの患者さんがやや多いようでしたが、次第に手足口病が増えて夏が近いことを感じます。手足口病にはいろいろな型があり、中には口の中の症状が強くて水分も取れなかったり、高熱や嘔吐で入院が必要になることもありますが、今のところは皆さん軽い症状で済んでいます。

 大阪南部を中心に関西地方では麻疹(はしか)の流行が続いています。連休中に大阪方面から帰省した方の中に患者さんがおり、そこから各地で麻疹が広がっているとの情報も入ってきています。麻疹は感染力も強く、健康なお子さんでも死亡することがある重い病気です。日頃から「1歳になったらまず麻疹ワクチンを」とお話していますが、4月中にポリオをされた方が多く麻疹ワクチンの接種が遅れてしまうことを危惧していました。
 
 そんな時に九州でポリオワクチン服用後に3歳のお子さんが亡くなり、また同じ地域で下半身麻痺のお子さんが入院しているとの報道がありました。横浜では4月と10月だけポリオの接種を行っているのであまり影響はありませんが、多くの地域で予定していた集団接種が突然中止となっています。横浜でも同じワクチンを使っていますのでご心配の方も多いと思います。

 ポリオは主に腸で増えるウイルスで、まれに脊髄や脳に入りこんで呼吸困難や麻痺をおこします。治療法はなく多くの子どもの命を奪った病気ですが、日本では約40年前にソ連から緊急輸入したワクチンの接種によって発症が激減しました。私も小学校の頃に輸入したてのワクチンを飲んだ記憶があります。現在でもポリオはインドなど一部の地域でまだ発生しており、また欧米でも宗教的理由でワクチンを拒否している集団での発生が見られています。

 ポリオのワクチンは弱毒化生ワクチンといって症状が出ないように毒性を弱くしたものです。このため体調や免疫力によっては症状が出てしまうことがありますが、麻痺をおこす可能性は400万人に1人程度とされています。入院中のお子さんは典型的なポリオの症状と考えられます。

 さて亡くなったお子さんはどのような状態だったのでしょう。報道では「急性脳症」で死亡と伝えられています。急性脳症とは発熱、嘔吐、意識障害などが急に出現し、脳は腫れあがり、しかし脳内に細菌やウイルスに侵されたあとが認められない状態をいいます。インフルエンザの時にもみられ、多くは死亡したり重い後遺症を残します。これまでポリオのワクチンで急性脳症がおこった例はないようです。

 急性脳症はワクチンはもちろん薬もない時代からある病気です。その一方でインフルエンザや水痘の時にアスピリンを飲めば発生率が高まることも分かっています。過去に使われていた三種混合のワクチン(現在のものとは異なります)でも急性脳症が多くおこっています。このように急性脳症をおこす引き金になるものがあるのは確かです。
ポリオのワクチンで急性脳症をおこした前例がなくともこれが初めての例かもしれませんし、あるいはワクチンとは何の関係もないことだったかもしれません。厚生省では「この死亡がワクチンと無関係であるとは証明できない」という立場で補償をおこない、おそらくワクチンを回収すると思います。以前は「ワクチンと関係があることが証明されない限り補償はしない」という態度を続けていましたので大きな進歩ということは出来ます。しかし「このワクチンは危険だ」と断定している訳でもありません。

 忘れてならない問題は麻痺をおこしたお子さんがいることです。今回のワクチンと全く同じ物は昨年からすでに100万人以上に使われており、今回も死亡したお子さんがいなければおそらく報道されることもなかったかと思います。ワクチンを飲んだ本人だけでなく、その便から周囲の赤ちゃんや家族が感染する例もあります。ポリオの予防はまだ必要ですので、すでに米国などでは実用化されている発病の危険性のない不活化ワクチンに切り替えることが急務であると考えます。