02年5月27日のテーマ 亡命事件の真相?

国会でも取り上げられているが、この事件の集中審議といっても議員連中の勉強不足により毎回同じ議論の繰り返しで、問題は早くも風化しようとしている。
中国側から、まだ発表しない事実もあるぞ、と言われてから外務省は早くも腰砕けで、今までの毅然として妥協することなく抗議し交渉を続けていく、という主張からほど遠い人道上の見地が最も重要であるなどとだれもが反対しにくい理由をつけて、問題を棚上げする姿勢だ。
そして、当方の主張通り無事に中国から出国させることに成功した、などと川口大臣が国会で答弁している。
だがちょっと待ってほしい。
そもそも人道的に解決するということは、少なくとも新聞報道を見る限り、最初から日中双方の合意事項だった筈だ。
合意事項が実現したからといって、それが交渉により勝ちえた成果である、などという言い方はやめてほしい。
出国が実現したのは、出国の前に亡命者から事情聴取をさせろと交渉していた事柄を取り下げたからであって、出国を妨害していたのは日本側である、と言われても仕方のない状況ではなかったのだろうか。 それを交渉の成功と言われては、何をかいわんやというところだ。
亡命者たちが、無事に出国したからといって、領事館侵入の事実に対しての謝罪要求まで取り下げる必要はないのだが、これも日中双方の事実認識が異なる、などというレトリックで有耶無耶にしてしまいそうだ。
少なくとも、全世界に配信されたというあのビデオテープを見ても、幼児を含む女性3人の引きずり出しに、警官たちが許可を得る暇もなく、とっさの判断で門内に入ったことは明らかなのである。
少なくともこのことについては、前回のこのパスカルの論評でも指摘した通り、事実関係については争う余地がないのだから、厳重に抗議しなければならない。
ではなぜ中国側は、後から事務所から連れ出した男性2名だけについてではなく、5人全体について日本側の許可を得ていた、と言っているのだろう。
もちろん自分たちが、ウィーン条約を踏みにじった、ということを公式に認めたくないからであるが、もし彼らの言うことが本当であるならば、予めかかる事態が発生した場合は門内に入ってもよいとの合意ができていた、ということになってしまう。
まさかそんなことはあるまい。
もちろん、爆弾を抱えた自爆テロが侵入したのであれば、門内に入ってでもこれを阻止し取り押さえすることは、それこそ緊急事態で致し方ないことともいえる。
(当初外務省側は、中国に抗議するという一方、何らかの犯罪の意図を持った者が、侵入してくるということもある、などと自分たちがこの事件で傍観あるいは黙認していたことを誤魔化そうとするかのような発言もあったが、女性が幼児を連れてそんなことをするはずがない、といわれて黙ってしまったのはお笑いである。)
ビデオテープという歴然たる事実がありながら、なぜ中国側は日本側の了承をを得ていたと頑なに言い張るのだろう。
これには1つの推論が成り立つ。
あくまでも推論であるから、何の証拠もなければ、事実と言い張るつもりもない。
だが次の点から類推できることがある。
(1)中国側は日本の領事館員たちと警備に当たっている中国の警察は日ごろから仲が良い、と言っている。
この点について日本側は反論していない。
(2)謝罪を求める日本に対し、警察が極めて態度を硬化させている、との外務省筋からの報道がある。(この警察の上部機構は何しろ軍だから、などと発表して、あたかも中国側の事務当局は自分たちが悪いことを判っているのだが軍隊が面子のために横紙破りをしているかのような印象を与えるレトリック)
(3)亡命者が入ってくるかもしれない、という事前の情報があった。
(4)日本の大使が不審なものを中に入れるな、というだれが考えても当たり前のことをわざわざ訓令している。
(5)当初政府官邸には、北朝鮮籍と思われる5人が領事館内に侵入しようとしたが、中国の警官に阻止された、という報告であった。
これらからの大胆な推論は、
「日本の領事館員と中国の警察は一体である」
ということだ。
仲がよいということは1回や2回会っただけではないだろう。
なにしろ領事館を警備してくれる警察だから仲よくしない手はない。
宴席を共にするなどということも当然行われたに違いない。
こういった会合や普段の交流から情報の交換も行われるだろうし、その席上不審なもの(亡命者、難民)の侵入について、特に注意を払ってよろしくお願いします、ぐらいのことを言っていただろうことは容易に推測できる。
言われれば中国側も、任せてください全力を挙げて阻止します、となる。
こういう状況の中でこの事件が起こったとすれば、中国の警察が慌てて対応したのも無理はない。
領事館員達は中国側が5人全員を収容したので、ほっとしたというところが本音だろう。
だから、「これですべて落着しましたね」という電話をかけているのだ。
幼児を含む女性3人を収容した中国側詰め所で、他に男性2人が領事館内に入ったと聞かされた副領事が慌てて事務所に駆け戻ったという。(政府調書)
その時に一緒に中国の警官が事務所内に入ったのだ。
いわば以心伝心、目的意識が一体だからその場の雰囲気から自然に副領事が領事館に戻る際についていって男性2人を捕まえたのである。
中国側だけの判断で無断で中に入ろうとするならもっと早くできたはずだ。
こう解釈するとすべてが理解できる。
前回のこの論評では、同意した事実がないということは反対したことではない、と指摘したが、実情はこんなところだったのではないかと思う。
だから武装警官が武器を片手に押し入ってきたというようなことではないのだし、政府調書にも警官たちが入ってきた状況の説明が欠落している。
なおこの武装警官という言葉は間違いであるということも前回指摘しておいたが、今日の国会では川口大臣は武装警官とはいわずに、武装警察が入ってきたと言っている。
誰か筆者と同じようなことを言った人がいたのだろう。
正確には武装警察の警官あるいは単に警官というべきなのだが。
政府は外国人の日本国内への流入はさまざまな問題があると慎重姿勢をを示している。
問題を引き起こすことは筆者も認める。
だがよく考えてみよう。
いかに問題があろうとも、老齢化少子化の日本が生産人口を増やそうとすれば外国人の手を借りなければできないことは目に見えている。
今でこそ失業問題が騒がれているが、近いうちに人手不足になる。
もし人手不足にならないようなら、それこそ日本の経済成長などというは夢のまた夢、今より遥かにひどい不況のどん底に陥ってしまう。人手が不足すればそれを補わなければならない。
どちらを選択するか、今から覚悟しておいた方が良い。

以   上

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