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一寸先は闇が世界情勢である。今回のアメリカの大規模多発テロの決着はどうなるだろうか、その予断は困難である。しかし、あえて独断的な予測をしておく。
アメリカは彼らのいうこの戦争に勝たなくてはならない。しかしアフガニスタンに侵攻しても、戦争に勝つことはできない。これがこの今回の問題のポイントである。
旧ソ連との戦争、その後の内乱によって国土は荒廃し、ミサイルで攻撃しようにも目標となるものはないという。広大な国土、そのほとんどは山岳地帯である。海に面していないから国境を接する国の協力を得なければ空爆も地上戦もできない。地上戦を始めれば待っているのはゲリラ戦であり、ベトナム戦争よりもひどい事態が待っている。パウエル国務長官は軍の司令官たちは慎重であるとも言っている。当然である。
イタリアが支援はするが軍隊は派遣しないと言っているのもうなずける。他の同盟国も言葉はともかくとして似たような考えだろうだから、NATOにせよ国連にせよ軍を派遣してもアメリカが主体であり、他の国の実際の援助はおざなりのものになるだろう。
だがアメリカにとって有利な条件もある。アフガニスタン内部の政治情勢も安定していない。この国を支配するタリバン政権を承認しているのは世界でも数カ国にとどまっているという。その数少ない承認国である国境を接するパキスタンはアメリカに全面的に協力すると言っている。<br>同じく隣国のイランはアメリカが軍事行動をとることには反対しているが、今回のテロ事件を非難する声明を発表した。発表したのが西欧寄りの首相ではなく、宗教上の最高指導者であることの意味は大きい。
ベトナム戦争の時のように背後で物資や武器を供給する超大国もない。
それでも地上戦が始まれば泥沼化するであろうし、アメリカ軍兵士の多大な犠牲をともなうことは必至である。だからアメリカは実際の戦争をすることなく、彼らがこれは戦争だと称している戦いに勝たなければならないのである。全世界のとりわけイスラム世界の協力を得てタリバンを孤立させ、オサマビンラディンをとらえなければならないのだ。
そのためには政治的軍事的経済的な力を背景とした外交が決め手となる。
外交ということは交渉であるから、相手に言うことをきかすならばその代償を払わなければいけない。
その代償は何か。
建前はともかくとして結局は、世界の各国に対しての援助やこれまで行っていたさまざまな介入や締め付けの解除である。協力をしてくれた場合と、してくれなかった場合の飴と鞭の政策である。
この外交が失敗すれば、それこそ泥沼の事態が発生し、アメリカに積極的に協力する国々を含めて新たなるテロ事件が頻発するであろう。
このような事態はだれもが望んでいないのだから、最終的にはアメリカは大幅な代償を与えて自らの面子を保ち、2度とこのようなテロ事件が起こらないような状況をつくるであろう。
テロを軍事力でやめさせるにはこれを支援する国々と全面戦争しなければならないし、そんなことはできない。
表面には出てこないだろうが、具体的な代償として考えられるのは、その協力の度合いに応じて、例えば協力が最も必要とされるパキスタンに対しては経済制裁を解除する(つまり核の保有を認める)とか、そのパキスタンを支援する中国にはあまり人権問題のことを取り上げない等である。パキスタンも内部に複雑な事情を抱えているしインドとの紛争も続いているからギブアンドテイクはよほど大きなものとなるであろう。
またこの問題に大きな影響力のあるイスラム社会に対しては、パレスチナ問題でイスラエル寄りの姿勢を改めることも考えられる。
タリバンだって自分の面子と政権の認知を天秤にかけ、ラディンを差し出すかもしれない。その場合生きたままではいろいろと都合が悪いから、自殺か射殺ということになるのではないか。
オサマビンラディン犯罪者の汚名のもとに死してイスラム社会の英雄となる、そんな図式が見えてくる。そしてアメリカは自分の考えを他国に押し付ける政策の転換を迫られるであろう。
この問題についての専門家ではないので根拠に乏しい独断的予想であるが、あらゆる報道から得た結論はこうなる。果たして当たるだろうか。
余談になるが今回の事件に関してのテレビ報道を見ていてつくづく思ったのはアメリカの政治家たちのスピーチがうまいということだ。誰も原稿を読んだりしないし、自分の言葉で(あるいは自分の言葉と思わせて)話しているから説得力がある。
またテレビのキャスターは米国では非常によく勉強していて専門家との一対一の議論であます所なく問題点を浮き彫りにさせる能力を持っている。日本は専門家を集めて座談会の司会をするというケースが多く、問題点の上面を撫でただけになっている。
物事を論理的に思考することが重要な社会と情緒的にとらえることの好きな社会との差である。
以 上
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