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00年10月25日のテーマ 奇怪な株式譲渡益課税

 10月17日の日本経済新聞の1面トップに「株譲渡益課税源泉分離廃止先送り」の大見出しの記事が出た。現在の株価低迷に配慮してとのことである。何を今更と言いたい。
 およそこの問題は1年ぐらい前からさんざん議論されてきたはずだ(その議論の中身については不透明である)。
 自民党の有力者がそのような趣旨の発言をし、大蔵省がもう法律で決まったことであるから、と反論するパターンを今日まで何回も繰り返してきた。今回もどうなるかわかったものではない。
 それに振り回されるのは、われわれ一般大衆投資家である。その後の後追い記事ではもう決まったかのようだが、どうせ何か付帯条件がつくに違いない。
 平成12年6月現在日本には延三千二十二万人の投資家(個人株主)がいるということである(東証)。延ということは1人で2つの会社の株を持っていれば2人と計算されるわけである。投資単位は一億三千万単位、個人株主の80%が1単位から4単位の保有にとどまっている(東証)。
 この数字から推測すると約一千万人の個人株主がいることになる。この人々に対する税制が、変更になるのであるから社会的大問題である。
 ところがこの変更は数々の問題をはらんでいる。
 約一千万人の人々が1年間に1回でも株を売れば、確定申告が必要ということになる。3月15日の確定申告締め切り日には、膨大な人々の申告書が税務署にあふれることになる。
 地元の税務署に聞けば対応不可能、ましてや申告の中身のチェックなどできないという。チェックができないとなれば、人間だれしも自分に不利な計算をしないから、結果的に過少申告(脱税)ということになる。
 またこの計算が難しい。昔から持っている株とか、相続で取得した株などはいくらで買ったのかという証明ができないのがほとんどである。証券会社に問い合わせても10年前までしかさかのぼって教えてくれない。ところが税務当局は取得した時期、親から相続したものであればその親が取得した時期にさかのぼって単価を証明書をつけて出せという。しかもこの間に同じ銘柄の売買があれば平均単価を出せという。
 そんなことはできるはずがないのである。できなければ売却した株の5%を取得価格とみなすという。だからもしあなたが、400円の株1,000株を売ったとすれば、金額四十万円の95%三十八万円が利益とされて、それに26%の税金をかけるというのだ。
 封建時代の悪代官さながらではないか。
 今は株安の時代である。今単価400円の株などは昔は1,000円以上していたのがほとんどではないか。相続したときは、その時の時価で相続税を皆収めているのである。ところが税務当局はたとえ過去に高い相続税を納めていたとしても(昔は相続税率も今と比較にならないほど高かった)あくまでも取得価格が証明できなければ売った値段の5%が取得価格だというのである。400円の株の5%といえば20円ではないか。古い会社の株の額面はほとんどが50円だから、額面以下の取得価額ということになってしまう。こんなことは常識的にはあり得ない。
 平均価格というのも大問題である。単価300円の株を2,000株取得し、その後1,000株を売却し、さらにまたその後で2,000株を500円で取得しそして1,000株を売却したとしよう。
 現在の保有株は2,000株である。平均単価は300円×1,000株+500円×2,000株=1,300,000円、を3,000株では割った金額でこの場合で433円である。その後千株売却しているが平均単価には関係ない。
 このような場合、法律改正後で単価600円で全株2,000株を売却した場合次のような計算ができる。
(1)600円-433円=167円の利益 この計算が正しい
(2)600円-500円=100円の利益 1番最近の取得価格、取引計算書が得易い
(3)600円- 30円=570円の利益 取引計算書などの証明が得られない場合
 となる。税務署のチェックがほとんどなく、計算も簡単であるから、ほとんどの人が(2)を選択するのではないだろうか。
 だがしかし皆さん覚えていられるだろうか。昔銀行の預金利子にマル優の制度があったことを。
 1人元金三百万円までは利子が無税だったのである。だからボーナスであろうが退職金であろうが自分の金を家族の名義を使って1人当たり三百万円を預金したのである。もちろん自分の金であるから贈与税などは払わない。だがこれは脱税なのである。
 税務署は数多くの預金が本人の名義であるか他人の名義であるかなど調べる暇がないからチェックせず、この行為が脱税であるとPRもしなかったから、ほとんどの人がこの制度を利用し、架空名義ではないのだからと、脱税とも知らず払うべき税金を払わなかった。
 ところが何かの機会に、税務署が個人の税務調査をすることがある。するとこれらの預金は名義貸しであるからマル優は適用できない。脱税である、ということになる。おそらくそんな目に遭ったのは100人中1人か2人であろう。今でもほとんどの人が、あの時の家族名義のマル優の預金が脱税であったなどとは知らないのである。
 だから今回の改正でも同じようなことが起こり、どうせ税務署はチェックしないのだからと労を惜しんで正確な申告をしなければ、ある日突然マル優の時と同じく脱税であると宣告され、加算税まで持っていかれることがパーセンテージは低いが有るのである。これを不公平不公正と言わずしてなんといったらいいであろうか。
 また株の売買が好きで1つの銘柄で長年にわたり何十回も売り買いした人は、平均単価の出し方に大変苦労するだろうことは、想像に難くない。
 よそ法律を改正するにはこのようなことも考慮に入れて、どのようにすれば最も現実的な方法となるかを検討し、かつそのことを充分に周知徹底させる必要があるのに、それを全くしないのが現代の悪代官税務当局なのである。
 ところが一方、会社の株を公開したオーナーたちは、何百億円という自分たちの払込金額の数百倍の利益を得ているが、今その株をクロス取引することで、1%の税金を払って取得単価を時価に切り替えている。金額が大きいし、クロス取引だから売買手数料は信じられないほど格安である。
 昔、税務当局はそのような取引は租税回避行為であるから認めないと言っていた。ところが途中からあっさりと認めるということに変更した。これで大金持ち連中は大喜びである。
 ところが一般庶民である数百万数千万しかないものはクロス取引などということはできない。実際に売買して単価を確定するほかないのだが(そうしないと売った値段の5%とみなされてしまう)そんなことをすれば大金持ち連中とは違って税金1%のほかに売買手数料を2%もとられてしまう。
 しかも大金持ち連中はその取得価格が数百倍も安いことが確定しているにもかかわらず、一般庶民たちは上記のように、もしかしたら取得価格の方が高いという可能性も強いのである。
 庶民をいじめ、大金持ちと馴れ合う現代の悪代官の構図は、まるでテレビ時代劇を見ているようではないか。またれるのは黄門さまの登場である。
 株を持っている奴はいいさ、おれなんか関係ないからね、という人も多い。しかしこれは、この税制ひとつとってみても、世の中がどういう方向に流れていっているのか判断できるのだから、よろしく関心を持ってほしいと思うのは、無いものねだりだろうか。

以    上

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